先日、慶応義塾大学大学院経営管理研究科の齋藤卓爾准教授のご協力を得て、MBAプログラム内の授業で『企業価値創造における投資家の役割』と題して、3時間の講義をさせていただきました。前半を昨今の株主エンゲージメントの流れやあすかが考える企業価値創造の原理の説明(内容は以前の価値 is King、ROICから企業価値への投稿をご覧下さい)、後半を実際の投資先企業との対話の中で使った資料を用いながらのケーススタディという構成で行いました。学生の皆さんからは、ESGや株主エンゲージメントの変遷等等、様々な観点から積極的な質問をいただき、昨今のコーポレートガバナンスやエンゲージメント強化に向けた改革の浸透を、改めて実感することができました。
今回、私自身は、サポートメンバーとして教室後方から講義の様子を見ていたのですが、特に感じた事は、自社の戦略や取り組み意義を言葉にして伝えることの重要性です。学生の皆さんからすると、講義の開始時点では、当社のバリューアップ戦略と、伝統的なアクティブファンドやプライベートエクイティ、または、一般的に想起されるアクティビストファンドとの差異が、「わかりそうでわからない」状態だったのではないかと思います。そこで、講義の中では、投資先企業との関係構築や、対外情報に基づく対話手法、コストに見合うリターン獲得の可否等について質疑応答も含めながら説明することにより、バリューアップ戦略の特徴について徐々に理解を深めていただきました。理解が進むにつれて、質問の数も増え、学生の皆さんの興味も大きく増したように感じます。結果として、多くの質問をいただきながら、深い議論を行うことが出来ました。
通常我々が、投資先企業の皆様とお会いする際に、IRのポイントとして自社のユニークネスを考え抜き言語化する重要性について対話をさせていただくことがありますが、今回の講義のケースと正に同じであるように思います。かつて、心理学者のマズローはコミュニケーションの基盤として自己理解と自己開示の重要性を説きました。企業のIRにおいても『自社の哲学や実現したいことを確り理解できているか、それを伝えられているか?』という問いに自信を持って答えられることが重要になると考えています。その上で初めて、ステークホルダーとの信頼関係が醸成され、相互理解に基づいた深い対話が可能になるのではないでしょうか。この点について、今回の講義を踏まえて改めて考えさせられました。
齋藤准教授及びMBAプログラムの学生の皆様、心より御礼申し上げます。