資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 第二回(上)
2021年3月24日 12:00~12:30
(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
前回まではそれぞれの“インパクト投資”というものへの思いを話してきましたが、今インパクト投資は結構話題になってきて、その定義もあちこちで言われているので、今日は客観的に、上場株への投資で財務的、社会的インパクトを得るのはどういうことかを考えて見たいと思います。
Tさん(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
その前に、もう一回インパクト投資とESG投資はどこが違うのか聞きたいです。
MC
ESG投資って、広いと思うんですね。もともとESGの観点はリスクを減らすために議論していた、でもそれがいつの間にかESGに注目することはプロフィットだ、というようになってきたわけですが・・・。これに対しインパクト投資って、社会的な、あるいは産業として大きな革新的な何かや、達成したいゴールが外にあって、それを実現する投資をしていくようなものですね。だからもともとは上場企業への投資より、特定の事業など使徒を限定して渡せるお金、プライベートエクイティなどのほうが多かったと思います。逆にインパクト投資の方が、あらゆるファイナンス方法を巻き込みたいということで、上場企業についても議論されるようになったという面があると思います。
Tさん
つまり結果を意識して、明確に投資をするというのがインパクトなのかなと理解しているのですが、そこで象徴的に言われるのが“アウトカム”、つまり結果はなんなんだ、ということが求められるというふうに理解しています。
MC
そうですね。そして私のイメージでは“コラボレート・アクティブ運用”みたいな。みんな同じ方向に向かって欲しい、成果を目指して・・・という面が強いと思います。
Tさん
うーん、ぼくはやっぱり、少しでも大きな影響を社会に与えたいなと思っていまして。でもインパクト投資では、ターゲットは見えているのですが、初期的なインパクトはすごくちっちゃいことが多いように感じています。自分は中小型を対象とした投資をしているので、既にいいインパクトを持っている企業を、さらに高めるということをやっていけばいいのかなと。つまり上場株でインパクトを起こすというのは、そのインパクトの大きさというのが僕の理解です。
MC
そうですね、個別の規模に寄るかもしれませんが・・・多くのインパクト投資では“その後”が重要ですよね。ちゃんとゴールに向かっているか、何をKPI(財務数値以外で)として選び、毎年それが目標に向かって前進しているか、モニターしていくという方法が多いと思います。
Hさん(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
その時何をもって“インパクト”と呼ぶかが大事だと思うのですが、今のインパクト投資は “社会的インパクト”の大きさを重視していると思うんです。しかし企業にとってシグニフィカントなインパクトが財務的なものである場合、同時におこる社会的インパクトが小さいというケースもあると思います。そういう時どっちを重視するかで意味合いも変わってくると思うし、上場株への投資であれば、社会的インパクトの大きい分野でかつ自分たちの企業へのインパクトも大きいものでないといけないのかなとも思います。そこのバランスというか、そこを曖昧にしてはいけないなと。社会的インパクトがまったくない企業はないと思うので・・・。
Tさん
そうですよね、社会的善となる部分がなにがしか利益と結びついている企業をきちんと選ぶというのが初期的な作業なのだと思うんですね。社会的インパクトというのは社会が求めていることでしょうから、求めがあるところにはビジネスがあり、機会もあると思うんですけど。
Hさん
その通りで、そうではないケースはあまりない気がします。社会にとって悪な企業が上場しているケース・・・て、私はあんまりないと思うんです。どの企業も何か良いことをしているか、認められている。でもその部分が時間と共に変化していて、マッチしなくなったり。そこをどうアドジャストしていけるかが難しいところだと思います。
Tさん
私もHさんのおっしゃる通りだと思います。しかし一つの自分の問題意識として、インパクト投資かくあるべし、というような枠組みができてしまっていて、その枠組みがまだVCとか、スモールステージにしか合わないので、上場企業のインパクト投資というのを評価できる枠組みが、まだあまりないんじゃないかというストレスがあります。
MC
そういった評価モデルは今徐々にできてきていると思います。“社会的ゴールと収益のジレンマ”については、アセットオーナーに寄るとは思うものの、教会とか、チャリティーとかで絶対この株には投資できない、と収益より大事なことがあるケースもあると思いますが、基本的には“良い収益”が前提だと思います。そこでよく欧州でみるのは、まず社会的ゴールをアセットオーナーの側が自分のストーリとして持ちます。例えば“低炭素社会の実現”とか。これを選んだアセットオーナーは、この実現に備えていた企業、貢献した企業に先に投資をして、そのシナリオが達せられれば、必ずそれらの企業も収益が得られると考えているわけです。そうすると元に戻ってそのゴールに何がなんでも達して欲しい。そのようにアセットマネージャーにエンゲージメントして欲しいし、成果がでているかウオッチして欲しいわけです。もしかしたら一人一人をみたら特定投資先の企業への収益が低くなることもあるかもしれないけど、全体として自分が思う社会の実現が行われ、その実現に向けたKPIで見ている企業の集団があれば、一定の収益がでるでしょうと考えているわけですね。だから田中さんと同じゴールを持つアセットオーナーがいれば良いんだと思うんです。
Tさん
うーんなるほど。欧州ではそういうリテラシーの高いアセットオーナーが多いんでしょうか
MC
リテラシーというより、そこは規制が大いに手伝ってると言えます。まずアセットオーナーたちは、みな規制で開示が厳しくなっているので、自分がどんな運用方針をもっていて、どんなふうにESGを投資に取り込んでいるかを説明しなければなりません。ですからその条件の下で収益性が高く、かつサステナブルなゴールへちゃんと全てのアセットマネージャーの投資の方向があっていますよ、といったことが求められるわけです。
続く