資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
次回、4月28日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 2章 第一回下
2021年4月14日 12:00~12:30
(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC
同じインパクトを目指している企業の中で、どの企業がきちんとそれを達成できるか見抜かないといけない、企業の側は、しっかり発信できなければならないという話をしてきましたが、Kさんはどう思われますか?
Hさん
…難しい話だと思いますが、私はインパクトの方向が投資家と企業で一致している場合には、それに対応する事で短期的な収益が落ち込んでも決して株価はネガティブに反映しないと思っています。株価に関しては、利益が仮に半減しても、将来的に必要な方向に向かうための投資であれば、それによって株価が下がると言うものではないと思います。たとえば再生可能エネルギーに投資を行い石炭火力を止めていきますよという会社は、当然短期的に利益はおちます。しかし元々の株価を考えた時に、石炭火力や原子力なんかがあって、それをどのように投資家がバリュエーションに入れ込んでいるかということで、将来的に損失が出ると考えるのであれば短期的に利益を上げていても評価されないわけです。つまり、短期のPLが全てではないと思います。どれくらいの時期にそれをクローズし、どれくらいのコストがカカっているか、通常企業価値を計算する時それらもろもろを入れて計算しているはずです。したがって、もし再生可能エネルギーに投資しなければ、20年後、30年後にどんな風な姿になっているかの過程をもっているはずです。それをもって企業と対話して、その時これをやることが企業価値の向上につながる、ということが投資家に確認されるとその投資をやる意味があると言うことだと思うのです
MC
すごくオーソドックスな言い方ですが、イギリスのIRの人なんかが言っていたのですが、自社の今後の成長などを予想して、そこから本日の理論株価を出し、その理論株価から本日の株価が当然低くても悪いのですが、高くても悪いのだと。投資家の期待を実態以上にあげたらいけない、だから自分たちの理論株価からずれていたら、その分何か情報が足りないんだということで情報発信をしているという言い方をしていた人があって、たしかに長期の収益モデルから考えた今日の理論株価が投資家と企業の間でずれないようにやっていくのが、正しいような気がしますよね。
Tさん
それ、つねに投資先の経営者の方に同じことを言っています。
MC
で、そのうえでさっきKさんがいっていたことですが、割安だから買うとして、長期投資かとして、その次は“ちゃんと情報発信しなさい”とエンゲージメントをする、とそういうことではないのでしょうか。
Kさん
情報発信に関しては、やはり日本企業は得意ではないと思っているので、最近だと統合レポートの書き方、みたいなものがたくさん出てきているけれど、とにかく発信すると言うことが大事
MC
そう言う企業にあったことありますか?発信が下手くそで、株価が割安な会社に出会ってとか、
Tさん
そうですね、それはたくさんありますね。うーん、ある意味ぼくたち上場株の投資家としては、市場のインテリジェンスというか、価格調整機能を長期的には信じていいんじゃないかなと思います。それは我々が本当に正しい判断をしていると思って、それを企業にも勧め、それが正しければ株価にも反映されると言うことかと思います。で、IR下手な企業もいつかはできるようになるんでしょうけれど、その時間軸を変えてあげたり、あるいは効果を高めるのは投資家のエンゲージメントを通じてできるだろうし。またあるいは企業がすでに良いインパクトを持っている場合については、その良いインパクトを強化できるというところに貢献できるのかなと思います。
MC
Hさんとかどうですか?Hさんが投資先として選ぶ企業は最初から情報発信うまいとか?
Hさん
そんなことないですよ。うまいところも下手なところもあって、下手なところもいっぱいあります、そういうところに投資した場合にはIRの資料をみながら何がわかりづらいか一つ一つ話していくこともあります。アクティブのマネージャーとしては割安のままでいられたら困るので、出来るだけ正しく情報発信し適切な株価になって欲しいわけです。
MC
なるほど。これまで話しているように目指しているインパクトもそれぞれみなさん違うので、それにもよるとは思うのですが、通常の情報発信ですら下手くそな日本企業がいて、長期にインパクトを起こすみたいなことになった時、今日話している“企業価値を説明する”というのはさらに困難なケースもあるのでは?
Hさん
もともとこの手の情報発信ができないところは、通常の発信もできていないですよね。やっているつもりでも。日本企業のIRの特徴は、短期の業績をとても細かく説明している場合が多く、それが長期の企業価値にどのように結びつくかを説明できている会社は、本当に少ないです。逆に超長期の説明をうまくできるようになると、業績の説明もうまくなります。
Tさん
大賛成です。統合報告書をみても、あれも玉石混合ですが、いい統合報告書ってさっきHさんがおっしゃったようなことを軸にしっかり持っているかどうかだと思うのです。でも半面、財務面での不振に対する言い訳めいたものになっている会社も多いと思うのです」
MC
はい、ありがとうございます。元に戻って、今のような話は質問者の最初の疑問に答えているだろうかというのをもう一回ちょっと確認したいんですけど。とは言っても先ほどの疑問を挙げてくださったのは、日頃“これから再生エネルギー頑張ります”とかいって業績や株価が下がっている会社をみかけてるということなのかなと思ったのですが。でも“この会社は言っているだけで、どうせできないだろうってみんなが思って株価が下がっているとか。
質問者さん
まあ外部環境が予想できないとか、マネジメントに対して信用できないとか、いろいろなパターンがあると思います。だけれどやっぱり私とかは10年とか20年とか将来ってやっぱり相当予想できないと思います。事後的にはおっしゃる通りの収束があり得ると思うけれど。事前には予想できない以上、どちらかというと投資家の信念みたいになっていかざるを得なくて、そうするとその信念に同期している資金の出し方が一致している場合しか、本当の超長期のインパクト投資ってできないのかなと思うのですけれど。
司会
う〜ん、信念っていうのは、そう言う風な捉え方をしていいのかなって躊躇するところはあるのですが、資金の出してもそういう社会の変化が必要だと思っていると、で思っているだけじゃなくてそれが実現すれば関与した産業は収益がでるだろうと思っている、そういった期待値(?)ですよね。それと市場に対する予測が一致するかどうか、と言うことだと思うのですが、今おっしゃったような疑問を持っている方いっぱいいらっしゃると思います。再生エネルギーとかインパクトに関することは、社会的な情報や政策だとかそういったものがたくさん絡むので、外的な情報もたくさん解放されないと、アセットオーナーからアセットマネージャーまですべて納得することが難しいということなのじゃないでしょうか。
Hさん
超長期の投資をするときは、企業はその前提をしっかり説明しているところになると思うんですね。何も説明しないけれどここは伸びるはずだから巨額な投資をします。でも、どんなリターンかわかりません」っていうことは普通はあまりない。なのでその内容をお互いが納得できるかだと思うんです。もちろん超長期の話になるとリスクがいっぱいあって、前提条件が変わる可能性について企業がどういう風に考えているか、というところも見ていくことになると思うんです」
Kさん
「長期というところで日本企業が問題だと思うのが、ひとつは中計は3年でいいのか。昨日たまたま行った会社で、上場するとき3年の中計を作れといわれて作ったけど、うちの会社には合わないと言っていました。たしかに3年はゴールとしては短いのかなと。
特にこれから社会に対するインパクトのある事業をしたいと考えている企業にとっては。もうひとつの問題は社長の任期がだいたい2期4年というのが多くて、そうすると長期の投資って彼らにとってなんなのと。自分の花道として業績良くして、去りたいと思ったらそれに取り組むのは難しいだろうなと。
MC
インパクトどころか長期の取り組みを企業がやりにくい?
Kさん
そうですね
Tさん
僕も同感です。今僕たちは超長期、長期、中期とかいろいろなことを言っているけれど、インパクト投資については資金の出し手、ぼくらからみたらアセットオーナーが「私達のお金をこいういう目的で“投資”してください」という願いに対する一貫性が必要だと思うのです。そうすると超長期30年とかいうと、結果が出るまでオーナーでいられる人ってどれぐらいいるんだろ。
目指す時間軸と投資としての時間軸って本来一緒であるべきなのでしょうけれど、もう少しそこを考えていなければいけないような。答えはないのですけれど。
MC
企業の問題というより、投資のあり方の問題?
質問者さん
だからインパクトとしては(途中は)KPIで測っていくのだと思いますが、疑問に思っているのはインパクトのKPIの進捗と業績との山谷が同期しない、それに上場株でやっている場合はプライスの上下があって、それをポートフォリオ管理でやっていくにはけっこうどうやっていけばいいのかわからないなと・・・
Hさん
たぶん上場株の投資っていうのは普通のものと違っていて、変化率がどれだけ大きかったかの管理だと思うのです。だから単にそれが進捗していればいいというものではないと、そもそも思うのです。あっ?!時間ですね。
MC
(気付いてくれて)ありがとうございます。ちょうどいいところで終わるのが面白いと思うので、次回はここからスタートしましょう。上場株のインパクト投資、第2シリーズはこうして上場株のインパクトについて深掘りしていきたいと思います。
次回は上場株投資はなぜインパクト投資にいいのか?ここから再開です。ありがとうございました。
続く