資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
11月3日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 4章3回上
2021年6月23日前半
(このブログはクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC
前回まで、いろいろなインパクト投資がある中で、社会的なインパクトやアセットマネージャーがおいた仮説やリターンを説明できるか、それにはKPIが重要だということを話してきました。その中でこの3人のような集中投資の場合は、一社一社個別の議論をしていてKPIで話すの難しいよねという意見がでました。とはいえ、世の中の流れは更にKPI重視に向かっています。昨今EUでもアセットマネージャーの報告書が比較可能になるような取り組みが行われています。SFDRというレギュレーションが今年の3月からスタートし、来年からは一定以上の条件の資産運用会社は、定められた詳細の情報を報告書に記載しなければなりません。そこではサステナビリティの課題への貢献だけでなく、悪影響となるようなことについてのKPIもあります。それだけのデータを投資先企業分揃えないといけません。アセットオーナーは比較しやすいとか、評価しやすいといい、何十ものアセットマネージャーに依頼している場合は、一人一人のアセットマネージャーの説明を聞いて理解することが難しいのだと思います。さて運用者から見てこの状況はどうでしょうか?今日はオーナーは皆さんの報告を聞いてなんと言っていたか・・・から話してみたいと思います。
Tさん
ちょっと違う話しからなんですけど、さっき我々集中投資は個別に議論をしているからKPI設定が難しい。。。とおっしゃいましたよね。でも逆じゃないかと思っていまして、ソーシャルインパクトを本当に考えるのであれば各社固有のテーマがあるべきなんで、個社で設定されるべきだと思うんです。でも今のインパクト投資の投資コミュニティで議論されているのはもう少し網の目があらい。インダストリーの中で共通の何かを見つけ出そうとしている動きじゃないですか?ゆえに、個社だとかえって使いづらいKPIになっちゃっていると思うんですよね。
本来は個社で何を管理しなければならないかをアセットオーナーとしっかり議論しなければならないと思うんです。
MC
なるほど、それでちなみにTさんの場合はTさんからみてアセットオーナーは一人?アセットオーナーからいたらアセットマネージャーはTさんだけ?あるいはすっごい大勢いますか?
Tさん
一人ではないです。ものすごく多くもないですが。我々はプロダクトをよくわかっていただいていると思います。もうそれで十数年ですから、よくわかっていただいていて。ただ、昨今新しいアセットオーナーの方とお話しすると“なんでもいいからESG持ってきてよ“ていうニーズはすごく強いようです。我々は個社にフォーカスしているので、そこに合致するのかどうか・・・大きな流れとしてのニーズは高いとはいえ、具体的に運用を通じて何を達成したいのか?という点について、現時点ではあまりアセットオーナーさんはご関心がないのかも・・・
MC
じゃあTさんが一生懸命KPIを用いて新しいクライアントになるかもしれない人に説明しても、あんまりみてもらえない?
Tさん
そうですねえ・・・まず外形標準を満たさないと、という感じがします。またアセットオーナーさんはまだどうしてもESGはリターンが悪いという認識でいて、“多少でもリターンがいいものをもってきてくれ”というご要望が多いようです・・・
MC
なるほど。ではKさんどうでしょうか?アセットオーナーさんは今までKさんの説明をなんといっていましたか?
Kさん
私は欧州系の運用会社にいたこともあって、けっこうESGを重視されているお客さんがいました。そういう方はパフォーマンスは一般並みでいいので、ESGがよくなるように投資したいと言われていました。そういうニーズもあるとは思います。一方、日本でもESGならなんでもいいから持ってきて、という人がいるということは関心は増えているということでしょう。去年も銀行系の運用会社がESGと名前をつけて一兆円集めたりしていますし、ESGという名前をつけたらそれだけで売れるみたいな状況になりつつあります。その中で本当に、投資家が投資先一社一社のESGを考えているかどうかというところを見なければいけないと思うのですが。
MC
その欧州のお客さんで、パフォーマンスはそこそこであればESG的にいいものを持ってきて欲しいという人たちにKさんはどんなふうに自分のファンドはESGに貢献していると説明をしてました?
Kさん
うーん、私がやってきたのは、今あまりよくなくてもこれから頑張ってよくなりますよという企業に投資をしてきたのですが、でも最近の欧州の規制をみているとピカピカの会社に投資しているほうが評価される方向なので、スタンスが違うのかなと思ってます。スタンスの違う人にどうやって話すかとなると、“ぼくらはこういうスタンスですよ”というしかないと思っています。
MC
Kさん、過去のこのセッションでもいっていましたね。今ダメな人が良くなるのが大事だと。しかし確かに今のEUなどの取り組みは今ピカピカの人にしか投資しちゃダメみたいなところはありますよね。でもKさんがちなみに説明する時は、どんな点を話していました?
Kさん
もちろんガバナンスもありますし、たとえば人に関しても海外の工場まで見に行って、そこで問題点があってぼくらはこういういうふうに意見を言っていると、いうような話もしています。結構、個社によって違います。
MC
シンプルなKPIじゃなくてやっぱり現状の問題はこれて、こんな議論をして、こんなふうによくなった・・・というような説明をすることが多い?
Kさん
そうですね。よくなるには時間がかかりますが・・・
MC
ありがとうございます。Hさんはどうですか?
Hさん
投資している側からすると個々の企業は大事ですが、アセットオーナーに説明する時を考えると、必ずしもそこまでいかないこともあります。アセットオーナーは通常はすごくたくさんの運用会社にオーダーしています。大きなアセットオーナーになると運用会社もかなりの数採用しており、個々バラバラです。1宇1つの運用会社から投資銘柄1つ1つの進捗を聞くというのは現実的じゃなくて、通常それはないと思っています。
説明する時は目立っているところ、自分たちが特にベッドしているところを説明するのだと思います。従って、通常はファンドレベルまで進捗の説明を求められているのかな?という感じがします。
Tさん
なんかあれですよね。VaRの議論じゃないですけど、自分たちが持っているアセットのエキスポーじゃーってどんなもんなんだろうって理解したいというのはわかりますし、テールリスクも含めてそれを管理していくという意味では、何かファンド単位でというのは重要なことなんだろうなと思います。ただ、たとえばESG投資をやりたいと、考えなきゃと思う方が本当にカーボンフットプリントの改善を達成したいのか、それとも本当はリターンなんだけど、せめて世の中に悪いことをしたくないっていうことなのか、それをよく考えてもらうことがすごく大事だと思います。両方ありだと思いますし。本当にカーボンプリントの改善を達成したいのであれば、ファンド単位でそれをきちんと達成するマネージャーがお預かりするべきだと思います
続く