コーポレートファイナンス勉強会を開催中で…

ご無沙汰しております。糸川です。
表題の件、「令和のコーポレートファイナンス3大トピックの本質を考える」と題し、あおぞら銀行様と共催で全4回の勉強会を企画しており、8月21日(水)に第1回を開催いたしました。この様子は以下のあおぞら銀行様のプレスリリースに詳細にまとめて頂いております。

あおぞら銀行プレスリリースリンク

(出典:あおぞら銀行、デジタルPRプラットフォーム)

『令和のコーポレートファイナンス3大トピック』というのは、少々大それたテーマ設定ではあると思いますが、資本コスト、PBR問題、ROIC経営など、いずれの企業にも関連し得る問題について理論的な深堀りを行い、本質的にどのようにそれぞれを捉えるべきか考察し、ディスカッションを行う場を設けられればと考えております。

第一回の講義には、我々やあおぞら銀行様のご投資先のCFOやIR・経営企画ご担当者様等を中心にお集まりいただきました。ご参加の皆様からは「このようなレベル感の講義はあまりないのでとても興味深かった」、「若干内容が難しかった」等のご意見を多くいただき、若干理論的議論が多くなった感もありましたが、実務でご多忙の皆様にとって一歩引いて課題の本質を考える良い機会になっていれば大変うれしく思います。

また、勉強会後には、横のつながりを作っていただくべく懇親会も開催させていただきました。皆様、会社や業界は違えども、感じている課題には共通のものも多く、皆様それぞれの状況に関する有意義な情報交換を行っていただいたようでした。

第2回以降についても、ご参加の皆様のご意見も伺い少しずつ工夫を加えながら、実りある勉強会にできればと考えております!よろしくお願いいたします。

元旦の「ジオヒルズ」ワイナリー訪問

本年の年越しは、いかがお過ごしでしたでしょうか。私は長野県小諸市にある実家に帰省しておりました。長野県小諸市は、年間平均降水量も少なく、晴れが多い地域です。イメージ通り、今年の元旦は清々しい晴天に恵まれした。

朝、家族そろっての朝食を終えると、お出かけ好きの両親から「御牧ケ原の台地の上に綺麗なワイナリーができたので行ってみよう」と声をかけられ、元旦午前中から車に乗り込み外へ出ました。御牧ケ原の台地は、360°の展望が開け浅間山、富士山、北アルプスまで見通すことができる素晴らしい場所であるものの、人がほとんどいない穴場スポットという印象を持っていました。しかしながら、行ってみると台地の上に小さいながらも御洒落な「ジオヒルズ」というワイナリーが建てられ、駐車場には元旦午前中にも関わらず数台の車やマイクロバスが停まっています。中に入って見ると、小さなカフェが併設されており、ほぼ満席。元旦午前中から、多くの人が集まり賑わっており、我々家族も淹れたてのコーヒーをオーダーし、温かい暖炉の前で家族水入らずの時間を過ごしました。
(車で来ていたこともあり、ワインはまた次回という事になりました)

仕事柄、経営者がどのような人か気になり、家に帰って過去の新聞記事を調べてみると、小諸で120年以上続く老舗温泉宿の5代目荘主とのこと。「小諸の土や、昼夜の寒暖差があり降水量も少ない小諸の気候風土を活かした農産物で、お客様をもてなしたい」と思い、2002年からぶどう栽培に着手。その後、2007年に目標としていた宿の名前を冠した「中棚ワイン」を委託醸造で立ち上げました。2018年に温泉宿の荘主を次代に引き渡した上で、ついに自らの手でワイナリーを立ち上げたとのことでした。これらストーリーが、新聞に「挑戦者たち」という題で掲載されていました。この5代目荘主の思いや実行力、またそれが新たに地域に与えるであろう活力に思いをはせ、元旦から一人胸を熱くしておりました。

改めて、正月気分を抜けて自身の本業に立ち返ってみると、本年はスチュワードシップコードの改定の動き等を受け、ESGがこれまで以上に広く一般的に注目されてくる年になると想定しております。一方で、その一般的な認知拡大の様相に対して、ESGを実際の経営に落とし込むということになると、その施策や手法は各企業の状況や経営戦略と調和した特殊解である事への認識は未だ弱いのではないかとも感じています。今回のワイナリーの事例のように、ESG的視点を経営として結実させるには、当該地域の特性等、夫々個別具体的な環境認識に基づく、経営者や従業員の思い・ストーリーが前提となるはずです。我々は、投資哲学の一つとして「パートナーシップ型投資」を掲げて、日々業務に取り組んでおります。社会的な潮流としてのESG・SGDsの動きには注目しながらも、その前提として我々の原点である、投資先企業様個別の経営課題に集中し、その熱を感じ、成長を応援し、そこから生まれる果実を当該企業様やスポンサーの皆様と共有していきたいと思います。

本年も精一杯精進致します。

慶応ビジネススクールでの講義を終えて

先日、慶応義塾大学大学院経営管理研究科の齋藤卓爾准教授のご協力を得て、MBAプログラム内の授業で『企業価値創造における投資家の役割』と題して、3時間の講義をさせていただきました。前半を昨今の株主エンゲージメントの流れやあすかが考える企業価値創造の原理の説明(内容は以前の価値 is KingROICから企業価値への投稿をご覧下さい)、後半を実際の投資先企業との対話の中で使った資料を用いながらのケーススタディという構成で行いました。学生の皆さんからは、ESGや株主エンゲージメントの変遷等等、様々な観点から積極的な質問をいただき、昨今のコーポレートガバナンスやエンゲージメント強化に向けた改革の浸透を、改めて実感することができました。

今回、私自身は、サポートメンバーとして教室後方から講義の様子を見ていたのですが、特に感じた事は、自社の戦略や取り組み意義を言葉にして伝えることの重要性です。学生の皆さんからすると、講義の開始時点では、当社のバリューアップ戦略と、伝統的なアクティブファンドやプライベートエクイティ、または、一般的に想起されるアクティビストファンドとの差異が、「わかりそうでわからない」状態だったのではないかと思います。そこで、講義の中では、投資先企業との関係構築や、対外情報に基づく対話手法、コストに見合うリターン獲得の可否等について質疑応答も含めながら説明することにより、バリューアップ戦略の特徴について徐々に理解を深めていただきました。理解が進むにつれて、質問の数も増え、学生の皆さんの興味も大きく増したように感じます。結果として、多くの質問をいただきながら、深い議論を行うことが出来ました。

通常我々が、投資先企業の皆様とお会いする際に、IRのポイントとして自社のユニークネスを考え抜き言語化する重要性について対話をさせていただくことがありますが、今回の講義のケースと正に同じであるように思います。かつて、心理学者のマズローはコミュニケーションの基盤として自己理解と自己開示の重要性を説きました。企業のIRにおいても『自社の哲学や実現したいことを確り理解できているか、それを伝えられているか?』という問いに自信を持って答えられることが重要になると考えています。その上で初めて、ステークホルダーとの信頼関係が醸成され、相互理解に基づいた深い対話が可能になるのではないでしょうか。この点について、今回の講義を踏まえて改めて考えさせられました。

齋藤准教授及びMBAプログラムの学生の皆様、心より御礼申し上げます。