資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

7月28日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 4章2回上

2021年6月12日前半

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
前回、HさんがKPIというか評価・オーナーへの説明に投資先企業をタイプ分けしているというところで終わったと思います。そこから始めましょう。このタイプ分けについて詳しく置き換えいただけますか?

Hさん
私のやり方は、ファンド設計の段階から企業のタイプをわけて投資しますということを、宣言しています。私は長期集中投資なんですが、①1/3は構造的な成長銘柄、②1/3はシクリカルナ銘柄、③1/3は超割安な銘柄に投資すると言っています。この3つのそれぞれによって投資のポイントや経営者に求めることは違います。たとえば①の会社には明確な成長ドライバーがあって、その中に環境や社会にインパクトがあるドライバーがあります。逆に③の会社は事業の安定性やキャッシュフローがあるのに割安に置かれているので、環境や社会にマイナスのインパクトがないかを確認しています。企業の投資の目的やステージによって必要なものが異なるということです。例えば、ガバナンスに関しては①の会社の取締役は成長ドライバーが明確なので、志を同じくする人が集まって早く決定をするほうがうまくいくということがあります。②の場合は、合議制より強いリーダーシップあってほかの会社が投資を躊躇するような局面で大胆な投資が出来る会社が成功してきました。信越化学などが典型的です。③の場合はできるだけダイバーシティを実現してい手安定している事が望ましく、経営者の暴走を避ける仕組みがあることが重要です。つまり企業のタイプごとに何を見なければならないかは異なっていて、それを事前に企業に対しきちんと説明して運用しているということす」

MC
ありがとうございます。考え方はよくわかります・・・中身については、③はダイバーシティなのか?とか思うところはありますが、皆さんのご意見を聞いていきましょう。

Tさん
私の場合は・・・私も集中投資ですが、中長期に社会全体が変わっていくようなメガ
トレンドにかけていくのが一つのテーマだと考えています。Hさんが①を成長ドライバーとおっしゃいましたが、我々はバリュードライバーという言い方をしていまして、企業価値をあげていくドライバーはなんなのか、各社異なるところを見ていくというやり方をしています。

MC
Hさんの③も“バリュー”ですが、それとは違いますね?

Tさん
はい、安いという意味ではないです。企業価値を上げていくためのドライバーという意味です。事業をどう伸ばしていくかというバリュードライバーもありますし、もう一つは開示で、本来企業が持っている価値がディスカウントされている時に、きちんとコミュニケーションして割引率を低減されることにつながるようなバリュードライバーもあります。

MC
ただ、TさんはHさんと違って3つに分けていない?

Tさん
分けられれば分けられるのかもしれませんが、このどちらが大きくなるかは個々の企業によります。

Hさん
ぼくみたいに3つに分けている人はあまりいないと思います。海外のブティック系だと自分たちはバリューにだけ投資するんだとかグロース株投資なんだとかいう形で私の言うどれか1つのタイプというケースが多いと思います。日本の運用会社は様々なスタイルのファンドを保有しているので、その辺りがファジーになっているケースが多いと思います。私はこれを明示的にわけようと考えました。どこを見るということもそうですが、どこを見ないということもはっきりと伝えます。たとえばこういう会社の場合はこの部分は無視します、とかはっきりと言います。多くの日本の投資家は全部を見ようとするんですけど、私たちの体力では効率が悪いので、ここにはこういうエンゲージメントするけど、ここはしないということを最初から言っています。多くの日本の投資家と同じように議決権行使とか、全ての投資先企業にちょっといいことをいうとかはやりますけど。Tさんたちのやっているような本物のエンゲージメントはものすごく労力がかかります。ぼくは30銘柄を二人でやっているので、エンゲージメントが投資に与える好影響が明確な7、8銘柄しか(エンゲージメントは)やりませんと言っちゃっているんです

MC
でもポジティブにいえば、企業の強くしたいところを集中的に見ているということですよね。企業にもあれもこれもいうんじゃなくて、“ここを力を入れて欲しい”とつたえているわけですよね。

Hさん
そうですね。その会社の企業価値向上につながるところだけエンゲージメントして、そのポイントがないところ、企業としてじわっとよくなるかもしれないけど、企業価値向上に反映されるかどうかわからない・・・たとえばシクリカルな会社では、市況の影響のほうが大きすぎて、その会社のガバナンスが多少よくなってもそれよりも市況が動く影響の方が大きいとかになると、投資期間に何が成果として現れたかわからない。エンゲージメントよりもタイミングが重要になってしまうので、そこをやっていない・・・コミットしてないんです

Tさん
私もアセットオーナーとのコミュニケーションにおいては、その10社ぐらいについて、今何をやっているかを話すにつきるんですよね・・・個社独自に企業価値につながるものは何か考えるというのはHさんと極めて似ていると思います。

MC
Tさんは10銘柄でHさんの1/3なので、分類するより一社ずつその時その時考えて・・・ということですよね。Kさんはこの2人よりずっと多くの銘柄数で運用してこられたと思うので、Kさんはいかがですか?

Kさん
はい、あの・・・私がやってきたのは超割安なところだけでやってきたので、もちろんリスクとしてのEやS、そしてGを見てきましたけど、どうしてこの会社はこんなに安いのか?企業価値を変えることはできるのか、一社ずつそれを見つけるということをやってきたのですが・・・。

MC
Kさんはまさに、さっきHさんがいった③で、しかも超③(バリュー)なのですね。非常に問題のある会社をみつけて、少しでもよくなるようにしてきた・・・だからESGファクターはリスク面でみてきたということですね。

Kさん
リスクでもありますが、変わればプラスです。マイナスからプラスになるのはすごく大きいインパクトです。EやSもそう認識されてない会社が変わる時、それはとても大きな変化になります。

続く