一般にカラスは、「不気味」「怖い」というイメージを持たれていて、近寄りたい人は少ないと思います。

しかし、私は違います。昔からカラスの漆黒の美しさに魅せられて来ました。黒の美というものを皆さんご理解いただけるでしょうか。特に、くちばしの形など近くで見るカラスは美しく、格好良いのです。だから私は、子供の頃から「鳥類図鑑」などを熟読し、カラスに対する知識を得ていました。

さて、先月のことです。働いているオフィスの外に面しているスペースで休憩している時でした。コーヒーを片手に、メールを確認していると、2メートルくらい上の柱にカラスがやって来て“カァーカァー”と大きな声で鳴き始めました。そのまま氣にせずにいると、今度はさっきよりも近い柱に飛び移り“ガァーガァー”と声のトーンが変わりました。そして、羽を大きく開いて頭の真上の柱に飛び移って来ました。手を伸ばせば触れるくらいの位置で私の事をじっと見ています。私は、すぐに立ち去りました。普通の人だったら、怖くなって走って逃げるところです。

しかし、私は違います。これは、知らずにカラスの巣のそばに長い時間いたためだと思われます。カラスは、こういう時に、威嚇の行動に出るのです。そういう知識があれば、無駄に怖がる必要は無いのです。

その数日後、家の近所を散歩しておりました。公園の中の電柱にカラスが留っていたので、餌をやってみようと思いつきました。それぐらい私はカラスが好きなのです。たまたまポケットにきのこの山があったので、一つ取り出して、あげました。すぐに食べてしまったので、もう一つ上げるとそれもすぐに食べてしましました。ポケットにはまだきのこの山はあったのですが、もうないよというフリをして、その場を立ち去りました。

ところが、歩いている後ろで、バサッと音がしたので、振り返ると、先程のカラスが2メートルくらい後ろの柱にとまり、こちらをじっと見ています。そのまま歩いて、振りかえると羽を大きく開いて目の高さよりも低い位置でどんどん近づいてきます。足早に歩いてもどんどん近づいてくるので、ポケットに入っていたきのこの山をその場に置いて立ち去りました。普通の人は、怖がるところでしょう。

しかし、私は違います。これはむしろカラスが親切な私に親愛の情を持ったためとった行動だと思われます。カラスは人になつきやすい生き物だという事を私は知っているので、怖くはありませんでした。

カラスは、賢い鳥であり人になつきやすい性格を持っているのですが、怖くて害鳥扱いもされたりします。知性が優れていても、悪い印象が定着するとその評価を覆すのは容易ではありません。しかし、私は違います。私は正確な知識を持っているためにそうしたレッテル貼りや恐怖から自由でいられるのです。

カラス