資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
次回は11月10日(3日は祭日につき)、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 4章3回下
2021年6月23日後半
(このブログはクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
Tさん
アセットオーナー自身が、貴重な年金資金を運用される事を通じて何を実現したいのか、どういう投資対象に投資をしたいのか、ていうのを考えていくことが優先で、それに先立ってESG投資、社会的インパクト投資はかくあるべしというのを“外野”が作っちゃうというのがかえってそれを劣化させていないかなと思うんですけど
Hさん
あの〜いいですか?私なんか北欧のソブリンファンドとか運用していたときの感じだと、同じ組織の中にもいろいろな立場の人たちがいて、意見やスタンスが異なります。ESGの担当者の人は本気で、本当にそれが必要だと信じていて、彼らなりの管理の仕方で管理したい、だからたいてい向こうのフォーマットがあってそれにそって報告します。また、投資銘柄も“この範囲の中でやってください”というものを指定している場合もありました。だけどその会社の中でもCIOやESG以外の運用担当者になるとスタンスや考え方が違って、ESGは重要ではあるけれどトッププライオリティではなくリターンでないファンドは基本的にダメというスタンスでした。アセットオーナーの中でも、いろいろな部門があって、その部門ごとで目標が違っうということは実態としてあるんじゃないかなと・・・
MC
それは間違い無くそうだと思いますよ。5、6年前ぐらいにイギリスのアセットオーナーと話したことなんかを思い出すと、今から5、6年前だとイギリスでもESGのEの圧力が強くなっている時期なんですが、ガバナンス担当者が“いったい誰がこの企業を買ったんだ!”みたいに思う銘柄を運用側のジャッジメントで組み入れていたりすることがある・・・なんて話を聞いていましたし、ついこの4月でも北欧の年金基金で責任投資担当者が、“アセットマネージャーの中でもファンドマネージャーと、ガバナンスやサステナビリティなどを見ている人で意見が割れる・・・”という話をしていました。だからどこの世界でもあるのだと思いますが、アセットオーナーに説明をする時、つまりESG
的ファクターは個別に色々な話はしたいけど、アセットオーナーから見ればものすごくたくさんのアセットマネージャー抱えているから、なかなかわからない、これがたぶんKPIがわかりやすく浸透していく背景なんじゃないかなと。パフォーマンスはわかりやすいから、あとはESG頑張っているファンドマネージャーとそうでないファンドマネージャーを・・・やられる方は嫌だと思いますが、ソートしたいとか思ってしまうと思うのですが・・・・
Kさん
運用機関として評価されるのは嫌だっていうのはありますが(笑)逆にファンドを評価するほうはどうなんだと思います。今、多くのアセットオーナーは持っているファンドをバーラのシステムなどにぶちこんで見たりしているわけですが、ESGについても同じことするのかなと。どこかのコンサルタントがシステムを売り込んで、標準化されて、それぞれのファンドについてそのツールが解説して・・・その時にぼくらがどんなふうに見られるかを考えないといけないのかな・・・そうすると個別銘柄を評価して運用している人たちは苦労するんじゃないかな。逆にいうと、そうじゃないんよと言い続けなければならないんじゃないかな・・・。
Tさん
本当に大変になると思います・・・ちょっと例え話を思い出したんですが、某外資の大手が運用されているとても評判のよい成長株ファンドがあって、サブファンドとしてESGファンドを立ち上げられた、ところが内容をみるとメインファンドとほとんど中身が同じだったとして色々議論を呼んでいるようです。気持ちはわかるところもあって、確かにESGファンドです!って謳っていなくても慎重に株を選んで、企業を評価していくと十分に社会のためになっている、いいインパクトを起こしている企業に投資を行っているという自負はあるはずだと思うんです。でもそれが、いまESGやインパクトに投資したいという人は、そういう名前がついていないと投資してくれない、じゃあ看板を書き換えちゃえとなる部分もあるのではないかと。でもそこからさきはビジネスの世界なので、高い手数料をつけたとか、内容が同じだということを言わなかったりしたらビジネスとして問題かもしれませんけど。でも外形から入っちゃっているところで、アセットオーナーとして実現したいことは本当に実現できてるんでしょうか。・・・おそらくアセットオーナーが恐れているのはウオッシングですよね。それを避けなければならないということで外形的にもちゃんとした、綺麗なものに投資しなければ、という傾向になるんでしょうけどそうじゃないんじゃないかと。・・・ちょっと話しながら思いついてきちゃったんですが、ハラールってあるじゃないですか。イスラムの人が信教上のスタンダードに照らして食べることができる食材の一種の認証ですが、個別企業にもハラール認証的に、この会社はこういう評価ですっていうのができていれば、成長株ファンドですが、6割ぐらいハラール対象ですとか言えて、そしたらアセットオーナーも、自分は成長株に投資してるんだけどESG対応もかなりできちゃうな、みたいな印象をもてるかもしれませんね・・・
MC
いや、それはね。最初に言ったのと矛盾してますよ・・・。今いい子だけを集めてファンドにしますじゃないと。三人は思っているわけですよね。今からどうやって良くするかがアクティブ運用の腕の見せ所であれば、今の得点だけでみてちょっとESGぽいじゃダメなんでしょ? 問題はエンゲージメントを評価するのがすごく難しいということなんだと思うんですよね。自分たちがいたおかげでどういう改善があったかを説明するのは難しい、それをアセットオーナーが定量的に評価して、しかも100とか200とかいるアセットマネージャーのうち、優秀なアセットマネージャーに入れ替えるというのはすごく難しいということですよね。
Hさん
いや、難しいと思いますよ。エンゲージメントちゃんとしたかって、いろいろな運用会社の報告を見ていると結構言ったもん勝ちみたいになってて・・・。でも私なんかの場合あんまりエンゲージメント何しましたかって聞かれることはないですね。
MC
それはHさんが成績優秀だからでは?
Hさん
いやいや、そういうことを聞きたいわけじゃないと思うんですよね。日本て今そこにすごい関心があるし、アセットオーナーもそこをきくんですけど、海外ではそれは当たり前のことって感じで。普通にファンド説明をしていて、投資していると色々なことが起こるわけですが、不祥事とか、運用パフォーマンスが上がらないとか。そういう時にそれをどう考えて何をしているのということになって、その時に自分たちがこういうエンゲージメント活動をしました、ということを説明して、どういう時間軸で対応してくのみたいな話になるわけです。つまり、洗練されているアセットオーナーは全てが当初宣言している運用スタイル、エンゲージメントの考え方に合致した行動をとっているかという事を具体事例で確認するわけです。だから全部を“こんなふうにエンゲージメントしてます”とかアピールするというのは、僕の場合は全然なくて・・・
エンゲージメントって、不祥事など何か悪いことが起こった時にどのようなエンゲージメントをするかも重要なんですけど、そもそも、そういう会社を選ばなくてもいいわけじゃないですか。アクティブ投資なんで、なんでそこ選んだのとか。最初から割安でエンゲージメントする前提で買っていれば別なんですけど、買った後に不測の事態が起こりエンゲージメントするという場合ではそもそもその企業を買わなきゃ良かったじゃないか、分析が深かったら避けられたんじゃないかということになります。だからアクティブのエンゲージメントは失敗した時の言い訳みたいにならないようにしないといけない。
逆にパッシブだと、」自分たちがこういう活動を行いましたっていうのもあるので、パッシブのほうがピュアにエンゲージメントの説明しやすいのかもしれない。もちろん何を目的にするかにもよりますが。
MC
そうするとインパクトな運用をしているアクティブな運用者は、評価されるのは難しい、評価するには評価する側もなんらかのモデルがいる・・・しかし既存のモデルは運用者が満足できるようなものになっていない?ということ?
Hさん
・・・たぶんこういうアクティブの場合は、パフォーマンスがいいのが大前提で、それも達成できていないのに、あれこれ言われても“何言い訳を言ってるの”っていう感じになっちゃいますよね。
MC
だからまずパフォーマンスがいいことが大前提で、それからESG的に絶対必要なことについてこういう取り組みをしているということで、今EUでは新しい規制、各マネジャーが報告するレギュレーションがあって、だんだん報告もKPI化してると思うんですよね。
Kさん
・・・ちょっといいですか?先程ハラールの話がありましたけど、じゃあいい会社ってどうなのって考えたら、今東芝のHPみたら2019年度もESGとかCSRとかで表彰されている。
Tさん
ハラール認証とれているんですね
Kさん
・・・だからそういった意味で難しいところがあるんです。本質的なところは自分で見にいき、しっかり認識するということが重要なのかなと思います。だからインデックス的になるとなかなかそれが理解できなくなるというところが懸念です。
MC
だから今Kさんとかが企業に対し思っているようなことを、アセットオーナーはKさんたちに対して思うんですね。”う〜ん、こいつはKPIだけみると良さげだが10年お金預けたら大変なことになっちゃうぞ“とか。
Kさん
・・・だからやっぱりそうしたことを、アセットオーナーもそうですが、個人もそうかもしれないけど、みる目を持っていただきたいなと思います。
Tさん
ぼくたちエンゲージメントを要素分解しているんですよ。ざっくりとEPS(キャシュフローも含めて)を上げるのか、市場マルチプル、まあ市場からの評価ですね。これをあげるのか。それぞれによってさらに細かい要素分解ができるんですが、、ESG、SDGs的な考え方もこの中に入っていまして、それをぼくらなりのKPIにしているって感じです。まああんまり定型のKPIができるとぼくらが信じる価値感が薄れてしまうような・・・・・
続く