ACAコラム

上場株インパクト投資の研究 4章(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

7月21日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 4章 1回下

2021年6月9日

(このブログは毎週水曜日、クラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
20銘柄ぐらい投資すると、1社が2、3個の成長のドライバーがあって、そうすると60個ぐらいのKPIをウオッチすることになる?

Hさん
会社ごとにKPIが違うのでそういう感じですが、ただ3つのうち全てが社会インパクトにつながるというわけじゃないです。だから20個ぐらいかな・・・。

MC
この20個はテーマ的に相関しないのですか?

Hさん
相関するものもあります。でも相関しないテーマを10個ぐらいは持ちたい。全部が相関すると、一つの前提が違うと全部崩れてしまうので。10個ぐらいあれば、何かがダメでも何かで補えたりします。それがあるから、お客さんがポートフォリオマネージャーに預けるのだと思います。

MC
ちなみに、今、もちろんいろいろ、色々あると思うのですが、Hさんにとって大事にしているKPIはなんでしょう?

Hさん
そうですね。日本が高齢化にむかっていて、その中で特に人材の採用が難しい中堅の企業は人手不足の中でどんなに効率的に仕事ができるかとか、効率化に貢献できる会社には注目しています。

MC
なるほど

Tさん
あの、例えばSDGs的に重要度が増しているものって確実にあって、KPIというよりアウトカムと呼ぶべきなのかもしれませんが、投資を通じていいインパクトを出せるビジネスを増やすというのを目指しています。ただ、KPIっていうのはそのアウトカムに合理的に向かうための内部的・・・・外部に出してもいいかもしれませんが、指標ですよね。だからバランススコア的なものに結びついていくと思うのです。そうすると、財務数値をしっかり出していくために雇用をつくっていくとか、採用をしっかりやっていくとかいったKPIが必要になるのだと思います。ただ成長サイドに加えて、守りの方もしっかり固めていきましょうというマテリアリティのところを、成長のためのKPIとは別にたてていくというのがあって。ESGでいうS、雇用のところなど、そういうのが重要度を増していると感じています。攻めだけでなく、守りのところが

MC
Hさんは高齢化、働き手が少なくなる中でその助けになるビジネスなどがいいのじゃないかと思っている、Tさんは事業によらず、従業員をどう大事にしているとか、そういうことでしょうか。

Tさん
うーん、言いたかったのは攻めのKPIと、守りのKPIがあるってことなのです。攻めのKPIは財務データに結びつくので、いわゆる従来型のエンゲージメント投資にも近いですよね。ただ現状のインパクト投資の管理手法は網の目が大きすぎてそれをモニタリング出来ない気がするのです。もちろん従来のエンゲージメント投資にはなくて学ばなければならないこととしてリスクサイドをしっかりおさえていくというのがあって、その意味では守りのKPIの重要度も高まっている・・・ということ。

MC
わかりました。でも今はとりあえず、いろいろちょっと置いておいて、今どんな投資をしたいと思っていますか?・・・日本の問題をどう解決したいかとか?

Kさん
変わるには、仕組み自体を変えないといけないと思うし、それをする会社に投資したいのです。一般的に“いい会社”ではなく、変えていくことができる会社、それはバックグラウンドとして、その仕組みがある会社、技術がある会社に投資をしていきたいと思っています。

MC
Kさんは、たとえばゴミ処理の技術をもっているとか、“この会社”あるいは“この技術”がいいという会社ではないところをあえて見ていこうとしているからで、今そのように思われるということですか?

Kさん
うーん、それだけじゃなくて、いいところを持っている会社でも、それがいいということが顕在化していない会社もみています。

MC
ではKさんが、“この会社変えていく力ある”、“いいインパクトがある”と思う会社の事例ありますか?

Kさん
たとえばゴミ。田舎にいくと、そこら中に電気製品とか捨てられているんですよね。それを変えていくにはどうしたらいいか、というのはちゃんと会社が対応するしかないと思うので、それができる会社。またプラスチックにしてもいろいろ言われていますが、それをちゃんと処理できればいいので、そういう仕組みづくりをしようとしている会社を応援したいと思います。

Tさん
私は、社会が壊れ始めているなと感じているので、それを食い止められる事業を増やしていきたいと思っています。最近考えているのは中小企業のエンパワーメントをどうしていくか。DXをどうやって作っていくかなどに取り組んでいます。弱者に機会が与えられなくなったらいけないと思っていまして。。。だからそのための企業を選んでいきたいと思っています。

MC
そういう企業はどうやって見つけて、見極めているのですか?

Tさん
そこについては、通常のビジネスモデルチェックをするということかなと。

MC
それをどうやってオーナーに説明していますか? 

Tさん
それはできなかったら運用の仕事やめたほうがいいです!

MC
ははは。でもこういうインパクト投資でモデルができたりしているのは、“説明”をしやすくするためですよね。SDGsの17個のゴールもそうですよね。何を目指しているのかとか。色々なことが言われていますが、どんなインパクト投資でもいいと思うんですね。共通のゴールをアセットオーナーとどう共有するか、どう進捗を説明するかはKPIなのかなと。

Tさん
あ、確かにそれは社会インパクトを定量的に説明するというのは別です。そうなるとやっぱりサービスの導入率とか・・・ただ内部的な取り組みもみないといけないですよね。エンジニアが増えているかとか・・・

Hさん
私は企業のタイプごとに見なきゃいけないことを決めています。大きな枠組みを決めていて、セグメントごとにこことここを見るって決めているんです。経営者もタイプごとにわけていて・・・

MC
その分け方とか、詳しく聞きたいので、来週はここから再開しましょう。

上場株インパクト投資の研究 4章(1)

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上場株式でインパクト投資 4章 1回上

2021年6月9日

(このブログは毎週水曜日のクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
いよいよ第4シリーズです。1シリーズ4回だから、このシリーズを始めてもう3ヶ月たったということですね。この間もインパクト投資ってなんだと言っているいろいろな人の意見も踏まえて議論してきたのですが、個人的にはどんな定義でもいいとおもっています。重要なのはアセットオーナーに理解されることなので、それにはKPIが重要だと思います。成果を見せないといけないですから。そこでコンシリーズではこんな議論をしたいと思います。もしここに大金持ちのアセットオーナーが現れて、“君に1000億あずけるよ、社会に意味のある投資をしてほしい”って言われたらどうしますか?ではTさんから

Tさん
うーん、1,000億・・・。私みている会社の規模が小さいから・・・いくらで運用したいっていわれたら300億とか400億なのですかね

MC
質問はKPIです。

Tさん
あっ!すみません。お金の話聞いちゃうと実際に考えちゃう(笑)。うーんでもKPIについて語るなら・・・各論になっちゃうのかなと思うのですよね。今見ている時価総額2,000億以下の企業で継続してウオッチしているのは5、60社あるのです。一度それを精査して、自分たちが今やっているエンゲージメントテーマをSDGsの役割で整理できるところが何社あるかみてみたらそれらの中で6割から7割あったのです。それを積み上げていけば、2〜300億の投資をする自信はあります。でもKPIというのを考えた時、クオリティをあげていくのはまだまだ障害が多いのかなと思っていて。例えば最近見ている会社でAIをつかったIT企業で、グリッドコントロールなどでエネルギーを効率的に使うといった、インパクト的にイメージしやすい企業があります。でもこれがIRIS+とかでKPIを探すと、ITでクライメートを語れる指標のってあんまりなくて。リスクサイドがあるぐらいです。だから私はポジティブなテーマを財務データとあわせて説明できるKPIを作りたいけど、それは今のインパクト投資の枠組みでは認められないのかなと思ったり・・・」

MC
そんなことないですよ。リスクとリターンはセットですし。EUでも、ITは電力を使う割合が多い産業なので、初期のタクソノミにも入っています。電力を減らすこともできるかもしれないし、新たなイノベーションも出せるかもしれない、だからいろいろできそうですよね。でもそういった既成のKPIに拘らなくても、ご自身でエンゲージメントやオーナーへの説明でKPIおいているでしょう?ではKさん

Kさん
いろいろあると思うのですけど、今世の中でインパクト投資のファンド増えつつあるのですが、中をみると太陽光発電とか電気自動車の株がはいっていて、そりゃそうだよねと思うのです。でもインパクトとESGって何が違うの?と考えると。やっぱりいまいいかどうかより、“社会を変えていける”ということに注目しなければならないと思うのです。そうすると、いわゆる“良い企業”ばかりに投資するのではなくて、変わっていける、変わらなければいけない企業に投資し、投資家としてインパクトを与えていかなければならないと思っていて、そう考えると結構幅広くできるかなと思っています。いろいろな会社でできるはずだと・・・。だから一社ずつ、ぼくらがこの会社にインパクトを与えることができるか、あるいはこの会社はそれを受け入れることができそうか、を考えながら投資をしていければいいなと思っています

MC
Kさん、具体的な例はないでしょうか。インパクトとか一回おいておいてもいいです。Kさんが普段ものすごくよく見ていたのはなんでしょう。

Kさん
KPIって一つじゃないと思うのですよね。企業によっても違うし。一つ一つ違うものを設定しないといけない。昔やっていた時はあんまりKPIたてていなかったな・・・またどちらかというと財務的なKPIで環境のKPIに落としていなかったなと反省しています。

MC
たとえば、1年目にエンゲージメントをはじめて、2年目、3年目に社外役員が増えるとかそういう計画的なアプローチをされていました?

Kさん
だいたい、ニュアンスはそんなかんじでした。社長たちの任期を考えると3年ぐらいがちょうどいいのかなと。中計も3年とかが多かったです。でも実際は、もっと長くなったり、逆に短くなったりしていると思います。また、今は非財務の方もと企業が考え始めたので、我々も言いやすくなりました。

MC
では次はHさん。ここにアセットオーナーが現れて、“君にこれを預けるよ”っていわれたら?

Hさん
前提として、株主投資の中でインパクトを投資に繰り込むのと、“インパクト投資してください”って言われるのは違うと思うのですが、私は前者で、20-30銘柄ぐらい投資しています。それ以下の銘柄数にすると、リスク特性が資金の出し手が考える株式への投資と乖離しちゃうからです。株式投資をしている以上、トータルリスクは市場と同じになっていることが大事かなと思います。そしておのずと各企業の大きさも決まってきます。そう考えると東証って、今3800ぐらい上場していて、その中の2,000社ぐらいは流動性から見て投資対象にならないです。だから半分ぐらいが投資できて、その中で構造的に成長していて、長期に投資できるのはだいたい三百社ぐらいと思います。逆にどうしようもなくて、どんなにESG的改善したとしても、ビジネスとして構造的に衰退しているどうしようもないところが200ぐらいはある・・・・衰退している企業はもっと多いと感じている人はいるかもしれませんが、私がここで言っているのは、経営が改善したとしてもコアのビジネスが既に社会的役割を終えていると思われる企業の数です。それからいつも割安におかれていて、いつか上がるかもねといってもなかなか難しい企業が500ぐらいあり、長期的に見たら緩やかに成長しているのですが、マクロの影響を受けやすく市場要因が我々の言うインパクトの要因を上回る企業がそれ以外といった感じの市場だと思っています。そういう中で、KPIを置きながら、しっかりやっていけるのは構造的に成長している会社の300社ぐらいになるのかなと思っていて。これらについては必ず成長のドライバーがあり、それを追いかけていく。それはたくさんあるものじゃなくて、どの会社もマックス3つに絞り込めます。それを追いかけていく中で、それが社会インパクトの中に何か結びついているドライバーなのかどうかだと思うのです。そこで選んでいくとさらに構造的に持てる銘柄の中でのインパクト投資は結構少なくなるのかもしれませんし、リスク特性は偏ったものになる可能性があります。

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(7)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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7月21日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 4回下

2021年6月2日

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
東京ガスは“生き残りのために必要”といいながら、あまり練れていない計画をだしたように見えるということですね。Kさんにお伺いしたいのですが、Kさんはいつも“配当については重要な約束だ”、というようなご意見だと思いますが、その東京ガスの今回提示された計画自体についてどう思いますか?また他の投資家も今年の配当が云々ではなく“長期にネガティブだ”と判断した可能性についてご意見をお聞かせいただけますか?

Kさん
東京ガスさんは環境関連で良く表彰されていて、そっちに力を入れられているのかなと思います。株主とか企業価値ではなく、そう言ったことで表彰されようとしているのかなと。一時的には配当を増やしたり、株主のこと考えていますよみたいな見せ方をしていたのですが、それより環境のほうが会社として好きなのかな・・・ちょっと残念だなと思います。もうちょっと総合的に考えて経営していけばいいのに。賞とかもらいたいのかもしれないけど、少し寂しいなと。

MC
でも東京ガスさんは、環境への投資をうちだすことによって長期的に考えているとご自身は思っているのでは。もちろんTさんが指摘したみたいにその計画は練れていないかもしれませんが・・・・。

Kさん
長期的に何を考えているかですが、私は企業業績とか、社会の変化の中で東京ガスがどうやっていくかより、とりあえず環境関係でやんなきゃならないことをやりましょうと、ちょっと焦っているようなかんじで、今までやってきたことをおじゃんにしていこうとしているようにみえ、配当を増やしていくというのもやめていくということであれば、しっかりコミュニケーションをとるべきところをやっていないのが問題だと思います。

MC
それはそうですね。東京ガスさんはでも単に二酸化炭素を減らすとかじゃなくてビジネスそのものだから難しいというのもあって、確かに焦ったのかもませんね。

Hさん
そうでうすね。長期投資家がどう判断したかは実はまだわからないと思います。感情的に反応したのはけっこうあったかなと。コミュニケーションが悪い時は短期的にはあると思います。そういう短期の株価の動きは、ぼくは全然気にしていなくて。株価ってよく間違えることがありますから。だからそれに過剰に反応せず、長期的な価値に確信があるなら、私は気にせず買っていくタイプなので。実際に環境に対する投資にどれだけお金がかかって、どんな効果がいつごろでてくるかをもっと丁寧に説明する必要があると思います。そうすればこの投資はこういうふうに企業価値をかえていくよね、ということがわかっていくと思います。投資家やらなきゃいけないことを見てこなかったということがあるとすると、投資家としても手落ちで、それはお互い反省しながらコミュニケーションしていけばいいと思うのですけど。

MC
今のところ、もうちょっと皆さんに聞いてみたいのですが、似たようなことがこれからどの会社でも起こると思うのですが、気候変更に対して大型の投資をすれば何らかの資本の割り振りをしなければならないと思いますが、そういう時、事前にどう投資家とコミュニケーションするべきか、またご自身が投資中の企業が、大型投資をすると言い出したとか、びっくりさせられることがあったとき、どう考えるかとか、ご意見をいただけないでしょうか。

Tさん
これって東京ガスさんにとっては一丁目一番地のトピックスですよね。普段から対話し続けてなきゃいけない議題だと思います。今マテリアリティをめぐる開示とか広まりつつありますし、それについては世の中の仕組みが求めている形に従って粛々と普段から対話をしていけばいい効果が発揮されるのじゃないかと思います。とは言え脱炭素はマテリアルな課題として対話するけれど、とりあえず配当は下げてもらったら困ります、じゃなくて、財務情報も含めてマテリアリティを語る事が必要で。配当を下げてもいいけどそれがどう報われるかきちんとコミュニケーションしてくださいという方向に振らないといけませんよね。

Kさん
私も似たようなことを思いますが、あまり配当のこと話すと重要提案行為になるので、それが問題だなと。重要提案行為は金融庁の規制ですが、これは変えなきゃいけないところだろうと思っていて、そうでないと資本の効率をどうするかとかしっかり話せないですから。だから東京ガスもかわいそうで、事前に配当に関して投資家の意見を聞きたいと思っても、重要情報にひっかかりあんまり話せない、これは不利なところだと思います

MC
ありがとうございます。では次にHさんにちょっと違うことを聞きたいのですが、インパクト投資といえどもオーナーがいると思います。アセットオーナーを抱えるものとして途中のキャッシュフロー、配当のことは無視できないと思うのですが、そういう資本配分とかは日ごろから心がけていることありますか?つまり、特にインパクト投資のような時、投資先の企業は大きな資本投資をする可能性もありますと、そうすると最初から投資戦略を、頻繁な配当の増減によらないように設計するものなのかとか・・・もし心がけていることがあれば

Hさん
そうですね。企業が生み出すフリーキャッシュフローの部分を投資とか、株主還元にどう使っていくかの割合は通常の会話の中でいつも出てくる話で、どう配分することによってROEをあげていくか、下げないようにするかということをいつも考えていないと、利益があがってもROEが下がっていくということが起こりえるので、日本では単年度でROEいくらみたいな企業がよくありますが、そういうことではなく、長い目でどういう配分をしていくかを常に議論していくことが必要だと思っています。

MC
そうですよね。単年度の配当性向に対する議論が多いというのはよく指摘されますよね。それからこういった投資が注目されていくなかで投資家側ももう少し投資のやり方を考えていかないといけないんでしょうか

Hさん
うーん、それぞれのスタイルがありますから、私は、単年度の影響をうけないような説明をお客さんにしていますし、だから株価がちょっと下がってもお客さんと笑っていられるというか・・・

MC
すばらしい!あと30秒あります。ご意見ある人

Tさん
そうですね、今ラージミーティングでESGがらみの質問される人いますが、正直まだ質問のクオリティーが高くないのかなと・・・。たぶん投資家側の洗練がもっともっと必要になってきて、それは繰り返しですけど、統合的な能力が必要なんじゃないかなと思います。

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(6)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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7月14日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 4回

2021年6月2日前半

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
では、今日は前回の続きから、気候変動対応を行うために配当を見直すといった東京ガスの事例について話していきましょう。前回も少しお聞きしましたが、一週間たってご意見も変わったかもしれませんので。

Tさん
そうですね、一瞬思い浮かべたのはダノンのCEO解任の件で、報道も見たのですが投資とESGが二律背反的に語られている良くない例だなと思いました。東京ガスさんが上場企業として果たさなければならない長期戦略の説明責任、そこにESGをどう絡めていくかという必然性の部分とそれに対する資本政策の課題がごっちゃに語られているという気がしました。マスコミが極所だけをとりあげているような印象がしました。

MC
ニュースとしてはそうですが、Tさんはどう考えますか?たとえばTさんが投資先の起業が予定外にそういってきたら、“いいこと言うねえ”っていうか・・・

Tさん
うーん、たぶんそのお話が出る前に十分コミュニケーションしておくべきなんでしょうけどね。(笑)もし期待するインパクトを強化していくうえで、インパクト強化のための追加投資が結果として企業価値を下げるのであればインパクト投資としての要件を満たしていないわけで、投資を始める前に見誤っているということだと思いますので。

MC
Kさんはどうですか?

Kさん
一時的に業績が悪くなることはあり得るのかなと思っています。いろいろな会社で今後起きてくると思います。そうすると株価評価としてマイナスになることもありうると思います。将来的にこの会社が強くなれるかどうか、炭素税の支払いもあるかもしれないし、消費者から好かれ、売り上げが伸びそれがプラスに働くなら応援していいんじゃないかと。今後5年とかで考えたらマイナスになることもあるでしょうし、NPVも下がるかもしれないけど、容認しないといけないのではないかと思うのです。でも東京ガスについては、今まで配当をずっと上げてきて配当性向も6割あって“配当でみてください”とマーケットに対し言い続けてきた会社だと思うのです。それが今年は決算でも“配当増やしてきました”というグラフも入れていないし。投資が必要だということは前からわかっていたでしょうし、急に方針を変えると、配当がいいと思っていた人は怒って売るでしょうし、経営に対する信頼性はちょっと落ちるのかなと思います。

MC
あの、でも東京ガスさんにとっては、ガスの会社ですし何か対策しなければいけないとなると、なんらかの資金を用意しないといけないわけですよね。単に説明が足りなかった?

Kさん
でも、説明が足りなかったというのはおかしいのかなと思っています。短期的に経営を考えているのであればあるかもしれませんが。長期的に考えて配当性向もあげてきた会社のはずなのに。本当は長期的に考えてやっていなかったのではと思ったりします。

MC
もしかしたら逆に、配当が(だけが)いい会社って言わないほうがいいってことなんでしょうかね。東京ガスだったらどうしたらいいのかなと。

Kさん
それだけがいいわけじゃないけど、そのようにコミュニケーションをしてきたので、そこを変えるのであれば徹底的にコミュニケーションすべきだと思うんです。

MC
うーんそうですね。ではHさんはいかがでしょう

Hさん
東京ガスについては完全にコミュニケーションの失敗だと思っています。2020年の3月に中計を発表していて、2022年までに何をやるか明確に説明しています。それは2030年に向けてのビジョンがあって、その中で何をやるべきかになっていて、その中で2022年までは総分配性向(連結純利益に対する配当と自社株取得の割合)を各年度60%に定めています。ところが、今回配当削減の可能性を発表したものは“コロナ禍をふまえた東京ガスグループの経営改革”になっているのです。コロナ禍っていうのは理由として不誠実ですよね。コロナ禍ではなくて、環境に対する社会の認識が変わったとか、バイデン政権の誕生とか日本政府の目標が変化に対して早期の投資が必要だから変えると直接言えばいいのに。そうじゃないから投資家は怒ったのだと思います。
それに昨年の決算発表時にも年間の業績予想を発表していなくて、この時もコロナ禍でわからないという説明だったのですが、レストランとか小売りならともかく、東京ガスさんのようなビジネスで、コロナ禍で需要が読みにくいって、たぶん限定的じゃないですか?コロナをいろいろなところで理由にしすぎている。その辺に対する不信感がでたんじゃないかと思います。

MC
今Hさんが“でたんじゃないか”というのは株価が下がったってことですよね。

Hさん
そうそう、そうです。投資家がNoといったという論調になっているのでけど、投資家は環境投資をすることについてNoといったわけではないと思うのです。コロナを踏まえて環境投資しなければならない、というのはちょっとわからない。

MC
たしかにコロナをつかって、関係ないと思われるような産業がやたら減損したり、減配したりということが起きていましたよね。そういう経営のやり方自身には長期投資家としてはNoを突き付けないといけないですよね。

Hさん
うん、ただネットゼロって言われたから、って書いてくれればいいと思うんです。何度もいいますが、タイトルが「コロナ禍を踏まえた・・・」ってとこだと思うんです。

MC
そうですね、今Hさんがおっしゃったように株価が下がったんですよね。Kさんがいったように、東京ガスは特殊で、配当が非常に高いことで投資家が計画的に持っていて、そこで急に下げられたら困るというのがあるかと思うんですが、そういう時に長期にインパクト投資を目指している時は、前回のシリーズで短期的な株価の変動は気にしないという議論をしたと思います。ところが、多くの投資家が長期の企業価値、もしくは経営姿勢に対してネガティブな反応を示したということになるのだと思いますが、こういう時はどういう風に行動をとりますか?

Tさん
うーん、スパンの長い話なので、まだ分からないと思うのですよ。長期でみれば結果的に戦略としても株価としても評価される「かも」しれない。でも基本的にはHさんとかと同じで、よく説明しないといけない、そして戦略は一貫性がないといけない、投資家としてのエンゲージメントを問われるならそれを促すと思います。みなさん統合レポートなどを一生懸命書かれており、そこでは財務と非財務を組み合わせた目指したい将来が見えると思うのですが、今回のケースをみると、やっぱり財務戦略と、ESGを含めた将来に向けた経営戦略がどう結びついているか一貫性がないように感じられ、不信感が出ているのではないかと思います。例えばこの会社はROEがずっと下がっていて、それが配当を強化していくことで資本効率を維持していこうという戦略を取っておられるに見えたんですが、今回の話は、そことの一貫性がありません。もちろん企業としてのNPVを下げてまでやるんだということは会社の判断としてはあるのかと思いますが、そこに対しては投資家はNoだと言っているんじゃないかと思うのです。会社の説明は“生き残りのために環境対策が必要です、今やらないともうだめです”という書き方をされているのですが。環境対策がきちんと企業価値と結びついていない感じがしました

MC
つまり、今回の説明だと、今回多少減配しても最終的に企業価値はあがるのだという、そもそもの計画が見えていないということですね

Tさん
ひょっとしてまだ考えておられないような・・・ESG戦略が経営戦略としっかり結びついていないような。「生き残りのため」とおっしゃいますが、本当に生き残りについて考えていますか?みたいな。

MCさん
生き残りのために必要といいながら、あまり練れていない計画をだしたような?

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(5)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

7月14日は、お昼の 12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 3回 

2021年5月26日

(このブログは毎週水曜日に、クラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
では、今日はまだKさんが接続していないし、前回最後にTさんが上げてくれた事例で議論したような、これまで投資してきたケースで、気候変動のポジティブインパクトのKPIをうまく企業価値向上になるように設定できた、あるいはできなかったケースについてHさん、お話しいただけませんか?

Hさん
自動車業界についてちょっと話したいなと思うんですけど。自動車業界はCO2などの排出量の規制があって、その達成に向けてどの会社も努力していますが、その時日本の会社って、自分たちがEVカーや、燃料電池の技術力や販売目標はどうですみたいな説明はできているのですが、その場合にコストがどう変わり、企業価値がどう変わるかについてあんまりうまく説明できていないと思います。“環境に良いこと”だからやるし、やらなきゃいけないという説明はされているんですけど、企業価値につながる部分になると長期的な説明になっていないわけです。同じようなことは他も業界でもあるかもしれませんが。たとえば同じEVやっているといっても、テスラなんかだと、自分たちのプロダクトがなぜその価格で受け入れられるかが明確に説明できていると思っています。つまり彼らは顧客目線に立ってなぜそれが受け入れられるかの説明が出来ており、それが不可欠だと思います。例えば私が数年前に、オランダに行った時の感覚ですとタクシーの半分以上テスラという感じでした、これはウーバーでもです。理由を運転手に聞いてみるとテスラは売値と買値と、何キロ走ったらキャッシュフローがどうなるっていうのが電気なんで完全に読める。他の自動車を買うとガソリン価格も動くので、買う方からしても商用車であれば利回り的にテスラしかないということが明らかだという事を運転手自身が説明してくれました。つまり消費者側の計算もでき、それによって何台売れるかということも明確にある、それが説明できているのです。その辺を自分はエンゲージメントしていきたいと思います

MC
ありがとうございます。Hさんが言いたいことよくわかります。自分も数年前気候変動のことを国内の投資家の集まりで話すと必ず“気候にいいことだからといって、企業がそれだけやるのでいいのか?!”みたいな言われ方をして。でもその頃ヨーロッパではまったくそういう捉え方ではなくて、まず燃料費が安いからとか、メリットが前面的にでていたので随分ギャップがあるなと思っていました。日本の自動車会社は説明は確かにうまくありませんが、消費者の側は必ずしもそうではないのかなって思います。自分もプリウスを10年以上乗っていますが、燃料費も全然違うし税金も違います。でも国内でプリウスタクシーですらあんまりみかけなかったですが、ヨーロッパではテスラが出てくる前はタクシーならプリウスだけっていう時があったのに。国内ではなにか他のハードルがあるんじゃないですかね?コストや利益に対する執着であれば、国内の産業も相当あると思うんですけど。税制や燃料費など全体的に環境車のほうが今でもメリットはありそうですけど、まだ足りないとか。また日本の自動車会社は消費者の嗜好はかなりしっかり抑えていると思うんです。だから国内では消費者のニーズがまだ少ないのかな・・・

Hさん
あ、そうです。利益については追求していると思います。ただそれを企業価値にリンクさせて投資家に説明できてないし、お客さんに対しても、いったいそれがどういう経済的なメリットがあるかも、あんまり説明できていないと思います。

MC
Kさん、やっときました。よかったです!

Kさん
すみません、寝坊しました。

MC
遅くまで仕事していましたか?今ちょうど前回の復習とこの前Tさんが出してくれた事例のように、気候変動にいいことをKPIにしていて、それが企業価値とちゃんとリンクしたケースがあったかなど事例を紹介していただけますか?

Kさん
そうですね。一件、北陸の会社で、自分で重油をたいて発電している会社があったのです。発電だけじゃなくて熱もえられてコストがかなり下げられたのです。それが会社のメリットだとアピールされていたのですけど。私も10年ぐらい前はわからなかったんですが、やっぱりCO2の問題からこれを続けていいのかということになり、やっぱり重油をたくのやめるしかないのかなと、会社の方も気がつきまして。今重油からLNGに変える取り組みをしています。それでもまだCO2でるのですが、それでもだいぶ抑えられますし

MC
つまり、最初はコスト削減という企業価値への向上ということで見ていたと。しかしその後それを昨今の社会的な議論から見直そうということについて・・・Kさんはエンゲージメントをしていた?

Kさん
うーん、エンゲージメントまではしていなかったかもですが、話せばその話題がでていました。社内でもそういう議論になって。

MC
やっぱり環境の問題って投資家だけで話を推し進めるのは難しいのかもしれませんね。
Tさん、今の事例についてコメントもらえますか?

Tさん
あの、まあなんでしょうね。やっぱり気候をテーマとした時、CO2の削減量とかがKPIになるのかという意味においては、キャッシュフローと連携して、論ずるべきというお話しだと思うんですけど、それは大いにアグリーです。ちょっと思い出したのですが、過去に投資していた企業についてもうひとつ事例を言っていいですか? 温暖化ガスの排出を抑える上で非常に有効なエアコン用の化学材料を作っている会社の話です。事業内容的にはグローバルでみてもESG投資のスタンダードになるような会社でした。ただ、この会社の良い社会的インパクトを継続的にするための経営課題は何なのかを考えた時に、重要だと思ったのは良いインパクトを持つ製品をいかに安定供給するか。という事でした。彼らしか作れない製品であることから、お客さんは彼らの作っている材料を少しでも買いたい。しかしただ買いすぎると顧客側で在庫が積み上がり需要がなくなる時期も出ます。
結果として堅実な経営を志向する彼らは投資に対し及び腰になっていました。そこで我々が提案したのは需要予測精度の向上です、数ヶ月から一年を見越した需要予想ですね。その手法について提案し、さらにそれに基づいてきちんと設備投資をしませんかと提案しました。私はこの会社はCO2を減らす良いインパクトはあるのですが、彼らにとって大切なKPIはCO2の削減ではなく、適切な設備投資や生産の平準化であると思っており、それがきるかみたいなところをモニタリングしてきたのですが・・・やっぱりKPIって個社独特だと私は思うのです

MC
ありがとうございます。今の話も気候変動のインパクトと、実際のKPIが違うという重要な例だと思うのですが、気候変動のKPIが難しい例なので、ちょっとHさんとKさんの話に戻っても良いですか?
Kさんのおっしゃっていた例は規制とか出てこないと、コスト的にメリットがあっても会社の収益モデルに影響が出てこないわけですよね。社会が何も言わなければ今のままの方がいいかもしれない、規制が厳しくなり炭素税が乗ったりしないと数字としては見えにくいということですよね。そしてHさんのケースは消費者の意識だとか色々なものあって、
もちろんHさんが言っていたように会社が消費者にメリットをしっかり説明することも大事ですが、自動車の場合環境車が売れるとダイレクトに社会にインパクトも企業価値も上がると思いますが、これもまた個人の嗜好だとかに影響を受け、また自分の場合も税制などの差がすごくなければ躊躇するかもしれないと思うのですよね。だから政府が“今年からハイブリッドカー値上げ!EVカーだけ!”と言うかどうかってものすごい影響が大きいと思うのですが、どうでしょう?

Hさん
本当にそこが難しいと思います。企業は今の政府の税制とかにあわせて販売戦略も考えるし製品を出して行くわけです。ただEVはハイブリットと異なり走行中に出すものにかぎればCO2がゼロになるわけです。ハイブリットや燃費の良いガソリン車の場合は減らすって事が出来ても計算式も複雑になる。だからゼロだっていうのが大きいと思うのです。企業の選択も過度的なのかどうかは重要です。Kさんのお話にもありましたが、その時の規制にあれば、コスト的にOKみたいな考え方はあって、でも過度的なものに投資する場合は変数が複雑になるので長期投資の我々には難しいものがあると思います

Kさん
規制との関わりでいうと、正直規制のほうがアクションが早いと思うのです。やらなきゃいけないからやりますよっていうのは、誰に対しても言いやすいです。そのための投資の決断もしやすいです。でもまだ規制が入る前の段階でやっていくには「なんでやるの?」ということになります。「まだハイブリットカー売れるのじゃない?」という時、全部EV
に替えていくっていうのは、政府の支援もあまり受けられないでしょうし、反対を押し切らないといけないというのもあると思います。でも今の社会は変わりつつあり、そこで消費者の声って大事だと思います。だからまだ重油で発電しても良いよねと言われても、考えていかなきゃいけない、と思っています

MC
ありがとうございます。Tさんいかがです? すみません、さっきはTさんがまた出してくれた事例を飛ばしてしまったのですが

Tさん
「いえいえ・・・うーん。またお二人の話を聞いていて違うことを考えてしまったのですが、社会の動きとか、規制で変わって行くというのは事実なのですが、ぼくたちがインパクト投資っていうのを考えた時、それらの変化を読んでいくことも重要ですが、自分たちのフィデューシャル・デューティとしては、どれだけ主体的に変化を起こせるかということを考えるべきじゃないかと思っていて。また規制などが変わったとしても、何か自分たちが考えたことを達成できるような、比較的短期のアウトカムともあるべきじゃないかと思ったのですが

MC
はい、ありがとうございます。そうですね・・・あのまた話のコシを追ってしまってすみません、ここで質問が来たのですが・・・。あと5分ですが、話せるところまで話したいと思います。えーいただいた質問は、東京ガスのケースです。気候変動に対応するために、資本配分を替えて行く、つまり何か資本投資をするという時に、必然的に配当がへるわけですが、こういったことに長期の投資家はどう考えるべきか、ましてや“気候変動の対応をしなさい、しなければダイベストメントしますよ”と言ったような投資家は本来どうずべきか。みなさまどうお考えになりますか?」

Kさん
「投資家は社会の中にいる存在だと思いますので、社会の動きをみながらやっていかざるを得ないのかなと。重油の発電のケースは10年以上前ですが、当時私も悪いことだと思わなかったのです。効率が高まって良いのじゃないかと思っていました。その考えが変わって行くのは重油で発電するならCO2がたくさん出る、だから天然ガスのほうがいいのじゃないかとか、それは社会の変化の中で私自身も変わって行ったというのがあるのかなと。だから考え方を替えて行くためにどうしたらいいのかは自分なりに考えていかないといけないと思います

MC
ただ私は、Kさんは投資において、配当政策は厳しい方だと思ったのですが・・・。重油で発電していた会社がLPGに置き換えたら一時的に投資のコストがかかるでしょうし、オペレーショナルにも高くなるかもしれない、それは株主へのリターンを減らすかもしれない、ということについてはどうでしょうか

Kさん
でも経済的価値といえば、それによって消費者が反発し売り上げが減ったら困るわけだから・・・あるいは従業員が離れていってもマイナスだし。企業は社会の中でどうやって認められて行くのかを考えなければならないのかなと思います。
Hさん
私はこれってシンプルな話だと思っていて、彼らが行った投資が企業価値をあげたらいいと思うのです。配当まで削って投資して、それで企業価値が上がらないのだったら当然それはマイナスです。今は金利すごく低いので、配当で出すより、ちゃんと投資して企業価値があがればその方がプラスになるはずです。

Tさん
私も来週お話しできたらと思います。投資をやるかやらないかは、生き残りをかけたクライメート対応への経営判断として話す話かもしれませんが、何でファンディングするかとは別の話で。例えば配当を維持してその投資ができないかというのはガバナンスの問題だと思います。

MC
では続きは来週話しましょう!

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(4)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

ンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

6月30日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 3章 2回下

2021年5月19日 

前回の続き


Hさん
KPIの置き方というのをインパクトを与えるもの自体にしなくていいのでしょうか。その会社が成長していくと結果的にCO2を減らすことができたとしても、CO2の削減目標ってもの自体がなかったとすると、それってインパクト投資のKPIとして適切なのか?と。CO2をもっと減らせる家を作ったとして、しかしその時は(よりコストがかかるなどして)会社の収益を伸ばせなかった場合、企業価値は上がるのでしょうか?

Tさん
・・・な、なるほど。それは考えたこともなかったです。というのは、その会社の企業としての存在意義は、CO2を減らすことだけじゃないと思うのですね。利益をだして従業員を守っていく・・・。即答にはならないのですけど・・・CO2を75%ではなくて、90%減らせる住宅を作ったのでそちらを集中的に売ります、ただし利益は減りますということ。つまりCO2の目標値をクリアできるのであれば利益を減らしてもいいじゃないかということであればそれは違うのかなと。大切なのはCO2を減らすことだけじゃなく、CO2を減らしながら利益を出すことではないかと。

MC
今のケースだと、気候変動だけをフォーカスしたインパクトを考えると、例えば住宅に、欧州なんかであるかもしれませんが、CO2をより減らした住宅を取得すると税制上のメリットがあるとか、そういう“必ず売れる”という政策とセットでないと、そのKPIは利益の予想とリンクしないですよね。そういうことを質問者さんは聞いているのじゃないかと思いますが・

Tさん
いや、そのあの、CO2の削減量だけを目標にしてしまうと、質問者さんがおっしゃるように、政策サイドで「あの目標は間違っていた」とか「そこまで厳しいターゲットでないほうがいい」など後で方針が変わりましたとか言われてしまうと、企業としての取り組みは変わってきてしまうと思うのですね。だからこれは暴論かもしれませんが、私の意図しているインパクト投資としては自分たちの投資のKPIになりえないのじゃないかと

MC
ありがとうございます。Hさんいかがです?

Hさん
あの、すごくよくわかるんですけど、それって、この会社の業績が伸びていくと言う前提があって、その会社の業績が伸びたら結果としてCO2が削減されますねってことなのですよね。そうするとCo2を減らすっていうのがKPIになってないというか、販売数がKPIになっていて、その従属変数としてCO2と業績がでてくるということになっている

Tさん
そうです。そうなのですよ。これだからそのインパクト投資なるものの設計って結果に対する、いわゆる、ロジックというか、成果に対し達成していくロジックがしっかり確立していることが重要で、かつそれに対し、投資家のインターベンション、介入が必ず求められていると思うんですよ。この企業においては、我々は売り上げをきっちりストレッチさせる、つまり事業を通じて環境にも貢献できる、それを加速できるというのがぼくたちのインターベンションじゃないかなと思っています

Hさん
ですので、そういう会社の場合は、CO2を減らすことができる住宅ができたら、その分だけ価格があがって、マージンが確保できる、買った人が何年間かで価格分を回収できるっていう、そういうシミュレーションがあって開発できたらいいなって

Tさん
はい、そうです、それもありです。

Hさん
そういうのがないと、なかなかKPIになりえないのかなと

Tさん
あ、そうです。とってつけたようですが、それもありです。ただKPIとして販売数とマージンの両方を置くととても難しくなるので

MC
つまり質問者さんがいっているとおり、KPIは複雑だと? Kさんはこの件について何かありますか?

Kさん
じゃあちょっと違う視点から・・・今、量の話がありましたが、時間も大事かなと最近思っていまして。ある会社が児童労働を2030年までにサプライチェーンでなくしますよっていっていて、それはいいことだと言われていますが、2030年って、あと9年間はつづくわけですよね。9年だと今10歳の子が19歳。だからそんなにのんびりやっていていいのかと言うことも、考えていかなければならないと今思っているところです。

MC
はい、ありがとうございます。では次の質問にいきましょう。“気候変動に関する投資は他のESG課題より早く重要性が認められた印象があります。欧州の理念や学術的な懸念の浸透が早かったのが要因だと思いますが、ファンドマネージャーとしてはどう思いますか?”これについてコメントをいただけますでしょうか

Hさん
あの・・私の認識としては必ずしもEの話が最初にきていると思っていなくて、日本では今ちょうどそう言うタイミングですが、ESGでいえばGなんか昔から各国で続いている話ですし、Sの話はESGというものをフランスとかオランダが導入した時Sが一番強調されていたと思います。年金の制度を変える時、労働組合のほうはSを注視した会社に投資することを条件に改革を受け入れていると言う経緯もあって、国ごとにその背景は違うのかなと思います。ここにきて地球の気候もすごく荒れていますし、今気候変動(E)がすごく盛り上がっていると思いますが。科学的にどこまで立証されているかとか、よくわからないですけど。少なくとも今は実証されているように説明されているので、そこのところあんまり反発しても仕方ないので、そう言う流れに乗っているというところじゃないでしょうか。

Kさん
流れに乗っているというのは、本当にその通りで。でもみんなで言えると言うことの良さも感じていて。みんなで言えば企業も聞きやすいだろうし、そう考えたらいいのかなと思っていますけれど

MC
はい、ありがとうございます。ではTさんいかがですか?

Tさん
あの・・なんかでも色々読み物も見ているんですが、Eって増えているんですけど、多いのはGとかのほうがまだ多い気がして・・・でも変化は起こっていると思います。これまで欧州の人はクーラー入らなかったのに、夏にクーラーが必要になったとか、オランダって治水の問題がえらいことになっているとか、Eに対する潜在的な意識はあったと思いますし、人類共通の課題として認識しやすいというのがあるんじゃないかと。またそれをパッシブのユニバーサルオーナーとして、課題として取り組む上で取り組みやすかったというのがあるんじゃないかと思います。ある意味メカニカルに横比較できるし。ただ、そこで思った以上のマネーフローが起こっていて、投資家がそこに追随する中で株式市場内での需給が変わってきちゃって、なんだかわからないけどとにかくEだって言っているケースもあるんじゃないかと思います。今日お話ししてつくづく思ったんですけど、アクティブで、個別にアウトカムを意識してインターベンションを意識した投資をやっていく上ではEって難しいですよね・・・。

MC
はい、ありがとうございます。みなさんがおっしゃったようにGのほうが歴史も長く、いろんなCGコードを導入した国で政策とかも古くからセットになって、投資家も動員して一緒に企業のガバナンスを良くしましょうという投資もあったと思うんですよね。でもこの質問者さんがおっしゃりたいことは、他のESG課題より早く重要性が認められた・・ではなく気候変動はただ他のEの課題よりも早く重要性が認められた・・・ではないかと思っているのですが、GとSはダイメンションが違う気がするので・・・。もしそう考えた時、Eの中にはいろいろな可能性があって、気候変動が非常にハイライトされている。排ガスとか・・・でもゴミの問題だともっと重要だと思いますけど。

Tさん
難しいですよね。ペットボトルを見て、悪の根源だと思う国もあれば、まだクリーンでリッチになった象徴だと感じる国もある。ただまあ、ぼくフィリピンの人とよく話すんですけど、彼らは環境に対する意識すごく高いですよね・・・

Hさん
私もこれからどんどんそういうの出てくると思うんです。特に今の消費の主体となっているZ
世代はすごく感心があるということで、いろいろな企業が広告の対象にしたい世代の人がそう言う高い意識を持っているということで、企業も意識しているし、無視できなくなってきていると思います。

Kさん
今フィリピンの話がでましたが、ケニアとかルワンダとか、ポリ袋に関してはすごく厳しくなっていて、現地に行って思ったんですけど、環境は先進国だけの問題じゃないということは認識しなくちゃいけないし、日本はそういう意味では遅れていると思います。

MC
そうですね。テーマとしては重要だと思うんですが、投資のテーマとして気候変動が取り上げられたのは、それがESG的に、前の質問者の方のご指摘じゃないんですが、ESG的に良いことかどうかも重要なんですけど、気候変動が産業にとって重要だったからという見方もできると思うんですね。気候変動に向けた事業にもっと投資して欲しい、今のところゴミの問題についてそういうアウトカムが見えにくいのかもしれないと思ったり・・・。

Kさん
法律とか政治でできることもあると思っていて、そういうのとあわせてやっていかないといけないんじゃないかと思っています。

MC
Eについては、G以上に“投資家の力を借りたいい”というのを堂々と言っている政府やレギュレーターもいるので、優先順位付けが出てしまう、これが二人目のご質問者の方が質問したかった背景にあるんじゃないかと思います。では時間になりました。次回もご質問を受け付けていきたいと思います。ぜひみなさまご意見・ご質問お待ちしています。

(続く)

上場株インパクト投資の研究 3章(3)

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上場株式でインパクト投資 3章 2回上

2021年5月19日 

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
では、今日も“気候変動のように政策が反映するがゆえに、独特のターゲットやKPIをもつような投資”について続けて話していきたいと思います。ところで、クラブハウスのお知らせ画面にご案内しています通り、今日からは質問を受け付けています。
さっそくいただいた質問をみてみましょう。“自分はインパクト投資は理念として<いいこと>が重要だと思っています。ところがこの<いいこと>をファンドマネージャーがどのような論理や仮説で予想したかが重要ですが、気候変動については複雑すぎて論理的に仮説も検証もできないのではないかと思っています。またその仮説を満たすKPIも業績と連動するように置くのは難しいのではないでしょうか、それでアセットオーナーに説明できるのでしょうか”ということを疑問におもっていらっしゃるそうです。これについて皆さんどう思うか、聞いていきたいと思います。ではKさん

Kさん
気候変動自体が非常に大きな問題ですし、その中で企業がどうとらえていくか、どう対応していくか、色々みなさん太陽光発電使ったりされていると思いますし、そういったことはしっかり説明できるでしょうし、それに効果も数字では表せると思います。ただ単純にヨコ比較でこちらの方がいいですよ、といわれてもそれはちゃんと考えていかなければいけないと思います。また時系列的にどうなのかとか。・・・企業にとってできないことではないと思っています。

MC
うーん。ありがとうございます。ではHさん。

Hさん
<いいこと>というものの定義が難しくて。なんとなく環境にいいというだけでは、我々は投資できないのかなと思っています。インパクト投資っていうのは自分たちが設定しているKPIがしっかり業績に結び付いてくる、というか企業価値にむすびついてくるという前提がある会社にしか、投資できなくて、<いいこと>はやっているんだけど企業価値につながらない場合は投資にはならないと思います。逆に<いいこと>のKPIが企業価値に結び付いていれば、アセットオーナーにも説明できると思っています。

MC
つまり、気候変動のためにやらなきゃいけないことは色々あって、企業側もこれに投資したいっていうことはあるかもしれないけど、Hさんとしては大前提としては企業価値と結びつくもの、もしかして政策の変更による揺らぎが起きにくいものなのかもしれないけれど、説明できるものであることが、重要だということですね。

Hさん
そうですね、やらなきゃいけないことがたくさんあって、それが企業価値に結び付かない会社がいっぱいあるんですね。それはインパクト投資に向いていない会社、ということだと思います。その会社がいいとか悪いとかではなく。で、われわれがインパクトに対して投資をするという場合は、それと企業価値がリンクしているところに投資をするけれど、インパクト投資の投資対象にならないからといって悪い会社というわけではないし。。。企業価値があがらないわけでもないです。そのインパクトと企業価値が結びついているということが前提にあれば、気候変動でも難しくなく判断できるんじゃないかなと思います。

MC
ありがとうございます。ではTさん

Tさん
・・・そうですね。なんかいろいろなことが結びついていると思うのですけど、あえて誤解を恐れずにいえば、そのKPIなるものが企業価値を説明できないのであれば、それはインパクト投資とは言えないのじゃないかなと思うのですよね。環境省とかが出しているレポートとか、読んだりしているのですけど、インパクト投資を包括型、特化型とわけてらして。包括型は使途を問わないコーポレートローンだったり、或いはパッシブのインデックス型投資、ここについては網をかけるような投資になるので、その中でKPIとして何をおいていくかでカーボンフットプリントとか出てくると思うのですが、私はアクティブ投資ですし、そうするとインパクト特定型、つまり特化型なのですがこれは“上場企業投資には適さない”と書いてあるのです。でもぼくはむしろこれで行けると思っています。定義がまだはっきりしていないというのもあるのですが、GIINとかが作っているインパクト投資の定義として、そもそもどういうインテンションがあるのか、金銭的リターンがあるものなのか、モニタリング可能なのかといった実績に基づいて言えば、KPIってリターン=企業価値とリンクさせられるべきですし、させていないといけないと思いますし、そうでないとインパクト投資と呼んではいけないのではないかと思いますね。

MC
うーん。じゃあ、例えば“こんなケースだったらインパクト投資”っていえるかなという事例ある方いらっしゃいますか?

Tさん
うーん、とそうですね。“これぞインパクト投資でございっ”っていうのはないのですけど、意識しているものとしては、たとえば温暖化ガスそのものがKPIかというと、そうではないのです。長期投資的にみたアウトカムとして地球の環境を守っていきたい、それには温暖化問題は重要で、それにはCo2をどうコントロールするかが重要・・・というのは一つのアウトカムでKPIだと思うのですよね。ずっと応援している会社で、地方の中古物件を扱っている会社があって。リノベーションをしてきれいにして売っていく会社があるんです。中古物件で新築に比べてCO2が3/4ぐらいで済むのですね。私はこの会社がどんどん伸びていくことが社会にとっても地球にとっても良いことだと思っているのですが、実際のエンゲージメントとして何をやっているかというと、“どんどん伸ばしてください”と言っている。経営者は放っておくと、守りを固めてしまうところもあるので、“まだまだ増やせるんじゃないですか?”、“こうやれ増やせるのじゃないですか?”なんて言っている。結果としてKPIとしては中古物件をどれだけ増やせたかで、それを増やせればCo2も減ると、そんな風に考えているのですが

MC
なんとなく、今パッとお聞きして、これはCO2削減が“インパクト”なのか・・・そのためにやっているわけじゃないのですものね。

Tさん
あ、はい。もちろん複合的なんですよ。超長期のアウトカムとしてはCo2の削減を通じて地球環境に良いことができる・・・ということになりますが、その前のところにいたっては、土地の周辺部の社会環境をよくするというのもありますし、長期、中期で違うんですけど、一つそれを束ねているのが祖業としての中古住宅の再生件数というのが全てにいい影響を与えていると、そんな風に考えています。

MC
まあ複数のインパクトがあれば、ただ昨日から話しているのは“気候変動は難しそう?”なので・・・

Tさん
そうなのですが、削減量を企業に要求してしまうと、結果的に企業価値につながらない。
危険性もあると思うのですよね。

MC
・・・なんとなくこの質問者さんの御指摘通り?

Hさん
あの・・難しいところだと思うんですが、たとえばKPIの置き方というのをインパクトを与えるもの自体にしなくていいのかな?って思っていて。その会社が成長していくと結果的に社会全体のCo2を減らすことができたとしても、Co2の削減目標ってもの自体がなかったとすると、それってインパクト投資のKPIとして適切なのか?というのはあると思います。先程の例でいうと、中古物件でリノベーションを行うと新築に比べてCo2を3/4ぐらい減らせたとしても、より高い技術で8割、9割減らせる家をリノベーション手法で開発したが、コストが上がって価格に転嫁できず、その会社の収益を伸ばせなかった場合、その会社のCFから見た企業価値は上がらないとした場合、どんなふうに判断したらいいのでしょう?

Tさん
・・・な、なるほど

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(2)

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上場株式でインパクト投資 3章 1回下

2021年5月12日 

(このブログは毎週水曜日のお昼からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Tさん
たとえば脱炭素で東南アジアのプラントから撤退という話が出た時、人類にとってはいいことかもしれないけど、そこで生み出されていた雇用みたいなものをどう考えるべきか。ちょっと事例としてお話しすると、私はかつてペットボトル製造装置を作っているところがありました。非常にいい経営で資本効率も高く、利益率も高く、株主利益を生んでくれる会社でした。経営陣としては、今、ペットボトルは自然破壊の権化みたいに言われていますが、軽くて造形性が高く、途上国においてはリッチになっていく象徴だったんですね。だから生活が向上することに貢献していく一方で、それが捨てられることによって自然環境を破壊するという両面があって、私がその時言ったのは“企業価値をどんどん作っていくという意味で応援したい、ただその中でサステナビリティを高めるために、少しでも再生可能なペットボトルの方にシェアをもっていくような経営をしてくれないか”という提案をしました。だから私もインパクト的には“途上国の暮らしをよくする”のほうにベッドしようと考えました。

MC
今のTさんの話は、環境問題でひとつのインパクトを考えていた時、他の雇用とかのインパクトとバーター関係になってしまうことがあって、そのジレンマで苦労されたと・・・今のようなケース、Kさんはどう思いますか?そのオランダのケース、環境を重視したために、何かが不便になるとか、そういうことはありませんでしたか?

Kさん
不便になることはあると思います。お金も使うんでマイナス要素もあると思います。でもそれでも、お客さんがついてきたりしてプラスの要素がある、総合効果を考え、企業が永続していくと考えてプラスになると思いながらみんなやっているんじゃないかなと思います。

MC
あと今のTさんの話は、以前Hさんが言っていた、“大きな方向としては問題なんだけど、細かいところをみるとそのために潤っていて株価が上がっていたり、雇用が伸びていたり・・・だから一件、一件丁寧に見ていなくちゃいけないと言っていたと思いますが、Hさんどうですか?

Hさん
そういうことってすごくあると思います。でもそういう時、本当に企業は長期的な価値を生むかが重要なんだと思うんです。わかりやすい例としては・・・・たとえば製品でトラブルが生じて、全部回収したとかいう会社もあったと思うのですが、そういうところで消費者のことを考えて行動した、ていうような。わかりやすい部分と、そうではなくてこっちをやると、あっちが困ると結論が分かりにくいもの、そういうのが困ると思うんです。

Kさん
Hさんがおっしゃったようなことって本当によくあると思うんです。たとえば夕張の町を考えたら、町自体が破綻したわけで、転換していくのは非常に難しいことだろうなと思っています。

MC
昨年、オーストラリアの投資家と議論する機会があったんですけど、その時聞いた話として、“今雇用がある”といってもずっと続くのかも投資家は考えなくちゃけない、と。つまりその企業のビジネスがサステナブルなのか・・・それがこのサステナブル投資などの議論の始まりだったのではないかなと。レギュレーションや環境の変化によってビジネスは変わるわけですよね。そのベットボトルを購入している先進国のトレンドが変わって、売れなくなるかもしれない。投資家は早めに先をみて企業に言っていかないと長く投資をすることが難しいということじゃないかと。

Tさん
それはその通りだと思います。これがインパクト投資、多くの人にとってプラスになることを生んでいくものなのではないかと。協会のチャリティーと比べると、我々は上場株に投資をしているわけで、そのインパクトを大きくしていかなければならないのですが、逆に忘れてはいけないのは、どういったポジティブを本当に生み出したいのか、そこにくっついてくるネガティブをミニマイズする・・・そう考えると企業サイズが大きくなってくると難しいのかなと思ったりします。

MC
そうですね、ESG全体のいろいろな要素のなかで、“セット”になっている、ポジティブとネガティブで、裏表になっているようなインパクトがあるかもしれない。ところで雇用もそうですし、前回の人権問題などは、多くの人がどう考えるかに投資先企業の将来は影響を受けるのかなと思うんですが、環境はレギュレーションとか、政策の影響を受けるのかなと思うんですよね・・・。企業の事業において、途中で転換するのが難しいようなことがあって、だからレギュレーションなんかの動きをウオッチしなければならない・・・そう感じることはありますか?

Hさん
すごくあると思います。特に日本の企業とエンゲージメントする時気をつけなくちゃいけないことがあって、日本の企業ってまじめなので、“本当はこれがただしい”ということを自分たちで一生懸命考えて行動していることが多いんですけど、それがグローバルなスタンダードをみると違ったりする・・・・ということがよくあるんです。でも環境とかはいろいろな考え方があるけど、独りよがりではいけなくて、ヨーロッパではこうなっているけど大丈夫かとか、きいてくことが大事だと。

MC
日本の企業でよく、“そうはいってもこれが必要”という人けっこういるんですよね。2度シナリオがいいとか、1.5度が必要とかいう人がいますが、それがいいか悪いはともかくとして自社だけでどうにもならない、影響がレギュレーションとか政策からやってくる、そういうのは環境にいいかどうかだけを真剣に考えると歯車が合わない感じがしますね。

Kさん
ちょっと外れたこと言っていいですか? 企業って変わっていかなきゃいけないと思うんですよ。さっきTさんが大きな会社は変わりにくいんじゃないかというような意味のことをおっしゃったおと思いますが、企業を変えていくために投資家ができることは、やっぱり背中を押してあげることじゃないかと思っているんです。投資家が集まれば、それが大きな声になっていくと思っているんです。昨日JSRという会社が発表をしたんです。ゴムの会社で、タイヤを作るための国策会社なんですけど、タイヤ部門を売ると。そういう祖業である事業を売ってもやっていくんだぞ、と。大きな会社でも変わっていけるんじゃないかなと。

MC
そうですね。たしかに環境関係で、大きな会社で鉄を作っている会社で、ずっと高炉は石炭じゃなきゃダメなのだっていっていた会社も、水素で製鉄するとかいう時代ですから、大きな会社がコアビジネスで変わらなきゃいけないことがあって、そういう時に投資家が向かい合う時もありますよね。で、それとは別にさっきHさんがいっていたのは、企業が一生懸命変わろうとするんだけど、環境に関することはレギュレーションの影響が大きいので、自分で“良い”と思うだけではダメという点についてはどう思いますか?

Kさん
・・・そうですね。企業が独りよがりで考えている、って結構多いかなと。まじめにいいことやろうとして、たとえば太陽光のパネルを、畑を潰して接地している遠路がよくあるのだけど、それがいいことかと言われると、私は少なくともいいとは言えないと思います。
だから目的がどこにあるかを考えながらやっていく必要があるし・・・。

MC
あと2分です。最後に一言ずつ、おっしゃりたいことがあれば。まずTさん、いかがですか?

Tさん
そうですね、私はどんなであって企業も生き残って、ちゃんとやっているということは、社会の何らかの便益を満たしていると思うのです。で、私が社会インパクト投資を上場企業への投資で取り組もうと思った時に考えたことは、“いいところもあるけれど、悪いところもある”ということになると、やはりターゲットを決めていいところのインパクトに力を入れて、悪いところを少しでも落としていくということにフォーカスしていかなければいけないのだなあと思っています。

MC
時間がきてしまいました。Kさん、Hさんへの質問は次回取り上げます

続く

上場株インパクト投資の研究 3章(1)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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本日、6月16日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でのインパクト投資 3章 1回上

2021年5月12日

(このブログは毎週水曜日のお昼にクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
いよいよ第3シリーズです。シリーズ1では、インパクト投資をどう思うか、インパクトの実現と企業価値、アセットオーナーとの対話、企業との対話など全体をざっくりと話してきました。そして第2シリーズでは大きなトピックは2つ。まず長期に実現するインパクトを目指しているなら上場株のほうが向いているよねという話。インパクト投資はもともとプライベートエクイティなどで取り組まれていたと思いますが、将来実現する社会にポジティブなインパクトを企業が目指しているならば、手前で多少費用が掛かろうが、投資が終わるまで利益がでなくても、株価に影響はないだろう、例えば自分の投資期間が短いアセットオーナーでも株価に揺らぎがなければ投資できるよねという話です。それからウイグルやミャンマーのような状況の時投資家はどう考えるべきかについても話しました。さて今回のシリーズ4回では、インパクト投資でわりと取り上げられることが多い気候変動について取り上げてみたいと思います。伝統的なのでは井戸を掘るとか、ごみを減らす、資源を有効に使う、有害な素材を置き換えるとか、社会が急激に価値観を変えることがなければ、一定のアウトカムと収益を見込みやすいです。ただこれらのテーマは解決策が技術的に正しいのか、見極めるのが難しく判断に迷うという悩みもよく聞きます。この環境とか気候変動について、これまでの投資で、“いい取り組みをした”とか逆に“悪い状況なので良くしたい”とかそういった投資をしてきたか、その場合どのように考えられたかをお聞きしたいと思います。ではKさん。

Kさん
環境で最初に思ったのは、20年ぐらい前なのですけど、オランダのシェルに訪問したことがあって。それは北海で事故が起きた時で、環境団体に突き上げられていました。日本だと事故があったら経済的な影響とかが言われるのですが、オランダだと環境団体や社会から問われシェルもその対応に非常に悩んでいました。その時IRの方と夕食を挟んで話し込んだのですが非常に日本と違うと思いました。今は日本もそうなりつつあるのですが、社会へのインパクト、自然へのインパクトを考えていかなければならない社会になりつつあるのだと、20年ぐらい前に非常に思いました。

MC
そうですね、オランダの投資家がよくおっしゃっていたのは、オランダの投資家が環境への意識が高いのは、消費者の意識が高いから、投資先の企業が必ず影響を受けるから、意識をもっていないといけないということを聞きますよね。

Kさん
そうですね。今やっぱり、お客さんに好かれるためにどうするのかと考えた場合、自然破壊をしているような会社だと受け入れられないということです。日本でもかつてはチッソとか、水俣とかあったわけですが、それからずっと環境に対してはいい国だととらえられてきましたが、もう今はそうではないのじゃないかということを振り返らないといけないと思っています。

MC
ありがとうございます。次はHさん

Hさん
上場株での投資ということで話しているので、それを踏まえて話すと、我々が行っている投資は“値段”が付いているということだと思うのです。それは“みんなの認識と同じであってはダメ”ということです。ただ環境に対しいいことをしている企業だからいいということにはならないし、彼らがやっていることが過少に評価されているとか、現状の悪い状況が過剰に織り込まれていて、それが再評価される可能性があるとか、そういったものがないと投資にはならないということだと思うのです。
そういう中で環境についていつも気にしているのは“目標設定が変わると結果がかわる”ということです。CO2を30%削減するというのと、50%削減するというのではかかる投資も変わってくるし、頑張って50%削減するよりも30%にしておいたほうが企業価値としてはポジティブかもしれない。これはキャッシュフローの最大化という観点から見た話です。規制がでてくるとトップランナーを評価しがちですが、必ずしもトップランナーになることの経済価値が高いわけじゃない。規制とか、投資のバランスをよく考えて投資しないといけないといつも思っています。
環境ってどの会社も目標を設定していてわかりやすいのですけど、だから簡単というわけではなく見極めが大事だと思っています。

MC
つまりHさんのおっしゃっていることを理解してみますと、まず環境って、取り組むことで自社の収益にプラスになるということと、リスクに対する対応みたいなものと2つあり、その中で、30%削減、50%削減とか、つまりいいインフラを入れるとか製法を変えてCo2出さないとかだけじゃなく、レギュレーション的な目標があってそれにあわせないといけない。そしてそれが途中で変わってしまうと、ストラテジー的な問題、設備投資の失敗などといったことがでてくる・・・ということですね?

Hさん
そうです。それともうひとつ何か起こったときは悪いことは織り込まれているので、その織り込み具合はどうか・・・そういうことが投資で重要になるということです。たとえば石炭ですが、最近では石炭というアセットの価値はゼロとかマイナスと言われているのですが、それ本当にゼロだと考えていいの?ということを考えていく。つまり方向性が良いかどうかだけでなく、投資ってそれが企業価値にどれだけおりこまれているかということを判断するわけなので。

MC
わかります。レギュレーターが“2030年30%とか2050年ゼロ”とかいうと、それにあわせて計画をたてます。でもその計画が非現実的だったり、大きな投資をし始めてから途中でレギュレーターの目標が変更されてしまったら問題がありますし、石炭のケースもみんなが“価値はゼロだ”と言っていても、そのターゲットが変わればゼロじゃないかもしれない、投資家としてはそういったことを見抜いていかなければならないから、単に“気候変動に対応しているからいいよね”というシンプルな判断じゃないということですね?

Hさん
そうですね。

MC
あとトップランナーになることの経済価値についてですが、これは気候変動対応を積極的に事業としてやっている場合だと思いますが、たとえば電池や水素を作りますとか言っていても本当に作れるのかみたいな、そういうようなこともありますか?

Hさん
そうですね、例えばどの方式がデファクトになるかわからない時とか、自分たちがトップランナーだよといってみたとしても、その製品などが適応しなくなるかもしれないし、それで頑張りすぎているとまずいということです。環境を良くするためのツールを提供する会社と、環境をよくするために頑張る会社があって、そのどちらかによっても変わるのですが、ゴールが変わると頑張りすぎていないほうがいい場合もあります。そのように“ゴールが動く”こともあると意識しながら投資する必要があります。

MC
そうすると、Hさん自身もそのレギュレーションやゴールに対し、投資先企業の対応がそれで良いかどうか分析しなければならないし、それに対しアセットオーナーが同じような理解でないと“これいいことやってるじゃないか”と言って困ったりして・・・

Hさん
それすごくあります・・・。たとえばここ数か月の相場では、環境に良くない会社の株ってすごく上がっていると思うのですよ。短期的には。なんでかというと、環境に良くないものを作っていたりすると、新たな設備投資が発生せず、しかし経済が回復してくると、新たな供給がなく、需要があがるので、価格が上がり利益がでるため株価が上がっちゃったりする。そういうことをいつも考えないといけないのです。

MC
なるほど、よくわかります。ではTさん、お二人が言ったことについてご意見ありますか?

Tさん
いやもう、本当に、よくわかります。我々はESG投資とインパクト投資って隣の畑でオーバーラップもしているので、いつの間にか一緒くたにして話してしまう事もある思うのですが、一緒に話すといけない部分もあり。たとえば前回人権については、A民族とB民族で違う価値観を持っていたりして難しい・・・という話をしたと思います。それに対し、比較的クライメートとか環境問題は人類共通だよねって思ってはいたんですが、それでも良く考えれば、そうではないケース、良し悪しが簡単にはいえないケースがあるなと感じました。

続く

上場株インパクト投資の研究 2章(6)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

本日、6月9日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 3回下

2021年5月5 日

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Tさん
インパクト投資的には各論で話すのが正解なのかなと思います。ひとつは、さっき言ったようにユニクロがウイグル調達をやめてその分を価格に乗っけますと言っても消費者がそれを受け入れてくれるなら企業価値が変わらない可能性もあり、それを見極めて投資家は提言していくことが必要なのではないかなあと思いました。

MC
たぶんアセットマネージャーはそういうことが判断できるよう、多くの情報がないといけないですよね。たとえば日本の消費者は全然気にしないかもしれないけど、ある地域は非常に反応すると。グローバルなアパレル産業であればどの地域の売り上げが大きくて、どこの地域の反応が自社の事業にとってインパクトがあるかは経営者も考えなければならないでしょうし、投資家も一緒に議論していくなら同じように理解しながら進むしかない

Kさん
程度問題というのはもちろんあると思うし、それによって食べていくことができない人がでてしまったら、経済的に、社会的に問題だと思うのでそこをどう捉えていくか、非常に悩んでいるところだと思います。悩みながら考えていくというのが一番重要で、企業として悩んでこういう結論になったということであれば、それに納得ができればそれでいいし、あるいは投資を止めればいいと、私はそう思っています。

MC
日本では導入されていないけれど、ユニクロやH&Mも対応していると思いますが、いくつかの国でモダンスレーバリーアクトなどが導入されていて、企業としても人権についてはどう対応するか宣言しモニターをする体制になっていると思います。(その法律の影響がある)地域に多く投資しているアセットマネージャーと、そうじゃないアセットマネージャーの間には、もしかしたら少し将来に対する見積もりの仕方に差が出るかもしれないでしょうか?

Tさん
そうお思います。でも今の話し、面白くて、たぶん同じユニクロコットンについても日本とヨーロッパの消費者で全然違う反応が出ると思うのです。ひょっとしたらヨーロッパの消費者は日本ほど寛容ではないかもしれない。H&Mにとって、当然ユニクロもですが中国も大きな市場だと思うのですが、たぶん既存のお客さん、社会におけるブランドなどへの影響を考えているのでしょうね。

Kさん
やっぱり企業って、従業員がいて社会があって、そのバックグラウンドにある程度しばられていくでしょうし、それでいいのかなと思っています。

Hさん
ぼくからすると、企業がその考え方をしっかり説明しているということが大事で、そこの部分で会社のカルチャーとかがわかってくるじゃないですか。彼らがもともともっている長期のビジョンがあって、その中でいろいろなことが起こってくる、それで一つ一つ会社と話し合いながら“あ、こういう時この会社はこう考える会社なのだ”ってわかってくると思うんですよ。ぼくは一個一個の事象でどう判断するかまでは重視していなくて、その時どう考えて行ったかの積み重ねをトラックしていくことかなと思っています。

MC
そうですね。つまり企業とアセットマネージャーで向かい合った時、企業がどう思っているかを聞いて、考えが欠如していると思ったら、きちんと考えるように促していこうと思いますか?

Hさん
というか、そういう方針がない会社にはもともと投資しないわけです。普通はそういう考え方を確認してから投資するわけで・・・そういう考え方を持たなきゃいけないのですよとか、資本コスト考えなくちゃいけないのですよとか説明しなくていい会社に投資したいなと

MC
(笑)そうですね。前シリーズからつねにHさんは“いい会社”に投資するという方針でしたね。Kさんとかはどうですか。Kさんの投資方針はどちらかというと、できていない企業に教育する側だったかなと

Kさん
やっぱり企業も、国だって昔は奴隷貿易だってやっていたんですから、ずっと変わってきたと思うんです。まだまだ変わって行かなきゃいけないことはあると思いますし、それが変わっていけるように私たちは支援していけたらと思っています。

Tさん
これ難しいと思うのですよ。ともすればESG投資とまざってしまうし、ユニバーサルオーナーのパッシブの人とアクティブの人でいうこともちがうでしょうし。それぞれの立場によってわけて話していくステージに社会全体がきているように思います。これに比べGとかクライメートなどのほうがわかりやすいのかも。

MC
そうですね。GとEはだいぶ、日本と世界の違いも狭まってきたし、マーケット参加者の中でコンセンサスも得やすくなってきたと思いますが、Sはいまでも難しいかも。

Tさん
先行研究でみても、Sへのエンゲージメントは、ダウンサイドリスクを抑えるというか、なかなか実効性のある数値が見えにくいというのがあるようで、それって社会が違ったり、立場による違いがあるからだと思うのですが

Hさん
そもそも、コレクティブエンゲージメントで充分な議決権を持つ株主がまとまって社会とか環境をやったケースって過去ないと思うのですよ。

MC
環境はあるのじゃないのですかね?

Hさん
環境でもまとまって提案できて実際に達成されたことってほとんどないと思うのですけど、こういうことができたのは英国などでもガバナンスの極めて限られたイシューだけだと思うのです。社会なんかだと全員の意識を一致させるのが難しいからだと思うのです。

MC
インパクト投資のテーマでもSに関わる事はまだ多くはないかもしれませんね。

Kさん
でもコンゴの問題とかやりやすかったかも。他には資源とか。

MC
いつもきてくださっている方からご質問がきました。ミャンマーについてはどう思いますか?もし投資先が関係していてご意見があれば。進出しているとか従業員の安全とか。

Tさん
ちょっと思い当たらないのですが、同じコンテキストでいうと現状の軍政権下のミャンマーで事業をやっていて・・・ということですよね。

MC
そうですね、海外であった議論はまず収益が軍政権に行くことをどう考えるか、または現地子会社で操業を続ける場合従業員の安全はとか。一方ミャンマーの人々の生活に影響がないように、その部分は継続して操業するという会社もありましたね。

Tさん
今エスカレートしている状況に対してぼくらが何をできるかということがありますが、こうなる可能性がある国・地域に投資をしてオペレーションをするのかは初期的にも考えておかなければならないんですよね。

MC
そうですね、リスクをどう考えるかという問題があります。多くのインパクト投資と言われているものは途上国とか、新興国で行われている事業も多いと思うので、何かあった時にビビッドに反応できるアンテナが必要かも。

Tさん
そうですね・・・これはインパクト投資ではなく、純投資としては、リスクを考える上で、初期的にミャンマーはコンシャスになると思いますけれど・・・マネージャーとしてのリスク管理上考えておくべきだと思ったと思います。でもわからないですね。すごく自分たちが狙っている社会的課題を解決する企業がいて、そこがミャンマーから物をたくさん仕入れていて、その利益が軍部を潤わしていると、こうなってきた時どうするのかという議論ですよね。それはどうなのだろうなあ・・・。マネージャーとして声を上げるべきかということか。

Kさん
ミャンマーについては、ミャンマーに対するリスクをどうとるのかということは(企業の経営者に)聞いてみるべきだと思っています。経営者は何らかの判断をしていると思うので、それが納得できるならそれでいいと思います。でも逃げるのはよくないかなと。

Hさん
ミャンマーを含めて、今なら“投資しない”とか言えるかもしれないけど、昔からずっと投資している会社さんがあった時、その人たちがどう考え、今どうオペレーションしているかを常にコミュニケーションしながら理解しあって、その会社のカルチャーを含めて理解していくということだと思うのですよね。一個一個どう対応すべきかという答えがあんまりなくて、“この会社だからこういうふうに対応しているのだな”というのを一つ一つ納得していくというのが僕のスタンスです。

Tさん
今日は言いたいことが大体言えたと思います。ただ投資をするうえでフィロソフィーとかプリンシパルとか必要だと思うけど、最後は受託者責任が果たせるかだと思うので、その投資判断に自分のお金がかけられるかどうかが大事だと思うのです。よくグリーンウオッシュとかレインボーウオッシュとかいわれますけど、マネージャーが自分のお金を入れているかどうかが試金石な気がして。

MC
ありがとうございました。これでシリーズ2を終わりにします。来週からはシリーズ3です。またクラブハウスでお会いしましょう。

続く