上場株インパクト投資の研究 4章(1)
資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。
リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)
7月21日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。
上場株式でインパクト投資 4章 1回上
2021年6月9日
(このブログは毎週水曜日のクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)
MC
いよいよ第4シリーズです。1シリーズ4回だから、このシリーズを始めてもう3ヶ月たったということですね。この間もインパクト投資ってなんだと言っているいろいろな人の意見も踏まえて議論してきたのですが、個人的にはどんな定義でもいいとおもっています。重要なのはアセットオーナーに理解されることなので、それにはKPIが重要だと思います。成果を見せないといけないですから。そこでコンシリーズではこんな議論をしたいと思います。もしここに大金持ちのアセットオーナーが現れて、“君に1000億あずけるよ、社会に意味のある投資をしてほしい”って言われたらどうしますか?ではTさんから
Tさん
うーん、1,000億・・・。私みている会社の規模が小さいから・・・いくらで運用したいっていわれたら300億とか400億なのですかね
MC
質問はKPIです。
Tさん
あっ!すみません。お金の話聞いちゃうと実際に考えちゃう(笑)。うーんでもKPIについて語るなら・・・各論になっちゃうのかなと思うのですよね。今見ている時価総額2,000億以下の企業で継続してウオッチしているのは5、60社あるのです。一度それを精査して、自分たちが今やっているエンゲージメントテーマをSDGsの役割で整理できるところが何社あるかみてみたらそれらの中で6割から7割あったのです。それを積み上げていけば、2〜300億の投資をする自信はあります。でもKPIというのを考えた時、クオリティをあげていくのはまだまだ障害が多いのかなと思っていて。例えば最近見ている会社でAIをつかったIT企業で、グリッドコントロールなどでエネルギーを効率的に使うといった、インパクト的にイメージしやすい企業があります。でもこれがIRIS+とかでKPIを探すと、ITでクライメートを語れる指標のってあんまりなくて。リスクサイドがあるぐらいです。だから私はポジティブなテーマを財務データとあわせて説明できるKPIを作りたいけど、それは今のインパクト投資の枠組みでは認められないのかなと思ったり・・・」
MC
そんなことないですよ。リスクとリターンはセットですし。EUでも、ITは電力を使う割合が多い産業なので、初期のタクソノミにも入っています。電力を減らすこともできるかもしれないし、新たなイノベーションも出せるかもしれない、だからいろいろできそうですよね。でもそういった既成のKPIに拘らなくても、ご自身でエンゲージメントやオーナーへの説明でKPIおいているでしょう?ではKさん
Kさん
いろいろあると思うのですけど、今世の中でインパクト投資のファンド増えつつあるのですが、中をみると太陽光発電とか電気自動車の株がはいっていて、そりゃそうだよねと思うのです。でもインパクトとESGって何が違うの?と考えると。やっぱりいまいいかどうかより、“社会を変えていける”ということに注目しなければならないと思うのです。そうすると、いわゆる“良い企業”ばかりに投資するのではなくて、変わっていける、変わらなければいけない企業に投資し、投資家としてインパクトを与えていかなければならないと思っていて、そう考えると結構幅広くできるかなと思っています。いろいろな会社でできるはずだと・・・。だから一社ずつ、ぼくらがこの会社にインパクトを与えることができるか、あるいはこの会社はそれを受け入れることができそうか、を考えながら投資をしていければいいなと思っています
MC
Kさん、具体的な例はないでしょうか。インパクトとか一回おいておいてもいいです。Kさんが普段ものすごくよく見ていたのはなんでしょう。
Kさん
KPIって一つじゃないと思うのですよね。企業によっても違うし。一つ一つ違うものを設定しないといけない。昔やっていた時はあんまりKPIたてていなかったな・・・またどちらかというと財務的なKPIで環境のKPIに落としていなかったなと反省しています。
MC
たとえば、1年目にエンゲージメントをはじめて、2年目、3年目に社外役員が増えるとかそういう計画的なアプローチをされていました?
Kさん
だいたい、ニュアンスはそんなかんじでした。社長たちの任期を考えると3年ぐらいがちょうどいいのかなと。中計も3年とかが多かったです。でも実際は、もっと長くなったり、逆に短くなったりしていると思います。また、今は非財務の方もと企業が考え始めたので、我々も言いやすくなりました。
MC
では次はHさん。ここにアセットオーナーが現れて、“君にこれを預けるよ”っていわれたら?
Hさん
前提として、株主投資の中でインパクトを投資に繰り込むのと、“インパクト投資してください”って言われるのは違うと思うのですが、私は前者で、20-30銘柄ぐらい投資しています。それ以下の銘柄数にすると、リスク特性が資金の出し手が考える株式への投資と乖離しちゃうからです。株式投資をしている以上、トータルリスクは市場と同じになっていることが大事かなと思います。そしておのずと各企業の大きさも決まってきます。そう考えると東証って、今3800ぐらい上場していて、その中の2,000社ぐらいは流動性から見て投資対象にならないです。だから半分ぐらいが投資できて、その中で構造的に成長していて、長期に投資できるのはだいたい三百社ぐらいと思います。逆にどうしようもなくて、どんなにESG的改善したとしても、ビジネスとして構造的に衰退しているどうしようもないところが200ぐらいはある・・・・衰退している企業はもっと多いと感じている人はいるかもしれませんが、私がここで言っているのは、経営が改善したとしてもコアのビジネスが既に社会的役割を終えていると思われる企業の数です。それからいつも割安におかれていて、いつか上がるかもねといってもなかなか難しい企業が500ぐらいあり、長期的に見たら緩やかに成長しているのですが、マクロの影響を受けやすく市場要因が我々の言うインパクトの要因を上回る企業がそれ以外といった感じの市場だと思っています。そういう中で、KPIを置きながら、しっかりやっていけるのは構造的に成長している会社の300社ぐらいになるのかなと思っていて。これらについては必ず成長のドライバーがあり、それを追いかけていく。それはたくさんあるものじゃなくて、どの会社もマックス3つに絞り込めます。それを追いかけていく中で、それが社会インパクトの中に何か結びついているドライバーなのかどうかだと思うのです。そこで選んでいくとさらに構造的に持てる銘柄の中でのインパクト投資は結構少なくなるのかもしれませんし、リスク特性は偏ったものになる可能性があります。
続く