資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
6月30日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 3章 2回上
2021年5月19日
(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC
では、今日も“気候変動のように政策が反映するがゆえに、独特のターゲットやKPIをもつような投資”について続けて話していきたいと思います。ところで、クラブハウスのお知らせ画面にご案内しています通り、今日からは質問を受け付けています。
さっそくいただいた質問をみてみましょう。“自分はインパクト投資は理念として<いいこと>が重要だと思っています。ところがこの<いいこと>をファンドマネージャーがどのような論理や仮説で予想したかが重要ですが、気候変動については複雑すぎて論理的に仮説も検証もできないのではないかと思っています。またその仮説を満たすKPIも業績と連動するように置くのは難しいのではないでしょうか、それでアセットオーナーに説明できるのでしょうか”ということを疑問におもっていらっしゃるそうです。これについて皆さんどう思うか、聞いていきたいと思います。ではKさん
Kさん
気候変動自体が非常に大きな問題ですし、その中で企業がどうとらえていくか、どう対応していくか、色々みなさん太陽光発電使ったりされていると思いますし、そういったことはしっかり説明できるでしょうし、それに効果も数字では表せると思います。ただ単純にヨコ比較でこちらの方がいいですよ、といわれてもそれはちゃんと考えていかなければいけないと思います。また時系列的にどうなのかとか。・・・企業にとってできないことではないと思っています。
MC
うーん。ありがとうございます。ではHさん。
Hさん
<いいこと>というものの定義が難しくて。なんとなく環境にいいというだけでは、我々は投資できないのかなと思っています。インパクト投資っていうのは自分たちが設定しているKPIがしっかり業績に結び付いてくる、というか企業価値にむすびついてくるという前提がある会社にしか、投資できなくて、<いいこと>はやっているんだけど企業価値につながらない場合は投資にはならないと思います。逆に<いいこと>のKPIが企業価値に結び付いていれば、アセットオーナーにも説明できると思っています。
MC
つまり、気候変動のためにやらなきゃいけないことは色々あって、企業側もこれに投資したいっていうことはあるかもしれないけど、Hさんとしては大前提としては企業価値と結びつくもの、もしかして政策の変更による揺らぎが起きにくいものなのかもしれないけれど、説明できるものであることが、重要だということですね。
Hさん
そうですね、やらなきゃいけないことがたくさんあって、それが企業価値に結び付かない会社がいっぱいあるんですね。それはインパクト投資に向いていない会社、ということだと思います。その会社がいいとか悪いとかではなく。で、われわれがインパクトに対して投資をするという場合は、それと企業価値がリンクしているところに投資をするけれど、インパクト投資の投資対象にならないからといって悪い会社というわけではないし。。。企業価値があがらないわけでもないです。そのインパクトと企業価値が結びついているということが前提にあれば、気候変動でも難しくなく判断できるんじゃないかなと思います。
MC
ありがとうございます。ではTさん
Tさん
・・・そうですね。なんかいろいろなことが結びついていると思うのですけど、あえて誤解を恐れずにいえば、そのKPIなるものが企業価値を説明できないのであれば、それはインパクト投資とは言えないのじゃないかなと思うのですよね。環境省とかが出しているレポートとか、読んだりしているのですけど、インパクト投資を包括型、特化型とわけてらして。包括型は使途を問わないコーポレートローンだったり、或いはパッシブのインデックス型投資、ここについては網をかけるような投資になるので、その中でKPIとして何をおいていくかでカーボンフットプリントとか出てくると思うのですが、私はアクティブ投資ですし、そうするとインパクト特定型、つまり特化型なのですがこれは“上場企業投資には適さない”と書いてあるのです。でもぼくはむしろこれで行けると思っています。定義がまだはっきりしていないというのもあるのですが、GIINとかが作っているインパクト投資の定義として、そもそもどういうインテンションがあるのか、金銭的リターンがあるものなのか、モニタリング可能なのかといった実績に基づいて言えば、KPIってリターン=企業価値とリンクさせられるべきですし、させていないといけないと思いますし、そうでないとインパクト投資と呼んではいけないのではないかと思いますね。
MC
うーん。じゃあ、例えば“こんなケースだったらインパクト投資”っていえるかなという事例ある方いらっしゃいますか?
Tさん
うーん、とそうですね。“これぞインパクト投資でございっ”っていうのはないのですけど、意識しているものとしては、たとえば温暖化ガスそのものがKPIかというと、そうではないのです。長期投資的にみたアウトカムとして地球の環境を守っていきたい、それには温暖化問題は重要で、それにはCo2をどうコントロールするかが重要・・・というのは一つのアウトカムでKPIだと思うのですよね。ずっと応援している会社で、地方の中古物件を扱っている会社があって。リノベーションをしてきれいにして売っていく会社があるんです。中古物件で新築に比べてCO2が3/4ぐらいで済むのですね。私はこの会社がどんどん伸びていくことが社会にとっても地球にとっても良いことだと思っているのですが、実際のエンゲージメントとして何をやっているかというと、“どんどん伸ばしてください”と言っている。経営者は放っておくと、守りを固めてしまうところもあるので、“まだまだ増やせるんじゃないですか?”、“こうやれ増やせるのじゃないですか?”なんて言っている。結果としてKPIとしては中古物件をどれだけ増やせたかで、それを増やせればCo2も減ると、そんな風に考えているのですが
MC
なんとなく、今パッとお聞きして、これはCO2削減が“インパクト”なのか・・・そのためにやっているわけじゃないのですものね。
Tさん
あ、はい。もちろん複合的なんですよ。超長期のアウトカムとしてはCo2の削減を通じて地球環境に良いことができる・・・ということになりますが、その前のところにいたっては、土地の周辺部の社会環境をよくするというのもありますし、長期、中期で違うんですけど、一つそれを束ねているのが祖業としての中古住宅の再生件数というのが全てにいい影響を与えていると、そんな風に考えています。
MC
まあ複数のインパクトがあれば、ただ昨日から話しているのは“気候変動は難しそう?”なので・・・
Tさん
そうなのですが、削減量を企業に要求してしまうと、結果的に企業価値につながらない。
危険性もあると思うのですよね。
MC
・・・なんとなくこの質問者さんの御指摘通り?
Hさん
あの・・難しいところだと思うんですが、たとえばKPIの置き方というのをインパクトを与えるもの自体にしなくていいのかな?って思っていて。その会社が成長していくと結果的に社会全体のCo2を減らすことができたとしても、Co2の削減目標ってもの自体がなかったとすると、それってインパクト投資のKPIとして適切なのか?というのはあると思います。先程の例でいうと、中古物件でリノベーションを行うと新築に比べてCo2を3/4ぐらい減らせたとしても、より高い技術で8割、9割減らせる家をリノベーション手法で開発したが、コストが上がって価格に転嫁できず、その会社の収益を伸ばせなかった場合、その会社のCFから見た企業価値は上がらないとした場合、どんなふうに判断したらいいのでしょう?
Tさん
・・・な、なるほど
続く