シリーズ第3回は、このストーリーの心臓部です。米国ラウンドワン(4680)の最大の成長エンジンは、日本アニメ人気の爆発的な拡大にほかなりません。アメリカ4都市で競合約20店舗を歩き、世界最大のアニメイベント「Anime Expo 2026」の会場に立って確かめてきた、同社の優位性の実像をお伝えします。

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まず数字から|米国アニメ市場は年率15%で伸びている

調査機関Grand View Research, Inc.の2026年調査によると、世界のアニメ市場規模は2025年の377億米ドルから2033年には約772億米ドルに達すると予測され、2026年から2033年までのCAGRは9.2%で成長するとされています。なかでもアメリカは年率15%と、世界平均を大きく上回るペースで伸びると見込まれています。

配信最大手のクランチロール(Crunchyroll:ソニー子会社)は、有料会員が2,100万人(2026年5月発表、前年比約+24%)、登録ユーザーは1.2億人を超えました。

巨大なアニメ需要を、どう「現金」に変えているのか

答えはクレーンゲームと、日本のアニメIPとのコラボレーション企画です。人気アニメのコラボ景品を目当てに、若者たちが店に押し寄せています。日本ではコラボ企画は当たり前の光景になりつつありますが、米国での本格的な展開は今年からです。国内では月間およそ30件のコラボを続けており、米国でも月間コラボ件数は直近で20件(2026年7月現在、公式サイトより)、1店舗あたりのクレーン台数はこの5年で約3倍に増えました。

ネットでアニメを「観る」時代に、この規模感で「その場で触れて、取って、持ち帰る」体験を全米規模で提供できるのはラウンドワンだけです。コラボ時には、プレイに使うプリペイドカードの券面まで限定デザインになり、カード自体がコレクターズアイテムに化けます。フード&ドリンクを頼むと限定グッズが手に入る仕掛けもあります。「遊ぶための入金」が「推しの限定グッズ集め」に変わる——この仕掛けが、来店動機と客単価を同時に押し上げています。

こうしたコラボ企画ができるのは、日本で長年培ったアニメ制作会社や景品製作会社との実績と信頼があるからであり、同業他社には真似しにくい構造になっているといえます。

Anime Expo 2026 現地レポート|世界最大のアニメイベント

ここからが現地報告です。7月3日、ロサンゼルス・コンベンションセンターで開催された「Anime Expo(AX)2026」を歩いてきました。会期は7月2日から5日までの4日間。会場面積は東京ドーム約1.3個分、前回の入場者は延べ約40万人と、世界最大のアニメイベントです。日本最大のAnimeJapanが約16万人ですから、その2.5倍の規模です。

一般チケットは開催前に完売しており、15時頃にはメイン会場で入場規制が行われていました。入場者数が40万人前後で頭打ちに見えるのは需要が伸びていないからではなく、会場のキャパシティが限界だからとみられます(同会場は現在、拡張工事中)。エントランス近くには、日本のスポーツイベントでよく見かけるダフ屋が「チケットを売ってくれないか」と待ち構えていました。

項目 数値 備考
入場者数(延べ・前回) 約40万人 AnimeJapanの約2.5倍
会場面積 東京ドーム約1.3個分 LAコンベンションセンター
一般チケット 開催前に完売 15時頃には入場規制も
コスプレ参加者の比率 1〜2割 作成者の体感値
出所:SPJA公表値・各種報道より作成。ターンスタイル入場者数(延べ)です。

現地で見えた「メインストリーム化」の証拠

客層は筆者の体感として白人系が4〜5割、アジア系・ヒスパニック系・黒人系がそれぞれ2割前後という印象でした。一方、日本人はほぼ出展者で、客としてはほとんど見かけません。アニメはもはや特定コミュニティの趣味ではなく、アメリカ社会全体の若者文化になっています。

驚いたのは入場者の1〜2割がコスプレ姿で参加しており、しかも実に堂々と楽しんでいたことです。コスプレ市場は日本より大きいのではないか、という印象すら受けました。フィギュアは高額品から売り切れ、無料配布のランダムカードには参加者が何度も並び直す熱狂ぶりでした。

会場のアンカー(中核出展者)はクランチロールでした。最新話を放送からわずか数時間で英語やスペイン語などに翻訳配信するこの会社は、まさに米国アニメ市場の“ネットのインフラ”だと実感します。興味深いのは、アメリカでは日本と逆で「アニメが先、マンガが後」だということ。紀伊國屋の売場も8割がフィギュア等のグッズでした。あるマンガ配信会社は今年を市場の転換点と見て、出展規模を3倍に拡大したそうです。マンガ需要の拡大は、まだ序章に過ぎません。

ラウンドワンはどう動いたか|イベントから店舗への「送客導線」

この巨大イベントでラウンドワンは何をしていたのでしょうか。単独ブースの出展はありませんでしたが、代わりにホロライブ・SEGA・FURYUと連携したクレーンゲーム体験コーナーを展開し、大人気を博していました。マシンにはROUND1のロゴが入り、プレイした人には今後の出店モデルの中心となるフードホール型店舗をプロモーションしたうちわと、「1ゲーム無料」特典付きのキャラクター限定カードが配られていました。

注目すべきはその夜です。近隣のラウンドワン店舗を訪れてみると、AXの入場パスを首から下げた来店客がちらほら見られました。イベントの集客をその日のうちに店舗売上へつなげる送客導線が、実際に機能していることが確認できました。派手な単独出展よりも、効率的な費用の使い方だといえます。

なお、国内系競合のマシンも一部ブースで見かけましたが機器の貸与にとどまる模様で、Dave & Buster’s、Main Event、Lucky Strikeなど競合の露出は、筆者が見る限り皆無でした。この場所に、ライバルはいなかったのです。

競合20店舗を歩いた結論|差は縮まるどころか、開いている

イベントだけではありません。4都市でラウンドワン10店舗と競合約20店舗(Dave & Buster’s、Main Event、Lucky Strike〔旧Bowlero〕、クレーンゲーム専門店など)を見比べてきました。

まず競合ですが、キャラクタークレーンは昔と変わらず増えておらず、景品も旧来の汎用ぬいぐるみが中心のままでした。クレーン専門店は料金こそ安いものの、扱うのは小型景品ばかりで立地も限られており、全国規模の脅威にはなり得ないとみられます。

一方のラウンドワンは、景品の中身そのものが進化していました。2年前はノンブランドの「カワイイ系」ぬいぐるみが7〜8割を占めていたのに、いまではアニメキャラクター人形・フィギュアが約6割、カワイイ系は約3〜4割、一部店舗では日用品系が約1割という構成に様変わりしていたのです(筆者の店頭観察による概算)。伸びるIP需要に合わせて品揃えを機動的に入れ替える——この商品開発力と運営力こそ、日本で数十年かけて培った「堀(モート)」だといえます。

主要顧客層である大学生の経済力の高さ

今回の視察では、ロサンゼルス在住の大学生にインタビューする機会を得ました。18歳の男子学生でカジュアル寿司チェーンでアルバイトをしており、時給は18.5ドル、1日5〜6時間・週3日勤務。チップ込みで1日150〜180ドル、月間で約1,800ドル(1ドル160円換算で約29万円)稼いでいると語っていました。しかも時給やチップは近隣店と比べて安い方だといいます。周囲の大学生に節約するという考え方はあまりないようで、ラウンドワンの主要顧客である若者の経済力は、日本と比較してもかなり高いことがうかがえます。

結果はすでに数字に表れている

競合の既存店売上がそろってマイナスに沈む中、ラウンドワンだけがプラスを維持しています(出所:当社開示〔国内:2026年3月期実績、米国:2Q時点の2026年3月期計画数値〕、Dave & Buster’s 2025年度実績、Lucky Strike〔旧Bowlero〕2025年度実績。各社の会計期間は異なります)。

競合が簡単には追いつけない、3つの堀

  1. IPホルダーとの関係性|日本で数十年・月約30件規模のコラボを積み重ねてきた信頼が、アメリカでも独占的なコラボ景品につながっています。
  2. 景品の開発力|人気IPの限定景品を自社で企画・調達できるので、「ここでしか取れない」体験を生み出し、来店動機と単価を押し上げられます。
  3. プライズ運営力|1店舗に100〜300台超のクレーンを最適配置し、高回転で回すオペレーションは、台数もノウハウも競合と桁違いです。

最後に、一つの将来像を示します。クランチロールが米国アニメ市場の“ネットのインフラ”だとすれば、ラウンドワンは“リアル消費のインフラ”になり得るのではないでしょうか。全米に広大な面積を持つ店舗網は、「日本のアニメを体験する場所」の標準になるポテンシャルを秘めています。

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本ページは要約版です。図表を含むレポート全文は、下記よりPDFでご覧いただけます。

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出所・ご留意事項

本資料は株式会社ラウンドワンの開示資料(「2026年3月期 決算説明会資料」2026年5月13日ほか)、公式サイト、Grand View Research・ICSC・SPJA等の第三者データ、および作成者による2026年6月末〜7月上旬の米国現地視察(シアトル・ヒューストン・ロサンゼルス・サンフランシスコのラウンドワン10店舗、競合約20店舗、Anime Expo 2026)に基づく情報提供資料です。特定の有価証券の売買を勧誘するものではありません。現地観察に基づく数値・構成比は作成者の概算・体感値を含みます。出店余地は作成者の試算であり、会社の公表計画ではありません。将来予測には不確実性が伴います。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

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