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  • 2021-04-222021-04-22
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究 2章(1)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、4月28日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第一回上

2021年4月14日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
それでは第2シリーズに突入したいと思います。シリーズ1では、インパクト投資をどう思うか、インパクトの実現と企業価値、アセットオーナーとの対話、企業との対話など全体をざっくりと話してきました。最後の最後に “企業が良くなる時間軸とインパクトが起きる時間のズレ”についてご質問いただき、ここで時間切れになりました。ですので、今シリーズはここから始めたいと思います。そして今回のシリーズでは、具体的な事例をもとに、企業のインパクトの実現と収益の関係について深掘りしていきたいと思います。ではもう一度、あの質問をお聞かせいただけますか?

質問者 
 私が疑問に思っていたのは、上場株でインパクト投資に取り組むと、上場株は毎日値段がついているものなので、非上場株式であれば、毎日の株価がないので、かなり時間軸って長期にとれる。インパクトと企業価値ってすごく長い時間軸だったら同じ方向を向くと思うんですが、上場株式である場合、場合によってはインパクトと中長期的な企業価値が逆方向を向くような場合ってあるはずで、そう言ったケースでも大丈夫なのか、それは出資者の資金の時間軸とも関係するのかもしれないですが、そこが上場株でやる場合難しいんじゃないかなと思いました

MC
企業価値、というか株価だったり、業績でもそうかもしれませんが、アセットオーナーの時間軸が影響すると思うのですね。この時間軸のずれで困ったことありますか?

Tさん
うーん、パッシブとしていろいろな銘柄を組み入れていらっしゃる方、我々のようなアクティブで限られた数だけ投資をしている投資家という違いも影響すると思うのですが、私自身は後者型の投資家でかつそこに働きかけて変化を与えるというやり方をしているわけです。よって、超長期で企業価値が改善するということに確信があれば、私は株式市場は賢いものだと思っているので、それは現在の価格にもおりこまれるのじゃないかと思うのです

MC
つまり、株価は下がらないといっている?企業がきちんと説明していれば短期的な収益がでなくても。それはあるかもしれませんね?収益のほうは費用がでたら落ちるけど、そのかけたお金が企業価値に結び付くと確信できるなら株価のほうは将来の企業価値をみているわけで、論理的には。

Tさん
はい、ただある意味それもフィデュ―シャルデューティの範囲で、本当にそこに確信があるのか、それを市場が受け入れられるものなのかシビアに判断する必要があって、逆にもしそうじゃなければ、私だったらその企業に投資はしないのだろうなと思います。

Hさん
そうですね。私も似ている意見で、基本的にそういう企業の取り組みがマイナスになることはあまりないと思います。特に上場株は値段がついているので、それが値段にすぐに織り込まれると思います。逆に非上場株の場合は資金の出し手は企業価値をみるより、収益や返済できるかを見るわけですが、株式投資家は企業価値ベースでみていくので短期の利益が落ちるのは決して企業価値のマイナスになるわけではないです。つまり長期の価値が短期的にもおりこまれるので逆の方向を向くようなこと自体はないんじゃないかと思いました。ただ超長期でやっていることが、市場でコンセンサスがとれていて、みんなも正しいと思っているところでインパクトを与えているのが大事で、独りよがりだったらダメなわけです

MC
つまり逆に上場株だからこそ、インパクト投資ができるということ?

Hさん
そうです。市場とのコミュニケーションが取れている場合には企業は長期を見据えた投資は非常にやりやすいはずです。

MC
Kさんはいかがですか?

Kさん
私はちょっと違って、大きく再生エネルギーに投資しますよ、今そういう流れなのだからしょうがないでしょ言ったとき、それで収益が減ったら離れていく人もいると思うのです。そういう人には離れてもらったほうが言いと思うし、長期を見据えて、その会社が好きだから投資しますよという人に代わっていくのが一番いいことなので、会社にとってはマイナスではないと。短期的に業績が悪くなっていくということで、長期を見ていない人にとっては売り材料になるということは、我々(長期投資家)が安く買える機会になるわけですし。そうして株主が“会社の方針が好きだから投資しますよ、”という人に代わっていくのがいいことだと思うし。

MC
なるほど。売ってくれる人がいるから安く買えるわけですね?質問者さん、いかがでしょう?今の答えで納得されましたか?

質問者
理念的にはそうだし、インパクトがすごく長期に見通せるものであれば、超長期のインパクトと企業価値は一致すると考えていいと思うのですが、超長期の業績、企業価値への影響がそう簡単に見通せない、あるいはかなりの期間にわたって株式市場が誤解することもありうると思っていて、そうすると銘柄選択時にかなり絞られてしまうっていうか、ベクトルの揃うものしか選択されないということなのでしょうか。

Tさん
ここ重要ですね、前回のシリーズでKさんが“それでもやるべきだって”、おっしゃっていたのは真なのだろうなと。その一方でインパクトであるからリターンが少なくとも良いということは決してないと、欧州の投資家が厳しいとおっしゃっていて、そうするとインパクトカテゴリーの中で同じものをみていても、マネージャーの中にもうまいやつ、下手な奴は出てくると思う。そうすると、同じインパクトを標榜していても“うまいやつ”つまりリターンが出せる投資家にならないと自分のビジネスとしてのサステナビリティにならないし・・・

MC
“うまいやつ”にならないといけないというのは、その通りだと思いますよ。
同じインパクトを目指している企業の中で、きちんとそれを達成できるところを見抜いて投資しないといけないわけですから。

Kさん
何が大事かって言うと、知らせる、知ってもらうということが重要なのかなと思います。たとえばこの投資をすることによってこういう効果がありますよ、説明すれば、同じように思うすごく優秀な人がその会社に入りたいと思うかもしれない、そうすればその会社は前に進みやすくなるはずです。やっぱり会社は人なので、人を引き付けられる会社であるべきです。しかし日本の会社ってあまりいいことを言おうとしないので、そこが問題かなと思います。自分の会社がどういう会社であり、それがどんな価値に結び付いていくのかを宣言して、知らしめていくことによって人もお金もついてくるものだと思います。

続く

  • 2021-04-202021-04-22
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(8)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、4月21日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第四回下

2021年4月7日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
最後にエンゲージメントの成功事例について話してみましょう。本当は最初全然聞いてくれなかった企業が、なんかこう、だんだん変わっていったと言うご経験は?

Hさん
それはあっても、ものすごく時間がかかるんですよね。だからアクティブファンドで本当にこれをやっていていいのかなって思うことがあるんです。実際の会社では一部の人は変わろうと思っていて、でも大多数の人は思っていないことがある。そこに色々な説明をしたり、提言をして徐々に変わろうと思っている人が増えていく、という会社がある。でもそれって10年がかりなのです。10年もかかるとその間に景気のサイクルがあって、結果的に良くなっても何が要因だったか解りにくかったりします

MC
そうすると、悪くなる時は頑張って発言し食い止めることはでるかもしれないけれど、良くするのはとても難しい?

Hさん
そうですね・・・Tさんがおっしゃったように、もともと良い会社を選び成果を加速するためのエンゲージメントをする、という方法はアクティブファンドとしてピッタリくると思うんです。低迷していて、言うことを聞いてくれそうにないところで一生懸命やるっていうのは、大事だと思いますし、パッシブの人たちは時価総額に対するインパクトも考えてやるべきだと思うけれど、アクティブファンドでは時間軸を考えずにそういう企業を買っていいのか…そこは難しいと思います。

Tさん
それって社会インパクト的には悪くて、長期的に儲かる企業って本当にあるのかというアジェンダにもつながる気がします。つまりアクティブとして、それでも長期的に儲かるんだったら、我々のフィデュ―シャリーデューティとして入れるべきじゃないかという議論も出てくるのかもしれない。個人的にはそういう企業は無いとは思うのですが。

Kさん
たとえば今、東芝の株価は上がっていますね。もし今年のはじめから持っていたら儲かっていたし、持っていないことで損をしたのかもしれません。

それから思うのですが、短期的に変わりやすいのは例えば統合レポートの記載が良くなったという企業はありますね。もちろん中身を伴わせるのは大変かもしれませんが

MC
では今度はちょっと別の視点で、悪くなる企業をエンゲージメントで食い止めたご経験はありますか?小さな事例でも、悪いインパクトに経営者が突入しそうになったのを対話で止めたみたいな

Tさん
ドラマティックな話はないんですが、もともと事業自体社会とかESGとかへの親和性がとても高い会社があって、でもその中で経営としては、EVA創出などを通じた企業価値創出に取り組まれてきた経営者が居られます。この方に、昨今ESG的世界観自体が社会とかユーザーから求められるものになってきているという考え方をお話ししたりしたところ、結果的にロジスティクスの効率化で、仕入れ先を絞り込んたり、配送回数を減らすことで、現場の働き方改革を達成したり、Co2を減らしたりしてくれた企業がありました。我々だけが言ったわけじゃないでしょうけど、ESG等を考えることを利益に結び付けるという思考回路を確立するお手伝いができたと思ったことがあります。実はこの経営者の頭の中にあったのは、ESGへの取り組みを通じて、配送コストを抑えてPLの改善を達成する。さらに、その価値観を通じて交渉すれば(契約をやめる)サプライヤーにも説明しやすい、というような合理性もあったようです。

Kさん
何かをやろうとすると、何かがマイナスになる、どうしてもマイナスの変化も同時に起こると思います。それはある程度はやむをえないことなのだと思いますが、変化は起こらないといけないと思っています。

Hさん
ちょっと違うかもしれませんが、会計不正とか起こした会社が投資家に説明するとき、ちょっと説明がしっかりしていないなという会社があって、なぜその説明が必要か話をしました。その説明をしないことでどんなマイナスがあるか社長たちに説明し、資料を作成するにあたってのポイントを解説したことがあります。
日本の企業には、上場するとき手間を増やさないことばかり考えることがあります。
小型株にはどうして投資家への説明が必要なのか、わかっていない会社もあります。そのような会社に対してどうやって社会的責任を果たさないといけないか、それはなぜなのか、投資家は説明するべきだと思っています。上場する前に投資家に対して間違った認識を持っているケースもある、上場して“こんなに忙しかったのか”とびっくりしている会社もありすごくギャップがあります。企業の中でもIRと他の部署ですごく認識が違ったりします。

MC
社会的インパクトを起こすかもしれない企業の、インパクトの部分は、どこの会社も技術とかサービスにおいてもものすごく専門的で、IRの人たちとは情報ギャップがあるのじゃないかなと思うんですね。それを投資家が助けることによって発信力があがったり。

Hさん
企業が自分で出す資料でSDGsについて書くと“ここに当てはまっています”ってめいっぱいシールみたいに貼っているのを見かけるのですが、それら1つ1つが事業として小さければ意味がないと思うんです。企業のビッグピクチャーがあって、何を目指していて、それがSDGsの何にあたるのかが重要で、一個一個の小さいものを表していったら、どの会社だって何かしらもっているに決まっていると思います。そういうことじゃないというのを、最初にすり合わさないといけない

MC
あとインパクトとか言われる分野に担当者の想いとか事業全体と不一致を起こしやすいものがあると思うんですね。そこを投資家は気を付けていかなければならないと思います。
事業と一致していないだけでなく、自分の思い込みの社会的インパクトを目指していたり。それを投資家と話していかないと。

Tさん
企業が自分たちでこれぞ社会的インパクトがあると思い込んでいる時に、一方では投資家がタクソノミなんかをみて、「その業種であればインパクトと言えるのはこれだけです」って言おうとしているという状況もあり得るわけですね。

MC
常に第三者の意見が必要な気がします。では最後に会場から質問です

質問者
インパクト投資なので、これまでのアクティブのエンゲージメントとで違うところがあるとしたら、アウトカムが最終的に重要な点なのかなと思っています。業績とアウトカムが順方向になっていたら、これまでのエンゲージメントで同じように語れると思うのですが、アウトカムと利益が順方向でない場合は、超長期には30年後なら同じ方向になるかもしれないが、中期的には逆方向になってしまうとしたら我々が預かっているようなお金だとそこには投資できないという理解でいいのでしょうか。

MC
そうですね。タイムホライズンはあわせないといけないでしょうね。

質問者
3年から5年で利益を出さなけいればいけない時は、電力会社に石炭火力を全力でやめてもらって、自然エネルギーで全部かえてもらうとかはちょっと難しいように思います。そうするとインパクト投資が投資できる会社って限られてしまうように思うのですが

MC
なかなか惜しいところではありますが、時間になってしまったので、このシリーズは一旦終えたいと思います。上場株でインパクト投資、収益だけでなく、社会も良くするということは可能か、これについて続けて話していく次のシリーズも考えています。
次のシリーズは企業との対話について、毎回具体的に掘り下げていくようなものを考えていますので、ぜひ引き続きお立ち寄りください。

おわり

  • 2021-04-152021-04-15
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(7)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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次回、4月21日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第四回上

2021年4月7日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
ではいよいよ、企業との対話について話していきたいと思います。ではまずTさん、企業との対話でインパクトを引き出すために何か気を付けていることはありますか?

Tさん
投資先企業に働きかけることで、良質な社会に向けたインパクトを起こしていると思っています。現状は投資先企業毎にいろいろな“こうあって欲しい未来”があって、投資先をSDGsで整理すると、投資先の7割ぐらいの企業の本業はSDGsゴールにあっているなと思っています。そこでぼくらの役割は、良いインパクトが利益として回っていかないと長く続かないので、利益率を改善してみようとか、キャッシュの使い道を指南し、更にインパクトに強くなるよう支えるということだと思っています。つまり、そもそも良いインパクトがあるところを探して、そのインパクトが加速することを目指している・・・。株主の提案って嫌われる事も多いと思いますが、事業を伸ばす提案については、(ぼくは)喜ばれることが多いので、株主と企業の相乗効果で良くなることができているのじゃないか、と思っています。

MC
つまり最初からいい企業を選んでいるとうことですね。あのKさんはその逆ではないですか?“ダメな子”を選んで良くするという・・・

Kさん
そうなんですけど、それでも“これをこう変えれば良くなるんじゃないか”と思える会社に投資をするんですよね。ところで今日(4月7日)朝からずっと考えているのは東芝のことで・・・。例えば電力会社で、誰も投資をせずつぶれてしまったら、困るのは私たちですよね。そういったことも考えないといけないのかなと・・・、或いは変な人に買われておかしくなったら社会はどうなるか、とか。そういうことも考えていかなくちゃいけないと思っています。

MC
つまり、やっぱり社会的にインパクトを与える可能性がある会社をみているってことですね。電力とか、今ダメかもしれませんが、影響は大きいですものね。

Kさん
そうなのですよね。良い会社だけ投資しましょうといっていると、そういう会社はどうすればいいのか、ということをもっと考えないと。

Tさん
それはつまり事業自体は本来良いインパクトをもっているのに、経営が悪くて発揮できていないとか・・・そういうことですか?

Kさん
本業が“いい”インパクトかって言われると、日本の電力会社の場合は石炭火力も多く原発の問題もあり、今の状態が“いい”インパクトかどうかは難しい。でもそういう会社に投資しなくていいのか、資本をあたえなくていいのか、金融業界として、我々は何ができるのか、を考えています。

MC
本業か“いいか”どうかではなく、事業の中身が、社会へ大きいインパクトを与えてしまう企業を見ていかないと、ということですね。

Kさん
うーん、大きさだけだと大きい会社ばかりになっちゃうから、“大きい”っていうのもなんだけど・・・。

Tさん
この仕事を長くしていて、そもそも経営に善意があって事業をしている優れた企業に対してはエンゲージメントもうまくいくっていう経験則があったのです。これとは逆の見方ですが、投資家の社会的責任からいうとダメな企業だからほっといていい・・・とはいえない企業もあって。とは言えそういう企業を変えていくのは成功率も低いと思っていました。ところが最近インパクトとかESGという言葉が広がり、善なる経営、優れた経営である必然性が認知され始めているような気もします。そういう企業も変わっていくかなと思っています。

Hさん
これって運用しているお金の性質によっても大事違う気がします。パッシブ運用では時価総額大きいところに投資していると思いますが、アクティブで集中投資になっていると、限りあるリソースをどこに使ってファンドにもインパクトをあたえるかを考えなければならない・・・。そうすると、その企業に対するインパクトの比率になってくる。何を目的にするかによって違ってくると思います。

Tさん
面白い、X軸に社会に対するインパクト、Y軸に企業の影響に対する変化率があって、いくつかの象限に分けて投資のタイプなどが定義できるのかもしれないですね・・・。

MC
ではちょっと違う角度からお聞きしていいですか? たとえば社会に対しインパクトを与えるかもしれない事業に投資をしていて、経営者が全く自分の言うことを聞いてくれなかった時、みなさんどうしますか?

Hさん
私の場合ロングオンリー、集中投資のファンドだったらそういう企業には投資しないです。絶対聞いてくれそうにない人にわざわざ買って・・・ということはないのです。聞かないことによってその会社が明らかに企業価値を毀損していく状況に確信が持てれば、ロングショートのファンドならショートすればいいということです

MC
「たとえば投資したあとで、経営者が交代して聞いてくれなくなったという経験もあります?」

Hさん
そういうことはよくあります。それで問題は、素晴らしい経営者がいて、その人が交代してしまった後でも、ESGの開示とか非常に素晴らしい資料がどんどんでてくるのだけど、経営者が変わった後どうも言っていることは整っているけど、実態は伴っていないな、って言う会社はけっこうあります。大企業でも良く見かけます

MC
そう言う時は、詰めに行くのですか?

Hさん
それがなかなかうまく詰められないんですよ。出てきている資料は引き続きすばらしくて。表彰されちゃったりして。でも実際の成績はずっと悪くなっている・・・みなさん例が思い浮かんだかもしれませんが。ESGの資料が良いからだめっていうことじゃないんですけどね。良くてもダメな会社ってありますよね・・・

Kさん
ぼくは悪い会社に対しても、投資家は発言しなきゃいけないと思っていて。説明会なんかで、たとえ周りから白い目で見られても。それでも社長が何も理解しない会社だったら、Hさんがおっしゃるように空売りした方がいいと思います。それでも1年、2年たって変わっていく会社だったら、言い続ける価値があるかもしれない。

Tさん
Kさんはそう言う意味では、「ちょっとこれまずいんじゃないの?」とおもう経営者、事業でも、リターンが得られるなら、アクティブファンドに入れることはあるので、そこに対しては変化を訴えるという事ですか? それともポートフォリオ企業である無しに関係なく発言するということですか?

Kさん
ポートフォリオと関係なく言うべきことを言っています。それで反応をみています。やっぱりそこで真摯に受け止められる会社と全然無視されるのかを。

MC
やっぱり社会的なインパクトを考える投資には、いろいろあって、企業へのエンゲージメントもそれぞれですね・・・後半はエンゲージメントの成功体験を聞いていきたいと思います。

つづく

  • 2021-04-142021-04-14
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(6)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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本日、4月14日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第三回下

2021年3月31日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
さて、“アセットオーナーにどうやって説明していくのか”の後半です。ここのところ言われているインパクト投資では、アセットオーナーがEUタクソノミとかSDGsなど社会良くするインパクトのゴールを決めて、アセットマネージャーにもそこに向かって運用するよう求めるものが見られ、EUのアセットマネージャーの中には“このほうがやりやすい”という人もいます・・・というところまで前回話しましたね。こういうメカニズムをどう思いますか? やっぱり解ってもらいやすく、やり易そうだなと感じます?

Kさん
一ついいですか? あまりアセットオーナーが、そういうことを考えない方がいいと思うのですよね。たとえば公的年金などでは、投資のご経験がない厚労省の方とか・・・。だからむしろぼくらがこう思うのだ、ということをわかって欲しい。そういう役割分担でないといけないのじゃないかと思っているし、たぶんTさんもHさんもそう思ってやってらっしゃるのじゃないかと思うのですけど。

Tさん
わはははは

Kさん
アセットオーナーとアセットマネージャーとで、キャリアとして行き来が盛んにあるような状況ならいいと思うのですけど。

Tさん
・・・たぶんこれまでって、自分たちの信じる投資をしていて、それに価値を感じるお客さんが来てくれる・・ていう構造だけだったと思うのです。でも今はアセットオーナーも自分のインパクトやゴールを持つとなると。インパクトとリターンが逆に働いてしまうケースもあるかもしれず、それを拾いに行くのか行かないのかという議論もあるでしょうし、今まで以上に自分たちが何をやりたいのか、アセットオーナーとコミュニケーションをしっかりしなければいけないのかもしれません。逆にアセットオーナーが何を狙っているのか、すり合わせをちゃんとせずに始めると危険なことになりそうですよね。
それからもっと言っちゃうと、リターンを出してくださいって言われて、褒められたり怒られたりしながら20年近くやってきているのですけど、これ変な話、マイナスにしなければいいから、自分たちの資金を使って社会インパクトを与えてくれっていうアセットオーナーさんがいらっしゃったら会ってみたい・・・(笑)

MC
リターンなのですが・・・あるオーストラリアのアセットマネージャーと話していた時、オーストラリアもEUに続いてこういった取り組みが盛んなんですけど、結果について私が株価を前提とした言い方をしたら“きょとん”とされたことがあったのですね。彼が言いたかった“結果”とは“業績があがること”で。“ああ、なるほど。アセットオーナーの意識が変わってきている地域もあるのかな”なんて思ったのですけど。Hさん、海外のアセットオーナーの方とお話しされる機会多いと思いますけどどうでしょう?

Hさん
海外のアセットオーナーも、人によってやはり差はあるなと思うんですけど、彼らがいろんな人たちに委託する理由を考えると、彼らもアセットマネージャーに独自性を出してほしいと思っていると思うんですよね・・・。自分たちの運用哲学で運用していて、それをアセットオーナーの基準でみるとこうですよ、っていう説明はするんですけど。アセットオーナーがこう思っているからこっちのやり方を変えます、というのでは、オーナーごとにあわせて運用を変えことになるので、現実的じゃないですよね。

MC
今おっしゃった点について、ロンドンのアセットマネージャーが言っていたのですが、以前はアセットオーナー毎に、 “これがグリーンだ”というのがあって、それに合わせるのが大変だったそうです。今はタクソノミができて、アセットオーナー毎に違うことをいう煩雑さからは解放されるかな~と言っていたケースがありましたけど

Hさん
北欧のなんとかはこうで、英国はみたいにみんな違って、それらをあわせて最大公約数みたいのをつくって運用をするっていうのはすごく大変なんです。タクソノミみたいな“基準”があるとそれが一本になるので、すごく楽だと思うのですよね。

MC
そうですよね。北欧のアセットオーナーがセメントXXグラムにCo2XXグラムはグリーンじゃないとか言って、英国のアセットオーナーが違うことをいったらやってられないですよね。


Hさん
ほんと、それは大変なのですよ・・・そういう基準は向こうがリストを作って送ってくることもあります。もちろんそこに入るよう運用するのは最低限で、それにプラス自分たちがどんな付加価値を付けられるかが求められているのです。

MC
そうですね、だからEUの取り組みって、ある意味運用しやすくしようとしてやってることなのかもしれませんね。タクソノミがグリーンかグリーンじゃないかについての物差しになれば、EU内のアセットオーナーが、アセットマネージャーたちにそれぞれ違う“グリーン”を求めることはなくなるでしょうし・・・、

Hさん
そうですね、、、。まあその基準に入っているのは当たり前のことだとも言えます。そこからパフォーマンスが上がらなくていいとは言ってくれないと思います。

Tさん
(笑)つまり、インパクトに対する要求が大きく、比較的リターンに対する目線は低かったとしても、それぞれのカテゴリーの中でリターンをベースとしたマネージャーの淘汰がおきるんでしょうね。

MC
それと、リターンを求めるとしても、“本日の株価”なのか“今年の業績”なのかっていうことなんだと思いますけど。

Hさん
“本日の株価”って、日本独特ですよね。日本では四半期で報告を求められるんですけど、それで悪い成績が続くとイメージが悪くなって、なんとか四半期がんばろうみたいな気になっちゃうんですが、海外のアセットオーナーの中には、四半期でいちいち説明に来るなっていうところもあるんですよ。一年に一度でいいから、その代わりパフォーマンスだけじゃなくて投資銘柄一社一社がどうなっているか詳細に話して欲しいって・・・

MC
それはHさんが成績いいからじゃないの?


Hさん
成績が良いとか悪いとかいう事ではありません。成績が悪い時でも彼らは特に文句を言う事もなく、何を考え何をしたのかという事を聞いてくるのです。

Tさん
かもしれない。きっとそうですよ。(笑)
でも確かに社会インパクトだと、四半期なのかな。四半期の業績確認で、ESGの進捗確認を細かくやるというのは・・・意味あるのかなとか。

MC
逆かなと思いますけど。ESG系の進捗って、インパクト投資系だと、CO2の削減とか、KPI通りすすんでいるかとかもっと頻度多く報告しているケースをよく聞きますけど。。。つまり1年って長いじゃないですか。今の2050ネットゼロとか、1年って長いからもたもたしていたら全然到達しないし。

Tさん
たしかに、たしかに。

会場から質問
欧州のアセットオーナーが変わってきている・・っていうのは背後にある年金の加入者の意識が高いとかの差があるのでしょうか?アセットオーナーの差がこれだけ生まれる原因ってなんなんでしょうか?

MC
消費者の意識も大きいと思いますが、一番大きいのレギュレーションだと思います。アセットオーナーと呼ばれている人は年金でも保険でも銀行でも規制産業です。複数のルールで事実上ESG投資の割合を増やさなければならない状況にあり、自分の報告でサステナブル或いはグリーンな資産を持っていることを示さなければならないため、アセットマネージャーにもそれを求めることになる・・・と思います。

Tさん
その違いが、分水嶺になったのってありますか?

MC
ブレクジットというのは現地の人も結構言っていますね。イギリスに抜けられてもヨーロッパがグリーンの市場としてやっていこうという意識が強かったと。ただオランダなんかはその前から消費者の意識が高かったので、先行していたようです。個人的にはフランスっていつからグリーンの国だったっけなとか思いますけど・・・。
さて、それではアセットオーナー編はこのへんで。次回はいよいよ、“企業にインパクトを起こさせるためにどんな対話をしているか”に進みたいと思います。

続く

  • 2021-04-132021-04-13
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(5)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

4月14日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第三回上

2021年3月31日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
前回は、最近議論されているインパクト投資というのは、アセットオーナーが社会的インパクトを目指し、そのゴールを選んでいるケースが見られるということを話しました。今回は、みなさんが投資のインパクトをアセットオーナーにどう説明しているかについて話していきたいと思います。ではTさんから過去に自分の投資のインパクトをどうアセットオーナーに説明してきましたか?

Tさん
私は小型株を対象とした、戦略まで踏み込むエンゲージメントファンドを運用しているわけですが、そのエンゲージメントで企業の成長戦略、長期にわたる成長ではSDGsなどをどう実現するか、といった議論しています。ではお客さんとは、どういうコミュニケ―ションをしてきたかというと、株価があがっても、それが我々のエンゲージメントの成果なのかどうかというのがとても難しく・・・。株価は需給でも決まりますし、私の場合は集中投資で15社ほど投資しているうち、トップ数社についてこういうエンゲージメントをやっています、企業が聞いてくれればこういう風に財務的なインパクトが得られるはずですといった説明をします。ただこれは暗に言っているのですが、財務的なインパクトがあれば必ず社会的な事象としてのインパクトがあるはずです。だから一生懸命説明してきたのは、株価ではなく企業価値をあげるためにエンゲージメントをしており、企業価値が上がれば彼らのビジネス、地方のインフラを支える何かであったりしますが、それも達成しますというようなことを伝えています。

MC
つまりTさんは社会的インパクトの部分はアセットオーナーにはメインでは話さない?話しても訊いてもらえない? アセットオーナーに企業価値向上の話はするけれど、相手が関心をもつのは・・・実は株価ということですか?

Tさん
その先にあるものはインパクトのアウトカムなんだろうけど、その途中で財務的結果が出ているはずで、そこについては今もきちんとお客さんとコミュニケーションしています。

MC
・・・でもTさんが思う社会の部分はあんまり訊いてくれない・・・?ではKさんはどうですか?

Kさん
難しい問題ですね。今期の株価をあんまり追わないように、インパクト投資をしっかりやってくださいねっていうオーナーはヨーロッパにはいます。でも日本で他よりもパフォーマンスが悪くてもいいですよって言ってくれる人はほとんどいないです。ヨーロッパではインデックス並みのパフォーマンスでもいいからしっかりやれよっていう人もいますが・・・・。いい意味でも悪い意味でも、日本では“ESG投資とかインパクト投資、全く関心ありません”という方もいらっしゃいます。それはそれでいいと思うんですけど。自分としては、投資家として物事を微力ながらいい方向に向かわせたいなという気持ちがあるので、そういう投資をしていきたいし。一年後に良くなるかどうかわからないし、1年後にリターンとして帰ってくるかどうかわからないけれど、5年後、10年後には帰ってくるでしょう、という期待のもとでやっているので、僕らはこう考えていますと伝えていくしかないと思います。

Tさん
Kさん、パフォーマンス悪くてもいい、っていうのは、でもインデックス並みは出してくれないと困るというわけですか?たとえばパフォーマンスが悪くて社会インパクトが出せているっていう時は、どういう行動をとられるのですか? “いい結果出せたねえ”っておっしゃる? それはそれでオーナーは長い目でみてくれようとするのですか?

Kさん
でもそうはいかないと思います。オーナーも一社だけに預けているわけじゃなくて、何社かのアセットマネージャーに預けていて、みんなが良くしようとしてやっていて、その中にパフォーマンスが良くてしかも社会貢献もできているところがあればそっちへ・・・と思うでしょう。だから悪かったら切られるということだと思います。

Hさん
たぶんですね、アセットオーナー側から見た時、社会的インパクトは起こせたけどパフォーマンスが出せない・・・っていうのはないと思うんです。インパクトを起こした企業については、パフォーマンスは当然上がると思うのです。しかし、ポートフォリオなので、一社に投資しているわけじゃない。だから実現している時期が違うので、まだほかにしっかりしたインパクトを起こせていない会社がいくつかあって、全体でいくとパフォーマンスが良くなかった・・・という時はあると思うのです。もしインパクトはおきたのだけど、その会社のパフォーマンスが全然だめということは、インパクトの計測が間違っていると思うんです。

MC
Hさんのご指摘、正しいと思います。今はやりのインパクト投資では、ヨーロッパだとアセットオーナーがアセットマネージャーに、企業が本当にそのインパクトに向かって成長しているのかチェックさせるというのが多いと思うんですね。だから最初にインパクト(サステナブルなゴールに対する)を選ぶとき、そのマーケット規模だとか、関連する数字だとかをベースに、この市場は大きくなるとか、特定のテクノロジーが求められているとか、そういうところで選ぶという手法をとってらっしゃるケースが多く、そのインパクトに貢献すると選んだ企業が、言っているだけでちゃんとした製品を作れないとか、そういうことがないかをみていく、だからインパクトを出せたら、通常はなんらかのパフォーマンスは出ると思うのです。

Tさん
うーん、そうなんですけど・・・。インパクトに対する期待もしだいに市場におりこまれていくと、想定通りのインパクトを起こしたにもかかわらず、株価が違う変化を起こすことがある気がするんですよね・・・だから難しいなと。

Hさん
それについてですが、エンゲージメントをしてるとか、インパクトを起こしているという時、たくさんの投資家が似たようなことをやっていることってあるじゃないですか。その会社に対し、みんなが同じようなことを言っている。その時ってみんなが買っているから、その分株価に織り込まれているわけですよね。だから自分ではこれだけ変化したから、これだけインパクトを与えた・・・と思っているけど、投資家の数で割り算したら、自分の与えた分は小さいかもしれない。自分だけがその会社にインパクトをあたえたのであれば、それだけの価値が還ってくるんでしょうけれど。

Kさん
うーん、やっぱり私は、インパクトを与えたら株価があがるってもんでもないと思うのです。環境問題なんかだとむしろ下がることもあるのでは。また、必ずしもインパクトが経済的リターンにつながる場合ばかりではない、と考えなければならないと思います。例えば、その会社が20年後に“あの時、あれ辞めておいてよかった”といえるような課題をみつけて、エンゲージメントするということもあります。

MC
そうですね、あとありがちなのはIT系の企業でみんな期待して株価が上がって、その後成果はだしているけど、株価はずーっと下がっている・・・みたいなこともありますよね。今流行っているインパクト投資、EUタクソノミとかSDGsとか出てきた後に、議論されているインパクト投資は、UKやEUのアセットマネージャーが“楽になった”というのは、アセットオーナーが最初にそのゴールを目指すと言っている場合、アセットオーナーに理解してもらうのが容易になった・・・という声を聞きます。このEUタクソノミやSDGsがアセットオーナーとのコミュニケーションを助けているか、次回はここの点について深堀してみましょう。

(つづく)

  • 2021-04-072021-04-13
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(4)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第二回(下)

2021年3月24日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
前回に続き、上場株への投資で財務的、社会的インパクトを得るのはどういうことかについて続けて話していきたいと思います。

Tさん(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
私、今取り組む企業エンゲージメントを通じてもインパクトは起こせるけれど、それを数値で測定しろといわれたらできないと思うんですが・・・結果として生じているそれを自分たちの力だけで引き起こしたという因果を説明しきることは難しいですよね。とは言え内部では、私たちが関与していない前提の企業の成長と自分たちがオントップで追加したい成長といった目標を持っていますので、それが成果といえば言えない事もない。

Kさん( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
私もそう思います。測れないとなかなか難しいと思います。

Hさん(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
たぶん自分たちが投資する時って、必ずなんらかの仮説をもって投資していると思うんですよ。だからたとえばSDGsの何かを目指しているからいいですよじゃなくて、現在その投資先企業が行っている取り組みがどれだけ意味があって、どれだけ対価をえることができるかっていうのが重要だと思うんです。だから企業自身がその財務的な計算をしてなければいけない。それをしていれば、意味のあるインパクトと言えると思います。我々としてはその部分と、自分たちの持っている仮説がどういうふうに正しいか、どう違っているかを常にチェックするというのが、私が行っているやり方です。しかしもし企業がSDGsの目的に向かって取り組んでいますというだけであれば、我々も評価できないし、それをもってインパクト投資とは言えないんじゃないかと思います。

MC
そうですね。最近の上場株のインパクト投資で見かけるモデルは、まず産業で分類されて、必要な基礎データがあって、投資先企業もそれらのマーケットにどれくらい売上があるかとか、どれくらいその売り上げを伸ばそうとしているかといったKPIを設定し、ちゃんと実現できるのかウオッチしてる・・・といったものをよくみかけますけどね。その意味では皆さんがやっていることもインパクト投資との重複は少なからずあるのではないでしょうか?

Tさん
衆生すなわち仏なり、という仏教の言葉がありますが、よく選ばれしアクティブマネージャーは、インパクトであるといっても間違いではないというクオリティがあると、いっていただいているという理解でいいですか?

MC
いやあ・・・そうですかねえ・・・・。逆で、私としては本来独自性を出すべきアクティブマネージャーたちが、なんだかこうレールに乗せられているような気がして、なんかこう忸怩たる思いのある人もいるんじゃないかと。そういうふうにしてアセットオーナーとコミュニケーションしていく必要があるんじゃないかと思うんですね。

Hさん
でも“インパクト投資”を求めているアセットオーナーも全員にそれを求めているわけじゃないですよね。自分たちで仮説をもっていて、ありとあらゆるインパクト投資をてがけながらも、それとは別に普通のアクティブ運用もやっていて、その時は自分たちの仮説を押し付けるようなことはなくて、姿勢があっているかどうかは見ているんですけど。仮説についていろいろなところで発信はされていますけど。また彼らも自分たちの仮説をいろいろなところで検証したいと思っていると思います。

MC
それは正しいと思います。ただ一つの入り口ですよね。

Tさん
うーん、ちょっと別の点ですが、レインボーウオッシュ、と最近言うようですが、それを避けないといけないということで、最近 “こうあらねばインパクト投資と呼ばせない”みたいなのもあるような気がして。たとえばよくその評価に使われているMSCIとかFTSEとかに数百社のカバレッジがあって、でも時価総額1000億以上ですよね、拾えないインパクトもあるような。そういうデータで証明できる範囲だけがいいのか・・・もっとボトムアップの網の目の細かいアプローチもあってもいいのでは。暴論でしょうか。

MC
いや、実際そうなんでしょうね。伝統的な普通のアクティブ運用はもちろん重要だし・・・。

Kさん
大きな会社の方がインパクトがあるっていうのはその通りだと思うんですが、今小さな会社でも大きくなっていくので、その時そういう会社がおかしなことをしていたら社会にとってはマイナスになっちゃう。だから育っていくような会社がしっかりした投資家に持たれていないと。

Hさん
私もそう思います。大きいか小さいかではなく、その会社がインパクトを出しているかどうか。投資の時に一番忘れちゃいけないのは投資リターンをだす、ということでそれは外してはいけないので、いいことをやっていてもパフォーマンスが上がらないといけないですし。

MC
原則的にはそうだと思いますし、それがなくなるわけじゃないと思います。ただ今上場企業でインパクト投資が言われるようになった背景はこういったSDGsとか、社会的なゴールに共通の考え方が生まれたことなどがあるので、そこにTさんが反発されて、“これじゃないとインパクト投資じゃない”って心配するんだと思いますが。
これに合わせなくてもいいけれど、このSDGsなどにあわせようとすると、ちょっとメリットがあるんじゃないかということです。この次の会で話す予定ですが、アセットオーナーとのコミュニケーションです。
もちろんいろんなアセットオーナーがいます。アセットマネージャーに任せたり、アセットマネージャーの仮説を聞きたいというのもあるでしょう。ただあるEUのアセットオーナーが言っていたのですが、最近急激に市場が変わっているので、アセットオーナーも考え方を変えなければならない、と思っているそうです。彼から見るとアセットマネージャーの中にはコンサバティブな人もいて、なので新しいシナリオにどのように対処してくるか知るためにもこう言ったモデルは有効だという話をしていた人もいました。
だからもともとは“パフォーマンスだけにフォーカスしているとあぶないな”という意識かラスタートしていると思います。

Tさん
なるほど。

MC
Tさんは社会派だからいいじゃないですか

Hさん
ぼくがいう財務的っていうのはそんな短めのことじゃないですよ

MC
わかってますよ!!では次回は、そんなアセットオーナーとの関係について話していきたいと思います。

続く

  • 2021-04-062021-04-06
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(3)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第二回(上)

2021年3月24日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
前回まではそれぞれの“インパクト投資”というものへの思いを話してきましたが、今インパクト投資は結構話題になってきて、その定義もあちこちで言われているので、今日は客観的に、上場株への投資で財務的、社会的インパクトを得るのはどういうことかを考えて見たいと思います。

Tさん(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
その前に、もう一回インパクト投資とESG投資はどこが違うのか聞きたいです。

MC
ESG投資って、広いと思うんですね。もともとESGの観点はリスクを減らすために議論していた、でもそれがいつの間にかESGに注目することはプロフィットだ、というようになってきたわけですが・・・。これに対しインパクト投資って、社会的な、あるいは産業として大きな革新的な何かや、達成したいゴールが外にあって、それを実現する投資をしていくようなものですね。だからもともとは上場企業への投資より、特定の事業など使徒を限定して渡せるお金、プライベートエクイティなどのほうが多かったと思います。逆にインパクト投資の方が、あらゆるファイナンス方法を巻き込みたいということで、上場企業についても議論されるようになったという面があると思います。

Tさん
つまり結果を意識して、明確に投資をするというのがインパクトなのかなと理解しているのですが、そこで象徴的に言われるのが“アウトカム”、つまり結果はなんなんだ、ということが求められるというふうに理解しています。

MC
そうですね。そして私のイメージでは“コラボレート・アクティブ運用”みたいな。みんな同じ方向に向かって欲しい、成果を目指して・・・という面が強いと思います。

Tさん
うーん、ぼくはやっぱり、少しでも大きな影響を社会に与えたいなと思っていまして。でもインパクト投資では、ターゲットは見えているのですが、初期的なインパクトはすごくちっちゃいことが多いように感じています。自分は中小型を対象とした投資をしているので、既にいいインパクトを持っている企業を、さらに高めるということをやっていけばいいのかなと。つまり上場株でインパクトを起こすというのは、そのインパクトの大きさというのが僕の理解です。

MC
そうですね、個別の規模に寄るかもしれませんが・・・多くのインパクト投資では“その後”が重要ですよね。ちゃんとゴールに向かっているか、何をKPI(財務数値以外で)として選び、毎年それが目標に向かって前進しているか、モニターしていくという方法が多いと思います。

Hさん(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
その時何をもって“インパクト”と呼ぶかが大事だと思うのですが、今のインパクト投資は “社会的インパクト”の大きさを重視していると思うんです。しかし企業にとってシグニフィカントなインパクトが財務的なものである場合、同時におこる社会的インパクトが小さいというケースもあると思います。そういう時どっちを重視するかで意味合いも変わってくると思うし、上場株への投資であれば、社会的インパクトの大きい分野でかつ自分たちの企業へのインパクトも大きいものでないといけないのかなとも思います。そこのバランスというか、そこを曖昧にしてはいけないなと。社会的インパクトがまったくない企業はないと思うので・・・。

Tさん
そうですよね、社会的善となる部分がなにがしか利益と結びついている企業をきちんと選ぶというのが初期的な作業なのだと思うんですね。社会的インパクトというのは社会が求めていることでしょうから、求めがあるところにはビジネスがあり、機会もあると思うんですけど。

Hさん
その通りで、そうではないケースはあまりない気がします。社会にとって悪な企業が上場しているケース・・・て、私はあんまりないと思うんです。どの企業も何か良いことをしているか、認められている。でもその部分が時間と共に変化していて、マッチしなくなったり。そこをどうアドジャストしていけるかが難しいところだと思います。

Tさん
私もHさんのおっしゃる通りだと思います。しかし一つの自分の問題意識として、インパクト投資かくあるべし、というような枠組みができてしまっていて、その枠組みがまだVCとか、スモールステージにしか合わないので、上場企業のインパクト投資というのを評価できる枠組みが、まだあまりないんじゃないかというストレスがあります。

MC
そういった評価モデルは今徐々にできてきていると思います。“社会的ゴールと収益のジレンマ”については、アセットオーナーに寄るとは思うものの、教会とか、チャリティーとかで絶対この株には投資できない、と収益より大事なことがあるケースもあると思いますが、基本的には“良い収益”が前提だと思います。そこでよく欧州でみるのは、まず社会的ゴールをアセットオーナーの側が自分のストーリとして持ちます。例えば“低炭素社会の実現”とか。これを選んだアセットオーナーは、この実現に備えていた企業、貢献した企業に先に投資をして、そのシナリオが達せられれば、必ずそれらの企業も収益が得られると考えているわけです。そうすると元に戻ってそのゴールに何がなんでも達して欲しい。そのようにアセットマネージャーにエンゲージメントして欲しいし、成果がでているかウオッチして欲しいわけです。もしかしたら一人一人をみたら特定投資先の企業への収益が低くなることもあるかもしれないけど、全体として自分が思う社会の実現が行われ、その実現に向けたKPIで見ている企業の集団があれば、一定の収益がでるでしょうと考えているわけですね。だから田中さんと同じゴールを持つアセットオーナーがいれば良いんだと思うんです。

Tさん
うーんなるほど。欧州ではそういうリテラシーの高いアセットオーナーが多いんでしょうか

MC
リテラシーというより、そこは規制が大いに手伝ってると言えます。まずアセットオーナーたちは、みな規制で開示が厳しくなっているので、自分がどんな運用方針をもっていて、どんなふうにESGを投資に取り込んでいるかを説明しなければなりません。ですからその条件の下で収益性が高く、かつサステナブルなゴールへちゃんと全てのアセットマネージャーの投資の方向があっていますよ、といったことが求められるわけです。

続く

  • 2021-04-052021-04-05
  • by 田中 喜博

ESG投資・インパクト投資の拡がりと課題

こちらのコラムで、連載的に書かせて頂いていますが、仲間たちと上場株におけるインパクト投資をテーマに色々な議論を始めています。
インパクト投資がどのな状況にあるのか、課題が何か、可能性はどこにあるのか、現在の我々の活動との接点をどう広げていけるのか?といった事が対象で、いわば投資助言会社としての一種のR&D活動のようなものだと考えています。


ここ数回の議論の中で様々な課題が確認でき、大変面白いです。一つの塊として出てきたのは、コミュニケーションの問題。特にアセットマネージャーとアセットオーナーの間でのインパクトに関する視点の共有でした。
犬も歩けばの例えでもないのですが、面白いもので、このような活動をしていると本件に関わる様々な悩みや課題についての御相談も頂くようにもなります。先週、ご面談の機会を頂いたある企業様は、国産材を積極的に使い、低廉で高品質な住宅を建設する事で炭素固定や地域林業支援などに貢献したいと真摯に努力しておられるお会社で、まさに環境や地域社会に対するサポートを健全な利益につなげようと日々努力しておられる会社でした。一方で、社長の悩みは、それらの取組が所謂ESGレーティングと連動しないという、資本市場とのコミュニケーションの課題でした。また、伝統的な金融機関で働く仲間からも、ファンドの人材育成、ひいては、金融界の若手育成の視点からも環境・社会にインパクトを与える金融のあり方を模索し始めているので一緒にこの問題を考えたいというありがたいメッセージを頂きました。
この春に政府の動き、CGC改定の動きなども変化が見られ始めています。我々自身も、環境・社会と金融界とのあり方について、更に研究を深めていきたいと考えています。

四回シリーズで始まったクラブハウスミーティングの第四回は水曜(7日)12時から開催予定です。是非気軽にご参加ください。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

  • 2021-04-012021-04-06
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第一回(下)

2021年3月17日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
みなさんの投資についての考え方をお聞きしまして、“インパクト投資”って伝統的な金融の役割そのものじゃん・・・というのは全くその通りだと思います。それでは、みなさん今一番“インパクトを起こしたい”と思っている分野ってなんでしょう?

Tさんの場合(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
インパクトって本当はすごくイシュードリブンで、小さなところでしっかりインパクトを出していくというのが結構あると思うんですね。ただ自分は上場企業に投資しているので上場企業のスケーラビリティを勘案して、それよりは少し大きなインパクトを起こしていけることを考えていきたいです。では何を課題として選ぶかですが、今の日本の課題として、日本だけじゃないかもしれないのですが、どんどん住みづらい国になっている気がします。機会が平等でなかったり・・・でもそれって同時にビジネスチャンスにもなりうる訳で、こういう課題を解決するような投資をしていきたいと考えています。そして投資家がパートナーとして助言しインパクトを強化できるような事が出来れば・・・。

Kさんの場合( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
今私のお客さんなんかは、ヨーロッパの年金基金などですが、自分が(アセットマネージャーを通して)投資している企業全てのエミッション合計とか出すためにそれをアセットマージャーに開示しろといってきますし、かなりセンシティブになっていると思います。
そのような中で、積極的に投資したいというのと、積極的に投資したくない分野というのもあると思います。私が投資を始めた頃、サラ金にすごく苦労している人が周りにいて、
でも当時サラ金て非常に割安で。興味深かったんですが、いろいろ考えて、投資を止めました。やはり世の中に負の影響を与えているのであれば、そこに投資をしないというのも重要かなと思っています。

MC
その頃って、もう“タバコ・ダイベストメント”て、始まっていました?

Kさん
うーん、やはり欧州のお客さんなんかでは、タバコに投資するなというところ、ありましたね。私自身は嗜好品なので全部いけないとは思っていなかったのですが、このままだと将来の売り上げとか考えれば、やはり投資すべきじゃないなあと思いました。

Hさんの場合(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
私はあんまり、こういうテーマで投資しようって設定しないのですね。でも長期投資という観点で、社会がこれからどういう風に変化するかということを考えて、その中で企業がどんな役割を果たしていけるかを常に考えることになるので、その中で社会でポジティブな方向にいっているかとか確認をします。大きなテーマ、水の問題とか、気候とかありますが、実際企業と話していると細かいテーマがありまして、その中に共通の課題がみえてくる・・・たとえば働き方をどういうふうに変えるかとか、やっぱりボトムアップの対話の中から出てくるテーマってあるんですよね。そういうのを細かくみていくのが私のやり方です

Tさん
日本のいくつかの社会課題って解決方法も一つじゃないですよね。共通してお互いに影響しあっていて、そういう課題を一つ解決する企業って、いろいろなことが解決できる気がする。

Hさん
似たような課題を持っている会社がいくつかあって、それぞれを同時にみていくと、いろいろ気がつくことがあるんです。こうやっていくと乗り越えていけるんだ、ということがわかってきて。

MC
そうすると、Tさんは大きなテーマ、Kさんはやるべきではない投資とは何かを考えてきた、Hさんはテーマを決めるよりボトムアップで、ひとつひとつの課題を解決していく・・・そんなふうにインパクトをみているんですね。そうすると

Tさん
大きいっていうか・・・例えば今感じているのは、日本において機会がすべての人に平等に与えられなくなってきているとかいうことなんかで。もう少し身近な例だとデジタルデバイドみたいなもので、ドコモに八千円払っている人がハッピーなのか、本当は格安携帯で十分なのによく知らないだけとか、それはIT教育やITサービスの開発なんかで解決していけるんじゃないか?とか自分も個別に考えているところもあるのですが・・・でもやっぱり最初は大きなテーマでみているのかな・・・

MC
そうですね。Tさんがデジタルデバイドをみるとき、それが世の中をどうやって変えていくかをみている・・・ということですね。これに対しHさんは決めずに掘り下げると・・・たまたまデジタル対応が問題だったりする・・・?

Hさん
そうです。例えば今の話だと、中小企業の中にはデジタル化に対応できないためにビジネスを逃しているところがいっぱいあって、で、そうすると今度は、そういう中小企業を助けるビジネスができてくる。彼らがどんな点を助けているか、何が中小企業から求められているかを考え、具体的に解決している企業を探すみたいな・・・、自分はそういうかたちで取り組んでいます。だから、どこで課題を見つけるかの見つけかたの違いかなと思います。本質的には同じになるような気がします。

MC
結局どういうふうに課題を見つけるかは異なれど、最終的に企業の価値を見つけるという投資家の役割は同じところにたどり着くと思うのですが、最初に戻って、このインパクト投資が欧州で流行って議論が高まっていった背景としては、アセットオーナーとアセットマネージャーの間で自分が何の社会的課題を解決したいと考えているかをわかりやすくするコミュニケーションの部分かなと思っています。このシリーズでは続けて“自分の投資をどうやってアセットオーナーに分かってもらうか”とか、“企業にもどうやって分かってもらうか”などを話していきたいと思いますが、まずは次回は、“上場企業への投資でインパクトってどうやって起こせるのか?”について話して見たいと思います。

続く

  • 2021-03-312021-04-21
  • by 田中 喜博

上場株インパクト投資の研究(1)

あっという間に過ぎた2020年を超えて2021年も4月に入ろうとしています。コロナ禍の拡大傾向はなかなか収まりませんが、良い意味での逆境への慣れか、様々な新しい投資アイデアについてのディスカッションの依頼を頂くケースが増えてきたように思います。当社でも資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

3月31日もお昼12時より 第三回Clubhouse Meeting を行う予定です。

Clubhouse Meeting 「上場株でのインパクト投資」第一回

2021年3月17日 12:00~12:30

(これは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
欧州でここ4,5年インパクト投資の議論がとても盛り上がっています。特にEUでは“全ての資金はグリーンへ”みたいな勢いで、気候変動に対応するイノベーションとか、事業に関わっている上場企業への投資も投資という勢いの中で「上場企業でインパクト投資」が話題に上るようになりました。それで「これ絶対日本でもっと導入されないかな」と思って周りのアクティブマネージャーをけしかけてきました。この何人かで集まって、週に一度、クラブハウスで投資について考えてみたいと思います。
ただインパクト投資というのは、昔から概念はあって実際取り組まれていたものの、ここ数年急速に取り組みが拡大し、そこで定義や評価方法が整備されてきていますが、今も解釈は様々だと思います。ですので、ここでは世の中の定義にはあまり縛られず、「どんな投資がありえるのか」について議論していきたいと思います。
さて、インパクト投資って突然でてきたものじゃなくて、こんなの前からやっていたと言う人もいると思うのです。インパクト投資ってなんだと思いますか?

Tさんの場合(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
金融の世界に30年関わっています。今は上場企業の中小型に投資をしていて、ただ投資をするのではなくエンゲージメントを通して企業価値をあげることを目指しています。
インパクト投資って難しいですよね。ものの本とか読んでいて今思っているのは、“ありたい社会”というのを想定して、それに対して積極的に働きかけて実現させていく、そんなもんじゃないかと思っているです。それを専門用語で言えば、“アウトカム”を創るとか、そう言うことなんだろうなと思っています。ただ自分自身がおもっているのは金融自身が胡散臭くなっちゃったのはここ30年ぐらいで、もともと信用創造を通じて社会に貢献していくっていうのは、本当は昔銀行にはあったと思うのです。だからこれは金融の本来の目的というか・・・ただその頃は、やはり長期に社会がどうなるかっていうことを予想して投資をしていく、ということはったのですが、“ありたい社会をどう作っていくか、それにどう積極的にかかわっていくか”というのはそんなにはなかったかも・・・。

Kさんの場合( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
私も30年以上株をやっています。私もTさんのいうとおりだと思います。それでも80年代はまだ、新しいもの、芸術などにもお金がまわっていましたよね。なんでその後おかしくなったかというと、その後金融機関が生き残るのが大変になってちょっと変わってきちゃったのかなと思います。でも今ある程度生き残って、また社会貢献とか考えれるところに戻ってきたんじゃないかなと思うんですけど。私が思っていたのは、「そのビジネスは世界を幸せにしているか?」で私の投資先が、少しでも世の中をよくしているかを常に心の中に持ちながら投資していく必要があるかなと思っています。

MC
そうですね、ヨーロッパのアセットオーナーを回っていると、私の世代から見ると、ちょっと驚くほどまじめに“世界を良くしたい”という思いを語られますよね。そのオーナーが、自分が委託しているすべてのアセットマネージャーにも同じ方向を向いて投資して欲しい、たとえばヨーロッパだとグリーンの投資をして欲しい、というアセットオーナーが、インパクト投資として上場株も同じ分野で力をいれて欲しい・・・というケースをみかけ、「こういう思いをもっている日本のアセットマネージャーもけっこういる!もっと日本人アセットマネージャーはインパクト投資に興味を持つべき」と思ったのです。

Hさんの場合(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
私もお二人ほどじゃないけど長く日本株投資をしています。ESGやインパクト投資で有名なお客さんがいてその人たちといろいろ話してきました。そこで感じてきたのは、日本では長期の視点で分析していても、実際はなかなか長期にならないことが多く、日本でももっと根付かせたいなと思っています。
自分はインパクト投資は社会にプラスの変化をもたらす企業への投資だと思っています。短期的にみればうまくやっているなという事業はあっても最終的には多くの人から喜ばれる、社会にプラスの変化をもたらすものでなければ成長し続けることはないと思っています。

MC
そうですね欧州でアセットオーナーが旗をふって“インパクト投資”と言っているケースではご自身がゴールを設定していて、このゴールにあわせて、インパクト投資してくれるアセットマネージャーは手をあげてください、みたいなコミュニケーションをみかけます。数年前、オランダのPGGMとAPGは、共同でインパクトゴールのタクソノミを発表しました。もとはSDGsの中のいくつかのカテゴリで、たとえば貧困をなくすだったら、自分たちが注目しているのは、マイクロファイナンスです、とかタクソノミの小項目に書き込まれています。飢餓をなくすのところには、たとえばフレッシュな食べ物のローカルアクセスの事業とか。そういう風に自分たちが注目しているインパクトを示して、同時にアセットマネージャーだけでなく、企業にも伝えたいそうなんですね。それにアセットマネージャーが参加していくと、全体で大きな力になり、社会的な動きを促進するパワーになります。これは面白い仕掛けだなと思いました。SDGs17あればだいたいどっかに入るかなと思いますが、社会的にいいことしたいというのはなんとか拾ってもらえると思うので、アセットオーナーの考えと一致するところが見つかるといいのかもしれません。

では次回は、どんなところにインパクトを起こしたいと思っているかについて話して見たいと思います。

続く

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