Skip to content
あすかコーポレイトアドバイザリー株式会社
  • ホーム
  • 戦略
    • 戦略概要
    • 哲学
    • ケース
    • 企業からの声
    • SSC・ESG・PRI
  • 会社概要
    • 会社概要
    • メンバー
    • アクセス
  • アーカイブ
  • News
  • ACAコラム
  • English
  • 2019-10-092019-11-06
  • by 濱田 功

ROICから企業価値へ

前回、将来へ向かうキャッシュフロー流列こそが本質であり、B/SとP/Lはその断面と断面の変化率(微分)に過ぎないと申し上げました。
では、その断面の数字の比である(静的な)ROICと、将来のキャッシュフロー集合体である(動的な)企業価値とはどのように結びついているのでしょうか。フリーキャッシュフローの永久流列に対して、無限等比級数の和の公式から、以下の式が得られます。

この時にROICが将来に渡って変化しないという仮定、言い換えるなら限界ROICが現在のROICに等しいという仮定を置く場合、次のような式変形によって、純投資(投資額から減価償却費を控除し運転資本増加を足したもの)をROICで表現できるため、現在のROICを使う事によって、将来の事業価値・企業価値を計算することができるのです。

このDCF計算の式をバリュードライバー式と名付けられていますが、この式型と導出プロセスから、いくつかの示唆があります。
まず、WACC>ROICであれば、投下資本以下の事業価値しか生まれず、価値破壊的であり、その時、成長率が高いほど、価値破壊の程度が増します。
また、ROIC一定の仮定のもとでは、税引き後利益に対する純投資の比率(投資比率)が上昇するほど、成長率が高まる事になります。即ち、高い成長のためには、投資をしなければならないという事が組み込まれています。

DCF事業価値の計算では、各年のP/L・B/Sの推定を行った上で、キャッシュフローを計算する方法が一般的だと思います。それに比べて、このROICから事業価値を計算する方法はどのような得失があるのでしょうか。
長所としては、必要とするパラメータの数が少なく、議論の紛れが無いことです。各年のP/Lを今後5年分作ろうとすると、それぞれの要素に推定が入ってきます。売上の伸び率、原価、今後の人件費など、推定し仮定を置かなければならない多くのパラメータをさらに議論にかけるとなると、本質の企業価値の議論になる前に、パラメータの決め方で紛糾することになりかねません。ROICからの計算方法は、ROICは当該年度の「実額」ですから、議論の紛れようも無く、そのほかに必要なものは、WACCと永久成長率だけです。
短所は、計算の前提であった、ROICが変化しないということによる制約、適用範囲の限定です。また、WACC-gの収束条件も制約になります。例えば、短い時間の間に、赤字から黒字に変わり、成長率も著しく高いようなベンチャー企業に対してはあまり良い方法ではないでしょう。
これらの長所と短所(適用限界)を知った上で使うのであれば、良い方法であり、本質をクリアに見せる手法だと考えています。

前回と合わせて見てきたROIC経営の本質は、WACCを超える高いROICで再投資により成長する企業は、企業価値を高める事ができるというものでした。ROIC経営だからと言って、現在のB/S、P/Lに集中して、投資が萎縮してしまうのであれば、企業価値を高めるという本質的な目的を見失っています。望まれるのは、これから将来への投資を増加させ、その投資プロジェクトによって追加されるROIC(限界ROIC)が過去から現在までの投資の蓄積である現在のROICを上回っていくように、高資本効率のプロジェクトを立ち上げていくことです。それにより企業全体の平均ROICが引き上げられ、投下資本が増大し企業価値が増大していくのです。ROICは、その変化のプロセスをモニタリングし課題をあぶり出すための手法なのです。

  • 2019-10-082019-11-05
  • by 濱田 功

価値 is King

ダイヤモンド社から出版されているマッキンゼー著による「企業価値評価-バリュエーションの理論と実践」はファイナンスのバイブル的な教科書で日本語版でも既に6版を数えるほどです。上下巻合わせて1,000ページ、お値段も8,000円を超すので、手に入れるにも読み通すにも気合が必要です。
この本の中では、ROICを使ったDCF法による企業価値評価の手法を詳しく解説しています。
我々の仕事の中では、スチュワードシップ・コード導入の前後で「ROEの投資家にとっての意味はなにか」「なぜ投資家はROEを重視するのか」という疑問が、投資先企業側から寄せられました。投資家の立場からの資本効率重視の議論を複数の企業取締役会で話させていただきました。
ここ数年の変化は、企業側から「ROICの持つ意味は何か」「なぜ企業はROICを重視すべきなのか」という問を受けるようになったことです。つまり、ROEのB/S逆側の指標である企業側から見た投資の効率性指標「ROIC」向上についての問題意識の高まりが背景にあるようです。

ROICは上記書籍の中で、DCF法企業価値への転換が説明されているのですが、そのロジックがあまり浸透していると思えず、どういう場合に適用可能であるのかという前提条件がしばしば忘れられているように思います。そして、「ROIC経営」という時には、「ROICをいかに高めるか」ではなく、企業価値の増大こそが本質なのです。ブログ2回に渡って、やや理屈っぽいですが、解説したいと思います。

まず、企業の全ての行為は、投資して回収するというキャッシュフロー流列マイナスからプラスへの時間軸上の流れになっています。そして資本コストを割引率として将来価値を現在価値に引き戻した時、そこに立ち現れる「現在価値の総和」がプラスであれば、「価値が創造された」と解釈され、マイナスであれば、「価値が毀損された」と解釈されます。ここまでは、ファイナンスの基礎の基礎のようであるのですが、企業がこの投資回収のS字を描くキャッシュフロー流列の集合体であるという事を、企業管理者は忘却しがちであると見受けられます。

つまり、企業価値増大を指向する企業というのは、このS字を描くキャッシュフロー流列によって回収された価値を更に次のより大きな投資に投じ、より大きな回収を行うという、投資回収の運動を拡大させていくものなのです。そして、B/Sはこの複数のS字の塊をある時間断面で切った断面の絵であり、さらにその断面の変化をある一定時間(年度や四半期)で記録したもの(時間微分)がP/Lなのです。

「企業価値を高める」とは、このS字集合体の投資回収の運動を、個々のS字の価値創造を大きくすると共に、より大きなS字を描くか、S字の個数を増やしていくかによって拡大していくという事に他なりません。断面や微分値である財務諸表はその計測手段に過ぎず、価値増大こそが、企業活動・企業意思決定の本質なのです。

ところで、この時間軸に沿ってという考え方は、人間だけに固有の考え方だと思われます。X軸Y軸などの空間表現と時間を等質のものだと表現し、「未来がやってくる」という表現に違和感が無いのは、この時間の「空間化」がほとんどの人にとって共通に認識できる感覚だからです。将来の成果のために、今、辛いトレーニングするとか、贅沢を我慢して、教育に投資するとか、全て大きな回収のために投資をするという行為です。これは時間の空間把握と事物の因果関係を認識できるからこそ可能なのであり、それは人間だけに許されている人間を特徴づける行為なのです。

最近の投稿

  • 謹賀新年
  • ピグマリオン症
  • 家庭菜園を始めました
  • あすか新春セミナーを開催しました
  • 元旦の「ジオヒルズ」ワイナリー訪問

タグ

ESG Sustainability IR ROIC経営 京都大学 議決権行使 セミナー 新春セミナー 慶応大学 ワイナリー 株式総利回り ROIC 企業価値 小諸 エンゲージメント 企業開示 市場調査 TSR DCF法
©2018 Asuka Corporate Advisory Co., Ltd.