「令和コーポレートファイナンス3大トピッ…

10月に引き続き第三回目のコーポレイトファイナンス勉強会を11月27日(水)に開催いたしました。会場として引き続きあおぞら銀行様のホールをお借りし、今回は「ROIC経営再考」をテーマに約40名の参加者各位と同問題について議論しました。当日の様子は、あおぞら銀行様の開示にも詳細にまとめて頂いております。

エンゲージメント投資先を招待し「ROIC経営再考」の勉強会を開催(出典:あおぞら銀行様)

さて今回。前半は第一回・二回の振り返りから始め、資本コストやPBR問題に関する理論的な背景や誤解について確認しました。その後本題であるROIC経営について、その意味する事、経営実装に際して留意して頂きたいこと。また陥りがちな誤解などについて解説を行いました。

具体的には、ROIC経営の導入にあたっては、FCFの増加・それに伴う企業価値の増加を中核に据えるということです。ROE向上のような「率の経営」の手段とするのは誤っているということを明確にお伝えしました。また、前二回までに一貫してお伝えしてきた資本コストの考え方から、全社平均のWACCとROICとの比較は誤った結論を導出する危険性があるので避けるべきとの考えを説明いたしました。あくまでも、事業毎にリスクが異なりそのリスクに対応する資本コストとの対比でなければならないということです。 そして、過去からの結果であるROICと将来得られるFCF流列から構成される事業価値とを結びつけるROICバリュードライバー式もまた一つのモデルであること、配当割引モデルや残余利益モデルを現実と思ってはいけないのと同様に、ROICとWACCとの対比もモデルの前提を理解した上で経営に適用していくこと、特に、将来獲得されるFCFが増加すると考えるならば、短期的にROICが減少するとしても投資をしなければならないことを説明しました。ROICを高めるだけではだめで、成長のための投資を行い、投下資本を増大させていく、企業価値を高める経営を中核に据えた企業改革を目指さなければならないというのが、お伝えしたかったメッセージです。

後半は前半の理解に基づき、TOPIXに採用されている上場企業を対象に、投下資本やROIC、成長性といったパラメーターに着目し、企業価値(ここでは株式時価総額)との関係性を過去約10年のデータを分析し検証いたしました。結果、長期で見ると投下資本、ROIC、成長性のいずれをも高めることができた企業群が最も企業価値の上昇幅が最も大きく、反面、いずれもが低下している企業群は企業価値の低下幅が最も大きい結果となりました。これらは、前半の理論編で企業価値計算のモデルとして挙げたバリュードライバー式で導かれる示唆と同様の状況となっています。加えて、ROICを経営指標として採用している企業は、特にROICが低位の企業群で、非採用企業に比べ企業価値の上昇幅が大きい傾向が見られました。これらは、ROICが低い場合、ROICの導入自体が企業評価に何かしらプラスの影響を与えている可能性を示唆しています。今回、講義の内容としては、市場全体の話をさせていただきましたが、参加いただいた皆様の感想等を伺うと、それぞれ自社の状況に照らし合わせてROICとどのように向き合っていくべきか、考えを巡らせていただけたようでした。

勉強会後は、恒例通り飲物を手に参加者各位での交流を行って頂きました。三回目という事でお顔見知りになられた方も増え、また時間を作り関東圏以外からも駆けつけて頂いた参加者もおられ、和気あいあいとした良い会になりました、日頃上場企業の経営・IRの第一線で働かれる参加者各位の横の繋がりに資する事が出来ればと願っております。次回は年明け2025年1月に特別会としてROIC経営に実際取り組まれ、大きな成果を上げておられる企業の経営者様をお招きして、少し大きな会を予定しております。また本勉強会における考察については別途本ウェブサイトで共有させて頂ければと思います。

「令和のコーポレートファイナンス3大トピ…

8月に引き続き上記の題材を元に第二回目の勉強会を開催いたしました。前回と同じくあおぞら銀行様のホールをお借りし、今回は「PBR問題の本質」をテーマに約40名の参加者各位と同問題について議論しました。

さて今回。前半は同問題に関する理論的な解釈とありがちな誤解について説明を行わせて頂きました。PBR1問題について考え方や理論的な背景、特に良く引用される配当割引モデル・残余利益モデルの導出プロセスやその前提条件などを提示して、その限界や制約について解説を行いました

後半は前半の理解に基づき、東証の開示要請が始まってからの約二年間のデータを基に、PBR1倍問題を実際に解決出来た企業群に何が起こっていたのかを分析しました。

全体像として、TOPIX採用企業のPBRの状況を見てみると、22年9月末時点でPBR1倍以下であった企業の方が、PBR1倍を超えていた企業と比べて、PBRが改善している傾向が見えました。一方で、PBR1倍以下であった企業が1倍を超えられた企業は204社と多いとは言えない結果となりました。これらは、東証の要請等もあり、PBR1倍以下の企業に対する市場の評価や企業自身の取り組みに変化が見られた一方で、1倍を超えるということについては、企業の本質的な取り組みや置かれる環境の大きな変化や必要であるという点を示唆しているように考えます。

加えて、PBR1倍以下から1倍を超えた企業にフォーカスを当てて、アクティビストの投資の有無や、ROEやPERの観点からのPBR改善の要因分析を行いました。これらを通じて、前半の理論編との橋渡しをしながら、理論に適合している点、相違している点等、お話をさせて頂きました。

勉強会後は飲物を手に参加者各位で交流を行って頂きました。日頃上場企業の経営・IRの第一線で働かれる参加者各位の横の繋がりに資する事が出来ればと願っております。次回は10月に開催を予定しております。また本勉強会における考察については別途本ウェブサイトで共有させて頂ければと思います。

謹賀新年 2022

2022年 明けましておめでとうございます

あすかコーポレイトアドバイザリー田中でございます。昨年中は大変お世話になりました。
本年も宜しくお願い申し上げます。

COVID-19については、未だに感染拡大の先行きに予断を許すことはできませんが、暗闇の中大波の中を進むようだと感じていた昨年の今頃に比べますと波間に差し込むSilver Liningはその光を強めているように感じます。

笑い話を一つさせて下さい。年末、もう二年越しで経営に関する様々な提案を差上げているある御投資先との初の直接面談の場を頂ける事になりました。経営陣からご担当迄、皆様と事実上初めて直接お目にかかったのですが、その際話題になったのが過去に名刺交換をしていなかったかどうか?という事でした。ビジネスマナーとしては名刺交換の有無を忘れてしまう等とはもっての外なのですが、PCの画面越しに難度の高い議論を重ねる中で、お互いに面識がある年来のパートナーのような気持になっていたという事に、一同大笑いを致しました。皆様もそんなご経験がおありではないでしょうか?

今年がどのような年になるかはわかりませんが、2020年-2021年と相手の体温が全く感じられない中でもなんとか作り上げてきたこのような絆が、感染の波状的な拡大はあるとしても、今後弱まることは無いのではないかと密かに心強く思っております。

弊社の一年を振り返りますと、春には従来の投資助言業に加えて代理業を取得し事業の幅が少しだけ広がった事。夏にはパートナーであるあいざわアセットマネジメント(旧あすかアセットマネジメント)の引っ越しと合わせて長年過ごした内幸町から汐留への引っ越しを行った事。秋にはあいざわアセットマネジメントを含む藍澤證券グループとのネットワークが本格稼働し、地銀様を含む多くの投資家の皆様とのネットワークが生まれてきた事。年間を通じますと、ご投資先からの要望もありESGやサスティナビリティーを企業価値と結びつける新しいバリューアップ手法が生まれてきた事などが挙げられます。トップギアで駆け抜けられたかというと全くそうではありませんが、匍匐前進ながら着実に前に向かっている実感を感じます。

このような中、今年のご挨拶用のテーマは「Nemo timendo ad summun pervenit locum」(勇敢さを欠いて高みに到着した者はない) を選んでみました。例年この選択だけは自分でやらせてもらっていたのですが、今年はメンバー全員の投票で決めました。不思議なのですがほとんど票は割れず。画像の選択はアウトドアが好きな若いメンバーの某君らしい選択です。

今年もメンバー一同、引き続き安全に留意しつつ、お客様ご投資先の皆様のために一生懸命頑張ります。ご指導ご鞭撻何卒宜しくお願い致します。

2022年1月1日
あすかコーポレイトアドバイザリー 田中喜博

上場株インパクト投資の研究 4章(6)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回は11月10日(3日は祭日につき)、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 4章3回下 

2021年6月23日後半

(このブログはクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Tさん
アセットオーナー自身が、貴重な年金資金を運用される事を通じて何を実現したいのか、どういう投資対象に投資をしたいのか、ていうのを考えていくことが優先で、それに先立ってESG投資、社会的インパクト投資はかくあるべしというのを“外野”が作っちゃうというのがかえってそれを劣化させていないかなと思うんですけど

Hさん
あの〜いいですか?私なんか北欧のソブリンファンドとか運用していたときの感じだと、同じ組織の中にもいろいろな立場の人たちがいて、意見やスタンスが異なります。ESGの担当者の人は本気で、本当にそれが必要だと信じていて、彼らなりの管理の仕方で管理したい、だからたいてい向こうのフォーマットがあってそれにそって報告します。また、投資銘柄も“この範囲の中でやってください”というものを指定している場合もありました。だけどその会社の中でもCIOやESG以外の運用担当者になるとスタンスや考え方が違って、ESGは重要ではあるけれどトッププライオリティではなくリターンでないファンドは基本的にダメというスタンスでした。アセットオーナーの中でも、いろいろな部門があって、その部門ごとで目標が違っうということは実態としてあるんじゃないかなと・・・

MC
それは間違い無くそうだと思いますよ。5、6年前ぐらいにイギリスのアセットオーナーと話したことなんかを思い出すと、今から5、6年前だとイギリスでもESGのEの圧力が強くなっている時期なんですが、ガバナンス担当者が“いったい誰がこの企業を買ったんだ!”みたいに思う銘柄を運用側のジャッジメントで組み入れていたりすることがある・・・なんて話を聞いていましたし、ついこの4月でも北欧の年金基金で責任投資担当者が、“アセットマネージャーの中でもファンドマネージャーと、ガバナンスやサステナビリティなどを見ている人で意見が割れる・・・”という話をしていました。だからどこの世界でもあるのだと思いますが、アセットオーナーに説明をする時、つまりESG
的ファクターは個別に色々な話はしたいけど、アセットオーナーから見ればものすごくたくさんのアセットマネージャー抱えているから、なかなかわからない、これがたぶんKPIがわかりやすく浸透していく背景なんじゃないかなと。パフォーマンスはわかりやすいから、あとはESG頑張っているファンドマネージャーとそうでないファンドマネージャーを・・・やられる方は嫌だと思いますが、ソートしたいとか思ってしまうと思うのですが・・・・

Kさん
運用機関として評価されるのは嫌だっていうのはありますが(笑)逆にファンドを評価するほうはどうなんだと思います。今、多くのアセットオーナーは持っているファンドをバーラのシステムなどにぶちこんで見たりしているわけですが、ESGについても同じことするのかなと。どこかのコンサルタントがシステムを売り込んで、標準化されて、それぞれのファンドについてそのツールが解説して・・・その時にぼくらがどんなふうに見られるかを考えないといけないのかな・・・そうすると個別銘柄を評価して運用している人たちは苦労するんじゃないかな。逆にいうと、そうじゃないんよと言い続けなければならないんじゃないかな・・・。

Tさん
本当に大変になると思います・・・ちょっと例え話を思い出したんですが、某外資の大手が運用されているとても評判のよい成長株ファンドがあって、サブファンドとしてESGファンドを立ち上げられた、ところが内容をみるとメインファンドとほとんど中身が同じだったとして色々議論を呼んでいるようです。気持ちはわかるところもあって、確かにESGファンドです!って謳っていなくても慎重に株を選んで、企業を評価していくと十分に社会のためになっている、いいインパクトを起こしている企業に投資を行っているという自負はあるはずだと思うんです。でもそれが、いまESGやインパクトに投資したいという人は、そういう名前がついていないと投資してくれない、じゃあ看板を書き換えちゃえとなる部分もあるのではないかと。でもそこからさきはビジネスの世界なので、高い手数料をつけたとか、内容が同じだということを言わなかったりしたらビジネスとして問題かもしれませんけど。でも外形から入っちゃっているところで、アセットオーナーとして実現したいことは本当に実現できてるんでしょうか。・・・おそらくアセットオーナーが恐れているのはウオッシングですよね。それを避けなければならないということで外形的にもちゃんとした、綺麗なものに投資しなければ、という傾向になるんでしょうけどそうじゃないんじゃないかと。・・・ちょっと話しながら思いついてきちゃったんですが、ハラールってあるじゃないですか。イスラムの人が信教上のスタンダードに照らして食べることができる食材の一種の認証ですが、個別企業にもハラール認証的に、この会社はこういう評価ですっていうのができていれば、成長株ファンドですが、6割ぐらいハラール対象ですとか言えて、そしたらアセットオーナーも、自分は成長株に投資してるんだけどESG対応もかなりできちゃうな、みたいな印象をもてるかもしれませんね・・・

MC
いや、それはね。最初に言ったのと矛盾してますよ・・・。今いい子だけを集めてファンドにしますじゃないと。三人は思っているわけですよね。今からどうやって良くするかがアクティブ運用の腕の見せ所であれば、今の得点だけでみてちょっとESGぽいじゃダメなんでしょ? 問題はエンゲージメントを評価するのがすごく難しいということなんだと思うんですよね。自分たちがいたおかげでどういう改善があったかを説明するのは難しい、それをアセットオーナーが定量的に評価して、しかも100とか200とかいるアセットマネージャーのうち、優秀なアセットマネージャーに入れ替えるというのはすごく難しいということですよね。

Hさん
いや、難しいと思いますよ。エンゲージメントちゃんとしたかって、いろいろな運用会社の報告を見ていると結構言ったもん勝ちみたいになってて・・・。でも私なんかの場合あんまりエンゲージメント何しましたかって聞かれることはないですね。

MC
それはHさんが成績優秀だからでは?

Hさん
いやいや、そういうことを聞きたいわけじゃないと思うんですよね。日本て今そこにすごい関心があるし、アセットオーナーもそこをきくんですけど、海外ではそれは当たり前のことって感じで。普通にファンド説明をしていて、投資していると色々なことが起こるわけですが、不祥事とか、運用パフォーマンスが上がらないとか。そういう時にそれをどう考えて何をしているのということになって、その時に自分たちがこういうエンゲージメント活動をしました、ということを説明して、どういう時間軸で対応してくのみたいな話になるわけです。つまり、洗練されているアセットオーナーは全てが当初宣言している運用スタイル、エンゲージメントの考え方に合致した行動をとっているかという事を具体事例で確認するわけです。だから全部を“こんなふうにエンゲージメントしてます”とかアピールするというのは、僕の場合は全然なくて・・・
 エンゲージメントって、不祥事など何か悪いことが起こった時にどのようなエンゲージメントをするかも重要なんですけど、そもそも、そういう会社を選ばなくてもいいわけじゃないですか。アクティブ投資なんで、なんでそこ選んだのとか。最初から割安でエンゲージメントする前提で買っていれば別なんですけど、買った後に不測の事態が起こりエンゲージメントするという場合ではそもそもその企業を買わなきゃ良かったじゃないか、分析が深かったら避けられたんじゃないかということになります。だからアクティブのエンゲージメントは失敗した時の言い訳みたいにならないようにしないといけない。
 逆にパッシブだと、」自分たちがこういう活動を行いましたっていうのもあるので、パッシブのほうがピュアにエンゲージメントの説明しやすいのかもしれない。もちろん何を目的にするかにもよりますが。

MC
そうするとインパクトな運用をしているアクティブな運用者は、評価されるのは難しい、評価するには評価する側もなんらかのモデルがいる・・・しかし既存のモデルは運用者が満足できるようなものになっていない?ということ?

Hさん
・・・たぶんこういうアクティブの場合は、パフォーマンスがいいのが大前提で、それも達成できていないのに、あれこれ言われても“何言い訳を言ってるの”っていう感じになっちゃいますよね。

MC
だからまずパフォーマンスがいいことが大前提で、それからESG的に絶対必要なことについてこういう取り組みをしているということで、今EUでは新しい規制、各マネジャーが報告するレギュレーションがあって、だんだん報告もKPI化してると思うんですよね。

Kさん
・・・ちょっといいですか?先程ハラールの話がありましたけど、じゃあいい会社ってどうなのって考えたら、今東芝のHPみたら2019年度もESGとかCSRとかで表彰されている。

Tさん
ハラール認証とれているんですね

Kさん
・・・だからそういった意味で難しいところがあるんです。本質的なところは自分で見にいき、しっかり認識するということが重要なのかなと思います。だからインデックス的になるとなかなかそれが理解できなくなるというところが懸念です。

MC
だから今Kさんとかが企業に対し思っているようなことを、アセットオーナーはKさんたちに対して思うんですね。”う〜ん、こいつはKPIだけみると良さげだが10年お金預けたら大変なことになっちゃうぞ“とか。

Kさん
・・・だからやっぱりそうしたことを、アセットオーナーもそうですが、個人もそうかもしれないけど、みる目を持っていただきたいなと思います。

Tさん
ぼくたちエンゲージメントを要素分解しているんですよ。ざっくりとEPS(キャシュフローも含めて)を上げるのか、市場マルチプル、まあ市場からの評価ですね。これをあげるのか。それぞれによってさらに細かい要素分解ができるんですが、、ESG、SDGs的な考え方もこの中に入っていまして、それをぼくらなりのKPIにしているって感じです。まああんまり定型のKPIができるとぼくらが信じる価値感が薄れてしまうような・・・・・

続く

上場株インパクト投資の研究 4章(5)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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11月3日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 4章3回上

2021年6月23日前半

(このブログはクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
前回まで、いろいろなインパクト投資がある中で、社会的なインパクトやアセットマネージャーがおいた仮説やリターンを説明できるか、それにはKPIが重要だということを話してきました。その中でこの3人のような集中投資の場合は、一社一社個別の議論をしていてKPIで話すの難しいよねという意見がでました。とはいえ、世の中の流れは更にKPI重視に向かっています。昨今EUでもアセットマネージャーの報告書が比較可能になるような取り組みが行われています。SFDRというレギュレーションが今年の3月からスタートし、来年からは一定以上の条件の資産運用会社は、定められた詳細の情報を報告書に記載しなければなりません。そこではサステナビリティの課題への貢献だけでなく、悪影響となるようなことについてのKPIもあります。それだけのデータを投資先企業分揃えないといけません。アセットオーナーは比較しやすいとか、評価しやすいといい、何十ものアセットマネージャーに依頼している場合は、一人一人のアセットマネージャーの説明を聞いて理解することが難しいのだと思います。さて運用者から見てこの状況はどうでしょうか?今日はオーナーは皆さんの報告を聞いてなんと言っていたか・・・から話してみたいと思います。

Tさん
ちょっと違う話しからなんですけど、さっき我々集中投資は個別に議論をしているからKPI設定が難しい。。。とおっしゃいましたよね。でも逆じゃないかと思っていまして、ソーシャルインパクトを本当に考えるのであれば各社固有のテーマがあるべきなんで、個社で設定されるべきだと思うんです。でも今のインパクト投資の投資コミュニティで議論されているのはもう少し網の目があらい。インダストリーの中で共通の何かを見つけ出そうとしている動きじゃないですか?ゆえに、個社だとかえって使いづらいKPIになっちゃっていると思うんですよね。
本来は個社で何を管理しなければならないかをアセットオーナーとしっかり議論しなければならないと思うんです。

MC
なるほど、それでちなみにTさんの場合はTさんからみてアセットオーナーは一人?アセットオーナーからいたらアセットマネージャーはTさんだけ?あるいはすっごい大勢いますか?

Tさん
一人ではないです。ものすごく多くもないですが。我々はプロダクトをよくわかっていただいていると思います。もうそれで十数年ですから、よくわかっていただいていて。ただ、昨今新しいアセットオーナーの方とお話しすると“なんでもいいからESG持ってきてよ“ていうニーズはすごく強いようです。我々は個社にフォーカスしているので、そこに合致するのかどうか・・・大きな流れとしてのニーズは高いとはいえ、具体的に運用を通じて何を達成したいのか?という点について、現時点ではあまりアセットオーナーさんはご関心がないのかも・・・

MC
じゃあTさんが一生懸命KPIを用いて新しいクライアントになるかもしれない人に説明しても、あんまりみてもらえない?

Tさん
そうですねえ・・・まず外形標準を満たさないと、という感じがします。またアセットオーナーさんはまだどうしてもESGはリターンが悪いという認識でいて、“多少でもリターンがいいものをもってきてくれ”というご要望が多いようです・・・

MC
なるほど。ではKさんどうでしょうか?アセットオーナーさんは今までKさんの説明をなんといっていましたか?

Kさん
私は欧州系の運用会社にいたこともあって、けっこうESGを重視されているお客さんがいました。そういう方はパフォーマンスは一般並みでいいので、ESGがよくなるように投資したいと言われていました。そういうニーズもあるとは思います。一方、日本でもESGならなんでもいいから持ってきて、という人がいるということは関心は増えているということでしょう。去年も銀行系の運用会社がESGと名前をつけて一兆円集めたりしていますし、ESGという名前をつけたらそれだけで売れるみたいな状況になりつつあります。その中で本当に、投資家が投資先一社一社のESGを考えているかどうかというところを見なければいけないと思うのですが。

MC
その欧州のお客さんで、パフォーマンスはそこそこであればESG的にいいものを持ってきて欲しいという人たちにKさんはどんなふうに自分のファンドはESGに貢献していると説明をしてました?

Kさん
うーん、私がやってきたのは、今あまりよくなくてもこれから頑張ってよくなりますよという企業に投資をしてきたのですが、でも最近の欧州の規制をみているとピカピカの会社に投資しているほうが評価される方向なので、スタンスが違うのかなと思ってます。スタンスの違う人にどうやって話すかとなると、“ぼくらはこういうスタンスですよ”というしかないと思っています。

MC
Kさん、過去のこのセッションでもいっていましたね。今ダメな人が良くなるのが大事だと。しかし確かに今のEUなどの取り組みは今ピカピカの人にしか投資しちゃダメみたいなところはありますよね。でもKさんがちなみに説明する時は、どんな点を話していました?

Kさん
もちろんガバナンスもありますし、たとえば人に関しても海外の工場まで見に行って、そこで問題点があってぼくらはこういういうふうに意見を言っていると、いうような話もしています。結構、個社によって違います。

MC
シンプルなKPIじゃなくてやっぱり現状の問題はこれて、こんな議論をして、こんなふうによくなった・・・というような説明をすることが多い?

Kさん
そうですね。よくなるには時間がかかりますが・・・

MC
ありがとうございます。Hさんはどうですか?

Hさん
投資している側からすると個々の企業は大事ですが、アセットオーナーに説明する時を考えると、必ずしもそこまでいかないこともあります。アセットオーナーは通常はすごくたくさんの運用会社にオーダーしています。大きなアセットオーナーになると運用会社もかなりの数採用しており、個々バラバラです。1宇1つの運用会社から投資銘柄1つ1つの進捗を聞くというのは現実的じゃなくて、通常それはないと思っています。
説明する時は目立っているところ、自分たちが特にベッドしているところを説明するのだと思います。従って、通常はファンドレベルまで進捗の説明を求められているのかな?という感じがします。

Tさん
なんかあれですよね。VaRの議論じゃないですけど、自分たちが持っているアセットのエキスポーじゃーってどんなもんなんだろうって理解したいというのはわかりますし、テールリスクも含めてそれを管理していくという意味では、何かファンド単位でというのは重要なことなんだろうなと思います。ただ、たとえばESG投資をやりたいと、考えなきゃと思う方が本当にカーボンフットプリントの改善を達成したいのか、それとも本当はリターンなんだけど、せめて世の中に悪いことをしたくないっていうことなのか、それをよく考えてもらうことがすごく大事だと思います。両方ありだと思いますし。本当にカーボンプリントの改善を達成したいのであれば、ファンド単位でそれをきちんと達成するマネージャーがお預かりするべきだと思います

続く

上場株インパクト投資の研究 4章(4)

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11月3日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 4章2回下

2021年6月12日後半

(このブログはクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
では、今お聞きしたような点をアセットオーナーにどう説明しているかお聞きしていきましょう。まずHさん、その3つにわけたのをどんなふうに成果を・・・成果が現れるのは翌年ではないでしょうから、毎年アセットオーナーに説明する時どんなふうに進展を話していますか?

Hさん
全部の銘柄を説明することは現実的ではありませんし、そもそもアセットオーナーも全銘柄について説明されても困ると思います。運用報告のたびにその期で特徴的で、それから寄与度が大きいところを中心に説明しています。

MC
なるほど、つまり三十社のなかですごく大きくなったり小さくなったりするところを見ていて、あんまり変化のないところはアセットオーナーに話さないということでしょうか。

Hさん
 そうですね、元々リターンの寄与度が大きいところについてついてその原因と今後の方針を説明します。、エンゲージメントの成果が出た場合もそれが自分たちがやった行為の結果もあり思った方向に動いたのか、その他のことの影響で動いたのかについても説明します、ただ、そもそもエンゲージメントは多くの場合、他投資家も同じような問題意識をもっているので、 “自分たちはこの様な活動をしてきたけど、他の投資家もこう言っています”っていう感じで説明していますね。

MC
謙虚ですね。結構外国のファンドマネージャで“俺が、俺が”っていう人いますよね?

Hさん
まあ、やったことについては嘘じゃないでしょうから言ってもいいのでは。ただそれがどれだけ企業経営のデシジョンメークに関わったのかというと、なかなかそれって簡単じゃないし・・・・取締役会に入っていって言うことができるわけじゃないですし。“自分たちはこう言いましたが他の人もこう言ったと思います”とかいうしかないですよね。

Tさん
私の場合は、アセットオーナーへの説明に際してはパフォーマンスとそれに自分たちがどう貢献したか、どういう変化が起こったかを説明してるわけです。注意しなければならないのはKPIと言った時に、CO2を減らします、気温上昇を抑えます、それに対してどう貢献しましたかっていうのはなかなか語れなくて、もちろん長期のアウトカムとして実現したい社会は気候の話であったりCO2の排出量出会ったりというのがあると思うんですけど、モニタリングの対象になっても投資家としてできるのは、さらにその前段階にあるKPIとして、例えばアウトカムを実現するための環境投資をどれだけできたのか、それを実効性をもって計画的にできたのかという事にになるのではないかと思います。つまり結果変数としてのアウトカムと説明変数としてのKPIを間違えないようにしないといけないと思ってます。さらに我々が変化に貢献するインパクト投資を行うためには、アウトカムに対して、いかに付加的に変化を起こせたかが重要で、気候やCO2がアウトカムなのも間違いではないのですが、そのさらに内側にあるものをKPIにしていかないといけないのではないかと思います。いえば、それに近いものを我々はクライアントとコミュニケーションしている・・・ということでしょうか。

MC
EUとかでもわずか数年前は「え?上場株でインパクト投資?」って言われていたのに、これだけインパクト投資重要だよねと議論されるようになって、でも本当は長期投資だからながーい期間のアウトカムをうまく説明できている人はまだいないかもしれませんよね。Tさんが言ったように、CO2を減らしますとかいって、そのこと自身はエミッションでモニターしていて、まあエミッションは直接的なのかもしれないけど、モニターしている数字たちが本当に10年とかで価値になっているかは分かりづらい・・・まだ検証できていないかもしれませんね

Tさん
なんか、因果がはっきりしないんですよね。投資家によるものなのかどうか・・・KPIがもつ意味というのは実際の結果が出るには時間がかかるんだけど、その過程が着々と進んでいるのか頓挫しているのかを確認するための指標で・・・だからもう少し足元に近い方が位いいんじゃないかと思います。

MC
なんかその・・・、まずは長期投資ですということで、長期投資は株価など頻繁にうごいてしまうものは説明要因として難しい、では財務は?といってもすぐに成果はみえない・・・そこで長期的に社会にインパクトを与えるKPI・・・モニターする数値があればアセットオーナーとわかりあいやすいかもしれない・・・というような議論を過去にこのセッションでも話したと思うんですけど、ではそういうことで何をモニターするのがいいのかという質の問題に入ってきたかと思います。というわけでKさんいかがでしょう?
Kさんがバリバリ運用されていたころは、あまりこういう説明はオーナーにされていなかったかもしれませんが・・・それでもご自身の中でモニターしているKPIがあったのではないかと・・・

Kさん
はい、私は散々KPIが大事だと言ってきたんですが、でも本当にそれでよかったのか、今すごく悩んでいるところです。たとえば今回のみずほのシステムの問題があったと思いますが、みずほのKPIは“システムを絶対止めない”だったんじゃないかと思うんです。でもそうじゃなくて問題を大きくしない、止まったらすぐ直す、にしていなかったからああいう問題になったんじゃないかと。システムなんて絶対壊れるのだから止まるのはあたりまえで・・・だからそれに対応できなきゃいけないわけで・・・

MC
そ、そこすごく聞きたいんですけど。システムが止まった時すぐ対応することができる会社のKPIってなんです? どうやってモニターします?

Kさん
・・・・でも、そこをちゃんとするマニュアルができていなかったんじゃない?

MC
そうすると、マニュアルをチェックしますとか?モニタリングポイントって・・・どういうことをみておけばいいのか・・・

Kさん
・・・セキュリティの人たちがそういう報告書をつくって投資家に見せなきゃいけないんじゃないか・・・。そういう話をセキュリティの人たちともしているので、経営陣だけじゃなくて、投資家ともコミュニケーションすべきかと。それをぼくらが分析できるかというと厳しいなと思うけど。でもこういうふうにやろうとしているんですということを説明してくれるだけでも違うと思います。

MC
そうですね、そういうガイドラインがあって、社内でどういうことを決めているかとかを開示してもらって投資家がチェックしてというのはあるかもしれませんね。でもそれってサイバーリスクなんかも大きくなっているから、どの企業でもやらないといけないかもしれませんね。

Kさん
全ての企業がみんなそうで、環境リスクも同じですけど何か問題が会った時、どう小さく収めるかというのは会社として考えておかないといけないのではないかと。

Hさん
うーん、企業のその手のことを詳らかに全部聞くのは大変というか、仮にみずほがそれを開示していたとしても、それをきっと全部読めるかというと・・・集中投資だったら読めるかもしれないけど、投資先は少なくてもモニタリング先は結構あると思うんですよ・・・入れ替えたりするし。それを全部見るというのはちょっと大変すぎて・・・それは社外取締役とかに頑張ってもらいたいなと思いますね。

MC
そしたら社外取締役をチェックすればいいかもね。社外取締役がシステムのこともわかるかどうか。それも見れるようなメンツになっているのか。

Hさん
それもあるけど、今回のことなんかは企業カルチャーというか、リスクに対する対応度とか。それを我々がチェックする時は、過去の歴史とかみて、理解しようとしてますね・・・・マニュアルとかじゃなくて。こういう対応をしてきたからこういうカルチャーの会社なんだとか。

MC
何よりも大きな障害を起こしてしまう会社を避けないといけない、あるいはエンゲージメントで防止しないといけない?

Hさん
こう言ったことは起こると思うんですけど、そのときどうするというコーポレートカルチャーを見る・・・そういうことかなと。

MC
銘柄数少ないTさんはどうです?

Tさん
とっても難しい問題だと思っていて、でも企業のインパクトの特定や管理についてはある程度クリエイティブであるべきで、外部が決めたタガをはめすぎるのは良くないなあと思っていて・・・。でもリスク管理についてはあるていどタガをはめていった方がいいんじゃないかなと思ってます。つまりインパクトを生み出すことと、リスクを下げることは別に考えた方がいいんじゃないかと思っているんです。リスクについては、インダストリーのアベレージなんかをみて、それに比べてここ弱いんじゃないかとか、そういう話ができればいいんでしょうか。。たとえばこういうリスクだと報告はちゃんとできているのか、実際の件数はとか、そういうものについては産業そのもののリスクとして横にみていくことができてもいいんじゃないかと。

MC
Tさんの投資先に対しては今は、あんまりみていない?まあサイズが小さいかもしれませんが・・・

Tさん
ええ、あんまり。確かにリスクはあると思うんです。でも今はそれよりポジティブなほうをより熱心にみていますね。る。Hさんがいうように両方見るのは難しくて。でも最低限見るべき流転、例えばIT産業ならIT産業、金融業なら金融業のテールリスクみたいなものをあげていってもいいんじゃないかと思いました。

MC
そうですね。今の社会的な問題はITの問題って小さな会社が担い始めていますよね。だかセキュリティとか個人情報流出とかに大きく揺さぶられるかもしれないので、インパクト投資という中でポジティブな面だけみていくというのはちょっと見直した方がいいかもしれませんね。

Kさん
・・あの、投資家への期待はとても高まっているかもしれませんが、みなさんおっしゃるように、少人数でやっているので、なかなかモニターが大変だということは理解して欲しいです・・・(笑)

続く

上場株インパクト投資の研究 4章(3)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

7月28日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 4章2回上

2021年6月12日前半

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
前回、HさんがKPIというか評価・オーナーへの説明に投資先企業をタイプ分けしているというところで終わったと思います。そこから始めましょう。このタイプ分けについて詳しく置き換えいただけますか?

Hさん
私のやり方は、ファンド設計の段階から企業のタイプをわけて投資しますということを、宣言しています。私は長期集中投資なんですが、①1/3は構造的な成長銘柄、②1/3はシクリカルナ銘柄、③1/3は超割安な銘柄に投資すると言っています。この3つのそれぞれによって投資のポイントや経営者に求めることは違います。たとえば①の会社には明確な成長ドライバーがあって、その中に環境や社会にインパクトがあるドライバーがあります。逆に③の会社は事業の安定性やキャッシュフローがあるのに割安に置かれているので、環境や社会にマイナスのインパクトがないかを確認しています。企業の投資の目的やステージによって必要なものが異なるということです。例えば、ガバナンスに関しては①の会社の取締役は成長ドライバーが明確なので、志を同じくする人が集まって早く決定をするほうがうまくいくということがあります。②の場合は、合議制より強いリーダーシップあってほかの会社が投資を躊躇するような局面で大胆な投資が出来る会社が成功してきました。信越化学などが典型的です。③の場合はできるだけダイバーシティを実現してい手安定している事が望ましく、経営者の暴走を避ける仕組みがあることが重要です。つまり企業のタイプごとに何を見なければならないかは異なっていて、それを事前に企業に対しきちんと説明して運用しているということす」

MC
ありがとうございます。考え方はよくわかります・・・中身については、③はダイバーシティなのか?とか思うところはありますが、皆さんのご意見を聞いていきましょう。

Tさん
私の場合は・・・私も集中投資ですが、中長期に社会全体が変わっていくようなメガ
トレンドにかけていくのが一つのテーマだと考えています。Hさんが①を成長ドライバーとおっしゃいましたが、我々はバリュードライバーという言い方をしていまして、企業価値をあげていくドライバーはなんなのか、各社異なるところを見ていくというやり方をしています。

MC
Hさんの③も“バリュー”ですが、それとは違いますね?

Tさん
はい、安いという意味ではないです。企業価値を上げていくためのドライバーという意味です。事業をどう伸ばしていくかというバリュードライバーもありますし、もう一つは開示で、本来企業が持っている価値がディスカウントされている時に、きちんとコミュニケーションして割引率を低減されることにつながるようなバリュードライバーもあります。

MC
ただ、TさんはHさんと違って3つに分けていない?

Tさん
分けられれば分けられるのかもしれませんが、このどちらが大きくなるかは個々の企業によります。

Hさん
ぼくみたいに3つに分けている人はあまりいないと思います。海外のブティック系だと自分たちはバリューにだけ投資するんだとかグロース株投資なんだとかいう形で私の言うどれか1つのタイプというケースが多いと思います。日本の運用会社は様々なスタイルのファンドを保有しているので、その辺りがファジーになっているケースが多いと思います。私はこれを明示的にわけようと考えました。どこを見るということもそうですが、どこを見ないということもはっきりと伝えます。たとえばこういう会社の場合はこの部分は無視します、とかはっきりと言います。多くの日本の投資家は全部を見ようとするんですけど、私たちの体力では効率が悪いので、ここにはこういうエンゲージメントするけど、ここはしないということを最初から言っています。多くの日本の投資家と同じように議決権行使とか、全ての投資先企業にちょっといいことをいうとかはやりますけど。Tさんたちのやっているような本物のエンゲージメントはものすごく労力がかかります。ぼくは30銘柄を二人でやっているので、エンゲージメントが投資に与える好影響が明確な7、8銘柄しか(エンゲージメントは)やりませんと言っちゃっているんです

MC
でもポジティブにいえば、企業の強くしたいところを集中的に見ているということですよね。企業にもあれもこれもいうんじゃなくて、“ここを力を入れて欲しい”とつたえているわけですよね。

Hさん
そうですね。その会社の企業価値向上につながるところだけエンゲージメントして、そのポイントがないところ、企業としてじわっとよくなるかもしれないけど、企業価値向上に反映されるかどうかわからない・・・たとえばシクリカルな会社では、市況の影響のほうが大きすぎて、その会社のガバナンスが多少よくなってもそれよりも市況が動く影響の方が大きいとかになると、投資期間に何が成果として現れたかわからない。エンゲージメントよりもタイミングが重要になってしまうので、そこをやっていない・・・コミットしてないんです

Tさん
私もアセットオーナーとのコミュニケーションにおいては、その10社ぐらいについて、今何をやっているかを話すにつきるんですよね・・・個社独自に企業価値につながるものは何か考えるというのはHさんと極めて似ていると思います。

MC
Tさんは10銘柄でHさんの1/3なので、分類するより一社ずつその時その時考えて・・・ということですよね。Kさんはこの2人よりずっと多くの銘柄数で運用してこられたと思うので、Kさんはいかがですか?

Kさん
はい、あの・・・私がやってきたのは超割安なところだけでやってきたので、もちろんリスクとしてのEやS、そしてGを見てきましたけど、どうしてこの会社はこんなに安いのか?企業価値を変えることはできるのか、一社ずつそれを見つけるということをやってきたのですが・・・。

MC
Kさんはまさに、さっきHさんがいった③で、しかも超③(バリュー)なのですね。非常に問題のある会社をみつけて、少しでもよくなるようにしてきた・・・だからESGファクターはリスク面でみてきたということですね。

Kさん
リスクでもありますが、変わればプラスです。マイナスからプラスになるのはすごく大きいインパクトです。EやSもそう認識されてない会社が変わる時、それはとても大きな変化になります。

続く

上場株インパクト投資の研究 4章(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

7月21日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 4章 1回下

2021年6月9日

(このブログは毎週水曜日、クラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
20銘柄ぐらい投資すると、1社が2、3個の成長のドライバーがあって、そうすると60個ぐらいのKPIをウオッチすることになる?

Hさん
会社ごとにKPIが違うのでそういう感じですが、ただ3つのうち全てが社会インパクトにつながるというわけじゃないです。だから20個ぐらいかな・・・。

MC
この20個はテーマ的に相関しないのですか?

Hさん
相関するものもあります。でも相関しないテーマを10個ぐらいは持ちたい。全部が相関すると、一つの前提が違うと全部崩れてしまうので。10個ぐらいあれば、何かがダメでも何かで補えたりします。それがあるから、お客さんがポートフォリオマネージャーに預けるのだと思います。

MC
ちなみに、今、もちろんいろいろ、色々あると思うのですが、Hさんにとって大事にしているKPIはなんでしょう?

Hさん
そうですね。日本が高齢化にむかっていて、その中で特に人材の採用が難しい中堅の企業は人手不足の中でどんなに効率的に仕事ができるかとか、効率化に貢献できる会社には注目しています。

MC
なるほど

Tさん
あの、例えばSDGs的に重要度が増しているものって確実にあって、KPIというよりアウトカムと呼ぶべきなのかもしれませんが、投資を通じていいインパクトを出せるビジネスを増やすというのを目指しています。ただ、KPIっていうのはそのアウトカムに合理的に向かうための内部的・・・・外部に出してもいいかもしれませんが、指標ですよね。だからバランススコア的なものに結びついていくと思うのです。そうすると、財務数値をしっかり出していくために雇用をつくっていくとか、採用をしっかりやっていくとかいったKPIが必要になるのだと思います。ただ成長サイドに加えて、守りの方もしっかり固めていきましょうというマテリアリティのところを、成長のためのKPIとは別にたてていくというのがあって。ESGでいうS、雇用のところなど、そういうのが重要度を増していると感じています。攻めだけでなく、守りのところが

MC
Hさんは高齢化、働き手が少なくなる中でその助けになるビジネスなどがいいのじゃないかと思っている、Tさんは事業によらず、従業員をどう大事にしているとか、そういうことでしょうか。

Tさん
うーん、言いたかったのは攻めのKPIと、守りのKPIがあるってことなのです。攻めのKPIは財務データに結びつくので、いわゆる従来型のエンゲージメント投資にも近いですよね。ただ現状のインパクト投資の管理手法は網の目が大きすぎてそれをモニタリング出来ない気がするのです。もちろん従来のエンゲージメント投資にはなくて学ばなければならないこととしてリスクサイドをしっかりおさえていくというのがあって、その意味では守りのKPIの重要度も高まっている・・・ということ。

MC
わかりました。でも今はとりあえず、いろいろちょっと置いておいて、今どんな投資をしたいと思っていますか?・・・日本の問題をどう解決したいかとか?

Kさん
変わるには、仕組み自体を変えないといけないと思うし、それをする会社に投資したいのです。一般的に“いい会社”ではなく、変えていくことができる会社、それはバックグラウンドとして、その仕組みがある会社、技術がある会社に投資をしていきたいと思っています。

MC
Kさんは、たとえばゴミ処理の技術をもっているとか、“この会社”あるいは“この技術”がいいという会社ではないところをあえて見ていこうとしているからで、今そのように思われるということですか?

Kさん
うーん、それだけじゃなくて、いいところを持っている会社でも、それがいいということが顕在化していない会社もみています。

MC
ではKさんが、“この会社変えていく力ある”、“いいインパクトがある”と思う会社の事例ありますか?

Kさん
たとえばゴミ。田舎にいくと、そこら中に電気製品とか捨てられているんですよね。それを変えていくにはどうしたらいいか、というのはちゃんと会社が対応するしかないと思うので、それができる会社。またプラスチックにしてもいろいろ言われていますが、それをちゃんと処理できればいいので、そういう仕組みづくりをしようとしている会社を応援したいと思います。

Tさん
私は、社会が壊れ始めているなと感じているので、それを食い止められる事業を増やしていきたいと思っています。最近考えているのは中小企業のエンパワーメントをどうしていくか。DXをどうやって作っていくかなどに取り組んでいます。弱者に機会が与えられなくなったらいけないと思っていまして。。。だからそのための企業を選んでいきたいと思っています。

MC
そういう企業はどうやって見つけて、見極めているのですか?

Tさん
そこについては、通常のビジネスモデルチェックをするということかなと。

MC
それをどうやってオーナーに説明していますか? 

Tさん
それはできなかったら運用の仕事やめたほうがいいです!

MC
ははは。でもこういうインパクト投資でモデルができたりしているのは、“説明”をしやすくするためですよね。SDGsの17個のゴールもそうですよね。何を目指しているのかとか。色々なことが言われていますが、どんなインパクト投資でもいいと思うんですね。共通のゴールをアセットオーナーとどう共有するか、どう進捗を説明するかはKPIなのかなと。

Tさん
あ、確かにそれは社会インパクトを定量的に説明するというのは別です。そうなるとやっぱりサービスの導入率とか・・・ただ内部的な取り組みもみないといけないですよね。エンジニアが増えているかとか・・・

Hさん
私は企業のタイプごとに見なきゃいけないことを決めています。大きな枠組みを決めていて、セグメントごとにこことここを見るって決めているんです。経営者もタイプごとにわけていて・・・

MC
その分け方とか、詳しく聞きたいので、来週はここから再開しましょう。

上場株インパクト投資の研究 4章(1)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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上場株式でインパクト投資 4章 1回上

2021年6月9日

(このブログは毎週水曜日のクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
いよいよ第4シリーズです。1シリーズ4回だから、このシリーズを始めてもう3ヶ月たったということですね。この間もインパクト投資ってなんだと言っているいろいろな人の意見も踏まえて議論してきたのですが、個人的にはどんな定義でもいいとおもっています。重要なのはアセットオーナーに理解されることなので、それにはKPIが重要だと思います。成果を見せないといけないですから。そこでコンシリーズではこんな議論をしたいと思います。もしここに大金持ちのアセットオーナーが現れて、“君に1000億あずけるよ、社会に意味のある投資をしてほしい”って言われたらどうしますか?ではTさんから

Tさん
うーん、1,000億・・・。私みている会社の規模が小さいから・・・いくらで運用したいっていわれたら300億とか400億なのですかね

MC
質問はKPIです。

Tさん
あっ!すみません。お金の話聞いちゃうと実際に考えちゃう(笑)。うーんでもKPIについて語るなら・・・各論になっちゃうのかなと思うのですよね。今見ている時価総額2,000億以下の企業で継続してウオッチしているのは5、60社あるのです。一度それを精査して、自分たちが今やっているエンゲージメントテーマをSDGsの役割で整理できるところが何社あるかみてみたらそれらの中で6割から7割あったのです。それを積み上げていけば、2〜300億の投資をする自信はあります。でもKPIというのを考えた時、クオリティをあげていくのはまだまだ障害が多いのかなと思っていて。例えば最近見ている会社でAIをつかったIT企業で、グリッドコントロールなどでエネルギーを効率的に使うといった、インパクト的にイメージしやすい企業があります。でもこれがIRIS+とかでKPIを探すと、ITでクライメートを語れる指標のってあんまりなくて。リスクサイドがあるぐらいです。だから私はポジティブなテーマを財務データとあわせて説明できるKPIを作りたいけど、それは今のインパクト投資の枠組みでは認められないのかなと思ったり・・・」

MC
そんなことないですよ。リスクとリターンはセットですし。EUでも、ITは電力を使う割合が多い産業なので、初期のタクソノミにも入っています。電力を減らすこともできるかもしれないし、新たなイノベーションも出せるかもしれない、だからいろいろできそうですよね。でもそういった既成のKPIに拘らなくても、ご自身でエンゲージメントやオーナーへの説明でKPIおいているでしょう?ではKさん

Kさん
いろいろあると思うのですけど、今世の中でインパクト投資のファンド増えつつあるのですが、中をみると太陽光発電とか電気自動車の株がはいっていて、そりゃそうだよねと思うのです。でもインパクトとESGって何が違うの?と考えると。やっぱりいまいいかどうかより、“社会を変えていける”ということに注目しなければならないと思うのです。そうすると、いわゆる“良い企業”ばかりに投資するのではなくて、変わっていける、変わらなければいけない企業に投資し、投資家としてインパクトを与えていかなければならないと思っていて、そう考えると結構幅広くできるかなと思っています。いろいろな会社でできるはずだと・・・。だから一社ずつ、ぼくらがこの会社にインパクトを与えることができるか、あるいはこの会社はそれを受け入れることができそうか、を考えながら投資をしていければいいなと思っています

MC
Kさん、具体的な例はないでしょうか。インパクトとか一回おいておいてもいいです。Kさんが普段ものすごくよく見ていたのはなんでしょう。

Kさん
KPIって一つじゃないと思うのですよね。企業によっても違うし。一つ一つ違うものを設定しないといけない。昔やっていた時はあんまりKPIたてていなかったな・・・またどちらかというと財務的なKPIで環境のKPIに落としていなかったなと反省しています。

MC
たとえば、1年目にエンゲージメントをはじめて、2年目、3年目に社外役員が増えるとかそういう計画的なアプローチをされていました?

Kさん
だいたい、ニュアンスはそんなかんじでした。社長たちの任期を考えると3年ぐらいがちょうどいいのかなと。中計も3年とかが多かったです。でも実際は、もっと長くなったり、逆に短くなったりしていると思います。また、今は非財務の方もと企業が考え始めたので、我々も言いやすくなりました。

MC
では次はHさん。ここにアセットオーナーが現れて、“君にこれを預けるよ”っていわれたら?

Hさん
前提として、株主投資の中でインパクトを投資に繰り込むのと、“インパクト投資してください”って言われるのは違うと思うのですが、私は前者で、20-30銘柄ぐらい投資しています。それ以下の銘柄数にすると、リスク特性が資金の出し手が考える株式への投資と乖離しちゃうからです。株式投資をしている以上、トータルリスクは市場と同じになっていることが大事かなと思います。そしておのずと各企業の大きさも決まってきます。そう考えると東証って、今3800ぐらい上場していて、その中の2,000社ぐらいは流動性から見て投資対象にならないです。だから半分ぐらいが投資できて、その中で構造的に成長していて、長期に投資できるのはだいたい三百社ぐらいと思います。逆にどうしようもなくて、どんなにESG的改善したとしても、ビジネスとして構造的に衰退しているどうしようもないところが200ぐらいはある・・・・衰退している企業はもっと多いと感じている人はいるかもしれませんが、私がここで言っているのは、経営が改善したとしてもコアのビジネスが既に社会的役割を終えていると思われる企業の数です。それからいつも割安におかれていて、いつか上がるかもねといってもなかなか難しい企業が500ぐらいあり、長期的に見たら緩やかに成長しているのですが、マクロの影響を受けやすく市場要因が我々の言うインパクトの要因を上回る企業がそれ以外といった感じの市場だと思っています。そういう中で、KPIを置きながら、しっかりやっていけるのは構造的に成長している会社の300社ぐらいになるのかなと思っていて。これらについては必ず成長のドライバーがあり、それを追いかけていく。それはたくさんあるものじゃなくて、どの会社もマックス3つに絞り込めます。それを追いかけていく中で、それが社会インパクトの中に何か結びついているドライバーなのかどうかだと思うのです。そこで選んでいくとさらに構造的に持てる銘柄の中でのインパクト投資は結構少なくなるのかもしれませんし、リスク特性は偏ったものになる可能性があります。

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(7)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

7月21日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 4回下

2021年6月2日

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
東京ガスは“生き残りのために必要”といいながら、あまり練れていない計画をだしたように見えるということですね。Kさんにお伺いしたいのですが、Kさんはいつも“配当については重要な約束だ”、というようなご意見だと思いますが、その東京ガスの今回提示された計画自体についてどう思いますか?また他の投資家も今年の配当が云々ではなく“長期にネガティブだ”と判断した可能性についてご意見をお聞かせいただけますか?

Kさん
東京ガスさんは環境関連で良く表彰されていて、そっちに力を入れられているのかなと思います。株主とか企業価値ではなく、そう言ったことで表彰されようとしているのかなと。一時的には配当を増やしたり、株主のこと考えていますよみたいな見せ方をしていたのですが、それより環境のほうが会社として好きなのかな・・・ちょっと残念だなと思います。もうちょっと総合的に考えて経営していけばいいのに。賞とかもらいたいのかもしれないけど、少し寂しいなと。

MC
でも東京ガスさんは、環境への投資をうちだすことによって長期的に考えているとご自身は思っているのでは。もちろんTさんが指摘したみたいにその計画は練れていないかもしれませんが・・・・。

Kさん
長期的に何を考えているかですが、私は企業業績とか、社会の変化の中で東京ガスがどうやっていくかより、とりあえず環境関係でやんなきゃならないことをやりましょうと、ちょっと焦っているようなかんじで、今までやってきたことをおじゃんにしていこうとしているようにみえ、配当を増やしていくというのもやめていくということであれば、しっかりコミュニケーションをとるべきところをやっていないのが問題だと思います。

MC
それはそうですね。東京ガスさんはでも単に二酸化炭素を減らすとかじゃなくてビジネスそのものだから難しいというのもあって、確かに焦ったのかもませんね。

Hさん
そうでうすね。長期投資家がどう判断したかは実はまだわからないと思います。感情的に反応したのはけっこうあったかなと。コミュニケーションが悪い時は短期的にはあると思います。そういう短期の株価の動きは、ぼくは全然気にしていなくて。株価ってよく間違えることがありますから。だからそれに過剰に反応せず、長期的な価値に確信があるなら、私は気にせず買っていくタイプなので。実際に環境に対する投資にどれだけお金がかかって、どんな効果がいつごろでてくるかをもっと丁寧に説明する必要があると思います。そうすればこの投資はこういうふうに企業価値をかえていくよね、ということがわかっていくと思います。投資家やらなきゃいけないことを見てこなかったということがあるとすると、投資家としても手落ちで、それはお互い反省しながらコミュニケーションしていけばいいと思うのですけど。

MC
今のところ、もうちょっと皆さんに聞いてみたいのですが、似たようなことがこれからどの会社でも起こると思うのですが、気候変更に対して大型の投資をすれば何らかの資本の割り振りをしなければならないと思いますが、そういう時、事前にどう投資家とコミュニケーションするべきか、またご自身が投資中の企業が、大型投資をすると言い出したとか、びっくりさせられることがあったとき、どう考えるかとか、ご意見をいただけないでしょうか。

Tさん
これって東京ガスさんにとっては一丁目一番地のトピックスですよね。普段から対話し続けてなきゃいけない議題だと思います。今マテリアリティをめぐる開示とか広まりつつありますし、それについては世の中の仕組みが求めている形に従って粛々と普段から対話をしていけばいい効果が発揮されるのじゃないかと思います。とは言え脱炭素はマテリアルな課題として対話するけれど、とりあえず配当は下げてもらったら困ります、じゃなくて、財務情報も含めてマテリアリティを語る事が必要で。配当を下げてもいいけどそれがどう報われるかきちんとコミュニケーションしてくださいという方向に振らないといけませんよね。

Kさん
私も似たようなことを思いますが、あまり配当のこと話すと重要提案行為になるので、それが問題だなと。重要提案行為は金融庁の規制ですが、これは変えなきゃいけないところだろうと思っていて、そうでないと資本の効率をどうするかとかしっかり話せないですから。だから東京ガスもかわいそうで、事前に配当に関して投資家の意見を聞きたいと思っても、重要情報にひっかかりあんまり話せない、これは不利なところだと思います

MC
ありがとうございます。では次にHさんにちょっと違うことを聞きたいのですが、インパクト投資といえどもオーナーがいると思います。アセットオーナーを抱えるものとして途中のキャッシュフロー、配当のことは無視できないと思うのですが、そういう資本配分とかは日ごろから心がけていることありますか?つまり、特にインパクト投資のような時、投資先の企業は大きな資本投資をする可能性もありますと、そうすると最初から投資戦略を、頻繁な配当の増減によらないように設計するものなのかとか・・・もし心がけていることがあれば

Hさん
そうですね。企業が生み出すフリーキャッシュフローの部分を投資とか、株主還元にどう使っていくかの割合は通常の会話の中でいつも出てくる話で、どう配分することによってROEをあげていくか、下げないようにするかということをいつも考えていないと、利益があがってもROEが下がっていくということが起こりえるので、日本では単年度でROEいくらみたいな企業がよくありますが、そういうことではなく、長い目でどういう配分をしていくかを常に議論していくことが必要だと思っています。

MC
そうですよね。単年度の配当性向に対する議論が多いというのはよく指摘されますよね。それからこういった投資が注目されていくなかで投資家側ももう少し投資のやり方を考えていかないといけないんでしょうか

Hさん
うーん、それぞれのスタイルがありますから、私は、単年度の影響をうけないような説明をお客さんにしていますし、だから株価がちょっと下がってもお客さんと笑っていられるというか・・・

MC
すばらしい!あと30秒あります。ご意見ある人

Tさん
そうですね、今ラージミーティングでESGがらみの質問される人いますが、正直まだ質問のクオリティーが高くないのかなと・・・。たぶん投資家側の洗練がもっともっと必要になってきて、それは繰り返しですけど、統合的な能力が必要なんじゃないかなと思います。

続く