上場株インパクト投資の研究(1)
あっという間に過ぎた2020年を超えて2021年も4月に入ろうとしています。コロナ禍の拡大傾向はなかなか収まりませんが、良い意味での逆境への慣れか、様々な新しい投資アイデアについてのディスカッションの依頼を頂くケースが増えてきたように思います。当社でも資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
3月31日もお昼12時より 第三回Clubhouse Meeting を行う予定です。
Clubhouse Meeting 「上場株でのインパクト投資」第一回
2021年3月17日 12:00~12:30
(これは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
欧州でここ4,5年インパクト投資の議論がとても盛り上がっています。特にEUでは“全ての資金はグリーンへ”みたいな勢いで、気候変動に対応するイノベーションとか、事業に関わっている上場企業への投資も投資という勢いの中で「上場企業でインパクト投資」が話題に上るようになりました。それで「これ絶対日本でもっと導入されないかな」と思って周りのアクティブマネージャーをけしかけてきました。この何人かで集まって、週に一度、クラブハウスで投資について考えてみたいと思います。
ただインパクト投資というのは、昔から概念はあって実際取り組まれていたものの、ここ数年急速に取り組みが拡大し、そこで定義や評価方法が整備されてきていますが、今も解釈は様々だと思います。ですので、ここでは世の中の定義にはあまり縛られず、「どんな投資がありえるのか」について議論していきたいと思います。
さて、インパクト投資って突然でてきたものじゃなくて、こんなの前からやっていたと言う人もいると思うのです。インパクト投資ってなんだと思いますか?
Tさんの場合(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
金融の世界に30年関わっています。今は上場企業の中小型に投資をしていて、ただ投資をするのではなくエンゲージメントを通して企業価値をあげることを目指しています。
インパクト投資って難しいですよね。ものの本とか読んでいて今思っているのは、“ありたい社会”というのを想定して、それに対して積極的に働きかけて実現させていく、そんなもんじゃないかと思っているです。それを専門用語で言えば、“アウトカム”を創るとか、そう言うことなんだろうなと思っています。ただ自分自身がおもっているのは金融自身が胡散臭くなっちゃったのはここ30年ぐらいで、もともと信用創造を通じて社会に貢献していくっていうのは、本当は昔銀行にはあったと思うのです。だからこれは金融の本来の目的というか・・・ただその頃は、やはり長期に社会がどうなるかっていうことを予想して投資をしていく、ということはったのですが、“ありたい社会をどう作っていくか、それにどう積極的にかかわっていくか”というのはそんなにはなかったかも・・・。
Kさんの場合( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
私も30年以上株をやっています。私もTさんのいうとおりだと思います。それでも80年代はまだ、新しいもの、芸術などにもお金がまわっていましたよね。なんでその後おかしくなったかというと、その後金融機関が生き残るのが大変になってちょっと変わってきちゃったのかなと思います。でも今ある程度生き残って、また社会貢献とか考えれるところに戻ってきたんじゃないかなと思うんですけど。私が思っていたのは、「そのビジネスは世界を幸せにしているか?」で私の投資先が、少しでも世の中をよくしているかを常に心の中に持ちながら投資していく必要があるかなと思っています。
MC
そうですね、ヨーロッパのアセットオーナーを回っていると、私の世代から見ると、ちょっと驚くほどまじめに“世界を良くしたい”という思いを語られますよね。そのオーナーが、自分が委託しているすべてのアセットマネージャーにも同じ方向を向いて投資して欲しい、たとえばヨーロッパだとグリーンの投資をして欲しい、というアセットオーナーが、インパクト投資として上場株も同じ分野で力をいれて欲しい・・・というケースをみかけ、「こういう思いをもっている日本のアセットマネージャーもけっこういる!もっと日本人アセットマネージャーはインパクト投資に興味を持つべき」と思ったのです。
Hさんの場合(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
私もお二人ほどじゃないけど長く日本株投資をしています。ESGやインパクト投資で有名なお客さんがいてその人たちといろいろ話してきました。そこで感じてきたのは、日本では長期の視点で分析していても、実際はなかなか長期にならないことが多く、日本でももっと根付かせたいなと思っています。
自分はインパクト投資は社会にプラスの変化をもたらす企業への投資だと思っています。短期的にみればうまくやっているなという事業はあっても最終的には多くの人から喜ばれる、社会にプラスの変化をもたらすものでなければ成長し続けることはないと思っています。
MC
そうですね欧州でアセットオーナーが旗をふって“インパクト投資”と言っているケースではご自身がゴールを設定していて、このゴールにあわせて、インパクト投資してくれるアセットマネージャーは手をあげてください、みたいなコミュニケーションをみかけます。数年前、オランダのPGGMとAPGは、共同でインパクトゴールのタクソノミを発表しました。もとはSDGsの中のいくつかのカテゴリで、たとえば貧困をなくすだったら、自分たちが注目しているのは、マイクロファイナンスです、とかタクソノミの小項目に書き込まれています。飢餓をなくすのところには、たとえばフレッシュな食べ物のローカルアクセスの事業とか。そういう風に自分たちが注目しているインパクトを示して、同時にアセットマネージャーだけでなく、企業にも伝えたいそうなんですね。それにアセットマネージャーが参加していくと、全体で大きな力になり、社会的な動きを促進するパワーになります。これは面白い仕掛けだなと思いました。SDGs17あればだいたいどっかに入るかなと思いますが、社会的にいいことしたいというのはなんとか拾ってもらえると思うので、アセットオーナーの考えと一致するところが見つかるといいのかもしれません。
では次回は、どんなところにインパクトを起こしたいと思っているかについて話して見たいと思います。
続く