資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、5月12日はメンバー都合により時間を30分送らせて、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第二回下

2021年4月21日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Hさん
ぼくはちょっと違います。(それまでのやりとりとは<ブログ11のURL>参照)企業の経営者は個人的な考えがあったとしても、企業のCEOとしての発言は企業に対してのものであると考えています。ウイグルの話とか、ジョージアの話とか何が正しいかが情報によって変わってしまう場合もあると思うので、リスクをとって話してしまっていいのかどうか・・・話さなくて済むのであれば話さなくて良いのじゃないかと思います。でもそこで何か対応しなければ、たとえばジョージアで工場の黒人の方が多く働いていて影響するとか、そういうダメージをどうやってコントロールするかということがあると思うので、あくまで自社の企業価値に対するインパクトを考えて発言するものだと思っています。その中でを自分たちで状況分析をすることが重要だと思います。そうすれば投資家は安心するのじゃないかと。

MC
投資家としては、投資先企業がこういうことに直面した時どう振る舞うべきだと思います?

Hさん
経営者にこちらのほうからプッシュすべきだと? たとえばファーストリテーリングについて柳井さんに何かいうべきだと?

MC
あるいは状況によると思いますが、たとえば、発言しなかったことによって業績へのインパクトなり将来への影響について考えさせるとか。

Hさん
発言してもしなくても、なんらかのインパクトがあると思いますけど。柳井さんのケースはそこに一線を張って喋らないようとしているのは経営者としての見識なんじゃないでしょうか。ファーストリテーリング一社で出来ることの限界も踏まえる必要があると思います。自分たちの中では差別的なことはしないとかできると思いますが、国の体制について何かできるかというとそうではないと思いますけど。

MC
確かにいろいろと難しい地域もあるかもしれませんが・・・。

Hさん
中国内では我々が持っているイメージと全く異なるイメージで捉えているかもしれない。ファーストリテーリングなどは事業をしているので我々がニュースで得ている情報処理もより現地の情報を持っているかもしれないし、それも踏まえて何が正しい情報で今世間の反応がどうなっているのかを判断した上で喋事を判断しなければならない。

MC
・・・でも本当に事業のことだけを考えた場合、中国内外の顧客のことを考えながら発言しなければいけない時もあるのでは。実際批判されたわけですしね。ではKさん

Kさん
投資家側の視点からいくと、ぼくはどちらでもいいかなと思います。投資家はポートフォリオを組んでいて、環境のことばかりやっている会社もあってもいいし、社会のことに取り組んでいる会社があってもいい、そういう会社が倒産していくとか悪い影響を与えることだけを避けてくれればいいかなと。全体的にはある程度リターンが得られ、そういったことにも考慮したポートフォリオが組めればいいかなと思っています。すべての会社が素晴らしい会社である必要はないのかもしれない。あとダノンの件なんかでも、会社がそうすることによってこういうメリットがありますよと、また社会にもメリットがありますよと道筋をしっかり示せなかったからいけないんじゃないかなと思っています。

MC
はい、ありがとうございます。もちろん地域によって消費者の反応はものすごく違うと思うのですが、前回からみなさんがおっしゃってきたように、将来にわたって消費者がどう思っているかを投資家が読み取り、それが株価に反映していくとなると、発言するかどうかはともかくとして、CEOに影響をきちんとウオッチして欲しいと、という投資家から求めるということはないのですか?

Kさん
投資家から求めるというより、投資をする以上開示して欲しいと思います。そして納得すれば投資家は投資するし・・・、ということだと思います。

Tさん
あの、ご質問は2つあって、ソーシャルインパクトのプロフィットをどう考えるんだというのもあると思うのですね。やっぱりESGテーマなるものを考慮しながら投資を行なっていくっていうのは、まさに今課題提起してもらったようなことを考えていくと、自分が投資を通じてこのインパクトを強化するお手伝いをしたい、それによってリターンを底上げするというロジックを持つべきだと思いますので、今の例に照らし合わせると、ウイルグルの事件に直面している企業があたえるソーシャルインパクトってなんだと考えた時、そこに注目して投資していたら、柳井さんの判断はインパクトを強めるのか、弱めるのかという軸で判断するべきですよね・・・

MC
そうです。何か起こった時少なくとも投資家として、経営者がこの問題を自社の事業に対しどう思っているかは聞くべきかと。そして対応をきちんとすれば企業価値もさらに上がるかもしれないし。

Tさん
そうですね・・そうなのです。ウイグルは難しいのですけど・・・。この市場から撤退しましょう、他に何か探しましょうとか理解し、一緒に考えていくのが仕事なのだろうなと思います。

ゲスト
なかなか、悩ましい問題なのでスパッとは割り切れないとおもうのですよ。ウイグルという市場から撤退しましょうといえば、そこで雇用機会を与えている点についてはどう考えるのかとかね。ウイグルの工場の中ではちゃんと人権を守っているという言い分もあるでしょう。だけど外に対して傍観者でいいのかとか。Hさんが言っていたみたいに、個人として発言したのか法人として発言したのかという問題なのだけど、個人として言ったってインパクトはないからそれはさておき、法人として発言する時、取締役会決議をとるのかとか。具体的なプロセスを考えると難しい。ジョージア州のデルタやコカコーラは発言前に取締役会決議をしています。だから人権問題はユニバーサルバリューだと考えて発言した方がいいという考え方もあるけれど、たとえばウォルマートが銃を自社の店では売らないと決断したのだけどそうすると銃賛成者はウォルマートでの買い物を控えるようになり、逆に民主党はたくさん買うとか意見が割れるものと割れないものというテーマがあります。状況によって変わるので原則を言いづらいかもしれないけど、少なくとも問題意識と何かあった時のプロセスを企業側も、投資家側も持っているべきかと。そして最後はフィデューシャル・デューティをどう考えるかという問題になってくると思います。社会的問題とリターンをどのようにバランスさせるかをあらかじめ言わないといけないでしょうし。まあ個別具体的に考えていくしかないと思っていますが。

MC
はい、ありがとうございます。やっぱり私としては、興味深いのは前回までみなさんがお話しされていたことと、整合しているかなんですね。ですので、仮にCEO“個人で”といって発言しても、報道では会社と切り離せませんから株価に影響したりするでしょう。そうするとみなさんも顧客との説明責任があるでしょうから、何らかのことをする必要があると思うのですね。また人権についてですが、上場企業は自社のポリシーを発表するように促されています。こういう事態の時のためだと思うのですが、企業側も日常的に言っていたことと何か起きた時に違うことをしていないか、違うことをしていれば、短期的な問題は気にしないとはいえ、なんらかのネガティブなインパクトがあるでしょう・・・

Kさん
我々がいうインパクトって、もうちょっと具体的なもので、今日のってソーシャルインパクトみたいなものが多いのですが、その部分って思想とか考え方みたいな影響すると思うので、ぼくらは考え方みたいなものには投資してないのですよ。

MC
いや、顧客の反応だと思うのですよね。その企業のフィロソフィーとかじゃなくて、あくまでも顧客の反応、収益の問題が問われているインパクトだと思うのですよね。

Kさん
そうなのですけど。そこのところについてウイグルのことが良い悪いとか、そういうことについては投資してないです。

MC
もちろんそうでしょう。

ゲスト
他にも社会に対するインパクトとしては、従業員のやる気とか、働きがい、プライドに繋がるケースもあります。

MC
それも同じで、思想をいいと思うか悪いとおもうかではなく、事業に影響があるかどうかなんですよね。インパクト投資、基本的に同じだと思います。思想ではなく。残念ながら時間です。一週間考えて来週もまたここからスタートしましょう!

続く