資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
次回、6月9日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 2章 第3回上
2021年5月5日
(このブログは毎週水曜日のクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC
今日は、シリーズ2章の最終回として、第2回の続き、人権について話してみたいと思います。前回は一人足りなかったので、“閑話休題”的にこれまでの振り返りをしました。ですから二週間たちましたが、あれからどうですか、少し時間がたって、ウイグルのユニクロに投資していたら投資家としてどう考えたか・・・ご意見をお聞きできますか?
Tさん
難しい問題ですよね。2週間考えていたのですけど、極めてこの会のタイトルである“上場株でのインパクト投資”に対するチャレンジというか、未公開ステージやチャリティーなど、イシュードリブンで投資されている小さいところなどだとこういう問題は起きないと思うのですよ。一方社会的インパクトの大きさなどで“上場株で投資すべき”と私は思ってきたので、これは上場株ならではの課題だと感じます。インパクト投資を定義する時、アウトカムとしっかり結びつけて、リターンに結び付けて、KPIを管理していくという手法が前提となるなかで、環境なんかですとやりやすいけど人権問題はそもそもKPIたてづらい。
そこにインパクト投資の観点でコメントしていいのか。ただ最終的には自分たちが投資をするにあたり目指していたありたい未来、成立してほしいアウトカムに対し妨げるものではないのかどうか。KPIを例えばSASBみたいなもので見ていた時、それを妨げるかどうかという視点で投資をしていけば良いのじゃないかと思っていて、もともとのアウトカムを達成させるエンゲージメントを続け、新たに出てきた問題がそれを損ねるのかどうかにフォーカスしていくのがインパクト投資としては正しいのではないかと、いまいまは思っています。
MC
ありがとうございます。続けて聞いていきましょう。Kさんはいかがですか?
Kさん
私は実はTさんがおっしゃったことに異論があって、はじめに設定したものに固執していていいのだろうかと思ったのです。世の中って変わっていってコロナ・ウイルスが発生したり隕石が飛んできたり、いろいろ変わっていく中で、自分の立場も変わっていくものではないかと感じています。最初に設定したものも大事だと思うし、お客様にも約束もしているわけなので、新たな課題が出てきた時どうしていくか、ファンドマネージャーとして考えていかざるを得ないと思っています。そうした中で自分の立ち位置はどうなのか、人権問題についてこういう立ち位置をとりますよということについて、考え直す必要があるのだと思います。そしてクライアントとはその都度議論をしていく必要があると思っています。そうでないと、何か起きた時にクライアントからの突き上げあるいは環境団体からの突き上げもあるかもしれない。そういう時“私たちはこうしているのだ”ということをしっかり言えないとまずいかなと思います。
MC
ありがとうございます。ではHさんお願いします。
Hさん
うーん、ファーストリテーリングについていうなら、人権ということについて彼らはもうすでにしっかりとした理念があり、目標設定を行ない、ひとつひとつの成果を確認しながら実行していると思っています。ウイグルだけじゃなく、人権の問題、女性の権利などいろいろなことをいろいろな地域で違ったレベルでおきていて、それらひとつひとつに対ししっかりと取り組みをしていると思います。またそれらを投資家だけでなく消費者にもかわるように、店頭にも置いてある“服の力”という書物で説明しています。彼らが考えるインパクトとはとても長期的だと思います。その途上でウイグルのようなことが出てきた時、しっかり考えた上でディスクロし議論を深めていくのだと思います。
MC
ありがとうございます。三人とも二週間前おっしゃったことより、とてもよくわかりました。
Tさん
(苦笑)あのKさんがおっしゃったように、そもそもぼくたちが投資先に期待していた社会インパクトを強めるとともに、ネガティブなことが出てきているのであれば、そのネガティブな面を少しでも緩和するというのは最低限やるべきことだと思うのですよね。ただいわゆるESG投資という一つの流れが出てきていて、その中、上場株でインパクトをやっていこうという時に、このクラブハウスでのシリーズを始めてからすこしづつ確信が強まっているのですけど、ESG投資ってみんなが共通してもてる“ありたい社会”とかありたい未来がある程度明確に入っていると感じていて、でも僕たちがマンデートをもっていて、インパクト投資を上場株でやっていこうとする時は、“もう少しナローダウンした個別のありたい未来”があるように思うのです。それを損ねない限りは、目くじらをたてずに実質的に判断すれば良いのじゃないかと・・・たとえば今回のウイグルではH&Mは明確にウイグル批判をしているみたいなのですよね。それに対しユニクロさんは自分たちのサプライチェーンマネジメント上問題は感じていないと言っていて、ぼくもユニクロの姿勢は正しいのではないかと思っているところがあります。
MC
あの・・・この2つの会社をどういう人が持っているかにもよると思うのですけど、もしこれらの会社に社会におけるインパクトなどにフォーカスして投資している人がいたとして、前回まで話してきたことから考えると、最近のインパクト投資と言われているものがアセットオーナーとアセットマネージャーの間の理解とかを高めている・・・という話をしてきたじゃないですか?だからアセットオーナーが誰かと言うのは大きいのじゃないかと思います。人権の問題はメーケット全体で答えも一つにならない時があると思います。世の中で利用可能な情報も均質化してませし、地域によっては同じ事象が即座に問題視されたり、他の地域からは他の見え方がなされていたりということもあると思います。
そうするとアセットマネージャーはそういうコミュニケーションをおのずとしなければならないと言えるのではないでしょうか。
Tさん
そうだと思います
Hさん
ただアセットオーナーも皆それぞれ違います。従って、その場その場でそれぞれに合わせていると、自分たちの運用の理念が壊れてしまう。つまり軸がなくなってしまう。したがって、必ずしも合わせられないと思います。大きな運用会社の場合、そもそも運用哲学自体が大まかなものになっているのである程度あわせるということをしていけると思いますが、ブティックになればなるほど自分たちの運用哲学が大事です。また特に、こういう特殊な状況にスペシフィックに対応しなければならない場合は、アセットオーナーの意見はみんな違い、先ほどのESGのところで最大公約数という話がでましたが、最大公約数に合わせることはできるかもしれませんが、運用の肝の部分になると難しい部分があります。
Tさん
そうですよね。ゆえに最初の“ありたい未来”合わせがすごく大切なのかなと思います。
MCさん
あわせるというか、コミュニケーションが必要なのでは。この問題って人権問題だけじゃなくて、たとえばいざ株主提案などが増え、アセットマネージャー、アセットオーナーで意見を合わせなければならない場面って増えていると思うのですね。
Tさん
結構考えたんですよ、二週間。かみさんと娘と、ご近所の同じマンションの奥さんに聞いたんですよ。ウイグルの綿をユニクロが使っていたら買うのをやめますか?って。そしたら“別に構わない。買います”というのです。“でもひどいことをしているかもしれないのですよ。ところでユニクロが人権を優先してウイグルの綿を使うのをやめて値段があがったらどうします?”って聞いたら“それは良い事だし、少しの値段上昇ならそれでも買います”って。
続く