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  • 2021-06-282021-06-29
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 3章(3)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

6月30日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 2回上

2021年5月19日 

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
では、今日も“気候変動のように政策が反映するがゆえに、独特のターゲットやKPIをもつような投資”について続けて話していきたいと思います。ところで、クラブハウスのお知らせ画面にご案内しています通り、今日からは質問を受け付けています。
さっそくいただいた質問をみてみましょう。“自分はインパクト投資は理念として<いいこと>が重要だと思っています。ところがこの<いいこと>をファンドマネージャーがどのような論理や仮説で予想したかが重要ですが、気候変動については複雑すぎて論理的に仮説も検証もできないのではないかと思っています。またその仮説を満たすKPIも業績と連動するように置くのは難しいのではないでしょうか、それでアセットオーナーに説明できるのでしょうか”ということを疑問におもっていらっしゃるそうです。これについて皆さんどう思うか、聞いていきたいと思います。ではKさん

Kさん
気候変動自体が非常に大きな問題ですし、その中で企業がどうとらえていくか、どう対応していくか、色々みなさん太陽光発電使ったりされていると思いますし、そういったことはしっかり説明できるでしょうし、それに効果も数字では表せると思います。ただ単純にヨコ比較でこちらの方がいいですよ、といわれてもそれはちゃんと考えていかなければいけないと思います。また時系列的にどうなのかとか。・・・企業にとってできないことではないと思っています。

MC
うーん。ありがとうございます。ではHさん。

Hさん
<いいこと>というものの定義が難しくて。なんとなく環境にいいというだけでは、我々は投資できないのかなと思っています。インパクト投資っていうのは自分たちが設定しているKPIがしっかり業績に結び付いてくる、というか企業価値にむすびついてくるという前提がある会社にしか、投資できなくて、<いいこと>はやっているんだけど企業価値につながらない場合は投資にはならないと思います。逆に<いいこと>のKPIが企業価値に結び付いていれば、アセットオーナーにも説明できると思っています。

MC
つまり、気候変動のためにやらなきゃいけないことは色々あって、企業側もこれに投資したいっていうことはあるかもしれないけど、Hさんとしては大前提としては企業価値と結びつくもの、もしかして政策の変更による揺らぎが起きにくいものなのかもしれないけれど、説明できるものであることが、重要だということですね。

Hさん
そうですね、やらなきゃいけないことがたくさんあって、それが企業価値に結び付かない会社がいっぱいあるんですね。それはインパクト投資に向いていない会社、ということだと思います。その会社がいいとか悪いとかではなく。で、われわれがインパクトに対して投資をするという場合は、それと企業価値がリンクしているところに投資をするけれど、インパクト投資の投資対象にならないからといって悪い会社というわけではないし。。。企業価値があがらないわけでもないです。そのインパクトと企業価値が結びついているということが前提にあれば、気候変動でも難しくなく判断できるんじゃないかなと思います。

MC
ありがとうございます。ではTさん

Tさん
・・・そうですね。なんかいろいろなことが結びついていると思うのですけど、あえて誤解を恐れずにいえば、そのKPIなるものが企業価値を説明できないのであれば、それはインパクト投資とは言えないのじゃないかなと思うのですよね。環境省とかが出しているレポートとか、読んだりしているのですけど、インパクト投資を包括型、特化型とわけてらして。包括型は使途を問わないコーポレートローンだったり、或いはパッシブのインデックス型投資、ここについては網をかけるような投資になるので、その中でKPIとして何をおいていくかでカーボンフットプリントとか出てくると思うのですが、私はアクティブ投資ですし、そうするとインパクト特定型、つまり特化型なのですがこれは“上場企業投資には適さない”と書いてあるのです。でもぼくはむしろこれで行けると思っています。定義がまだはっきりしていないというのもあるのですが、GIINとかが作っているインパクト投資の定義として、そもそもどういうインテンションがあるのか、金銭的リターンがあるものなのか、モニタリング可能なのかといった実績に基づいて言えば、KPIってリターン=企業価値とリンクさせられるべきですし、させていないといけないと思いますし、そうでないとインパクト投資と呼んではいけないのではないかと思いますね。

MC
うーん。じゃあ、例えば“こんなケースだったらインパクト投資”っていえるかなという事例ある方いらっしゃいますか?

Tさん
うーん、とそうですね。“これぞインパクト投資でございっ”っていうのはないのですけど、意識しているものとしては、たとえば温暖化ガスそのものがKPIかというと、そうではないのです。長期投資的にみたアウトカムとして地球の環境を守っていきたい、それには温暖化問題は重要で、それにはCo2をどうコントロールするかが重要・・・というのは一つのアウトカムでKPIだと思うのですよね。ずっと応援している会社で、地方の中古物件を扱っている会社があって。リノベーションをしてきれいにして売っていく会社があるんです。中古物件で新築に比べてCO2が3/4ぐらいで済むのですね。私はこの会社がどんどん伸びていくことが社会にとっても地球にとっても良いことだと思っているのですが、実際のエンゲージメントとして何をやっているかというと、“どんどん伸ばしてください”と言っている。経営者は放っておくと、守りを固めてしまうところもあるので、“まだまだ増やせるんじゃないですか?”、“こうやれ増やせるのじゃないですか?”なんて言っている。結果としてKPIとしては中古物件をどれだけ増やせたかで、それを増やせればCo2も減ると、そんな風に考えているのですが

MC
なんとなく、今パッとお聞きして、これはCO2削減が“インパクト”なのか・・・そのためにやっているわけじゃないのですものね。

Tさん
あ、はい。もちろん複合的なんですよ。超長期のアウトカムとしてはCo2の削減を通じて地球環境に良いことができる・・・ということになりますが、その前のところにいたっては、土地の周辺部の社会環境をよくするというのもありますし、長期、中期で違うんですけど、一つそれを束ねているのが祖業としての中古住宅の再生件数というのが全てにいい影響を与えていると、そんな風に考えています。

MC
まあ複数のインパクトがあれば、ただ昨日から話しているのは“気候変動は難しそう?”なので・・・

Tさん
そうなのですが、削減量を企業に要求してしまうと、結果的に企業価値につながらない。
危険性もあると思うのですよね。

MC
・・・なんとなくこの質問者さんの御指摘通り?

Hさん
あの・・難しいところだと思うんですが、たとえばKPIの置き方というのをインパクトを与えるもの自体にしなくていいのかな?って思っていて。その会社が成長していくと結果的に社会全体のCo2を減らすことができたとしても、Co2の削減目標ってもの自体がなかったとすると、それってインパクト投資のKPIとして適切なのか?というのはあると思います。先程の例でいうと、中古物件でリノベーションを行うと新築に比べてCo2を3/4ぐらい減らせたとしても、より高い技術で8割、9割減らせる家をリノベーション手法で開発したが、コストが上がって価格に転嫁できず、その会社の収益を伸ばせなかった場合、その会社のCFから見た企業価値は上がらないとした場合、どんなふうに判断したらいいのでしょう?

Tさん
・・・な、なるほど

続く

  • 2021-06-162021-07-13
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 3章(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

本日、6月16日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 1回下

2021年5月12日 

(このブログは毎週水曜日のお昼からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Tさん
たとえば脱炭素で東南アジアのプラントから撤退という話が出た時、人類にとってはいいことかもしれないけど、そこで生み出されていた雇用みたいなものをどう考えるべきか。ちょっと事例としてお話しすると、私はかつてペットボトル製造装置を作っているところがありました。非常にいい経営で資本効率も高く、利益率も高く、株主利益を生んでくれる会社でした。経営陣としては、今、ペットボトルは自然破壊の権化みたいに言われていますが、軽くて造形性が高く、途上国においてはリッチになっていく象徴だったんですね。だから生活が向上することに貢献していく一方で、それが捨てられることによって自然環境を破壊するという両面があって、私がその時言ったのは“企業価値をどんどん作っていくという意味で応援したい、ただその中でサステナビリティを高めるために、少しでも再生可能なペットボトルの方にシェアをもっていくような経営をしてくれないか”という提案をしました。だから私もインパクト的には“途上国の暮らしをよくする”のほうにベッドしようと考えました。

MC
今のTさんの話は、環境問題でひとつのインパクトを考えていた時、他の雇用とかのインパクトとバーター関係になってしまうことがあって、そのジレンマで苦労されたと・・・今のようなケース、Kさんはどう思いますか?そのオランダのケース、環境を重視したために、何かが不便になるとか、そういうことはありませんでしたか?

Kさん
不便になることはあると思います。お金も使うんでマイナス要素もあると思います。でもそれでも、お客さんがついてきたりしてプラスの要素がある、総合効果を考え、企業が永続していくと考えてプラスになると思いながらみんなやっているんじゃないかなと思います。

MC
あと今のTさんの話は、以前Hさんが言っていた、“大きな方向としては問題なんだけど、細かいところをみるとそのために潤っていて株価が上がっていたり、雇用が伸びていたり・・・だから一件、一件丁寧に見ていなくちゃいけないと言っていたと思いますが、Hさんどうですか?

Hさん
そういうことってすごくあると思います。でもそういう時、本当に企業は長期的な価値を生むかが重要なんだと思うんです。わかりやすい例としては・・・・たとえば製品でトラブルが生じて、全部回収したとかいう会社もあったと思うのですが、そういうところで消費者のことを考えて行動した、ていうような。わかりやすい部分と、そうではなくてこっちをやると、あっちが困ると結論が分かりにくいもの、そういうのが困ると思うんです。

Kさん
Hさんがおっしゃったようなことって本当によくあると思うんです。たとえば夕張の町を考えたら、町自体が破綻したわけで、転換していくのは非常に難しいことだろうなと思っています。

MC
昨年、オーストラリアの投資家と議論する機会があったんですけど、その時聞いた話として、“今雇用がある”といってもずっと続くのかも投資家は考えなくちゃけない、と。つまりその企業のビジネスがサステナブルなのか・・・それがこのサステナブル投資などの議論の始まりだったのではないかなと。レギュレーションや環境の変化によってビジネスは変わるわけですよね。そのベットボトルを購入している先進国のトレンドが変わって、売れなくなるかもしれない。投資家は早めに先をみて企業に言っていかないと長く投資をすることが難しいということじゃないかと。

Tさん
それはその通りだと思います。これがインパクト投資、多くの人にとってプラスになることを生んでいくものなのではないかと。協会のチャリティーと比べると、我々は上場株に投資をしているわけで、そのインパクトを大きくしていかなければならないのですが、逆に忘れてはいけないのは、どういったポジティブを本当に生み出したいのか、そこにくっついてくるネガティブをミニマイズする・・・そう考えると企業サイズが大きくなってくると難しいのかなと思ったりします。

MC
そうですね、ESG全体のいろいろな要素のなかで、“セット”になっている、ポジティブとネガティブで、裏表になっているようなインパクトがあるかもしれない。ところで雇用もそうですし、前回の人権問題などは、多くの人がどう考えるかに投資先企業の将来は影響を受けるのかなと思うんですが、環境はレギュレーションとか、政策の影響を受けるのかなと思うんですよね・・・。企業の事業において、途中で転換するのが難しいようなことがあって、だからレギュレーションなんかの動きをウオッチしなければならない・・・そう感じることはありますか?

Hさん
すごくあると思います。特に日本の企業とエンゲージメントする時気をつけなくちゃいけないことがあって、日本の企業ってまじめなので、“本当はこれがただしい”ということを自分たちで一生懸命考えて行動していることが多いんですけど、それがグローバルなスタンダードをみると違ったりする・・・・ということがよくあるんです。でも環境とかはいろいろな考え方があるけど、独りよがりではいけなくて、ヨーロッパではこうなっているけど大丈夫かとか、きいてくことが大事だと。

MC
日本の企業でよく、“そうはいってもこれが必要”という人けっこういるんですよね。2度シナリオがいいとか、1.5度が必要とかいう人がいますが、それがいいか悪いはともかくとして自社だけでどうにもならない、影響がレギュレーションとか政策からやってくる、そういうのは環境にいいかどうかだけを真剣に考えると歯車が合わない感じがしますね。

Kさん
ちょっと外れたこと言っていいですか? 企業って変わっていかなきゃいけないと思うんですよ。さっきTさんが大きな会社は変わりにくいんじゃないかというような意味のことをおっしゃったおと思いますが、企業を変えていくために投資家ができることは、やっぱり背中を押してあげることじゃないかと思っているんです。投資家が集まれば、それが大きな声になっていくと思っているんです。昨日JSRという会社が発表をしたんです。ゴムの会社で、タイヤを作るための国策会社なんですけど、タイヤ部門を売ると。そういう祖業である事業を売ってもやっていくんだぞ、と。大きな会社でも変わっていけるんじゃないかなと。

MC
そうですね。たしかに環境関係で、大きな会社で鉄を作っている会社で、ずっと高炉は石炭じゃなきゃダメなのだっていっていた会社も、水素で製鉄するとかいう時代ですから、大きな会社がコアビジネスで変わらなきゃいけないことがあって、そういう時に投資家が向かい合う時もありますよね。で、それとは別にさっきHさんがいっていたのは、企業が一生懸命変わろうとするんだけど、環境に関することはレギュレーションの影響が大きいので、自分で“良い”と思うだけではダメという点についてはどう思いますか?

Kさん
・・・そうですね。企業が独りよがりで考えている、って結構多いかなと。まじめにいいことやろうとして、たとえば太陽光のパネルを、畑を潰して接地している遠路がよくあるのだけど、それがいいことかと言われると、私は少なくともいいとは言えないと思います。
だから目的がどこにあるかを考えながらやっていく必要があるし・・・。

MC
あと2分です。最後に一言ずつ、おっしゃりたいことがあれば。まずTさん、いかがですか?

Tさん
そうですね、私はどんなであって企業も生き残って、ちゃんとやっているということは、社会の何らかの便益を満たしていると思うのです。で、私が社会インパクト投資を上場企業への投資で取り組もうと思った時に考えたことは、“いいところもあるけれど、悪いところもある”ということになると、やはりターゲットを決めていいところのインパクトに力を入れて、悪いところを少しでも落としていくということにフォーカスしていかなければいけないのだなあと思っています。

MC
時間がきてしまいました。Kさん、Hさんへの質問は次回取り上げます

続く

  • 2021-06-152021-06-15
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 3章(1)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

本日、6月16日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でのインパクト投資 3章 1回上

2021年5月12日

(このブログは毎週水曜日のお昼にクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
いよいよ第3シリーズです。シリーズ1では、インパクト投資をどう思うか、インパクトの実現と企業価値、アセットオーナーとの対話、企業との対話など全体をざっくりと話してきました。そして第2シリーズでは大きなトピックは2つ。まず長期に実現するインパクトを目指しているなら上場株のほうが向いているよねという話。インパクト投資はもともとプライベートエクイティなどで取り組まれていたと思いますが、将来実現する社会にポジティブなインパクトを企業が目指しているならば、手前で多少費用が掛かろうが、投資が終わるまで利益がでなくても、株価に影響はないだろう、例えば自分の投資期間が短いアセットオーナーでも株価に揺らぎがなければ投資できるよねという話です。それからウイグルやミャンマーのような状況の時投資家はどう考えるべきかについても話しました。さて今回のシリーズ4回では、インパクト投資でわりと取り上げられることが多い気候変動について取り上げてみたいと思います。伝統的なのでは井戸を掘るとか、ごみを減らす、資源を有効に使う、有害な素材を置き換えるとか、社会が急激に価値観を変えることがなければ、一定のアウトカムと収益を見込みやすいです。ただこれらのテーマは解決策が技術的に正しいのか、見極めるのが難しく判断に迷うという悩みもよく聞きます。この環境とか気候変動について、これまでの投資で、“いい取り組みをした”とか逆に“悪い状況なので良くしたい”とかそういった投資をしてきたか、その場合どのように考えられたかをお聞きしたいと思います。ではKさん。

Kさん
環境で最初に思ったのは、20年ぐらい前なのですけど、オランダのシェルに訪問したことがあって。それは北海で事故が起きた時で、環境団体に突き上げられていました。日本だと事故があったら経済的な影響とかが言われるのですが、オランダだと環境団体や社会から問われシェルもその対応に非常に悩んでいました。その時IRの方と夕食を挟んで話し込んだのですが非常に日本と違うと思いました。今は日本もそうなりつつあるのですが、社会へのインパクト、自然へのインパクトを考えていかなければならない社会になりつつあるのだと、20年ぐらい前に非常に思いました。

MC
そうですね、オランダの投資家がよくおっしゃっていたのは、オランダの投資家が環境への意識が高いのは、消費者の意識が高いから、投資先の企業が必ず影響を受けるから、意識をもっていないといけないということを聞きますよね。

Kさん
そうですね。今やっぱり、お客さんに好かれるためにどうするのかと考えた場合、自然破壊をしているような会社だと受け入れられないということです。日本でもかつてはチッソとか、水俣とかあったわけですが、それからずっと環境に対してはいい国だととらえられてきましたが、もう今はそうではないのじゃないかということを振り返らないといけないと思っています。

MC
ありがとうございます。次はHさん

Hさん
上場株での投資ということで話しているので、それを踏まえて話すと、我々が行っている投資は“値段”が付いているということだと思うのです。それは“みんなの認識と同じであってはダメ”ということです。ただ環境に対しいいことをしている企業だからいいということにはならないし、彼らがやっていることが過少に評価されているとか、現状の悪い状況が過剰に織り込まれていて、それが再評価される可能性があるとか、そういったものがないと投資にはならないということだと思うのです。
そういう中で環境についていつも気にしているのは“目標設定が変わると結果がかわる”ということです。CO2を30%削減するというのと、50%削減するというのではかかる投資も変わってくるし、頑張って50%削減するよりも30%にしておいたほうが企業価値としてはポジティブかもしれない。これはキャッシュフローの最大化という観点から見た話です。規制がでてくるとトップランナーを評価しがちですが、必ずしもトップランナーになることの経済価値が高いわけじゃない。規制とか、投資のバランスをよく考えて投資しないといけないといつも思っています。
環境ってどの会社も目標を設定していてわかりやすいのですけど、だから簡単というわけではなく見極めが大事だと思っています。

MC
つまりHさんのおっしゃっていることを理解してみますと、まず環境って、取り組むことで自社の収益にプラスになるということと、リスクに対する対応みたいなものと2つあり、その中で、30%削減、50%削減とか、つまりいいインフラを入れるとか製法を変えてCo2出さないとかだけじゃなく、レギュレーション的な目標があってそれにあわせないといけない。そしてそれが途中で変わってしまうと、ストラテジー的な問題、設備投資の失敗などといったことがでてくる・・・ということですね?

Hさん
そうです。それともうひとつ何か起こったときは悪いことは織り込まれているので、その織り込み具合はどうか・・・そういうことが投資で重要になるということです。たとえば石炭ですが、最近では石炭というアセットの価値はゼロとかマイナスと言われているのですが、それ本当にゼロだと考えていいの?ということを考えていく。つまり方向性が良いかどうかだけでなく、投資ってそれが企業価値にどれだけおりこまれているかということを判断するわけなので。

MC
わかります。レギュレーターが“2030年30%とか2050年ゼロ”とかいうと、それにあわせて計画をたてます。でもその計画が非現実的だったり、大きな投資をし始めてから途中でレギュレーターの目標が変更されてしまったら問題がありますし、石炭のケースもみんなが“価値はゼロだ”と言っていても、そのターゲットが変わればゼロじゃないかもしれない、投資家としてはそういったことを見抜いていかなければならないから、単に“気候変動に対応しているからいいよね”というシンプルな判断じゃないということですね?

Hさん
そうですね。

MC
あとトップランナーになることの経済価値についてですが、これは気候変動対応を積極的に事業としてやっている場合だと思いますが、たとえば電池や水素を作りますとか言っていても本当に作れるのかみたいな、そういうようなこともありますか?

Hさん
そうですね、例えばどの方式がデファクトになるかわからない時とか、自分たちがトップランナーだよといってみたとしても、その製品などが適応しなくなるかもしれないし、それで頑張りすぎているとまずいということです。環境を良くするためのツールを提供する会社と、環境をよくするために頑張る会社があって、そのどちらかによっても変わるのですが、ゴールが変わると頑張りすぎていないほうがいい場合もあります。そのように“ゴールが動く”こともあると意識しながら投資する必要があります。

MC
そうすると、Hさん自身もそのレギュレーションやゴールに対し、投資先企業の対応がそれで良いかどうか分析しなければならないし、それに対しアセットオーナーが同じような理解でないと“これいいことやってるじゃないか”と言って困ったりして・・・

Hさん
それすごくあります・・・。たとえばここ数か月の相場では、環境に良くない会社の株ってすごく上がっていると思うのですよ。短期的には。なんでかというと、環境に良くないものを作っていたりすると、新たな設備投資が発生せず、しかし経済が回復してくると、新たな供給がなく、需要があがるので、価格が上がり利益がでるため株価が上がっちゃったりする。そういうことをいつも考えないといけないのです。

MC
なるほど、よくわかります。ではTさん、お二人が言ったことについてご意見ありますか?

Tさん
いやもう、本当に、よくわかります。我々はESG投資とインパクト投資って隣の畑でオーバーラップもしているので、いつの間にか一緒くたにして話してしまう事もある思うのですが、一緒に話すといけない部分もあり。たとえば前回人権については、A民族とB民族で違う価値観を持っていたりして難しい・・・という話をしたと思います。それに対し、比較的クライメートとか環境問題は人類共通だよねって思ってはいたんですが、それでも良く考えれば、そうではないケース、良し悪しが簡単にはいえないケースがあるなと感じました。

続く

  • 2021-06-092021-06-09
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(6)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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上場株式でインパクト投資 2章 3回下

2021年5月5 日

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Tさん
インパクト投資的には各論で話すのが正解なのかなと思います。ひとつは、さっき言ったようにユニクロがウイグル調達をやめてその分を価格に乗っけますと言っても消費者がそれを受け入れてくれるなら企業価値が変わらない可能性もあり、それを見極めて投資家は提言していくことが必要なのではないかなあと思いました。

MC
たぶんアセットマネージャーはそういうことが判断できるよう、多くの情報がないといけないですよね。たとえば日本の消費者は全然気にしないかもしれないけど、ある地域は非常に反応すると。グローバルなアパレル産業であればどの地域の売り上げが大きくて、どこの地域の反応が自社の事業にとってインパクトがあるかは経営者も考えなければならないでしょうし、投資家も一緒に議論していくなら同じように理解しながら進むしかない

Kさん
程度問題というのはもちろんあると思うし、それによって食べていくことができない人がでてしまったら、経済的に、社会的に問題だと思うのでそこをどう捉えていくか、非常に悩んでいるところだと思います。悩みながら考えていくというのが一番重要で、企業として悩んでこういう結論になったということであれば、それに納得ができればそれでいいし、あるいは投資を止めればいいと、私はそう思っています。

MC
日本では導入されていないけれど、ユニクロやH&Mも対応していると思いますが、いくつかの国でモダンスレーバリーアクトなどが導入されていて、企業としても人権についてはどう対応するか宣言しモニターをする体制になっていると思います。(その法律の影響がある)地域に多く投資しているアセットマネージャーと、そうじゃないアセットマネージャーの間には、もしかしたら少し将来に対する見積もりの仕方に差が出るかもしれないでしょうか?

Tさん
そうお思います。でも今の話し、面白くて、たぶん同じユニクロコットンについても日本とヨーロッパの消費者で全然違う反応が出ると思うのです。ひょっとしたらヨーロッパの消費者は日本ほど寛容ではないかもしれない。H&Mにとって、当然ユニクロもですが中国も大きな市場だと思うのですが、たぶん既存のお客さん、社会におけるブランドなどへの影響を考えているのでしょうね。

Kさん
やっぱり企業って、従業員がいて社会があって、そのバックグラウンドにある程度しばられていくでしょうし、それでいいのかなと思っています。

Hさん
ぼくからすると、企業がその考え方をしっかり説明しているということが大事で、そこの部分で会社のカルチャーとかがわかってくるじゃないですか。彼らがもともともっている長期のビジョンがあって、その中でいろいろなことが起こってくる、それで一つ一つ会社と話し合いながら“あ、こういう時この会社はこう考える会社なのだ”ってわかってくると思うんですよ。ぼくは一個一個の事象でどう判断するかまでは重視していなくて、その時どう考えて行ったかの積み重ねをトラックしていくことかなと思っています。

MC
そうですね。つまり企業とアセットマネージャーで向かい合った時、企業がどう思っているかを聞いて、考えが欠如していると思ったら、きちんと考えるように促していこうと思いますか?

Hさん
というか、そういう方針がない会社にはもともと投資しないわけです。普通はそういう考え方を確認してから投資するわけで・・・そういう考え方を持たなきゃいけないのですよとか、資本コスト考えなくちゃいけないのですよとか説明しなくていい会社に投資したいなと

MC
(笑)そうですね。前シリーズからつねにHさんは“いい会社”に投資するという方針でしたね。Kさんとかはどうですか。Kさんの投資方針はどちらかというと、できていない企業に教育する側だったかなと

Kさん
やっぱり企業も、国だって昔は奴隷貿易だってやっていたんですから、ずっと変わってきたと思うんです。まだまだ変わって行かなきゃいけないことはあると思いますし、それが変わっていけるように私たちは支援していけたらと思っています。

Tさん
これ難しいと思うのですよ。ともすればESG投資とまざってしまうし、ユニバーサルオーナーのパッシブの人とアクティブの人でいうこともちがうでしょうし。それぞれの立場によってわけて話していくステージに社会全体がきているように思います。これに比べGとかクライメートなどのほうがわかりやすいのかも。

MC
そうですね。GとEはだいぶ、日本と世界の違いも狭まってきたし、マーケット参加者の中でコンセンサスも得やすくなってきたと思いますが、Sはいまでも難しいかも。

Tさん
先行研究でみても、Sへのエンゲージメントは、ダウンサイドリスクを抑えるというか、なかなか実効性のある数値が見えにくいというのがあるようで、それって社会が違ったり、立場による違いがあるからだと思うのですが

Hさん
そもそも、コレクティブエンゲージメントで充分な議決権を持つ株主がまとまって社会とか環境をやったケースって過去ないと思うのですよ。

MC
環境はあるのじゃないのですかね?

Hさん
環境でもまとまって提案できて実際に達成されたことってほとんどないと思うのですけど、こういうことができたのは英国などでもガバナンスの極めて限られたイシューだけだと思うのです。社会なんかだと全員の意識を一致させるのが難しいからだと思うのです。

MC
インパクト投資のテーマでもSに関わる事はまだ多くはないかもしれませんね。

Kさん
でもコンゴの問題とかやりやすかったかも。他には資源とか。

MC
いつもきてくださっている方からご質問がきました。ミャンマーについてはどう思いますか?もし投資先が関係していてご意見があれば。進出しているとか従業員の安全とか。

Tさん
ちょっと思い当たらないのですが、同じコンテキストでいうと現状の軍政権下のミャンマーで事業をやっていて・・・ということですよね。

MC
そうですね、海外であった議論はまず収益が軍政権に行くことをどう考えるか、または現地子会社で操業を続ける場合従業員の安全はとか。一方ミャンマーの人々の生活に影響がないように、その部分は継続して操業するという会社もありましたね。

Tさん
今エスカレートしている状況に対してぼくらが何をできるかということがありますが、こうなる可能性がある国・地域に投資をしてオペレーションをするのかは初期的にも考えておかなければならないんですよね。

MC
そうですね、リスクをどう考えるかという問題があります。多くのインパクト投資と言われているものは途上国とか、新興国で行われている事業も多いと思うので、何かあった時にビビッドに反応できるアンテナが必要かも。

Tさん
そうですね・・・これはインパクト投資ではなく、純投資としては、リスクを考える上で、初期的にミャンマーはコンシャスになると思いますけれど・・・マネージャーとしてのリスク管理上考えておくべきだと思ったと思います。でもわからないですね。すごく自分たちが狙っている社会的課題を解決する企業がいて、そこがミャンマーから物をたくさん仕入れていて、その利益が軍部を潤わしていると、こうなってきた時どうするのかという議論ですよね。それはどうなのだろうなあ・・・。マネージャーとして声を上げるべきかということか。

Kさん
ミャンマーについては、ミャンマーに対するリスクをどうとるのかということは(企業の経営者に)聞いてみるべきだと思っています。経営者は何らかの判断をしていると思うので、それが納得できるならそれでいいと思います。でも逃げるのはよくないかなと。

Hさん
ミャンマーを含めて、今なら“投資しない”とか言えるかもしれないけど、昔からずっと投資している会社さんがあった時、その人たちがどう考え、今どうオペレーションしているかを常にコミュニケーションしながら理解しあって、その会社のカルチャーを含めて理解していくということだと思うのですよね。一個一個どう対応すべきかという答えがあんまりなくて、“この会社だからこういうふうに対応しているのだな”というのを一つ一つ納得していくというのが僕のスタンスです。

Tさん
今日は言いたいことが大体言えたと思います。ただ投資をするうえでフィロソフィーとかプリンシパルとか必要だと思うけど、最後は受託者責任が果たせるかだと思うので、その投資判断に自分のお金がかけられるかどうかが大事だと思うのです。よくグリーンウオッシュとかレインボーウオッシュとかいわれますけど、マネージャーが自分のお金を入れているかどうかが試金石な気がして。

MC
ありがとうございました。これでシリーズ2を終わりにします。来週からはシリーズ3です。またクラブハウスでお会いしましょう。

続く

  • 2021-06-082021-06-08
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(5)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、6月9日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第3回上

2021年5月5日

(このブログは毎週水曜日のクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
今日は、シリーズ2章の最終回として、第2回の続き、人権について話してみたいと思います。前回は一人足りなかったので、“閑話休題”的にこれまでの振り返りをしました。ですから二週間たちましたが、あれからどうですか、少し時間がたって、ウイグルのユニクロに投資していたら投資家としてどう考えたか・・・ご意見をお聞きできますか?

Tさん
難しい問題ですよね。2週間考えていたのですけど、極めてこの会のタイトルである“上場株でのインパクト投資”に対するチャレンジというか、未公開ステージやチャリティーなど、イシュードリブンで投資されている小さいところなどだとこういう問題は起きないと思うのですよ。一方社会的インパクトの大きさなどで“上場株で投資すべき”と私は思ってきたので、これは上場株ならではの課題だと感じます。インパクト投資を定義する時、アウトカムとしっかり結びつけて、リターンに結び付けて、KPIを管理していくという手法が前提となるなかで、環境なんかですとやりやすいけど人権問題はそもそもKPIたてづらい。
そこにインパクト投資の観点でコメントしていいのか。ただ最終的には自分たちが投資をするにあたり目指していたありたい未来、成立してほしいアウトカムに対し妨げるものではないのかどうか。KPIを例えばSASBみたいなもので見ていた時、それを妨げるかどうかという視点で投資をしていけば良いのじゃないかと思っていて、もともとのアウトカムを達成させるエンゲージメントを続け、新たに出てきた問題がそれを損ねるのかどうかにフォーカスしていくのがインパクト投資としては正しいのではないかと、いまいまは思っています。

MC
ありがとうございます。続けて聞いていきましょう。Kさんはいかがですか?

Kさん
私は実はTさんがおっしゃったことに異論があって、はじめに設定したものに固執していていいのだろうかと思ったのです。世の中って変わっていってコロナ・ウイルスが発生したり隕石が飛んできたり、いろいろ変わっていく中で、自分の立場も変わっていくものではないかと感じています。最初に設定したものも大事だと思うし、お客様にも約束もしているわけなので、新たな課題が出てきた時どうしていくか、ファンドマネージャーとして考えていかざるを得ないと思っています。そうした中で自分の立ち位置はどうなのか、人権問題についてこういう立ち位置をとりますよということについて、考え直す必要があるのだと思います。そしてクライアントとはその都度議論をしていく必要があると思っています。そうでないと、何か起きた時にクライアントからの突き上げあるいは環境団体からの突き上げもあるかもしれない。そういう時“私たちはこうしているのだ”ということをしっかり言えないとまずいかなと思います。

MC
ありがとうございます。ではHさんお願いします。

Hさん
うーん、ファーストリテーリングについていうなら、人権ということについて彼らはもうすでにしっかりとした理念があり、目標設定を行ない、ひとつひとつの成果を確認しながら実行していると思っています。ウイグルだけじゃなく、人権の問題、女性の権利などいろいろなことをいろいろな地域で違ったレベルでおきていて、それらひとつひとつに対ししっかりと取り組みをしていると思います。またそれらを投資家だけでなく消費者にもかわるように、店頭にも置いてある“服の力”という書物で説明しています。彼らが考えるインパクトとはとても長期的だと思います。その途上でウイグルのようなことが出てきた時、しっかり考えた上でディスクロし議論を深めていくのだと思います。

MC
ありがとうございます。三人とも二週間前おっしゃったことより、とてもよくわかりました。

Tさん
(苦笑)あのKさんがおっしゃったように、そもそもぼくたちが投資先に期待していた社会インパクトを強めるとともに、ネガティブなことが出てきているのであれば、そのネガティブな面を少しでも緩和するというのは最低限やるべきことだと思うのですよね。ただいわゆるESG投資という一つの流れが出てきていて、その中、上場株でインパクトをやっていこうという時に、このクラブハウスでのシリーズを始めてからすこしづつ確信が強まっているのですけど、ESG投資ってみんなが共通してもてる“ありたい社会”とかありたい未来がある程度明確に入っていると感じていて、でも僕たちがマンデートをもっていて、インパクト投資を上場株でやっていこうとする時は、“もう少しナローダウンした個別のありたい未来”があるように思うのです。それを損ねない限りは、目くじらをたてずに実質的に判断すれば良いのじゃないかと・・・たとえば今回のウイグルではH&Mは明確にウイグル批判をしているみたいなのですよね。それに対しユニクロさんは自分たちのサプライチェーンマネジメント上問題は感じていないと言っていて、ぼくもユニクロの姿勢は正しいのではないかと思っているところがあります。

MC
あの・・・この2つの会社をどういう人が持っているかにもよると思うのですけど、もしこれらの会社に社会におけるインパクトなどにフォーカスして投資している人がいたとして、前回まで話してきたことから考えると、最近のインパクト投資と言われているものがアセットオーナーとアセットマネージャーの間の理解とかを高めている・・・という話をしてきたじゃないですか?だからアセットオーナーが誰かと言うのは大きいのじゃないかと思います。人権の問題はメーケット全体で答えも一つにならない時があると思います。世の中で利用可能な情報も均質化してませし、地域によっては同じ事象が即座に問題視されたり、他の地域からは他の見え方がなされていたりということもあると思います。
そうするとアセットマネージャーはそういうコミュニケーションをおのずとしなければならないと言えるのではないでしょうか。

Tさん
そうだと思います

Hさん
ただアセットオーナーも皆それぞれ違います。従って、その場その場でそれぞれに合わせていると、自分たちの運用の理念が壊れてしまう。つまり軸がなくなってしまう。したがって、必ずしも合わせられないと思います。大きな運用会社の場合、そもそも運用哲学自体が大まかなものになっているのである程度あわせるということをしていけると思いますが、ブティックになればなるほど自分たちの運用哲学が大事です。また特に、こういう特殊な状況にスペシフィックに対応しなければならない場合は、アセットオーナーの意見はみんな違い、先ほどのESGのところで最大公約数という話がでましたが、最大公約数に合わせることはできるかもしれませんが、運用の肝の部分になると難しい部分があります。

Tさん
そうですよね。ゆえに最初の“ありたい未来”合わせがすごく大切なのかなと思います。

MCさん
あわせるというか、コミュニケーションが必要なのでは。この問題って人権問題だけじゃなくて、たとえばいざ株主提案などが増え、アセットマネージャー、アセットオーナーで意見を合わせなければならない場面って増えていると思うのですね。

Tさん
結構考えたんですよ、二週間。かみさんと娘と、ご近所の同じマンションの奥さんに聞いたんですよ。ウイグルの綿をユニクロが使っていたら買うのをやめますか?って。そしたら“別に構わない。買います”というのです。“でもひどいことをしているかもしれないのですよ。ところでユニクロが人権を優先してウイグルの綿を使うのをやめて値段があがったらどうします?”って聞いたら“それは良い事だし、少しの値段上昇ならそれでも買います”って。

続く

  • 2021-05-252021-06-08
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(幕間)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、5月26日は時間を30分遅らせて、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 幕間

2021年4月28 日 12:00~ 12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
今日は、いつものメンバーが一人いないので、前回の続きは次回にして、ちょっと振り返りをしてみたいと思います。前シリーズでは1回目で「インパクト投資をどう思うか」という点をご自身の投資の考え方とリンクさせて語っていただきました。Tさんは社会の問題とその解決を投資テーマとして取り上げてきた、ということでした。今日いないHさんは「一社一社のテーマを拾っていくと、その中で社会をよくするとかインパクトとなることがある」ということでした。ですから、投資をする前にそのテーマを選んでしまうわけではないということでしたね。Kさんは「ネガティブなインパクトを避けることに取り組んできた」とおっしゃったと思います。では、ここまで過去6回話してきて、振り返ってみてどうでしょう。新たに思ったことなどありますか?

Tさん
いや、ここで皆さんと話させていただいて、投資に向き合う姿勢を見つめ直すようなプロセスになったなあと思って、ありがたく思います。そういう意味では変わらないのですが、少しクリアになってきたのは、長期のスパンの個別の企業にベッドしていく投資というのは、社会の強い流れのようなものにもベッドしていて、その流れの中で変化を加速させていくと考えていたのですが、改めて思ったのは、様々な「あったらいい未来」、そこでリターンが得られる投資がある中で、「ありたい未来」を共有できる人と取り組むという点が重要なのかなと思いました。ここでの話を最近はアセットオーナーさんと話すときもちょっと引用したりして。そうすると「自分が思っている社会の課題意識は共有できるが、アセットオーナーとしてトッププライオリティで取り組むべきかどうか考えている」というようなお話を聞けたりして。

MC
そうですね。以前はそういうことは多くなかったのじゃないかと思いますが、最近のながれでは社会の課題も、目指すべきところをアセットオーナーと話すようになったというのはよく聞きますよね。特にこのインパクト投資では。ではKさん

Kさん
そうですね。やっぱり共通のゴールを目指せる人と走るというのが、オーナーもマネージャーも安心してウイン・ウインでできると思うんです。だからお互い考えていることをクリアにして、共通のゴールを目指していくのが健全な姿だと思います。今までそういう対話というのは、あまりなかったと思うのです。リターンが選べればいいじゃん、過去3年間で一番リターンが多かったところに預ける・・・みたいな。でも過去が未来につながるわけじゃないので、将来をこう考えていますよというのを一緒に考えられるほうが。
それと投資先に対して、ESGとインパクトってだいぶ違うなと思いました。ESGはいいところに投資しようみたいな感じですが、インパクトは応援できるところに投資しますっていうことなんだなと思うようになりました。

MC
ありがとうございます。そうなんですよね。最近の流れで、重要なのはアセットオーナーとアセットマネージャーで共通の未来をみていくというところかなと。
ただその後、第一シリーズの最終回で、ではアセットマネージャーが企業に対し実際変化を起こさせていくかアセットオーナーに説明する際、「俺が企業をこうさせた」という、「企業にインパクトを起こさせているのは自分だ」という「俺させ」詐欺が出現するのを心配されていたTさんに、ご自身が企業に起こさせている変化との違いについて、お伺いできますでしょうか。

Tさん
いやその・・・言葉尻をとらえてきますねー。いや過去にやってきたエンゲージメントでも、増配をして株価があがった会社があって、その企業の人と話してたんですが、相手の方が“あの増配は俺がさせたんだ”、とおっしゃっている投資家の方がいて・・・なんだかなあと思っていると。見て明らかなテーマは、共同エンゲージメントではないけれど、いろいろな人が言うことによって会社も納得して変化が起きる・・・でもこれって誰が働きかけたかとか、特定するのは難しいと思うのです。
やっぱりその因果関係は、規模が小さくてインパクトが特定されていて、“株価”というのがつかない投資の方が分かりやすい・・・逆に言えばエンゲージメントの企業が実現するインパクトとの因果関係は見えにくいなあと。これから「俺させ」インパクトって増えそうで・・・特にクライメート系は、汎用性が高いのでインパクトにどう本当に関わっていけるのか。

MCさん
ありがとうございます。もう一つ。シリーズ1の3回目でアセットオーナーにどう説明しているか、という議論の時Kさんが、アセットオーナーの関与について面白いコメントをされていました。今の話でもあるように“俺させ”詐欺を見抜くためにはある程度アセットオーナーも関与してもらうしかないように思うんですけど、Kさんあの時“アセットオーナーはあまり関与しなくてもいいと思う、アセットマネージャーを信じてくれれば”というようなコメントをされていましたね

Kさん
いや、あれは、アセットオーナーがいろいろ考えているのであれば、直接自分でエンゲージメントすればいいという意味で・・でも日本の場合なかなかできないと思います。公的年金とか・・・その場合はアセットマネージャーを信じて預ければいいと思うのです。あんまり箸の上げ下げまで突っ込んでくるのはおかしいんじゃないかなと思ったのです。たしかに“俺させ”詐欺は問題かもしれないけれど、悩ましいですね。“増配したと言ってもあなただけが言ったわけじゃないでしょ”っていうのは、みな分かってることですよね。でも“私も言ったんです”って言わないと・・・その人の時間はなんだったの?ということになるし、アセットマネージャーが言うインセンティブが無くなったら困るし・・・。言ってもいいんじゃないかなと。

Tさん
これってアセット・オーナーとアセットマネージャーが共に成熟していかなければならないところなのでしょうけれど、アセットマネージャーの何を評価するのか・・・インパクト投資でインパクトを起こすような企業をみつける目利き力なのか、インパクトを実現するエンゲージメント力なのか。

Kさん
でも自分がアセットオーナーだったら、何をアセットマネージャーに聞けばいいんだろうか。たとえばたまたま配当上がったかもしれないけど、“この会社がなぜ配当が上がる必要があると思いましたか”とか聞いて、答えられないようなアセットマネージャーだったら、やっぱりそれは「俺させ詐欺」かな。その会社が今増配することが将来価値にちゃんと貢献するとか言えればいいのかも。

MC
それは正しい気がします。ただインパクト投資の場合、インパクトのシナリオ、達成したい価値を持っているのがアセットオーナーであるかどうかが重要で、その場合何人のアセットマネージャーが企業に対し同じエンゲージメントしてくれてもいいのかもしれない。アセットマネージャー側としては、自分により多く頼ってくれた方が、インパクトの実現がしやすいと説明しないといけないのかなと。で、アセットオーナーの問題は、みんなが「俺させ詐欺」で誰も結局ちゃんとエンゲージメントしていなくて、インパクトが起きない時なのかな。

Tさん
でもみんなが言っても結果がでなかったらどっちでもいいのかも。

Kさん
一つ言いたいのは、一人の力よりみんなの力だと思うんです。「俺させ詐欺」の人もみんなで・・・。

MC
ではもうひとつ。第2シリーズが始まってから、“上場株投資の方がインパクト投資という意味ではやりやすい”という意見が出たと思います。Hさんから、将来のインパクトがしっかり示せれていれば、その実現までに費用がかかって利益がでなくても株価には影響がないはずだ、だからインパクト投資のような期間のかかることに対して、上場株のほうが投資しやすい理由だということでした。そうしたらKさんから“理論的にはそうだけど、現在の企業の開示からはそれほどうまくいくとは思えず、市場の価格発見機能はそれほどワークしないだろう、という話がありました。とはいってもそのような企業の変化はパフォーマンスの源泉だ、という意見がありました。Kさん、今はどう思いますか?

Kさん
うん・・上場企業でも非上場でも企業価値を図ることはできると思いますが、開示だけを見ているわけではないというのもありますし・・・。アクティブマネージャーとしては・・・開示だけで判断するわけではないというか。

MC
お気持ちはわからないわけではないのですが、一応市場と開示の関係としましては、株価が将来の企業価値を反映するよう開示しろと言わないといけないのでは

Tさん
ぼくはマーケット教なので・・・ある程度時間がかかれば企業価値は発見されていくんじゃないでしょうか。だからぼくは上場株市場って尊敬しているんですけど。ただコンピュテンシーモデルじゃないですけど、今まで何にもしてなかった企業がいきなり“開示”しても市場はそれを信じないと思うんですよ。Kさんが仰っているのはそういう意味では。
ただ一方では前倒しで節操なく価格に折り込まれることもあると思うし・・・。ここのところいろいろなセミナーでていて、セルサイドアナリストの方がESGレーティングを一生懸命話してくれるんですが、ちょっと前まで四半期のEPSについて話していたのに・・・。MSCIの指数に入れるのはこの企業です、なんて強調して。これが上場株のまずいところかなと。本質な価値が受給要因で動いちゃう。

MC
Kさんの話に言いそびれたんですが、前回までの議論では、上場株の良さは、ずっと株価が将来の価値を反映していれば、アセットオーナーの投資期間とあっていなくても投資できる、インパクト実現前でも株価が動いていなければアセットオーナーはイグジットできるということだったかと思いますがどうでしょう。変な話アセットオーナー一人一人の投資期間がすごく短くても。

Kさん
それはそうかもしれない。だけれど、今の株価が将来の価値を反映している“だけ”ではつまらない。それを変える力があるのがインパクト投資の投資家で、その期待があるからそのマネージャーをえらぶんじゃないでしょうか。

MC
ありがとうございます。では閑話休題の“振り返り”はこれくらいで。次回はまた、人権のところに戻りましょう。

続く

  • 2021-05-102021-05-10
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(4)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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次回、5月12日はメンバー都合により時間を30分送らせて、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第二回下

2021年4月21日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Hさん
ぼくはちょっと違います。(それまでのやりとりとは<ブログ11のURL>参照)企業の経営者は個人的な考えがあったとしても、企業のCEOとしての発言は企業に対してのものであると考えています。ウイグルの話とか、ジョージアの話とか何が正しいかが情報によって変わってしまう場合もあると思うので、リスクをとって話してしまっていいのかどうか・・・話さなくて済むのであれば話さなくて良いのじゃないかと思います。でもそこで何か対応しなければ、たとえばジョージアで工場の黒人の方が多く働いていて影響するとか、そういうダメージをどうやってコントロールするかということがあると思うので、あくまで自社の企業価値に対するインパクトを考えて発言するものだと思っています。その中でを自分たちで状況分析をすることが重要だと思います。そうすれば投資家は安心するのじゃないかと。

MC
投資家としては、投資先企業がこういうことに直面した時どう振る舞うべきだと思います?

Hさん
経営者にこちらのほうからプッシュすべきだと? たとえばファーストリテーリングについて柳井さんに何かいうべきだと?

MC
あるいは状況によると思いますが、たとえば、発言しなかったことによって業績へのインパクトなり将来への影響について考えさせるとか。

Hさん
発言してもしなくても、なんらかのインパクトがあると思いますけど。柳井さんのケースはそこに一線を張って喋らないようとしているのは経営者としての見識なんじゃないでしょうか。ファーストリテーリング一社で出来ることの限界も踏まえる必要があると思います。自分たちの中では差別的なことはしないとかできると思いますが、国の体制について何かできるかというとそうではないと思いますけど。

MC
確かにいろいろと難しい地域もあるかもしれませんが・・・。

Hさん
中国内では我々が持っているイメージと全く異なるイメージで捉えているかもしれない。ファーストリテーリングなどは事業をしているので我々がニュースで得ている情報処理もより現地の情報を持っているかもしれないし、それも踏まえて何が正しい情報で今世間の反応がどうなっているのかを判断した上で喋事を判断しなければならない。

MC
・・・でも本当に事業のことだけを考えた場合、中国内外の顧客のことを考えながら発言しなければいけない時もあるのでは。実際批判されたわけですしね。ではKさん

Kさん
投資家側の視点からいくと、ぼくはどちらでもいいかなと思います。投資家はポートフォリオを組んでいて、環境のことばかりやっている会社もあってもいいし、社会のことに取り組んでいる会社があってもいい、そういう会社が倒産していくとか悪い影響を与えることだけを避けてくれればいいかなと。全体的にはある程度リターンが得られ、そういったことにも考慮したポートフォリオが組めればいいかなと思っています。すべての会社が素晴らしい会社である必要はないのかもしれない。あとダノンの件なんかでも、会社がそうすることによってこういうメリットがありますよと、また社会にもメリットがありますよと道筋をしっかり示せなかったからいけないんじゃないかなと思っています。

MC
はい、ありがとうございます。もちろん地域によって消費者の反応はものすごく違うと思うのですが、前回からみなさんがおっしゃってきたように、将来にわたって消費者がどう思っているかを投資家が読み取り、それが株価に反映していくとなると、発言するかどうかはともかくとして、CEOに影響をきちんとウオッチして欲しいと、という投資家から求めるということはないのですか?

Kさん
投資家から求めるというより、投資をする以上開示して欲しいと思います。そして納得すれば投資家は投資するし・・・、ということだと思います。

Tさん
あの、ご質問は2つあって、ソーシャルインパクトのプロフィットをどう考えるんだというのもあると思うのですね。やっぱりESGテーマなるものを考慮しながら投資を行なっていくっていうのは、まさに今課題提起してもらったようなことを考えていくと、自分が投資を通じてこのインパクトを強化するお手伝いをしたい、それによってリターンを底上げするというロジックを持つべきだと思いますので、今の例に照らし合わせると、ウイルグルの事件に直面している企業があたえるソーシャルインパクトってなんだと考えた時、そこに注目して投資していたら、柳井さんの判断はインパクトを強めるのか、弱めるのかという軸で判断するべきですよね・・・

MC
そうです。何か起こった時少なくとも投資家として、経営者がこの問題を自社の事業に対しどう思っているかは聞くべきかと。そして対応をきちんとすれば企業価値もさらに上がるかもしれないし。

Tさん
そうですね・・そうなのです。ウイグルは難しいのですけど・・・。この市場から撤退しましょう、他に何か探しましょうとか理解し、一緒に考えていくのが仕事なのだろうなと思います。

ゲスト
なかなか、悩ましい問題なのでスパッとは割り切れないとおもうのですよ。ウイグルという市場から撤退しましょうといえば、そこで雇用機会を与えている点についてはどう考えるのかとかね。ウイグルの工場の中ではちゃんと人権を守っているという言い分もあるでしょう。だけど外に対して傍観者でいいのかとか。Hさんが言っていたみたいに、個人として発言したのか法人として発言したのかという問題なのだけど、個人として言ったってインパクトはないからそれはさておき、法人として発言する時、取締役会決議をとるのかとか。具体的なプロセスを考えると難しい。ジョージア州のデルタやコカコーラは発言前に取締役会決議をしています。だから人権問題はユニバーサルバリューだと考えて発言した方がいいという考え方もあるけれど、たとえばウォルマートが銃を自社の店では売らないと決断したのだけどそうすると銃賛成者はウォルマートでの買い物を控えるようになり、逆に民主党はたくさん買うとか意見が割れるものと割れないものというテーマがあります。状況によって変わるので原則を言いづらいかもしれないけど、少なくとも問題意識と何かあった時のプロセスを企業側も、投資家側も持っているべきかと。そして最後はフィデューシャル・デューティをどう考えるかという問題になってくると思います。社会的問題とリターンをどのようにバランスさせるかをあらかじめ言わないといけないでしょうし。まあ個別具体的に考えていくしかないと思っていますが。

MC
はい、ありがとうございます。やっぱり私としては、興味深いのは前回までみなさんがお話しされていたことと、整合しているかなんですね。ですので、仮にCEO“個人で”といって発言しても、報道では会社と切り離せませんから株価に影響したりするでしょう。そうするとみなさんも顧客との説明責任があるでしょうから、何らかのことをする必要があると思うのですね。また人権についてですが、上場企業は自社のポリシーを発表するように促されています。こういう事態の時のためだと思うのですが、企業側も日常的に言っていたことと何か起きた時に違うことをしていないか、違うことをしていれば、短期的な問題は気にしないとはいえ、なんらかのネガティブなインパクトがあるでしょう・・・

Kさん
我々がいうインパクトって、もうちょっと具体的なもので、今日のってソーシャルインパクトみたいなものが多いのですが、その部分って思想とか考え方みたいな影響すると思うので、ぼくらは考え方みたいなものには投資してないのですよ。

MC
いや、顧客の反応だと思うのですよね。その企業のフィロソフィーとかじゃなくて、あくまでも顧客の反応、収益の問題が問われているインパクトだと思うのですよね。

Kさん
そうなのですけど。そこのところについてウイグルのことが良い悪いとか、そういうことについては投資してないです。

MC
もちろんそうでしょう。

ゲスト
他にも社会に対するインパクトとしては、従業員のやる気とか、働きがい、プライドに繋がるケースもあります。

MC
それも同じで、思想をいいと思うか悪いとおもうかではなく、事業に影響があるかどうかなんですよね。インパクト投資、基本的に同じだと思います。思想ではなく。残念ながら時間です。一週間考えて来週もまたここからスタートしましょう!

続く

  • 2021-04-282021-04-28
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(3)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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次回、5月5日は時間を変えて夜8時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第二回上

2021年4月21日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
今日はゲストがいます。人呼んで、“プライベート・エクイティからの刺客”です。
前回、まあそうはいっても確実に短期では株価は揺れて、企業が情報発信がうまくできなくて株価が割安だったりして、その間にオーナーの投資機関がくるかもしれない。つまり答えはないよねというような話をしていました。Hさん前回最後にコメントをされている間に時間が来たと思いますが、続きのコメントとかありますか?

Hさん
はい、その前に前回最後にそういう話をした背景として、上場株と、プライベートエクイティの違いをしていたのでそこを加えて話したいと思います。
上場株の取引は、プロ野球の選手のトレードみたいなものだと思うのです。良い“買い物”だったかどうかはその後数年間の選手の活躍で決まるわけで、既に年俸とか前の球団のものがわかっているので、べらぼうな数字はつきません。非上場の投資はドラフトのようなもので、まだプロ野球で活躍していないわけですから、活躍できるかどうかが価値判断となり、活躍できればいいけれどできなかったら投資価値がゼロになってしまうということだと思います。これをインパクト投資に置き換えると、その企業が既に上場していて社会的に認められている場合であれば、インパクトを起こすと考える投資の判断が正しければ必ずプラスになると思います。逆に既に活動しているので、そこで起きるインパクトが投資家の期待を上回る必要があるということかなと思います。そして前回最後に話題になった長期にはポジティブだけど短期にはぶれてネガティブになるかもということについては、プロ野球選手で例えればひじを壊しているピッチャーみたいなもので、治療で休めば一年間棒に振るかもしれないけれど、そのまま投げていれば年々成績は落ちていくかもしれない。そういう場合今年15勝していて、手術をして、リハビリとしたらまた同じように投げられるだろう、手術をするかどうか、どちらが価値が高いですかということだと思うのです。正しいインパクトがあるとわかっているとき、それをしないのは手術をしないで投げさせていることと同じです。
野球選手の場合は選手寿命がありますが、企業価値の場合はゴーイングコンサーンベースで考えれば、永続的に存在するということで考えると、通常は将来につながる判断がマイナスに寄与することはない、とぼくは思っています。

MC
ありがとうございます。つまりまあ、前回最後のほうで話していましたけれど、将来の企業価値をみて株価が適正なところで動いていれば、アセットオーナーの投資期間が短かったとしても、そこでイグジットして出ていくわけですから、問題はないでしょうということなのかなと思っています。では今日のトピックに行きましょう。

ゲスト
こんにちは。私はキャリアが証券アナリストからはじまり、投資銀行、バイアウトファンド、そのあとベンチャーキャピタルをやって現在にいたります。インパクト投資を考えると奥深いなあと思います。

MC
ありがとうございます。では今日、この3名のアクティブマネージャーのみなさんに質問をしてもらいます。インパクト投資で投資している最中に・・・あなたならどうする?

ゲスト
今日の話をもらってから色々考えていたんですけど、最近雑誌をみて思いつきました。
ポジティブインパクトを社会と企業価値に与えるということでぼやっと理解しているのですが、それでもそれでもなかなか悩ましいことが起きています。ひとつはウイグル問題。ファーストリテイリング、良品計画、H&Mの問題があります。もうひとつ先月ジョージア州で投票制限法というのが可決しました。身元が不明確な人は投票できないというものです。ジョージア州は保守党が強いのですが、マーチンルーサーキング牧師の公民権運動の州です。一方でコカ・コーラとかデルタとかが入っており、それらのCEOがこういう法律はよくないという発言をしています。会社のCEOがそういうことを発言していいのかと。柳井さんは逆にウイグルで関与しない、中立を保つのだといって批判されました。あとマルチステークホルダーを貫くのだといったダノンのCEOがアクティビストに解任されたり。というようなことが起きていると思うのですが2つあって、社会に対しいいことを求めて居るとき政治的スタンスを企業が採るのはどう考えるのか、もうひとつはソーシャルインパクトがポジティブインパクトだということとプロフィットって状況によってトレードオフの関係になる、そういう時投資家はどういうスタンスをとるべきなのか?どういう風にスタンスを、どういう風に原則論を打ち耐えて対話していくのか・・・これが質問です

MC
では今の質問、1つ目の企業はどう対応すべきか、2つめ投資家はどう考えるべきか? インパクト投資を考えるものとして、現在のウイグルのようなことに対しCEOが発言をすれば、あるいはウイグルでの生産をやめようというと短期的にはインパクトがあるでしょう。これらをどう考えるかについて意見をお聞きしていきたいと思います。ではTさん

Tさん
うーん。難しいですね。うーん。とても難しいんですけど、投資をやる立場の人間として投資先の企業のCEOに何を言ってもらいたいかというという観点で答えるべきなんだと思いますね・・・・たとえばダノンの社長が個人としてどういう哲学を持っていらっしゃるかは別として、企業の経営者としての発言は企業のサービス・プロダクト、社員に関するものであるべきだと思うんです・・・例えば反対して、不買者がふえてしまうか、賛同して買ってくれる人がふえてくれる・・・とか。そこを総合して判断して欲しい・・答えになってないですね。もう少し考えさせてください

つづく

  • 2021-04-232021-04-23
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、4月28日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第一回下

2021年4月14日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
同じインパクトを目指している企業の中で、どの企業がきちんとそれを達成できるか見抜かないといけない、企業の側は、しっかり発信できなければならないという話をしてきましたが、Kさんはどう思われますか?

Hさん 
 …難しい話だと思いますが、私はインパクトの方向が投資家と企業で一致している場合には、それに対応する事で短期的な収益が落ち込んでも決して株価はネガティブに反映しないと思っています。株価に関しては、利益が仮に半減しても、将来的に必要な方向に向かうための投資であれば、それによって株価が下がると言うものではないと思います。たとえば再生可能エネルギーに投資を行い石炭火力を止めていきますよという会社は、当然短期的に利益はおちます。しかし元々の株価を考えた時に、石炭火力や原子力なんかがあって、それをどのように投資家がバリュエーションに入れ込んでいるかということで、将来的に損失が出ると考えるのであれば短期的に利益を上げていても評価されないわけです。つまり、短期のPLが全てではないと思います。どれくらいの時期にそれをクローズし、どれくらいのコストがカカっているか、通常企業価値を計算する時それらもろもろを入れて計算しているはずです。したがって、もし再生可能エネルギーに投資しなければ、20年後、30年後にどんな風な姿になっているかの過程をもっているはずです。それをもって企業と対話して、その時これをやることが企業価値の向上につながる、ということが投資家に確認されるとその投資をやる意味があると言うことだと思うのです

MC
すごくオーソドックスな言い方ですが、イギリスのIRの人なんかが言っていたのですが、自社の今後の成長などを予想して、そこから本日の理論株価を出し、その理論株価から本日の株価が当然低くても悪いのですが、高くても悪いのだと。投資家の期待を実態以上にあげたらいけない、だから自分たちの理論株価からずれていたら、その分何か情報が足りないんだということで情報発信をしているという言い方をしていた人があって、たしかに長期の収益モデルから考えた今日の理論株価が投資家と企業の間でずれないようにやっていくのが、正しいような気がしますよね。

Tさん
それ、つねに投資先の経営者の方に同じことを言っています。

MC
で、そのうえでさっきKさんがいっていたことですが、割安だから買うとして、長期投資かとして、その次は“ちゃんと情報発信しなさい”とエンゲージメントをする、とそういうことではないのでしょうか。

Kさん
情報発信に関しては、やはり日本企業は得意ではないと思っているので、最近だと統合レポートの書き方、みたいなものがたくさん出てきているけれど、とにかく発信すると言うことが大事

MC
そう言う企業にあったことありますか?発信が下手くそで、株価が割安な会社に出会ってとか、

Tさん
そうですね、それはたくさんありますね。うーん、ある意味ぼくたち上場株の投資家としては、市場のインテリジェンスというか、価格調整機能を長期的には信じていいんじゃないかなと思います。それは我々が本当に正しい判断をしていると思って、それを企業にも勧め、それが正しければ株価にも反映されると言うことかと思います。で、IR下手な企業もいつかはできるようになるんでしょうけれど、その時間軸を変えてあげたり、あるいは効果を高めるのは投資家のエンゲージメントを通じてできるだろうし。またあるいは企業がすでに良いインパクトを持っている場合については、その良いインパクトを強化できるというところに貢献できるのかなと思います。

MC
Hさんとかどうですか?Hさんが投資先として選ぶ企業は最初から情報発信うまいとか?

Hさん
そんなことないですよ。うまいところも下手なところもあって、下手なところもいっぱいあります、そういうところに投資した場合にはIRの資料をみながら何がわかりづらいか一つ一つ話していくこともあります。アクティブのマネージャーとしては割安のままでいられたら困るので、出来るだけ正しく情報発信し適切な株価になって欲しいわけです。

MC
なるほど。これまで話しているように目指しているインパクトもそれぞれみなさん違うので、それにもよるとは思うのですが、通常の情報発信ですら下手くそな日本企業がいて、長期にインパクトを起こすみたいなことになった時、今日話している“企業価値を説明する”というのはさらに困難なケースもあるのでは?

Hさん
もともとこの手の情報発信ができないところは、通常の発信もできていないですよね。やっているつもりでも。日本企業のIRの特徴は、短期の業績をとても細かく説明している場合が多く、それが長期の企業価値にどのように結びつくかを説明できている会社は、本当に少ないです。逆に超長期の説明をうまくできるようになると、業績の説明もうまくなります。

Tさん
大賛成です。統合報告書をみても、あれも玉石混合ですが、いい統合報告書ってさっきHさんがおっしゃったようなことを軸にしっかり持っているかどうかだと思うのです。でも半面、財務面での不振に対する言い訳めいたものになっている会社も多いと思うのです」

MC
はい、ありがとうございます。元に戻って、今のような話は質問者の最初の疑問に答えているだろうかというのをもう一回ちょっと確認したいんですけど。とは言っても先ほどの疑問を挙げてくださったのは、日頃“これから再生エネルギー頑張ります”とかいって業績や株価が下がっている会社をみかけてるということなのかなと思ったのですが。でも“この会社は言っているだけで、どうせできないだろうってみんなが思って株価が下がっているとか。

質問者さん
まあ外部環境が予想できないとか、マネジメントに対して信用できないとか、いろいろなパターンがあると思います。だけれどやっぱり私とかは10年とか20年とか将来ってやっぱり相当予想できないと思います。事後的にはおっしゃる通りの収束があり得ると思うけれど。事前には予想できない以上、どちらかというと投資家の信念みたいになっていかざるを得なくて、そうするとその信念に同期している資金の出し方が一致している場合しか、本当の超長期のインパクト投資ってできないのかなと思うのですけれど。

司会
う〜ん、信念っていうのは、そう言う風な捉え方をしていいのかなって躊躇するところはあるのですが、資金の出してもそういう社会の変化が必要だと思っていると、で思っているだけじゃなくてそれが実現すれば関与した産業は収益がでるだろうと思っている、そういった期待値(?)ですよね。それと市場に対する予測が一致するかどうか、と言うことだと思うのですが、今おっしゃったような疑問を持っている方いっぱいいらっしゃると思います。再生エネルギーとかインパクトに関することは、社会的な情報や政策だとかそういったものがたくさん絡むので、外的な情報もたくさん解放されないと、アセットオーナーからアセットマネージャーまですべて納得することが難しいということなのじゃないでしょうか。

Hさん
超長期の投資をするときは、企業はその前提をしっかり説明しているところになると思うんですね。何も説明しないけれどここは伸びるはずだから巨額な投資をします。でも、どんなリターンかわかりません」っていうことは普通はあまりない。なのでその内容をお互いが納得できるかだと思うんです。もちろん超長期の話になるとリスクがいっぱいあって、前提条件が変わる可能性について企業がどういう風に考えているか、というところも見ていくことになると思うんです」

Kさん
「長期というところで日本企業が問題だと思うのが、ひとつは中計は3年でいいのか。昨日たまたま行った会社で、上場するとき3年の中計を作れといわれて作ったけど、うちの会社には合わないと言っていました。たしかに3年はゴールとしては短いのかなと。
特にこれから社会に対するインパクトのある事業をしたいと考えている企業にとっては。もうひとつの問題は社長の任期がだいたい2期4年というのが多くて、そうすると長期の投資って彼らにとってなんなのと。自分の花道として業績良くして、去りたいと思ったらそれに取り組むのは難しいだろうなと。

MC
インパクトどころか長期の取り組みを企業がやりにくい?

Kさん
そうですね

Tさん
僕も同感です。今僕たちは超長期、長期、中期とかいろいろなことを言っているけれど、インパクト投資については資金の出し手、ぼくらからみたらアセットオーナーが「私達のお金をこいういう目的で“投資”してください」という願いに対する一貫性が必要だと思うのです。そうすると超長期30年とかいうと、結果が出るまでオーナーでいられる人ってどれぐらいいるんだろ。
目指す時間軸と投資としての時間軸って本来一緒であるべきなのでしょうけれど、もう少しそこを考えていなければいけないような。答えはないのですけれど。

MC
企業の問題というより、投資のあり方の問題?

質問者さん
だからインパクトとしては(途中は)KPIで測っていくのだと思いますが、疑問に思っているのはインパクトのKPIの進捗と業績との山谷が同期しない、それに上場株でやっている場合はプライスの上下があって、それをポートフォリオ管理でやっていくにはけっこうどうやっていけばいいのかわからないなと・・・

Hさん
たぶん上場株の投資っていうのは普通のものと違っていて、変化率がどれだけ大きかったかの管理だと思うのです。だから単にそれが進捗していればいいというものではないと、そもそも思うのです。あっ?!時間ですね。

MC
(気付いてくれて)ありがとうございます。ちょうどいいところで終わるのが面白いと思うので、次回はここからスタートしましょう。上場株のインパクト投資、第2シリーズはこうして上場株のインパクトについて深掘りしていきたいと思います。
次回は上場株投資はなぜインパクト投資にいいのか?ここから再開です。ありがとうございました。

続く

  • 2021-04-222021-04-22
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(1)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、4月28日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第一回上

2021年4月14日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
それでは第2シリーズに突入したいと思います。シリーズ1では、インパクト投資をどう思うか、インパクトの実現と企業価値、アセットオーナーとの対話、企業との対話など全体をざっくりと話してきました。最後の最後に “企業が良くなる時間軸とインパクトが起きる時間のズレ”についてご質問いただき、ここで時間切れになりました。ですので、今シリーズはここから始めたいと思います。そして今回のシリーズでは、具体的な事例をもとに、企業のインパクトの実現と収益の関係について深掘りしていきたいと思います。ではもう一度、あの質問をお聞かせいただけますか?

質問者 
 私が疑問に思っていたのは、上場株でインパクト投資に取り組むと、上場株は毎日値段がついているものなので、非上場株式であれば、毎日の株価がないので、かなり時間軸って長期にとれる。インパクトと企業価値ってすごく長い時間軸だったら同じ方向を向くと思うんですが、上場株式である場合、場合によってはインパクトと中長期的な企業価値が逆方向を向くような場合ってあるはずで、そう言ったケースでも大丈夫なのか、それは出資者の資金の時間軸とも関係するのかもしれないですが、そこが上場株でやる場合難しいんじゃないかなと思いました

MC
企業価値、というか株価だったり、業績でもそうかもしれませんが、アセットオーナーの時間軸が影響すると思うのですね。この時間軸のずれで困ったことありますか?

Tさん
うーん、パッシブとしていろいろな銘柄を組み入れていらっしゃる方、我々のようなアクティブで限られた数だけ投資をしている投資家という違いも影響すると思うのですが、私自身は後者型の投資家でかつそこに働きかけて変化を与えるというやり方をしているわけです。よって、超長期で企業価値が改善するということに確信があれば、私は株式市場は賢いものだと思っているので、それは現在の価格にもおりこまれるのじゃないかと思うのです

MC
つまり、株価は下がらないといっている?企業がきちんと説明していれば短期的な収益がでなくても。それはあるかもしれませんね?収益のほうは費用がでたら落ちるけど、そのかけたお金が企業価値に結び付くと確信できるなら株価のほうは将来の企業価値をみているわけで、論理的には。

Tさん
はい、ただある意味それもフィデュ―シャルデューティの範囲で、本当にそこに確信があるのか、それを市場が受け入れられるものなのかシビアに判断する必要があって、逆にもしそうじゃなければ、私だったらその企業に投資はしないのだろうなと思います。

Hさん
そうですね。私も似ている意見で、基本的にそういう企業の取り組みがマイナスになることはあまりないと思います。特に上場株は値段がついているので、それが値段にすぐに織り込まれると思います。逆に非上場株の場合は資金の出し手は企業価値をみるより、収益や返済できるかを見るわけですが、株式投資家は企業価値ベースでみていくので短期の利益が落ちるのは決して企業価値のマイナスになるわけではないです。つまり長期の価値が短期的にもおりこまれるので逆の方向を向くようなこと自体はないんじゃないかと思いました。ただ超長期でやっていることが、市場でコンセンサスがとれていて、みんなも正しいと思っているところでインパクトを与えているのが大事で、独りよがりだったらダメなわけです

MC
つまり逆に上場株だからこそ、インパクト投資ができるということ?

Hさん
そうです。市場とのコミュニケーションが取れている場合には企業は長期を見据えた投資は非常にやりやすいはずです。

MC
Kさんはいかがですか?

Kさん
私はちょっと違って、大きく再生エネルギーに投資しますよ、今そういう流れなのだからしょうがないでしょ言ったとき、それで収益が減ったら離れていく人もいると思うのです。そういう人には離れてもらったほうが言いと思うし、長期を見据えて、その会社が好きだから投資しますよという人に代わっていくのが一番いいことなので、会社にとってはマイナスではないと。短期的に業績が悪くなっていくということで、長期を見ていない人にとっては売り材料になるということは、我々(長期投資家)が安く買える機会になるわけですし。そうして株主が“会社の方針が好きだから投資しますよ、”という人に代わっていくのがいいことだと思うし。

MC
なるほど。売ってくれる人がいるから安く買えるわけですね?質問者さん、いかがでしょう?今の答えで納得されましたか?

質問者
理念的にはそうだし、インパクトがすごく長期に見通せるものであれば、超長期のインパクトと企業価値は一致すると考えていいと思うのですが、超長期の業績、企業価値への影響がそう簡単に見通せない、あるいはかなりの期間にわたって株式市場が誤解することもありうると思っていて、そうすると銘柄選択時にかなり絞られてしまうっていうか、ベクトルの揃うものしか選択されないということなのでしょうか。

Tさん
ここ重要ですね、前回のシリーズでKさんが“それでもやるべきだって”、おっしゃっていたのは真なのだろうなと。その一方でインパクトであるからリターンが少なくとも良いということは決してないと、欧州の投資家が厳しいとおっしゃっていて、そうするとインパクトカテゴリーの中で同じものをみていても、マネージャーの中にもうまいやつ、下手な奴は出てくると思う。そうすると、同じインパクトを標榜していても“うまいやつ”つまりリターンが出せる投資家にならないと自分のビジネスとしてのサステナビリティにならないし・・・

MC
“うまいやつ”にならないといけないというのは、その通りだと思いますよ。
同じインパクトを目指している企業の中で、きちんとそれを達成できるところを見抜いて投資しないといけないわけですから。

Kさん
何が大事かって言うと、知らせる、知ってもらうということが重要なのかなと思います。たとえばこの投資をすることによってこういう効果がありますよ、説明すれば、同じように思うすごく優秀な人がその会社に入りたいと思うかもしれない、そうすればその会社は前に進みやすくなるはずです。やっぱり会社は人なので、人を引き付けられる会社であるべきです。しかし日本の会社ってあまりいいことを言おうとしないので、そこが問題かなと思います。自分の会社がどういう会社であり、それがどんな価値に結び付いていくのかを宣言して、知らしめていくことによって人もお金もついてくるものだと思います。

続く

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