MC それは間違い無くそうだと思いますよ。5、6年前ぐらいにイギリスのアセットオーナーと話したことなんかを思い出すと、今から5、6年前だとイギリスでもESGのEの圧力が強くなっている時期なんですが、ガバナンス担当者が“いったい誰がこの企業を買ったんだ!”みたいに思う銘柄を運用側のジャッジメントで組み入れていたりすることがある・・・なんて話を聞いていましたし、ついこの4月でも北欧の年金基金で責任投資担当者が、“アセットマネージャーの中でもファンドマネージャーと、ガバナンスやサステナビリティなどを見ている人で意見が割れる・・・”という話をしていました。だからどこの世界でもあるのだと思いますが、アセットオーナーに説明をする時、つまりESG 的ファクターは個別に色々な話はしたいけど、アセットオーナーから見ればものすごくたくさんのアセットマネージャー抱えているから、なかなかわからない、これがたぶんKPIがわかりやすく浸透していく背景なんじゃないかなと。パフォーマンスはわかりやすいから、あとはESG頑張っているファンドマネージャーとそうでないファンドマネージャーを・・・やられる方は嫌だと思いますが、ソートしたいとか思ってしまうと思うのですが・・・・
MC いや、それはね。最初に言ったのと矛盾してますよ・・・。今いい子だけを集めてファンドにしますじゃないと。三人は思っているわけですよね。今からどうやって良くするかがアクティブ運用の腕の見せ所であれば、今の得点だけでみてちょっとESGぽいじゃダメなんでしょ? 問題はエンゲージメントを評価するのがすごく難しいということなんだと思うんですよね。自分たちがいたおかげでどういう改善があったかを説明するのは難しい、それをアセットオーナーが定量的に評価して、しかも100とか200とかいるアセットマネージャーのうち、優秀なアセットマネージャーに入れ替えるというのはすごく難しいということですよね。
MC 前回まで、いろいろなインパクト投資がある中で、社会的なインパクトやアセットマネージャーがおいた仮説やリターンを説明できるか、それにはKPIが重要だということを話してきました。その中でこの3人のような集中投資の場合は、一社一社個別の議論をしていてKPIで話すの難しいよねという意見がでました。とはいえ、世の中の流れは更にKPI重視に向かっています。昨今EUでもアセットマネージャーの報告書が比較可能になるような取り組みが行われています。SFDRというレギュレーションが今年の3月からスタートし、来年からは一定以上の条件の資産運用会社は、定められた詳細の情報を報告書に記載しなければなりません。そこではサステナビリティの課題への貢献だけでなく、悪影響となるようなことについてのKPIもあります。それだけのデータを投資先企業分揃えないといけません。アセットオーナーは比較しやすいとか、評価しやすいといい、何十ものアセットマネージャーに依頼している場合は、一人一人のアセットマネージャーの説明を聞いて理解することが難しいのだと思います。さて運用者から見てこの状況はどうでしょうか?今日はオーナーは皆さんの報告を聞いてなんと言っていたか・・・から話してみたいと思います。
MC EUとかでもわずか数年前は「え?上場株でインパクト投資?」って言われていたのに、これだけインパクト投資重要だよねと議論されるようになって、でも本当は長期投資だからながーい期間のアウトカムをうまく説明できている人はまだいないかもしれませんよね。Tさんが言ったように、CO2を減らしますとかいって、そのこと自身はエミッションでモニターしていて、まあエミッションは直接的なのかもしれないけど、モニターしている数字たちが本当に10年とかで価値になっているかは分かりづらい・・・まだ検証できていないかもしれませんね
MC なんかその・・・、まずは長期投資ですということで、長期投資は株価など頻繁にうごいてしまうものは説明要因として難しい、では財務は?といってもすぐに成果はみえない・・・そこで長期的に社会にインパクトを与えるKPI・・・モニターする数値があればアセットオーナーとわかりあいやすいかもしれない・・・というような議論を過去にこのセッションでも話したと思うんですけど、ではそういうことで何をモニターするのがいいのかという質の問題に入ってきたかと思います。というわけでKさんいかがでしょう? Kさんがバリバリ運用されていたころは、あまりこういう説明はオーナーにされていなかったかもしれませんが・・・それでもご自身の中でモニターしているKPIがあったのではないかと・・・
MC ははは。でもこういうインパクト投資でモデルができたりしているのは、“説明”をしやすくするためですよね。SDGsの17個のゴールもそうですよね。何を目指しているのかとか。色々なことが言われていますが、どんなインパクト投資でもいいと思うんですね。共通のゴールをアセットオーナーとどう共有するか、どう進捗を説明するかはKPIなのかなと。
MC いよいよ第4シリーズです。1シリーズ4回だから、このシリーズを始めてもう3ヶ月たったということですね。この間もインパクト投資ってなんだと言っているいろいろな人の意見も踏まえて議論してきたのですが、個人的にはどんな定義でもいいとおもっています。重要なのはアセットオーナーに理解されることなので、それにはKPIが重要だと思います。成果を見せないといけないですから。そこでコンシリーズではこんな議論をしたいと思います。もしここに大金持ちのアセットオーナーが現れて、“君に1000億あずけるよ、社会に意味のある投資をしてほしい”って言われたらどうしますか?ではTさんから
MC そんなことないですよ。リスクとリターンはセットですし。EUでも、ITは電力を使う割合が多い産業なので、初期のタクソノミにも入っています。電力を減らすこともできるかもしれないし、新たなイノベーションも出せるかもしれない、だからいろいろできそうですよね。でもそういった既成のKPIに拘らなくても、ご自身でエンゲージメントやオーナーへの説明でKPIおいているでしょう?ではKさん
MC 東京ガスは“生き残りのために必要”といいながら、あまり練れていない計画をだしたように見えるということですね。Kさんにお伺いしたいのですが、Kさんはいつも“配当については重要な約束だ”、というようなご意見だと思いますが、その東京ガスの今回提示された計画自体についてどう思いますか?また他の投資家も今年の配当が云々ではなく“長期にネガティブだ”と判断した可能性についてご意見をお聞かせいただけますか?
MC 今のところ、もうちょっと皆さんに聞いてみたいのですが、似たようなことがこれからどの会社でも起こると思うのですが、気候変更に対して大型の投資をすれば何らかの資本の割り振りをしなければならないと思いますが、そういう時、事前にどう投資家とコミュニケーションするべきか、またご自身が投資中の企業が、大型投資をすると言い出したとか、びっくりさせられることがあったとき、どう考えるかとか、ご意見をいただけないでしょうか。
MC ありがとうございます。では次にHさんにちょっと違うことを聞きたいのですが、インパクト投資といえどもオーナーがいると思います。アセットオーナーを抱えるものとして途中のキャッシュフロー、配当のことは無視できないと思うのですが、そういう資本配分とかは日ごろから心がけていることありますか?つまり、特にインパクト投資のような時、投資先の企業は大きな資本投資をする可能性もありますと、そうすると最初から投資戦略を、頻繁な配当の増減によらないように設計するものなのかとか・・・もし心がけていることがあれば
MC そうですね、今Hさんがおっしゃったように株価が下がったんですよね。Kさんがいったように、東京ガスは特殊で、配当が非常に高いことで投資家が計画的に持っていて、そこで急に下げられたら困るというのがあるかと思うんですが、そういう時に長期にインパクト投資を目指している時は、前回のシリーズで短期的な株価の変動は気にしないという議論をしたと思います。ところが、多くの投資家が長期の企業価値、もしくは経営姿勢に対してネガティブな反応を示したということになるのだと思いますが、こういう時はどういう風に行動をとりますか?
MC ありがとうございます。Hさんが言いたいことよくわかります。自分も数年前気候変動のことを国内の投資家の集まりで話すと必ず“気候にいいことだからといって、企業がそれだけやるのでいいのか?!”みたいな言われ方をして。でもその頃ヨーロッパではまったくそういう捉え方ではなくて、まず燃料費が安いからとか、メリットが前面的にでていたので随分ギャップがあるなと思っていました。日本の自動車会社は説明は確かにうまくありませんが、消費者の側は必ずしもそうではないのかなって思います。自分もプリウスを10年以上乗っていますが、燃料費も全然違うし税金も違います。でも国内でプリウスタクシーですらあんまりみかけなかったですが、ヨーロッパではテスラが出てくる前はタクシーならプリウスだけっていう時があったのに。国内ではなにか他のハードルがあるんじゃないですかね?コストや利益に対する執着であれば、国内の産業も相当あると思うんですけど。税制や燃料費など全体的に環境車のほうが今でもメリットはありそうですけど、まだ足りないとか。また日本の自動車会社は消費者の嗜好はかなりしっかり抑えていると思うんです。だから国内では消費者のニーズがまだ少ないのかな・・・
MC ありがとうございます。今の話も気候変動のインパクトと、実際のKPIが違うという重要な例だと思うのですが、気候変動のKPIが難しい例なので、ちょっとHさんとKさんの話に戻っても良いですか? Kさんのおっしゃっていた例は規制とか出てこないと、コスト的にメリットがあっても会社の収益モデルに影響が出てこないわけですよね。社会が何も言わなければ今のままの方がいいかもしれない、規制が厳しくなり炭素税が乗ったりしないと数字としては見えにくいということですよね。そしてHさんのケースは消費者の意識だとか色々なものあって、 もちろんHさんが言っていたように会社が消費者にメリットをしっかり説明することも大事ですが、自動車の場合環境車が売れるとダイレクトに社会にインパクトも企業価値も上がると思いますが、これもまた個人の嗜好だとかに影響を受け、また自分の場合も税制などの差がすごくなければ躊躇するかもしれないと思うのですよね。だから政府が“今年からハイブリッドカー値上げ!EVカーだけ!”と言うかどうかってものすごい影響が大きいと思うのですが、どうでしょう?
MC はい、ありがとうございます。そうですね・・・あのまた話のコシを追ってしまってすみません、ここで質問が来たのですが・・・。あと5分ですが、話せるところまで話したいと思います。えーいただいた質問は、東京ガスのケースです。気候変動に対応するために、資本配分を替えて行く、つまり何か資本投資をするという時に、必然的に配当がへるわけですが、こういったことに長期の投資家はどう考えるべきか、ましてや“気候変動の対応をしなさい、しなければダイベストメントしますよ”と言ったような投資家は本来どうずべきか。みなさまどうお考えになりますか?」