資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

本日、6月9日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 3回下

2021年5月5 日

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Tさん
インパクト投資的には各論で話すのが正解なのかなと思います。ひとつは、さっき言ったようにユニクロがウイグル調達をやめてその分を価格に乗っけますと言っても消費者がそれを受け入れてくれるなら企業価値が変わらない可能性もあり、それを見極めて投資家は提言していくことが必要なのではないかなあと思いました。

MC
たぶんアセットマネージャーはそういうことが判断できるよう、多くの情報がないといけないですよね。たとえば日本の消費者は全然気にしないかもしれないけど、ある地域は非常に反応すると。グローバルなアパレル産業であればどの地域の売り上げが大きくて、どこの地域の反応が自社の事業にとってインパクトがあるかは経営者も考えなければならないでしょうし、投資家も一緒に議論していくなら同じように理解しながら進むしかない

Kさん
程度問題というのはもちろんあると思うし、それによって食べていくことができない人がでてしまったら、経済的に、社会的に問題だと思うのでそこをどう捉えていくか、非常に悩んでいるところだと思います。悩みながら考えていくというのが一番重要で、企業として悩んでこういう結論になったということであれば、それに納得ができればそれでいいし、あるいは投資を止めればいいと、私はそう思っています。

MC
日本では導入されていないけれど、ユニクロやH&Mも対応していると思いますが、いくつかの国でモダンスレーバリーアクトなどが導入されていて、企業としても人権についてはどう対応するか宣言しモニターをする体制になっていると思います。(その法律の影響がある)地域に多く投資しているアセットマネージャーと、そうじゃないアセットマネージャーの間には、もしかしたら少し将来に対する見積もりの仕方に差が出るかもしれないでしょうか?

Tさん
そうお思います。でも今の話し、面白くて、たぶん同じユニクロコットンについても日本とヨーロッパの消費者で全然違う反応が出ると思うのです。ひょっとしたらヨーロッパの消費者は日本ほど寛容ではないかもしれない。H&Mにとって、当然ユニクロもですが中国も大きな市場だと思うのですが、たぶん既存のお客さん、社会におけるブランドなどへの影響を考えているのでしょうね。

Kさん
やっぱり企業って、従業員がいて社会があって、そのバックグラウンドにある程度しばられていくでしょうし、それでいいのかなと思っています。

Hさん
ぼくからすると、企業がその考え方をしっかり説明しているということが大事で、そこの部分で会社のカルチャーとかがわかってくるじゃないですか。彼らがもともともっている長期のビジョンがあって、その中でいろいろなことが起こってくる、それで一つ一つ会社と話し合いながら“あ、こういう時この会社はこう考える会社なのだ”ってわかってくると思うんですよ。ぼくは一個一個の事象でどう判断するかまでは重視していなくて、その時どう考えて行ったかの積み重ねをトラックしていくことかなと思っています。

MC
そうですね。つまり企業とアセットマネージャーで向かい合った時、企業がどう思っているかを聞いて、考えが欠如していると思ったら、きちんと考えるように促していこうと思いますか?

Hさん
というか、そういう方針がない会社にはもともと投資しないわけです。普通はそういう考え方を確認してから投資するわけで・・・そういう考え方を持たなきゃいけないのですよとか、資本コスト考えなくちゃいけないのですよとか説明しなくていい会社に投資したいなと

MC
(笑)そうですね。前シリーズからつねにHさんは“いい会社”に投資するという方針でしたね。Kさんとかはどうですか。Kさんの投資方針はどちらかというと、できていない企業に教育する側だったかなと

Kさん
やっぱり企業も、国だって昔は奴隷貿易だってやっていたんですから、ずっと変わってきたと思うんです。まだまだ変わって行かなきゃいけないことはあると思いますし、それが変わっていけるように私たちは支援していけたらと思っています。

Tさん
これ難しいと思うのですよ。ともすればESG投資とまざってしまうし、ユニバーサルオーナーのパッシブの人とアクティブの人でいうこともちがうでしょうし。それぞれの立場によってわけて話していくステージに社会全体がきているように思います。これに比べGとかクライメートなどのほうがわかりやすいのかも。

MC
そうですね。GとEはだいぶ、日本と世界の違いも狭まってきたし、マーケット参加者の中でコンセンサスも得やすくなってきたと思いますが、Sはいまでも難しいかも。

Tさん
先行研究でみても、Sへのエンゲージメントは、ダウンサイドリスクを抑えるというか、なかなか実効性のある数値が見えにくいというのがあるようで、それって社会が違ったり、立場による違いがあるからだと思うのですが

Hさん
そもそも、コレクティブエンゲージメントで充分な議決権を持つ株主がまとまって社会とか環境をやったケースって過去ないと思うのですよ。

MC
環境はあるのじゃないのですかね?

Hさん
環境でもまとまって提案できて実際に達成されたことってほとんどないと思うのですけど、こういうことができたのは英国などでもガバナンスの極めて限られたイシューだけだと思うのです。社会なんかだと全員の意識を一致させるのが難しいからだと思うのです。

MC
インパクト投資のテーマでもSに関わる事はまだ多くはないかもしれませんね。

Kさん
でもコンゴの問題とかやりやすかったかも。他には資源とか。

MC
いつもきてくださっている方からご質問がきました。ミャンマーについてはどう思いますか?もし投資先が関係していてご意見があれば。進出しているとか従業員の安全とか。

Tさん
ちょっと思い当たらないのですが、同じコンテキストでいうと現状の軍政権下のミャンマーで事業をやっていて・・・ということですよね。

MC
そうですね、海外であった議論はまず収益が軍政権に行くことをどう考えるか、または現地子会社で操業を続ける場合従業員の安全はとか。一方ミャンマーの人々の生活に影響がないように、その部分は継続して操業するという会社もありましたね。

Tさん
今エスカレートしている状況に対してぼくらが何をできるかということがありますが、こうなる可能性がある国・地域に投資をしてオペレーションをするのかは初期的にも考えておかなければならないんですよね。

MC
そうですね、リスクをどう考えるかという問題があります。多くのインパクト投資と言われているものは途上国とか、新興国で行われている事業も多いと思うので、何かあった時にビビッドに反応できるアンテナが必要かも。

Tさん
そうですね・・・これはインパクト投資ではなく、純投資としては、リスクを考える上で、初期的にミャンマーはコンシャスになると思いますけれど・・・マネージャーとしてのリスク管理上考えておくべきだと思ったと思います。でもわからないですね。すごく自分たちが狙っている社会的課題を解決する企業がいて、そこがミャンマーから物をたくさん仕入れていて、その利益が軍部を潤わしていると、こうなってきた時どうするのかという議論ですよね。それはどうなのだろうなあ・・・。マネージャーとして声を上げるべきかということか。

Kさん
ミャンマーについては、ミャンマーに対するリスクをどうとるのかということは(企業の経営者に)聞いてみるべきだと思っています。経営者は何らかの判断をしていると思うので、それが納得できるならそれでいいと思います。でも逃げるのはよくないかなと。

Hさん
ミャンマーを含めて、今なら“投資しない”とか言えるかもしれないけど、昔からずっと投資している会社さんがあった時、その人たちがどう考え、今どうオペレーションしているかを常にコミュニケーションしながら理解しあって、その会社のカルチャーを含めて理解していくということだと思うのですよね。一個一個どう対応すべきかという答えがあんまりなくて、“この会社だからこういうふうに対応しているのだな”というのを一つ一つ納得していくというのが僕のスタンスです。

Tさん
今日は言いたいことが大体言えたと思います。ただ投資をするうえでフィロソフィーとかプリンシパルとか必要だと思うけど、最後は受託者責任が果たせるかだと思うので、その投資判断に自分のお金がかけられるかどうかが大事だと思うのです。よくグリーンウオッシュとかレインボーウオッシュとかいわれますけど、マネージャーが自分のお金を入れているかどうかが試金石な気がして。

MC
ありがとうございました。これでシリーズ2を終わりにします。来週からはシリーズ3です。またクラブハウスでお会いしましょう。

続く