上場株インパクト投資の研究 3章(4)
資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
6月30日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 3章 2回下
2021年5月19日
前回の続き
Hさん
KPIの置き方というのをインパクトを与えるもの自体にしなくていいのでしょうか。その会社が成長していくと結果的にCO2を減らすことができたとしても、CO2の削減目標ってもの自体がなかったとすると、それってインパクト投資のKPIとして適切なのか?と。CO2をもっと減らせる家を作ったとして、しかしその時は(よりコストがかかるなどして)会社の収益を伸ばせなかった場合、企業価値は上がるのでしょうか?
Tさん
・・・な、なるほど。それは考えたこともなかったです。というのは、その会社の企業としての存在意義は、CO2を減らすことだけじゃないと思うのですね。利益をだして従業員を守っていく・・・。即答にはならないのですけど・・・CO2を75%ではなくて、90%減らせる住宅を作ったのでそちらを集中的に売ります、ただし利益は減りますということ。つまりCO2の目標値をクリアできるのであれば利益を減らしてもいいじゃないかということであればそれは違うのかなと。大切なのはCO2を減らすことだけじゃなく、CO2を減らしながら利益を出すことではないかと。
MC
今のケースだと、気候変動だけをフォーカスしたインパクトを考えると、例えば住宅に、欧州なんかであるかもしれませんが、CO2をより減らした住宅を取得すると税制上のメリットがあるとか、そういう“必ず売れる”という政策とセットでないと、そのKPIは利益の予想とリンクしないですよね。そういうことを質問者さんは聞いているのじゃないかと思いますが・
Tさん
いや、そのあの、CO2の削減量だけを目標にしてしまうと、質問者さんがおっしゃるように、政策サイドで「あの目標は間違っていた」とか「そこまで厳しいターゲットでないほうがいい」など後で方針が変わりましたとか言われてしまうと、企業としての取り組みは変わってきてしまうと思うのですね。だからこれは暴論かもしれませんが、私の意図しているインパクト投資としては自分たちの投資のKPIになりえないのじゃないかと
MC
ありがとうございます。Hさんいかがです?
Hさん
あの、すごくよくわかるんですけど、それって、この会社の業績が伸びていくと言う前提があって、その会社の業績が伸びたら結果としてCO2が削減されますねってことなのですよね。そうするとCo2を減らすっていうのがKPIになってないというか、販売数がKPIになっていて、その従属変数としてCO2と業績がでてくるということになっている
Tさん
そうです。そうなのですよ。これだからそのインパクト投資なるものの設計って結果に対する、いわゆる、ロジックというか、成果に対し達成していくロジックがしっかり確立していることが重要で、かつそれに対し、投資家のインターベンション、介入が必ず求められていると思うんですよ。この企業においては、我々は売り上げをきっちりストレッチさせる、つまり事業を通じて環境にも貢献できる、それを加速できるというのがぼくたちのインターベンションじゃないかなと思っています
Hさん
ですので、そういう会社の場合は、CO2を減らすことができる住宅ができたら、その分だけ価格があがって、マージンが確保できる、買った人が何年間かで価格分を回収できるっていう、そういうシミュレーションがあって開発できたらいいなって
Tさん
はい、そうです、それもありです。
Hさん
そういうのがないと、なかなかKPIになりえないのかなと
Tさん
あ、そうです。とってつけたようですが、それもありです。ただKPIとして販売数とマージンの両方を置くととても難しくなるので
MC
つまり質問者さんがいっているとおり、KPIは複雑だと? Kさんはこの件について何かありますか?
Kさん
じゃあちょっと違う視点から・・・今、量の話がありましたが、時間も大事かなと最近思っていまして。ある会社が児童労働を2030年までにサプライチェーンでなくしますよっていっていて、それはいいことだと言われていますが、2030年って、あと9年間はつづくわけですよね。9年だと今10歳の子が19歳。だからそんなにのんびりやっていていいのかと言うことも、考えていかなければならないと今思っているところです。
MC
はい、ありがとうございます。では次の質問にいきましょう。“気候変動に関する投資は他のESG課題より早く重要性が認められた印象があります。欧州の理念や学術的な懸念の浸透が早かったのが要因だと思いますが、ファンドマネージャーとしてはどう思いますか?”これについてコメントをいただけますでしょうか
Hさん
あの・・私の認識としては必ずしもEの話が最初にきていると思っていなくて、日本では今ちょうどそう言うタイミングですが、ESGでいえばGなんか昔から各国で続いている話ですし、Sの話はESGというものをフランスとかオランダが導入した時Sが一番強調されていたと思います。年金の制度を変える時、労働組合のほうはSを注視した会社に投資することを条件に改革を受け入れていると言う経緯もあって、国ごとにその背景は違うのかなと思います。ここにきて地球の気候もすごく荒れていますし、今気候変動(E)がすごく盛り上がっていると思いますが。科学的にどこまで立証されているかとか、よくわからないですけど。少なくとも今は実証されているように説明されているので、そこのところあんまり反発しても仕方ないので、そう言う流れに乗っているというところじゃないでしょうか。
Kさん
流れに乗っているというのは、本当にその通りで。でもみんなで言えると言うことの良さも感じていて。みんなで言えば企業も聞きやすいだろうし、そう考えたらいいのかなと思っていますけれど
MC
はい、ありがとうございます。ではTさんいかがですか?
Tさん
あの・・なんかでも色々読み物も見ているんですが、Eって増えているんですけど、多いのはGとかのほうがまだ多い気がして・・・でも変化は起こっていると思います。これまで欧州の人はクーラー入らなかったのに、夏にクーラーが必要になったとか、オランダって治水の問題がえらいことになっているとか、Eに対する潜在的な意識はあったと思いますし、人類共通の課題として認識しやすいというのがあるんじゃないかと。またそれをパッシブのユニバーサルオーナーとして、課題として取り組む上で取り組みやすかったというのがあるんじゃないかと思います。ある意味メカニカルに横比較できるし。ただ、そこで思った以上のマネーフローが起こっていて、投資家がそこに追随する中で株式市場内での需給が変わってきちゃって、なんだかわからないけどとにかくEだって言っているケースもあるんじゃないかと思います。今日お話ししてつくづく思ったんですけど、アクティブで、個別にアウトカムを意識してインターベンションを意識した投資をやっていく上ではEって難しいですよね・・・。
MC
はい、ありがとうございます。みなさんがおっしゃったようにGのほうが歴史も長く、いろんなCGコードを導入した国で政策とかも古くからセットになって、投資家も動員して一緒に企業のガバナンスを良くしましょうという投資もあったと思うんですよね。でもこの質問者さんがおっしゃりたいことは、他のESG課題より早く重要性が認められた・・ではなく気候変動はただ他のEの課題よりも早く重要性が認められた・・・ではないかと思っているのですが、GとSはダイメンションが違う気がするので・・・。もしそう考えた時、Eの中にはいろいろな可能性があって、気候変動が非常にハイライトされている。排ガスとか・・・でもゴミの問題だともっと重要だと思いますけど。
Tさん
難しいですよね。ペットボトルを見て、悪の根源だと思う国もあれば、まだクリーンでリッチになった象徴だと感じる国もある。ただまあ、ぼくフィリピンの人とよく話すんですけど、彼らは環境に対する意識すごく高いですよね・・・
Hさん
私もこれからどんどんそういうの出てくると思うんです。特に今の消費の主体となっているZ
世代はすごく感心があるということで、いろいろな企業が広告の対象にしたい世代の人がそう言う高い意識を持っているということで、企業も意識しているし、無視できなくなってきていると思います。
Kさん
今フィリピンの話がでましたが、ケニアとかルワンダとか、ポリ袋に関してはすごく厳しくなっていて、現地に行って思ったんですけど、環境は先進国だけの問題じゃないということは認識しなくちゃいけないし、日本はそういう意味では遅れていると思います。
MC
そうですね。テーマとしては重要だと思うんですが、投資のテーマとして気候変動が取り上げられたのは、それがESG的に、前の質問者の方のご指摘じゃないんですが、ESG的に良いことかどうかも重要なんですけど、気候変動が産業にとって重要だったからという見方もできると思うんですね。気候変動に向けた事業にもっと投資して欲しい、今のところゴミの問題についてそういうアウトカムが見えにくいのかもしれないと思ったり・・・。
Kさん
法律とか政治でできることもあると思っていて、そういうのとあわせてやっていかないといけないんじゃないかと思っています。
MC
Eについては、G以上に“投資家の力を借りたいい”というのを堂々と言っている政府やレギュレーターもいるので、優先順位付けが出てしまう、これが二人目のご質問者の方が質問したかった背景にあるんじゃないかと思います。では時間になりました。次回もご質問を受け付けていきたいと思います。ぜひみなさまご意見・ご質問お待ちしています。
(続く)