上場株インパクト投資の研究 3章(4)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

ンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

6月30日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 2回下

2021年5月19日 

前回の続き


Hさん
KPIの置き方というのをインパクトを与えるもの自体にしなくていいのでしょうか。その会社が成長していくと結果的にCO2を減らすことができたとしても、CO2の削減目標ってもの自体がなかったとすると、それってインパクト投資のKPIとして適切なのか?と。CO2をもっと減らせる家を作ったとして、しかしその時は(よりコストがかかるなどして)会社の収益を伸ばせなかった場合、企業価値は上がるのでしょうか?

Tさん
・・・な、なるほど。それは考えたこともなかったです。というのは、その会社の企業としての存在意義は、CO2を減らすことだけじゃないと思うのですね。利益をだして従業員を守っていく・・・。即答にはならないのですけど・・・CO2を75%ではなくて、90%減らせる住宅を作ったのでそちらを集中的に売ります、ただし利益は減りますということ。つまりCO2の目標値をクリアできるのであれば利益を減らしてもいいじゃないかということであればそれは違うのかなと。大切なのはCO2を減らすことだけじゃなく、CO2を減らしながら利益を出すことではないかと。

MC
今のケースだと、気候変動だけをフォーカスしたインパクトを考えると、例えば住宅に、欧州なんかであるかもしれませんが、CO2をより減らした住宅を取得すると税制上のメリットがあるとか、そういう“必ず売れる”という政策とセットでないと、そのKPIは利益の予想とリンクしないですよね。そういうことを質問者さんは聞いているのじゃないかと思いますが・

Tさん
いや、そのあの、CO2の削減量だけを目標にしてしまうと、質問者さんがおっしゃるように、政策サイドで「あの目標は間違っていた」とか「そこまで厳しいターゲットでないほうがいい」など後で方針が変わりましたとか言われてしまうと、企業としての取り組みは変わってきてしまうと思うのですね。だからこれは暴論かもしれませんが、私の意図しているインパクト投資としては自分たちの投資のKPIになりえないのじゃないかと

MC
ありがとうございます。Hさんいかがです?

Hさん
あの、すごくよくわかるんですけど、それって、この会社の業績が伸びていくと言う前提があって、その会社の業績が伸びたら結果としてCO2が削減されますねってことなのですよね。そうするとCo2を減らすっていうのがKPIになってないというか、販売数がKPIになっていて、その従属変数としてCO2と業績がでてくるということになっている

Tさん
そうです。そうなのですよ。これだからそのインパクト投資なるものの設計って結果に対する、いわゆる、ロジックというか、成果に対し達成していくロジックがしっかり確立していることが重要で、かつそれに対し、投資家のインターベンション、介入が必ず求められていると思うんですよ。この企業においては、我々は売り上げをきっちりストレッチさせる、つまり事業を通じて環境にも貢献できる、それを加速できるというのがぼくたちのインターベンションじゃないかなと思っています

Hさん
ですので、そういう会社の場合は、CO2を減らすことができる住宅ができたら、その分だけ価格があがって、マージンが確保できる、買った人が何年間かで価格分を回収できるっていう、そういうシミュレーションがあって開発できたらいいなって

Tさん
はい、そうです、それもありです。

Hさん
そういうのがないと、なかなかKPIになりえないのかなと

Tさん
あ、そうです。とってつけたようですが、それもありです。ただKPIとして販売数とマージンの両方を置くととても難しくなるので

MC
つまり質問者さんがいっているとおり、KPIは複雑だと? Kさんはこの件について何かありますか?

Kさん
じゃあちょっと違う視点から・・・今、量の話がありましたが、時間も大事かなと最近思っていまして。ある会社が児童労働を2030年までにサプライチェーンでなくしますよっていっていて、それはいいことだと言われていますが、2030年って、あと9年間はつづくわけですよね。9年だと今10歳の子が19歳。だからそんなにのんびりやっていていいのかと言うことも、考えていかなければならないと今思っているところです。

MC
はい、ありがとうございます。では次の質問にいきましょう。“気候変動に関する投資は他のESG課題より早く重要性が認められた印象があります。欧州の理念や学術的な懸念の浸透が早かったのが要因だと思いますが、ファンドマネージャーとしてはどう思いますか?”これについてコメントをいただけますでしょうか

Hさん
あの・・私の認識としては必ずしもEの話が最初にきていると思っていなくて、日本では今ちょうどそう言うタイミングですが、ESGでいえばGなんか昔から各国で続いている話ですし、Sの話はESGというものをフランスとかオランダが導入した時Sが一番強調されていたと思います。年金の制度を変える時、労働組合のほうはSを注視した会社に投資することを条件に改革を受け入れていると言う経緯もあって、国ごとにその背景は違うのかなと思います。ここにきて地球の気候もすごく荒れていますし、今気候変動(E)がすごく盛り上がっていると思いますが。科学的にどこまで立証されているかとか、よくわからないですけど。少なくとも今は実証されているように説明されているので、そこのところあんまり反発しても仕方ないので、そう言う流れに乗っているというところじゃないでしょうか。

Kさん
流れに乗っているというのは、本当にその通りで。でもみんなで言えると言うことの良さも感じていて。みんなで言えば企業も聞きやすいだろうし、そう考えたらいいのかなと思っていますけれど

MC
はい、ありがとうございます。ではTさんいかがですか?

Tさん
あの・・なんかでも色々読み物も見ているんですが、Eって増えているんですけど、多いのはGとかのほうがまだ多い気がして・・・でも変化は起こっていると思います。これまで欧州の人はクーラー入らなかったのに、夏にクーラーが必要になったとか、オランダって治水の問題がえらいことになっているとか、Eに対する潜在的な意識はあったと思いますし、人類共通の課題として認識しやすいというのがあるんじゃないかと。またそれをパッシブのユニバーサルオーナーとして、課題として取り組む上で取り組みやすかったというのがあるんじゃないかと思います。ある意味メカニカルに横比較できるし。ただ、そこで思った以上のマネーフローが起こっていて、投資家がそこに追随する中で株式市場内での需給が変わってきちゃって、なんだかわからないけどとにかくEだって言っているケースもあるんじゃないかと思います。今日お話ししてつくづく思ったんですけど、アクティブで、個別にアウトカムを意識してインターベンションを意識した投資をやっていく上ではEって難しいですよね・・・。

MC
はい、ありがとうございます。みなさんがおっしゃったようにGのほうが歴史も長く、いろんなCGコードを導入した国で政策とかも古くからセットになって、投資家も動員して一緒に企業のガバナンスを良くしましょうという投資もあったと思うんですよね。でもこの質問者さんがおっしゃりたいことは、他のESG課題より早く重要性が認められた・・ではなく気候変動はただ他のEの課題よりも早く重要性が認められた・・・ではないかと思っているのですが、GとSはダイメンションが違う気がするので・・・。もしそう考えた時、Eの中にはいろいろな可能性があって、気候変動が非常にハイライトされている。排ガスとか・・・でもゴミの問題だともっと重要だと思いますけど。

Tさん
難しいですよね。ペットボトルを見て、悪の根源だと思う国もあれば、まだクリーンでリッチになった象徴だと感じる国もある。ただまあ、ぼくフィリピンの人とよく話すんですけど、彼らは環境に対する意識すごく高いですよね・・・

Hさん
私もこれからどんどんそういうの出てくると思うんです。特に今の消費の主体となっているZ
世代はすごく感心があるということで、いろいろな企業が広告の対象にしたい世代の人がそう言う高い意識を持っているということで、企業も意識しているし、無視できなくなってきていると思います。

Kさん
今フィリピンの話がでましたが、ケニアとかルワンダとか、ポリ袋に関してはすごく厳しくなっていて、現地に行って思ったんですけど、環境は先進国だけの問題じゃないということは認識しなくちゃいけないし、日本はそういう意味では遅れていると思います。

MC
そうですね。テーマとしては重要だと思うんですが、投資のテーマとして気候変動が取り上げられたのは、それがESG的に、前の質問者の方のご指摘じゃないんですが、ESG的に良いことかどうかも重要なんですけど、気候変動が産業にとって重要だったからという見方もできると思うんですね。気候変動に向けた事業にもっと投資して欲しい、今のところゴミの問題についてそういうアウトカムが見えにくいのかもしれないと思ったり・・・。

Kさん
法律とか政治でできることもあると思っていて、そういうのとあわせてやっていかないといけないんじゃないかと思っています。

MC
Eについては、G以上に“投資家の力を借りたいい”というのを堂々と言っている政府やレギュレーターもいるので、優先順位付けが出てしまう、これが二人目のご質問者の方が質問したかった背景にあるんじゃないかと思います。では時間になりました。次回もご質問を受け付けていきたいと思います。ぜひみなさまご意見・ご質問お待ちしています。

(続く)

上場株インパクト投資の研究 3章(3)

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上場株式でインパクト投資 3章 2回上

2021年5月19日 

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
では、今日も“気候変動のように政策が反映するがゆえに、独特のターゲットやKPIをもつような投資”について続けて話していきたいと思います。ところで、クラブハウスのお知らせ画面にご案内しています通り、今日からは質問を受け付けています。
さっそくいただいた質問をみてみましょう。“自分はインパクト投資は理念として<いいこと>が重要だと思っています。ところがこの<いいこと>をファンドマネージャーがどのような論理や仮説で予想したかが重要ですが、気候変動については複雑すぎて論理的に仮説も検証もできないのではないかと思っています。またその仮説を満たすKPIも業績と連動するように置くのは難しいのではないでしょうか、それでアセットオーナーに説明できるのでしょうか”ということを疑問におもっていらっしゃるそうです。これについて皆さんどう思うか、聞いていきたいと思います。ではKさん

Kさん
気候変動自体が非常に大きな問題ですし、その中で企業がどうとらえていくか、どう対応していくか、色々みなさん太陽光発電使ったりされていると思いますし、そういったことはしっかり説明できるでしょうし、それに効果も数字では表せると思います。ただ単純にヨコ比較でこちらの方がいいですよ、といわれてもそれはちゃんと考えていかなければいけないと思います。また時系列的にどうなのかとか。・・・企業にとってできないことではないと思っています。

MC
うーん。ありがとうございます。ではHさん。

Hさん
<いいこと>というものの定義が難しくて。なんとなく環境にいいというだけでは、我々は投資できないのかなと思っています。インパクト投資っていうのは自分たちが設定しているKPIがしっかり業績に結び付いてくる、というか企業価値にむすびついてくるという前提がある会社にしか、投資できなくて、<いいこと>はやっているんだけど企業価値につながらない場合は投資にはならないと思います。逆に<いいこと>のKPIが企業価値に結び付いていれば、アセットオーナーにも説明できると思っています。

MC
つまり、気候変動のためにやらなきゃいけないことは色々あって、企業側もこれに投資したいっていうことはあるかもしれないけど、Hさんとしては大前提としては企業価値と結びつくもの、もしかして政策の変更による揺らぎが起きにくいものなのかもしれないけれど、説明できるものであることが、重要だということですね。

Hさん
そうですね、やらなきゃいけないことがたくさんあって、それが企業価値に結び付かない会社がいっぱいあるんですね。それはインパクト投資に向いていない会社、ということだと思います。その会社がいいとか悪いとかではなく。で、われわれがインパクトに対して投資をするという場合は、それと企業価値がリンクしているところに投資をするけれど、インパクト投資の投資対象にならないからといって悪い会社というわけではないし。。。企業価値があがらないわけでもないです。そのインパクトと企業価値が結びついているということが前提にあれば、気候変動でも難しくなく判断できるんじゃないかなと思います。

MC
ありがとうございます。ではTさん

Tさん
・・・そうですね。なんかいろいろなことが結びついていると思うのですけど、あえて誤解を恐れずにいえば、そのKPIなるものが企業価値を説明できないのであれば、それはインパクト投資とは言えないのじゃないかなと思うのですよね。環境省とかが出しているレポートとか、読んだりしているのですけど、インパクト投資を包括型、特化型とわけてらして。包括型は使途を問わないコーポレートローンだったり、或いはパッシブのインデックス型投資、ここについては網をかけるような投資になるので、その中でKPIとして何をおいていくかでカーボンフットプリントとか出てくると思うのですが、私はアクティブ投資ですし、そうするとインパクト特定型、つまり特化型なのですがこれは“上場企業投資には適さない”と書いてあるのです。でもぼくはむしろこれで行けると思っています。定義がまだはっきりしていないというのもあるのですが、GIINとかが作っているインパクト投資の定義として、そもそもどういうインテンションがあるのか、金銭的リターンがあるものなのか、モニタリング可能なのかといった実績に基づいて言えば、KPIってリターン=企業価値とリンクさせられるべきですし、させていないといけないと思いますし、そうでないとインパクト投資と呼んではいけないのではないかと思いますね。

MC
うーん。じゃあ、例えば“こんなケースだったらインパクト投資”っていえるかなという事例ある方いらっしゃいますか?

Tさん
うーん、とそうですね。“これぞインパクト投資でございっ”っていうのはないのですけど、意識しているものとしては、たとえば温暖化ガスそのものがKPIかというと、そうではないのです。長期投資的にみたアウトカムとして地球の環境を守っていきたい、それには温暖化問題は重要で、それにはCo2をどうコントロールするかが重要・・・というのは一つのアウトカムでKPIだと思うのですよね。ずっと応援している会社で、地方の中古物件を扱っている会社があって。リノベーションをしてきれいにして売っていく会社があるんです。中古物件で新築に比べてCO2が3/4ぐらいで済むのですね。私はこの会社がどんどん伸びていくことが社会にとっても地球にとっても良いことだと思っているのですが、実際のエンゲージメントとして何をやっているかというと、“どんどん伸ばしてください”と言っている。経営者は放っておくと、守りを固めてしまうところもあるので、“まだまだ増やせるんじゃないですか?”、“こうやれ増やせるのじゃないですか?”なんて言っている。結果としてKPIとしては中古物件をどれだけ増やせたかで、それを増やせればCo2も減ると、そんな風に考えているのですが

MC
なんとなく、今パッとお聞きして、これはCO2削減が“インパクト”なのか・・・そのためにやっているわけじゃないのですものね。

Tさん
あ、はい。もちろん複合的なんですよ。超長期のアウトカムとしてはCo2の削減を通じて地球環境に良いことができる・・・ということになりますが、その前のところにいたっては、土地の周辺部の社会環境をよくするというのもありますし、長期、中期で違うんですけど、一つそれを束ねているのが祖業としての中古住宅の再生件数というのが全てにいい影響を与えていると、そんな風に考えています。

MC
まあ複数のインパクトがあれば、ただ昨日から話しているのは“気候変動は難しそう?”なので・・・

Tさん
そうなのですが、削減量を企業に要求してしまうと、結果的に企業価値につながらない。
危険性もあると思うのですよね。

MC
・・・なんとなくこの質問者さんの御指摘通り?

Hさん
あの・・難しいところだと思うんですが、たとえばKPIの置き方というのをインパクトを与えるもの自体にしなくていいのかな?って思っていて。その会社が成長していくと結果的に社会全体のCo2を減らすことができたとしても、Co2の削減目標ってもの自体がなかったとすると、それってインパクト投資のKPIとして適切なのか?というのはあると思います。先程の例でいうと、中古物件でリノベーションを行うと新築に比べてCo2を3/4ぐらい減らせたとしても、より高い技術で8割、9割減らせる家をリノベーション手法で開発したが、コストが上がって価格に転嫁できず、その会社の収益を伸ばせなかった場合、その会社のCFから見た企業価値は上がらないとした場合、どんなふうに判断したらいいのでしょう?

Tさん
・・・な、なるほど

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(2)

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上場株式でインパクト投資 3章 1回下

2021年5月12日 

(このブログは毎週水曜日のお昼からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Tさん
たとえば脱炭素で東南アジアのプラントから撤退という話が出た時、人類にとってはいいことかもしれないけど、そこで生み出されていた雇用みたいなものをどう考えるべきか。ちょっと事例としてお話しすると、私はかつてペットボトル製造装置を作っているところがありました。非常にいい経営で資本効率も高く、利益率も高く、株主利益を生んでくれる会社でした。経営陣としては、今、ペットボトルは自然破壊の権化みたいに言われていますが、軽くて造形性が高く、途上国においてはリッチになっていく象徴だったんですね。だから生活が向上することに貢献していく一方で、それが捨てられることによって自然環境を破壊するという両面があって、私がその時言ったのは“企業価値をどんどん作っていくという意味で応援したい、ただその中でサステナビリティを高めるために、少しでも再生可能なペットボトルの方にシェアをもっていくような経営をしてくれないか”という提案をしました。だから私もインパクト的には“途上国の暮らしをよくする”のほうにベッドしようと考えました。

MC
今のTさんの話は、環境問題でひとつのインパクトを考えていた時、他の雇用とかのインパクトとバーター関係になってしまうことがあって、そのジレンマで苦労されたと・・・今のようなケース、Kさんはどう思いますか?そのオランダのケース、環境を重視したために、何かが不便になるとか、そういうことはありませんでしたか?

Kさん
不便になることはあると思います。お金も使うんでマイナス要素もあると思います。でもそれでも、お客さんがついてきたりしてプラスの要素がある、総合効果を考え、企業が永続していくと考えてプラスになると思いながらみんなやっているんじゃないかなと思います。

MC
あと今のTさんの話は、以前Hさんが言っていた、“大きな方向としては問題なんだけど、細かいところをみるとそのために潤っていて株価が上がっていたり、雇用が伸びていたり・・・だから一件、一件丁寧に見ていなくちゃいけないと言っていたと思いますが、Hさんどうですか?

Hさん
そういうことってすごくあると思います。でもそういう時、本当に企業は長期的な価値を生むかが重要なんだと思うんです。わかりやすい例としては・・・・たとえば製品でトラブルが生じて、全部回収したとかいう会社もあったと思うのですが、そういうところで消費者のことを考えて行動した、ていうような。わかりやすい部分と、そうではなくてこっちをやると、あっちが困ると結論が分かりにくいもの、そういうのが困ると思うんです。

Kさん
Hさんがおっしゃったようなことって本当によくあると思うんです。たとえば夕張の町を考えたら、町自体が破綻したわけで、転換していくのは非常に難しいことだろうなと思っています。

MC
昨年、オーストラリアの投資家と議論する機会があったんですけど、その時聞いた話として、“今雇用がある”といってもずっと続くのかも投資家は考えなくちゃけない、と。つまりその企業のビジネスがサステナブルなのか・・・それがこのサステナブル投資などの議論の始まりだったのではないかなと。レギュレーションや環境の変化によってビジネスは変わるわけですよね。そのベットボトルを購入している先進国のトレンドが変わって、売れなくなるかもしれない。投資家は早めに先をみて企業に言っていかないと長く投資をすることが難しいということじゃないかと。

Tさん
それはその通りだと思います。これがインパクト投資、多くの人にとってプラスになることを生んでいくものなのではないかと。協会のチャリティーと比べると、我々は上場株に投資をしているわけで、そのインパクトを大きくしていかなければならないのですが、逆に忘れてはいけないのは、どういったポジティブを本当に生み出したいのか、そこにくっついてくるネガティブをミニマイズする・・・そう考えると企業サイズが大きくなってくると難しいのかなと思ったりします。

MC
そうですね、ESG全体のいろいろな要素のなかで、“セット”になっている、ポジティブとネガティブで、裏表になっているようなインパクトがあるかもしれない。ところで雇用もそうですし、前回の人権問題などは、多くの人がどう考えるかに投資先企業の将来は影響を受けるのかなと思うんですが、環境はレギュレーションとか、政策の影響を受けるのかなと思うんですよね・・・。企業の事業において、途中で転換するのが難しいようなことがあって、だからレギュレーションなんかの動きをウオッチしなければならない・・・そう感じることはありますか?

Hさん
すごくあると思います。特に日本の企業とエンゲージメントする時気をつけなくちゃいけないことがあって、日本の企業ってまじめなので、“本当はこれがただしい”ということを自分たちで一生懸命考えて行動していることが多いんですけど、それがグローバルなスタンダードをみると違ったりする・・・・ということがよくあるんです。でも環境とかはいろいろな考え方があるけど、独りよがりではいけなくて、ヨーロッパではこうなっているけど大丈夫かとか、きいてくことが大事だと。

MC
日本の企業でよく、“そうはいってもこれが必要”という人けっこういるんですよね。2度シナリオがいいとか、1.5度が必要とかいう人がいますが、それがいいか悪いはともかくとして自社だけでどうにもならない、影響がレギュレーションとか政策からやってくる、そういうのは環境にいいかどうかだけを真剣に考えると歯車が合わない感じがしますね。

Kさん
ちょっと外れたこと言っていいですか? 企業って変わっていかなきゃいけないと思うんですよ。さっきTさんが大きな会社は変わりにくいんじゃないかというような意味のことをおっしゃったおと思いますが、企業を変えていくために投資家ができることは、やっぱり背中を押してあげることじゃないかと思っているんです。投資家が集まれば、それが大きな声になっていくと思っているんです。昨日JSRという会社が発表をしたんです。ゴムの会社で、タイヤを作るための国策会社なんですけど、タイヤ部門を売ると。そういう祖業である事業を売ってもやっていくんだぞ、と。大きな会社でも変わっていけるんじゃないかなと。

MC
そうですね。たしかに環境関係で、大きな会社で鉄を作っている会社で、ずっと高炉は石炭じゃなきゃダメなのだっていっていた会社も、水素で製鉄するとかいう時代ですから、大きな会社がコアビジネスで変わらなきゃいけないことがあって、そういう時に投資家が向かい合う時もありますよね。で、それとは別にさっきHさんがいっていたのは、企業が一生懸命変わろうとするんだけど、環境に関することはレギュレーションの影響が大きいので、自分で“良い”と思うだけではダメという点についてはどう思いますか?

Kさん
・・・そうですね。企業が独りよがりで考えている、って結構多いかなと。まじめにいいことやろうとして、たとえば太陽光のパネルを、畑を潰して接地している遠路がよくあるのだけど、それがいいことかと言われると、私は少なくともいいとは言えないと思います。
だから目的がどこにあるかを考えながらやっていく必要があるし・・・。

MC
あと2分です。最後に一言ずつ、おっしゃりたいことがあれば。まずTさん、いかがですか?

Tさん
そうですね、私はどんなであって企業も生き残って、ちゃんとやっているということは、社会の何らかの便益を満たしていると思うのです。で、私が社会インパクト投資を上場企業への投資で取り組もうと思った時に考えたことは、“いいところもあるけれど、悪いところもある”ということになると、やはりターゲットを決めていいところのインパクトに力を入れて、悪いところを少しでも落としていくということにフォーカスしていかなければいけないのだなあと思っています。

MC
時間がきてしまいました。Kさん、Hさんへの質問は次回取り上げます

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(1)

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上場株式でのインパクト投資 3章 1回上

2021年5月12日

(このブログは毎週水曜日のお昼にクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
いよいよ第3シリーズです。シリーズ1では、インパクト投資をどう思うか、インパクトの実現と企業価値、アセットオーナーとの対話、企業との対話など全体をざっくりと話してきました。そして第2シリーズでは大きなトピックは2つ。まず長期に実現するインパクトを目指しているなら上場株のほうが向いているよねという話。インパクト投資はもともとプライベートエクイティなどで取り組まれていたと思いますが、将来実現する社会にポジティブなインパクトを企業が目指しているならば、手前で多少費用が掛かろうが、投資が終わるまで利益がでなくても、株価に影響はないだろう、例えば自分の投資期間が短いアセットオーナーでも株価に揺らぎがなければ投資できるよねという話です。それからウイグルやミャンマーのような状況の時投資家はどう考えるべきかについても話しました。さて今回のシリーズ4回では、インパクト投資でわりと取り上げられることが多い気候変動について取り上げてみたいと思います。伝統的なのでは井戸を掘るとか、ごみを減らす、資源を有効に使う、有害な素材を置き換えるとか、社会が急激に価値観を変えることがなければ、一定のアウトカムと収益を見込みやすいです。ただこれらのテーマは解決策が技術的に正しいのか、見極めるのが難しく判断に迷うという悩みもよく聞きます。この環境とか気候変動について、これまでの投資で、“いい取り組みをした”とか逆に“悪い状況なので良くしたい”とかそういった投資をしてきたか、その場合どのように考えられたかをお聞きしたいと思います。ではKさん。

Kさん
環境で最初に思ったのは、20年ぐらい前なのですけど、オランダのシェルに訪問したことがあって。それは北海で事故が起きた時で、環境団体に突き上げられていました。日本だと事故があったら経済的な影響とかが言われるのですが、オランダだと環境団体や社会から問われシェルもその対応に非常に悩んでいました。その時IRの方と夕食を挟んで話し込んだのですが非常に日本と違うと思いました。今は日本もそうなりつつあるのですが、社会へのインパクト、自然へのインパクトを考えていかなければならない社会になりつつあるのだと、20年ぐらい前に非常に思いました。

MC
そうですね、オランダの投資家がよくおっしゃっていたのは、オランダの投資家が環境への意識が高いのは、消費者の意識が高いから、投資先の企業が必ず影響を受けるから、意識をもっていないといけないということを聞きますよね。

Kさん
そうですね。今やっぱり、お客さんに好かれるためにどうするのかと考えた場合、自然破壊をしているような会社だと受け入れられないということです。日本でもかつてはチッソとか、水俣とかあったわけですが、それからずっと環境に対してはいい国だととらえられてきましたが、もう今はそうではないのじゃないかということを振り返らないといけないと思っています。

MC
ありがとうございます。次はHさん

Hさん
上場株での投資ということで話しているので、それを踏まえて話すと、我々が行っている投資は“値段”が付いているということだと思うのです。それは“みんなの認識と同じであってはダメ”ということです。ただ環境に対しいいことをしている企業だからいいということにはならないし、彼らがやっていることが過少に評価されているとか、現状の悪い状況が過剰に織り込まれていて、それが再評価される可能性があるとか、そういったものがないと投資にはならないということだと思うのです。
そういう中で環境についていつも気にしているのは“目標設定が変わると結果がかわる”ということです。CO2を30%削減するというのと、50%削減するというのではかかる投資も変わってくるし、頑張って50%削減するよりも30%にしておいたほうが企業価値としてはポジティブかもしれない。これはキャッシュフローの最大化という観点から見た話です。規制がでてくるとトップランナーを評価しがちですが、必ずしもトップランナーになることの経済価値が高いわけじゃない。規制とか、投資のバランスをよく考えて投資しないといけないといつも思っています。
環境ってどの会社も目標を設定していてわかりやすいのですけど、だから簡単というわけではなく見極めが大事だと思っています。

MC
つまりHさんのおっしゃっていることを理解してみますと、まず環境って、取り組むことで自社の収益にプラスになるということと、リスクに対する対応みたいなものと2つあり、その中で、30%削減、50%削減とか、つまりいいインフラを入れるとか製法を変えてCo2出さないとかだけじゃなく、レギュレーション的な目標があってそれにあわせないといけない。そしてそれが途中で変わってしまうと、ストラテジー的な問題、設備投資の失敗などといったことがでてくる・・・ということですね?

Hさん
そうです。それともうひとつ何か起こったときは悪いことは織り込まれているので、その織り込み具合はどうか・・・そういうことが投資で重要になるということです。たとえば石炭ですが、最近では石炭というアセットの価値はゼロとかマイナスと言われているのですが、それ本当にゼロだと考えていいの?ということを考えていく。つまり方向性が良いかどうかだけでなく、投資ってそれが企業価値にどれだけおりこまれているかということを判断するわけなので。

MC
わかります。レギュレーターが“2030年30%とか2050年ゼロ”とかいうと、それにあわせて計画をたてます。でもその計画が非現実的だったり、大きな投資をし始めてから途中でレギュレーターの目標が変更されてしまったら問題がありますし、石炭のケースもみんなが“価値はゼロだ”と言っていても、そのターゲットが変わればゼロじゃないかもしれない、投資家としてはそういったことを見抜いていかなければならないから、単に“気候変動に対応しているからいいよね”というシンプルな判断じゃないということですね?

Hさん
そうですね。

MC
あとトップランナーになることの経済価値についてですが、これは気候変動対応を積極的に事業としてやっている場合だと思いますが、たとえば電池や水素を作りますとか言っていても本当に作れるのかみたいな、そういうようなこともありますか?

Hさん
そうですね、例えばどの方式がデファクトになるかわからない時とか、自分たちがトップランナーだよといってみたとしても、その製品などが適応しなくなるかもしれないし、それで頑張りすぎているとまずいということです。環境を良くするためのツールを提供する会社と、環境をよくするために頑張る会社があって、そのどちらかによっても変わるのですが、ゴールが変わると頑張りすぎていないほうがいい場合もあります。そのように“ゴールが動く”こともあると意識しながら投資する必要があります。

MC
そうすると、Hさん自身もそのレギュレーションやゴールに対し、投資先企業の対応がそれで良いかどうか分析しなければならないし、それに対しアセットオーナーが同じような理解でないと“これいいことやってるじゃないか”と言って困ったりして・・・

Hさん
それすごくあります・・・。たとえばここ数か月の相場では、環境に良くない会社の株ってすごく上がっていると思うのですよ。短期的には。なんでかというと、環境に良くないものを作っていたりすると、新たな設備投資が発生せず、しかし経済が回復してくると、新たな供給がなく、需要があがるので、価格が上がり利益がでるため株価が上がっちゃったりする。そういうことをいつも考えないといけないのです。

MC
なるほど、よくわかります。ではTさん、お二人が言ったことについてご意見ありますか?

Tさん
いやもう、本当に、よくわかります。我々はESG投資とインパクト投資って隣の畑でオーバーラップもしているので、いつの間にか一緒くたにして話してしまう事もある思うのですが、一緒に話すといけない部分もあり。たとえば前回人権については、A民族とB民族で違う価値観を持っていたりして難しい・・・という話をしたと思います。それに対し、比較的クライメートとか環境問題は人類共通だよねって思ってはいたんですが、それでも良く考えれば、そうではないケース、良し悪しが簡単にはいえないケースがあるなと感じました。

続く

上場株インパクト投資の研究(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第一回(下)

2021年3月17日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
みなさんの投資についての考え方をお聞きしまして、“インパクト投資”って伝統的な金融の役割そのものじゃん・・・というのは全くその通りだと思います。それでは、みなさん今一番“インパクトを起こしたい”と思っている分野ってなんでしょう?

Tさんの場合(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
インパクトって本当はすごくイシュードリブンで、小さなところでしっかりインパクトを出していくというのが結構あると思うんですね。ただ自分は上場企業に投資しているので上場企業のスケーラビリティを勘案して、それよりは少し大きなインパクトを起こしていけることを考えていきたいです。では何を課題として選ぶかですが、今の日本の課題として、日本だけじゃないかもしれないのですが、どんどん住みづらい国になっている気がします。機会が平等でなかったり・・・でもそれって同時にビジネスチャンスにもなりうる訳で、こういう課題を解決するような投資をしていきたいと考えています。そして投資家がパートナーとして助言しインパクトを強化できるような事が出来れば・・・。

Kさんの場合( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
今私のお客さんなんかは、ヨーロッパの年金基金などですが、自分が(アセットマネージャーを通して)投資している企業全てのエミッション合計とか出すためにそれをアセットマージャーに開示しろといってきますし、かなりセンシティブになっていると思います。
そのような中で、積極的に投資したいというのと、積極的に投資したくない分野というのもあると思います。私が投資を始めた頃、サラ金にすごく苦労している人が周りにいて、
でも当時サラ金て非常に割安で。興味深かったんですが、いろいろ考えて、投資を止めました。やはり世の中に負の影響を与えているのであれば、そこに投資をしないというのも重要かなと思っています。

MC
その頃って、もう“タバコ・ダイベストメント”て、始まっていました?

Kさん
うーん、やはり欧州のお客さんなんかでは、タバコに投資するなというところ、ありましたね。私自身は嗜好品なので全部いけないとは思っていなかったのですが、このままだと将来の売り上げとか考えれば、やはり投資すべきじゃないなあと思いました。

Hさんの場合(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
私はあんまり、こういうテーマで投資しようって設定しないのですね。でも長期投資という観点で、社会がこれからどういう風に変化するかということを考えて、その中で企業がどんな役割を果たしていけるかを常に考えることになるので、その中で社会でポジティブな方向にいっているかとか確認をします。大きなテーマ、水の問題とか、気候とかありますが、実際企業と話していると細かいテーマがありまして、その中に共通の課題がみえてくる・・・たとえば働き方をどういうふうに変えるかとか、やっぱりボトムアップの対話の中から出てくるテーマってあるんですよね。そういうのを細かくみていくのが私のやり方です

Tさん
日本のいくつかの社会課題って解決方法も一つじゃないですよね。共通してお互いに影響しあっていて、そういう課題を一つ解決する企業って、いろいろなことが解決できる気がする。

Hさん
似たような課題を持っている会社がいくつかあって、それぞれを同時にみていくと、いろいろ気がつくことがあるんです。こうやっていくと乗り越えていけるんだ、ということがわかってきて。

MC
そうすると、Tさんは大きなテーマ、Kさんはやるべきではない投資とは何かを考えてきた、Hさんはテーマを決めるよりボトムアップで、ひとつひとつの課題を解決していく・・・そんなふうにインパクトをみているんですね。そうすると

Tさん
大きいっていうか・・・例えば今感じているのは、日本において機会がすべての人に平等に与えられなくなってきているとかいうことなんかで。もう少し身近な例だとデジタルデバイドみたいなもので、ドコモに八千円払っている人がハッピーなのか、本当は格安携帯で十分なのによく知らないだけとか、それはIT教育やITサービスの開発なんかで解決していけるんじゃないか?とか自分も個別に考えているところもあるのですが・・・でもやっぱり最初は大きなテーマでみているのかな・・・

MC
そうですね。Tさんがデジタルデバイドをみるとき、それが世の中をどうやって変えていくかをみている・・・ということですね。これに対しHさんは決めずに掘り下げると・・・たまたまデジタル対応が問題だったりする・・・?

Hさん
そうです。例えば今の話だと、中小企業の中にはデジタル化に対応できないためにビジネスを逃しているところがいっぱいあって、で、そうすると今度は、そういう中小企業を助けるビジネスができてくる。彼らがどんな点を助けているか、何が中小企業から求められているかを考え、具体的に解決している企業を探すみたいな・・・、自分はそういうかたちで取り組んでいます。だから、どこで課題を見つけるかの見つけかたの違いかなと思います。本質的には同じになるような気がします。

MC
結局どういうふうに課題を見つけるかは異なれど、最終的に企業の価値を見つけるという投資家の役割は同じところにたどり着くと思うのですが、最初に戻って、このインパクト投資が欧州で流行って議論が高まっていった背景としては、アセットオーナーとアセットマネージャーの間で自分が何の社会的課題を解決したいと考えているかをわかりやすくするコミュニケーションの部分かなと思っています。このシリーズでは続けて“自分の投資をどうやってアセットオーナーに分かってもらうか”とか、“企業にもどうやって分かってもらうか”などを話していきたいと思いますが、まずは次回は、“上場企業への投資でインパクトってどうやって起こせるのか?”について話して見たいと思います。

続く

家庭菜園を始めました

緊急事態宣言こそ解除されたものの、COVID-19の影響の不透明感もまだまだ残る中、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

自粛の影響によりホームセンターでは園芸用品の売上が急速に伸びていると言いますが、例にもれず私も家庭菜園を始めてみました。

現在は紫蘇、サラダ菜、茗荷、ゴーヤ、キュウリ、ネギ、ピーマン、ズッキーニ、さまざまな種類の唐辛子など多くの野菜を育てています。特に、唐辛子は、中国の四川料理や東北料理をよく作るので4種類、7株くらい育てています。

家庭菜園を始めて約3か月経ちますが、当初小さな種だったことが信じられぬほど大きく成長した野菜たちで庭が大混雑している今日この頃です。

中でもゴーヤとキュウリは1日見なかっただけであっという間に背が高くなっており、植物の成長の早さに驚かされるばかりです。茎や葉の成長はもちろん、実の成長もあっという間で、先日はまだまだ小さいと思っていたキュウリが1日見ないうちに巨大に成長し、収穫タイミングを逃してしまいました。

翻って、外の世界に目を向けてみますと東京はCOVID-19の警戒感が後退し、通勤電車の混雑もCOVID-19以前の状況に戻りつつあり落ち着きを取り戻してきたように思います。

また、仕事で企業の方々と面談させていただくことも多いのですが、対話の中で、先行きに対するポジティブなコメントをお聞かせいただけることが、徐々に増えてきたように感じています。

COVID-19以前に戻ったこともある一方で元通りとはいかないものも多く、人々は皆マスクを着けるようになり、飲食店、小売店の入り口には必ず消毒液が置いてあるなど大きな社会の変化が起こっています。
自粛していた3か月というのは短いようで意外と長く、植物が種の状態から収穫できるほどにまで成長するには十分な期間であるのと同様、生活スタイルが変わり人々がそれに慣れるためにも十分な期間なのだと改めて感じる今日この頃です。

COVID-19の影響で新たな生活様式ができつつある中で日々の社会の変化も大きくなっています。また、新たな生活様式の中で成長の芽が出始めた企業や大きく成長した企業も出てきています。
我が家の家庭菜園と同様に社会で大きな変化が起こる中、今後も市場・企業の成長、変化のタイミングを逃さないよう、調査・研究を進めていきたいと思っています。

最近は梅雨のため雨が水やりを代わってくれることも多く、非常に楽です。梅雨は、植物の成長にとって大切な季節なのだと感じます。梅雨明けには大きな実りがあると期待しています。

あすか新春セミナーを開催しました

1月9日(木)あすか新春セミナーを無事に終える事が出来ました。ご来場いただいた皆様、ご協力頂いた皆様。本当にありがとうございました。

三部構成のセミナーは、第一部においてSMBC日興証券のチーフ株式ストラテジストである圷正嗣様に2020年の市場環境と投資戦略についてお話頂きました。2020年にグローバルで見た日本市場の魅力度の高さやガバナンス改善により強化される日本企業の優位性についてお話頂くなど大変勇気づけられる内容でした。

第三部は元オリンピック日本代表の為末大様により「自分を知る」とのテーマでのご講演を頂きました。長い競技人生を通じて悩み、考え、ご自身で道を切り開いてこられたお言葉は強くそして優しく、投資との共通点も大変多かったです。

そして第二部は「多様化する対話型投資の現状と今後の展望について」とのアジェンダの下、株式会社ストラテジックキャピタルの丸木剛様、りそなアセットマネジメント株式会社の松原稔様、そして私によるパネルディスカッションを圷様にファシリテート頂きました。私自身も自分達が取り組むバリューアップ型のエンゲージメント投資についてお話をさせて頂きました。

第二部についてはセミナー後の参加者の方々とのお話しの中で「所謂投資先企業と対話を行うタイプの投資家ではあるものの、三者(社)三様のアプローチが大変対比的で面白かった」とのご感想を頂きました。主催者冥利に尽きるお言葉です。また同時に私自身は「投資に取り組む中で何をもって成果とするのか?」との圷様の問いに対して、三人のパネリストがそれぞれ迷うことなく「それは当然投資リターンです」と答えられていた事に勇気づけられました。

世の中で対話型の投資についての認知が高まりつつ反面、外部に対する説明責任も強化されつつあり、近春改定が予定されているスチュワードシップコードにおいてもサステイナビリティーとESGを軸としたエンゲージメントとその効果検証などが導入されることが見込まれています。

日本における運用の質を高めていくためにもこれらに真摯に対応していく事を心掛ける事は大切ですが、その結果として何を実現するのか?を見失わず、それぞれが信じる投資哲学の実行を通じてアセットオーナーが求めるリターンを追求しなければならない事をあらためて確認できました。