資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第一回(下)

2021年3月17日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
みなさんの投資についての考え方をお聞きしまして、“インパクト投資”って伝統的な金融の役割そのものじゃん・・・というのは全くその通りだと思います。それでは、みなさん今一番“インパクトを起こしたい”と思っている分野ってなんでしょう?

Tさんの場合(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
インパクトって本当はすごくイシュードリブンで、小さなところでしっかりインパクトを出していくというのが結構あると思うんですね。ただ自分は上場企業に投資しているので上場企業のスケーラビリティを勘案して、それよりは少し大きなインパクトを起こしていけることを考えていきたいです。では何を課題として選ぶかですが、今の日本の課題として、日本だけじゃないかもしれないのですが、どんどん住みづらい国になっている気がします。機会が平等でなかったり・・・でもそれって同時にビジネスチャンスにもなりうる訳で、こういう課題を解決するような投資をしていきたいと考えています。そして投資家がパートナーとして助言しインパクトを強化できるような事が出来れば・・・。

Kさんの場合( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
今私のお客さんなんかは、ヨーロッパの年金基金などですが、自分が(アセットマネージャーを通して)投資している企業全てのエミッション合計とか出すためにそれをアセットマージャーに開示しろといってきますし、かなりセンシティブになっていると思います。
そのような中で、積極的に投資したいというのと、積極的に投資したくない分野というのもあると思います。私が投資を始めた頃、サラ金にすごく苦労している人が周りにいて、
でも当時サラ金て非常に割安で。興味深かったんですが、いろいろ考えて、投資を止めました。やはり世の中に負の影響を与えているのであれば、そこに投資をしないというのも重要かなと思っています。

MC
その頃って、もう“タバコ・ダイベストメント”て、始まっていました?

Kさん
うーん、やはり欧州のお客さんなんかでは、タバコに投資するなというところ、ありましたね。私自身は嗜好品なので全部いけないとは思っていなかったのですが、このままだと将来の売り上げとか考えれば、やはり投資すべきじゃないなあと思いました。

Hさんの場合(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
私はあんまり、こういうテーマで投資しようって設定しないのですね。でも長期投資という観点で、社会がこれからどういう風に変化するかということを考えて、その中で企業がどんな役割を果たしていけるかを常に考えることになるので、その中で社会でポジティブな方向にいっているかとか確認をします。大きなテーマ、水の問題とか、気候とかありますが、実際企業と話していると細かいテーマがありまして、その中に共通の課題がみえてくる・・・たとえば働き方をどういうふうに変えるかとか、やっぱりボトムアップの対話の中から出てくるテーマってあるんですよね。そういうのを細かくみていくのが私のやり方です

Tさん
日本のいくつかの社会課題って解決方法も一つじゃないですよね。共通してお互いに影響しあっていて、そういう課題を一つ解決する企業って、いろいろなことが解決できる気がする。

Hさん
似たような課題を持っている会社がいくつかあって、それぞれを同時にみていくと、いろいろ気がつくことがあるんです。こうやっていくと乗り越えていけるんだ、ということがわかってきて。

MC
そうすると、Tさんは大きなテーマ、Kさんはやるべきではない投資とは何かを考えてきた、Hさんはテーマを決めるよりボトムアップで、ひとつひとつの課題を解決していく・・・そんなふうにインパクトをみているんですね。そうすると

Tさん
大きいっていうか・・・例えば今感じているのは、日本において機会がすべての人に平等に与えられなくなってきているとかいうことなんかで。もう少し身近な例だとデジタルデバイドみたいなもので、ドコモに八千円払っている人がハッピーなのか、本当は格安携帯で十分なのによく知らないだけとか、それはIT教育やITサービスの開発なんかで解決していけるんじゃないか?とか自分も個別に考えているところもあるのですが・・・でもやっぱり最初は大きなテーマでみているのかな・・・

MC
そうですね。Tさんがデジタルデバイドをみるとき、それが世の中をどうやって変えていくかをみている・・・ということですね。これに対しHさんは決めずに掘り下げると・・・たまたまデジタル対応が問題だったりする・・・?

Hさん
そうです。例えば今の話だと、中小企業の中にはデジタル化に対応できないためにビジネスを逃しているところがいっぱいあって、で、そうすると今度は、そういう中小企業を助けるビジネスができてくる。彼らがどんな点を助けているか、何が中小企業から求められているかを考え、具体的に解決している企業を探すみたいな・・・、自分はそういうかたちで取り組んでいます。だから、どこで課題を見つけるかの見つけかたの違いかなと思います。本質的には同じになるような気がします。

MC
結局どういうふうに課題を見つけるかは異なれど、最終的に企業の価値を見つけるという投資家の役割は同じところにたどり着くと思うのですが、最初に戻って、このインパクト投資が欧州で流行って議論が高まっていった背景としては、アセットオーナーとアセットマネージャーの間で自分が何の社会的課題を解決したいと考えているかをわかりやすくするコミュニケーションの部分かなと思っています。このシリーズでは続けて“自分の投資をどうやってアセットオーナーに分かってもらうか”とか、“企業にもどうやって分かってもらうか”などを話していきたいと思いますが、まずは次回は、“上場企業への投資でインパクトってどうやって起こせるのか?”について話して見たいと思います。

続く