資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
次回、4月21日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 第四回上
2021年4月7日 12:00~12:30
(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC
ではいよいよ、企業との対話について話していきたいと思います。ではまずTさん、企業との対話でインパクトを引き出すために何か気を付けていることはありますか?
Tさん
投資先企業に働きかけることで、良質な社会に向けたインパクトを起こしていると思っています。現状は投資先企業毎にいろいろな“こうあって欲しい未来”があって、投資先をSDGsで整理すると、投資先の7割ぐらいの企業の本業はSDGsゴールにあっているなと思っています。そこでぼくらの役割は、良いインパクトが利益として回っていかないと長く続かないので、利益率を改善してみようとか、キャッシュの使い道を指南し、更にインパクトに強くなるよう支えるということだと思っています。つまり、そもそも良いインパクトがあるところを探して、そのインパクトが加速することを目指している・・・。株主の提案って嫌われる事も多いと思いますが、事業を伸ばす提案については、(ぼくは)喜ばれることが多いので、株主と企業の相乗効果で良くなることができているのじゃないか、と思っています。
MC
つまり最初からいい企業を選んでいるとうことですね。あのKさんはその逆ではないですか?“ダメな子”を選んで良くするという・・・
Kさん
そうなんですけど、それでも“これをこう変えれば良くなるんじゃないか”と思える会社に投資をするんですよね。ところで今日(4月7日)朝からずっと考えているのは東芝のことで・・・。例えば電力会社で、誰も投資をせずつぶれてしまったら、困るのは私たちですよね。そういったことも考えないといけないのかなと・・・、或いは変な人に買われておかしくなったら社会はどうなるか、とか。そういうことも考えていかなくちゃいけないと思っています。
MC
つまり、やっぱり社会的にインパクトを与える可能性がある会社をみているってことですね。電力とか、今ダメかもしれませんが、影響は大きいですものね。
Kさん
そうなのですよね。良い会社だけ投資しましょうといっていると、そういう会社はどうすればいいのか、ということをもっと考えないと。
Tさん
それはつまり事業自体は本来良いインパクトをもっているのに、経営が悪くて発揮できていないとか・・・そういうことですか?
Kさん
本業が“いい”インパクトかって言われると、日本の電力会社の場合は石炭火力も多く原発の問題もあり、今の状態が“いい”インパクトかどうかは難しい。でもそういう会社に投資しなくていいのか、資本をあたえなくていいのか、金融業界として、我々は何ができるのか、を考えています。
MC
本業か“いいか”どうかではなく、事業の中身が、社会へ大きいインパクトを与えてしまう企業を見ていかないと、ということですね。
Kさん
うーん、大きさだけだと大きい会社ばかりになっちゃうから、“大きい”っていうのもなんだけど・・・。
Tさん
この仕事を長くしていて、そもそも経営に善意があって事業をしている優れた企業に対してはエンゲージメントもうまくいくっていう経験則があったのです。これとは逆の見方ですが、投資家の社会的責任からいうとダメな企業だからほっといていい・・・とはいえない企業もあって。とは言えそういう企業を変えていくのは成功率も低いと思っていました。ところが最近インパクトとかESGという言葉が広がり、善なる経営、優れた経営である必然性が認知され始めているような気もします。そういう企業も変わっていくかなと思っています。
Hさん
これって運用しているお金の性質によっても大事違う気がします。パッシブ運用では時価総額大きいところに投資していると思いますが、アクティブで集中投資になっていると、限りあるリソースをどこに使ってファンドにもインパクトをあたえるかを考えなければならない・・・。そうすると、その企業に対するインパクトの比率になってくる。何を目的にするかによって違ってくると思います。
Tさん
面白い、X軸に社会に対するインパクト、Y軸に企業の影響に対する変化率があって、いくつかの象限に分けて投資のタイプなどが定義できるのかもしれないですね・・・。
MC
ではちょっと違う角度からお聞きしていいですか? たとえば社会に対しインパクトを与えるかもしれない事業に投資をしていて、経営者が全く自分の言うことを聞いてくれなかった時、みなさんどうしますか?
Hさん
私の場合ロングオンリー、集中投資のファンドだったらそういう企業には投資しないです。絶対聞いてくれそうにない人にわざわざ買って・・・ということはないのです。聞かないことによってその会社が明らかに企業価値を毀損していく状況に確信が持てれば、ロングショートのファンドならショートすればいいということです
MC
「たとえば投資したあとで、経営者が交代して聞いてくれなくなったという経験もあります?」
Hさん
そういうことはよくあります。それで問題は、素晴らしい経営者がいて、その人が交代してしまった後でも、ESGの開示とか非常に素晴らしい資料がどんどんでてくるのだけど、経営者が変わった後どうも言っていることは整っているけど、実態は伴っていないな、って言う会社はけっこうあります。大企業でも良く見かけます
MC
そう言う時は、詰めに行くのですか?
Hさん
それがなかなかうまく詰められないんですよ。出てきている資料は引き続きすばらしくて。表彰されちゃったりして。でも実際の成績はずっと悪くなっている・・・みなさん例が思い浮かんだかもしれませんが。ESGの資料が良いからだめっていうことじゃないんですけどね。良くてもダメな会社ってありますよね・・・
Kさん
ぼくは悪い会社に対しても、投資家は発言しなきゃいけないと思っていて。説明会なんかで、たとえ周りから白い目で見られても。それでも社長が何も理解しない会社だったら、Hさんがおっしゃるように空売りした方がいいと思います。それでも1年、2年たって変わっていく会社だったら、言い続ける価値があるかもしれない。
Tさん
Kさんはそう言う意味では、「ちょっとこれまずいんじゃないの?」とおもう経営者、事業でも、リターンが得られるなら、アクティブファンドに入れることはあるので、そこに対しては変化を訴えるという事ですか? それともポートフォリオ企業である無しに関係なく発言するということですか?
Kさん
ポートフォリオと関係なく言うべきことを言っています。それで反応をみています。やっぱりそこで真摯に受け止められる会社と全然無視されるのかを。
MC
やっぱり社会的なインパクトを考える投資には、いろいろあって、企業へのエンゲージメントもそれぞれですね・・・後半はエンゲージメントの成功体験を聞いていきたいと思います。
つづく