ACAコラム

上場株インパクト投資の研究 2章(5)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、6月9日も、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第3回上

2021年5月5日

(このブログは毎週水曜日のクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
今日は、シリーズ2章の最終回として、第2回の続き、人権について話してみたいと思います。前回は一人足りなかったので、“閑話休題”的にこれまでの振り返りをしました。ですから二週間たちましたが、あれからどうですか、少し時間がたって、ウイグルのユニクロに投資していたら投資家としてどう考えたか・・・ご意見をお聞きできますか?

Tさん
難しい問題ですよね。2週間考えていたのですけど、極めてこの会のタイトルである“上場株でのインパクト投資”に対するチャレンジというか、未公開ステージやチャリティーなど、イシュードリブンで投資されている小さいところなどだとこういう問題は起きないと思うのですよ。一方社会的インパクトの大きさなどで“上場株で投資すべき”と私は思ってきたので、これは上場株ならではの課題だと感じます。インパクト投資を定義する時、アウトカムとしっかり結びつけて、リターンに結び付けて、KPIを管理していくという手法が前提となるなかで、環境なんかですとやりやすいけど人権問題はそもそもKPIたてづらい。
そこにインパクト投資の観点でコメントしていいのか。ただ最終的には自分たちが投資をするにあたり目指していたありたい未来、成立してほしいアウトカムに対し妨げるものではないのかどうか。KPIを例えばSASBみたいなもので見ていた時、それを妨げるかどうかという視点で投資をしていけば良いのじゃないかと思っていて、もともとのアウトカムを達成させるエンゲージメントを続け、新たに出てきた問題がそれを損ねるのかどうかにフォーカスしていくのがインパクト投資としては正しいのではないかと、いまいまは思っています。

MC
ありがとうございます。続けて聞いていきましょう。Kさんはいかがですか?

Kさん
私は実はTさんがおっしゃったことに異論があって、はじめに設定したものに固執していていいのだろうかと思ったのです。世の中って変わっていってコロナ・ウイルスが発生したり隕石が飛んできたり、いろいろ変わっていく中で、自分の立場も変わっていくものではないかと感じています。最初に設定したものも大事だと思うし、お客様にも約束もしているわけなので、新たな課題が出てきた時どうしていくか、ファンドマネージャーとして考えていかざるを得ないと思っています。そうした中で自分の立ち位置はどうなのか、人権問題についてこういう立ち位置をとりますよということについて、考え直す必要があるのだと思います。そしてクライアントとはその都度議論をしていく必要があると思っています。そうでないと、何か起きた時にクライアントからの突き上げあるいは環境団体からの突き上げもあるかもしれない。そういう時“私たちはこうしているのだ”ということをしっかり言えないとまずいかなと思います。

MC
ありがとうございます。ではHさんお願いします。

Hさん
うーん、ファーストリテーリングについていうなら、人権ということについて彼らはもうすでにしっかりとした理念があり、目標設定を行ない、ひとつひとつの成果を確認しながら実行していると思っています。ウイグルだけじゃなく、人権の問題、女性の権利などいろいろなことをいろいろな地域で違ったレベルでおきていて、それらひとつひとつに対ししっかりと取り組みをしていると思います。またそれらを投資家だけでなく消費者にもかわるように、店頭にも置いてある“服の力”という書物で説明しています。彼らが考えるインパクトとはとても長期的だと思います。その途上でウイグルのようなことが出てきた時、しっかり考えた上でディスクロし議論を深めていくのだと思います。

MC
ありがとうございます。三人とも二週間前おっしゃったことより、とてもよくわかりました。

Tさん
(苦笑)あのKさんがおっしゃったように、そもそもぼくたちが投資先に期待していた社会インパクトを強めるとともに、ネガティブなことが出てきているのであれば、そのネガティブな面を少しでも緩和するというのは最低限やるべきことだと思うのですよね。ただいわゆるESG投資という一つの流れが出てきていて、その中、上場株でインパクトをやっていこうという時に、このクラブハウスでのシリーズを始めてからすこしづつ確信が強まっているのですけど、ESG投資ってみんなが共通してもてる“ありたい社会”とかありたい未来がある程度明確に入っていると感じていて、でも僕たちがマンデートをもっていて、インパクト投資を上場株でやっていこうとする時は、“もう少しナローダウンした個別のありたい未来”があるように思うのです。それを損ねない限りは、目くじらをたてずに実質的に判断すれば良いのじゃないかと・・・たとえば今回のウイグルではH&Mは明確にウイグル批判をしているみたいなのですよね。それに対しユニクロさんは自分たちのサプライチェーンマネジメント上問題は感じていないと言っていて、ぼくもユニクロの姿勢は正しいのではないかと思っているところがあります。

MC
あの・・・この2つの会社をどういう人が持っているかにもよると思うのですけど、もしこれらの会社に社会におけるインパクトなどにフォーカスして投資している人がいたとして、前回まで話してきたことから考えると、最近のインパクト投資と言われているものがアセットオーナーとアセットマネージャーの間の理解とかを高めている・・・という話をしてきたじゃないですか?だからアセットオーナーが誰かと言うのは大きいのじゃないかと思います。人権の問題はメーケット全体で答えも一つにならない時があると思います。世の中で利用可能な情報も均質化してませし、地域によっては同じ事象が即座に問題視されたり、他の地域からは他の見え方がなされていたりということもあると思います。
そうするとアセットマネージャーはそういうコミュニケーションをおのずとしなければならないと言えるのではないでしょうか。

Tさん
そうだと思います

Hさん
ただアセットオーナーも皆それぞれ違います。従って、その場その場でそれぞれに合わせていると、自分たちの運用の理念が壊れてしまう。つまり軸がなくなってしまう。したがって、必ずしも合わせられないと思います。大きな運用会社の場合、そもそも運用哲学自体が大まかなものになっているのである程度あわせるということをしていけると思いますが、ブティックになればなるほど自分たちの運用哲学が大事です。また特に、こういう特殊な状況にスペシフィックに対応しなければならない場合は、アセットオーナーの意見はみんな違い、先ほどのESGのところで最大公約数という話がでましたが、最大公約数に合わせることはできるかもしれませんが、運用の肝の部分になると難しい部分があります。

Tさん
そうですよね。ゆえに最初の“ありたい未来”合わせがすごく大切なのかなと思います。

MCさん
あわせるというか、コミュニケーションが必要なのでは。この問題って人権問題だけじゃなくて、たとえばいざ株主提案などが増え、アセットマネージャー、アセットオーナーで意見を合わせなければならない場面って増えていると思うのですね。

Tさん
結構考えたんですよ、二週間。かみさんと娘と、ご近所の同じマンションの奥さんに聞いたんですよ。ウイグルの綿をユニクロが使っていたら買うのをやめますか?って。そしたら“別に構わない。買います”というのです。“でもひどいことをしているかもしれないのですよ。ところでユニクロが人権を優先してウイグルの綿を使うのをやめて値段があがったらどうします?”って聞いたら“それは良い事だし、少しの値段上昇ならそれでも買います”って。

続く

上場株インパクト投資の研究 2章(幕間)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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次回、5月26日は時間を30分遅らせて、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 幕間

2021年4月28 日 12:00~ 12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
今日は、いつものメンバーが一人いないので、前回の続きは次回にして、ちょっと振り返りをしてみたいと思います。前シリーズでは1回目で「インパクト投資をどう思うか」という点をご自身の投資の考え方とリンクさせて語っていただきました。Tさんは社会の問題とその解決を投資テーマとして取り上げてきた、ということでした。今日いないHさんは「一社一社のテーマを拾っていくと、その中で社会をよくするとかインパクトとなることがある」ということでした。ですから、投資をする前にそのテーマを選んでしまうわけではないということでしたね。Kさんは「ネガティブなインパクトを避けることに取り組んできた」とおっしゃったと思います。では、ここまで過去6回話してきて、振り返ってみてどうでしょう。新たに思ったことなどありますか?

Tさん
いや、ここで皆さんと話させていただいて、投資に向き合う姿勢を見つめ直すようなプロセスになったなあと思って、ありがたく思います。そういう意味では変わらないのですが、少しクリアになってきたのは、長期のスパンの個別の企業にベッドしていく投資というのは、社会の強い流れのようなものにもベッドしていて、その流れの中で変化を加速させていくと考えていたのですが、改めて思ったのは、様々な「あったらいい未来」、そこでリターンが得られる投資がある中で、「ありたい未来」を共有できる人と取り組むという点が重要なのかなと思いました。ここでの話を最近はアセットオーナーさんと話すときもちょっと引用したりして。そうすると「自分が思っている社会の課題意識は共有できるが、アセットオーナーとしてトッププライオリティで取り組むべきかどうか考えている」というようなお話を聞けたりして。

MC
そうですね。以前はそういうことは多くなかったのじゃないかと思いますが、最近のながれでは社会の課題も、目指すべきところをアセットオーナーと話すようになったというのはよく聞きますよね。特にこのインパクト投資では。ではKさん

Kさん
そうですね。やっぱり共通のゴールを目指せる人と走るというのが、オーナーもマネージャーも安心してウイン・ウインでできると思うんです。だからお互い考えていることをクリアにして、共通のゴールを目指していくのが健全な姿だと思います。今までそういう対話というのは、あまりなかったと思うのです。リターンが選べればいいじゃん、過去3年間で一番リターンが多かったところに預ける・・・みたいな。でも過去が未来につながるわけじゃないので、将来をこう考えていますよというのを一緒に考えられるほうが。
それと投資先に対して、ESGとインパクトってだいぶ違うなと思いました。ESGはいいところに投資しようみたいな感じですが、インパクトは応援できるところに投資しますっていうことなんだなと思うようになりました。

MC
ありがとうございます。そうなんですよね。最近の流れで、重要なのはアセットオーナーとアセットマネージャーで共通の未来をみていくというところかなと。
ただその後、第一シリーズの最終回で、ではアセットマネージャーが企業に対し実際変化を起こさせていくかアセットオーナーに説明する際、「俺が企業をこうさせた」という、「企業にインパクトを起こさせているのは自分だ」という「俺させ」詐欺が出現するのを心配されていたTさんに、ご自身が企業に起こさせている変化との違いについて、お伺いできますでしょうか。

Tさん
いやその・・・言葉尻をとらえてきますねー。いや過去にやってきたエンゲージメントでも、増配をして株価があがった会社があって、その企業の人と話してたんですが、相手の方が“あの増配は俺がさせたんだ”、とおっしゃっている投資家の方がいて・・・なんだかなあと思っていると。見て明らかなテーマは、共同エンゲージメントではないけれど、いろいろな人が言うことによって会社も納得して変化が起きる・・・でもこれって誰が働きかけたかとか、特定するのは難しいと思うのです。
やっぱりその因果関係は、規模が小さくてインパクトが特定されていて、“株価”というのがつかない投資の方が分かりやすい・・・逆に言えばエンゲージメントの企業が実現するインパクトとの因果関係は見えにくいなあと。これから「俺させ」インパクトって増えそうで・・・特にクライメート系は、汎用性が高いのでインパクトにどう本当に関わっていけるのか。

MCさん
ありがとうございます。もう一つ。シリーズ1の3回目でアセットオーナーにどう説明しているか、という議論の時Kさんが、アセットオーナーの関与について面白いコメントをされていました。今の話でもあるように“俺させ”詐欺を見抜くためにはある程度アセットオーナーも関与してもらうしかないように思うんですけど、Kさんあの時“アセットオーナーはあまり関与しなくてもいいと思う、アセットマネージャーを信じてくれれば”というようなコメントをされていましたね

Kさん
いや、あれは、アセットオーナーがいろいろ考えているのであれば、直接自分でエンゲージメントすればいいという意味で・・でも日本の場合なかなかできないと思います。公的年金とか・・・その場合はアセットマネージャーを信じて預ければいいと思うのです。あんまり箸の上げ下げまで突っ込んでくるのはおかしいんじゃないかなと思ったのです。たしかに“俺させ”詐欺は問題かもしれないけれど、悩ましいですね。“増配したと言ってもあなただけが言ったわけじゃないでしょ”っていうのは、みな分かってることですよね。でも“私も言ったんです”って言わないと・・・その人の時間はなんだったの?ということになるし、アセットマネージャーが言うインセンティブが無くなったら困るし・・・。言ってもいいんじゃないかなと。

Tさん
これってアセット・オーナーとアセットマネージャーが共に成熟していかなければならないところなのでしょうけれど、アセットマネージャーの何を評価するのか・・・インパクト投資でインパクトを起こすような企業をみつける目利き力なのか、インパクトを実現するエンゲージメント力なのか。

Kさん
でも自分がアセットオーナーだったら、何をアセットマネージャーに聞けばいいんだろうか。たとえばたまたま配当上がったかもしれないけど、“この会社がなぜ配当が上がる必要があると思いましたか”とか聞いて、答えられないようなアセットマネージャーだったら、やっぱりそれは「俺させ詐欺」かな。その会社が今増配することが将来価値にちゃんと貢献するとか言えればいいのかも。

MC
それは正しい気がします。ただインパクト投資の場合、インパクトのシナリオ、達成したい価値を持っているのがアセットオーナーであるかどうかが重要で、その場合何人のアセットマネージャーが企業に対し同じエンゲージメントしてくれてもいいのかもしれない。アセットマネージャー側としては、自分により多く頼ってくれた方が、インパクトの実現がしやすいと説明しないといけないのかなと。で、アセットオーナーの問題は、みんなが「俺させ詐欺」で誰も結局ちゃんとエンゲージメントしていなくて、インパクトが起きない時なのかな。

Tさん
でもみんなが言っても結果がでなかったらどっちでもいいのかも。

Kさん
一つ言いたいのは、一人の力よりみんなの力だと思うんです。「俺させ詐欺」の人もみんなで・・・。

MC
ではもうひとつ。第2シリーズが始まってから、“上場株投資の方がインパクト投資という意味ではやりやすい”という意見が出たと思います。Hさんから、将来のインパクトがしっかり示せれていれば、その実現までに費用がかかって利益がでなくても株価には影響がないはずだ、だからインパクト投資のような期間のかかることに対して、上場株のほうが投資しやすい理由だということでした。そうしたらKさんから“理論的にはそうだけど、現在の企業の開示からはそれほどうまくいくとは思えず、市場の価格発見機能はそれほどワークしないだろう、という話がありました。とはいってもそのような企業の変化はパフォーマンスの源泉だ、という意見がありました。Kさん、今はどう思いますか?

Kさん
うん・・上場企業でも非上場でも企業価値を図ることはできると思いますが、開示だけを見ているわけではないというのもありますし・・・。アクティブマネージャーとしては・・・開示だけで判断するわけではないというか。

MC
お気持ちはわからないわけではないのですが、一応市場と開示の関係としましては、株価が将来の企業価値を反映するよう開示しろと言わないといけないのでは

Tさん
ぼくはマーケット教なので・・・ある程度時間がかかれば企業価値は発見されていくんじゃないでしょうか。だからぼくは上場株市場って尊敬しているんですけど。ただコンピュテンシーモデルじゃないですけど、今まで何にもしてなかった企業がいきなり“開示”しても市場はそれを信じないと思うんですよ。Kさんが仰っているのはそういう意味では。
ただ一方では前倒しで節操なく価格に折り込まれることもあると思うし・・・。ここのところいろいろなセミナーでていて、セルサイドアナリストの方がESGレーティングを一生懸命話してくれるんですが、ちょっと前まで四半期のEPSについて話していたのに・・・。MSCIの指数に入れるのはこの企業です、なんて強調して。これが上場株のまずいところかなと。本質な価値が受給要因で動いちゃう。

MC
Kさんの話に言いそびれたんですが、前回までの議論では、上場株の良さは、ずっと株価が将来の価値を反映していれば、アセットオーナーの投資期間とあっていなくても投資できる、インパクト実現前でも株価が動いていなければアセットオーナーはイグジットできるということだったかと思いますがどうでしょう。変な話アセットオーナー一人一人の投資期間がすごく短くても。

Kさん
それはそうかもしれない。だけれど、今の株価が将来の価値を反映している“だけ”ではつまらない。それを変える力があるのがインパクト投資の投資家で、その期待があるからそのマネージャーをえらぶんじゃないでしょうか。

MC
ありがとうございます。では閑話休題の“振り返り”はこれくらいで。次回はまた、人権のところに戻りましょう。

続く

上場株インパクト投資の研究 2章(4)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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次回、5月12日はメンバー都合により時間を30分送らせて、お昼の 12時30分より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第二回下

2021年4月21日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

Hさん
ぼくはちょっと違います。(それまでのやりとりとは<ブログ11のURL>参照)企業の経営者は個人的な考えがあったとしても、企業のCEOとしての発言は企業に対してのものであると考えています。ウイグルの話とか、ジョージアの話とか何が正しいかが情報によって変わってしまう場合もあると思うので、リスクをとって話してしまっていいのかどうか・・・話さなくて済むのであれば話さなくて良いのじゃないかと思います。でもそこで何か対応しなければ、たとえばジョージアで工場の黒人の方が多く働いていて影響するとか、そういうダメージをどうやってコントロールするかということがあると思うので、あくまで自社の企業価値に対するインパクトを考えて発言するものだと思っています。その中でを自分たちで状況分析をすることが重要だと思います。そうすれば投資家は安心するのじゃないかと。

MC
投資家としては、投資先企業がこういうことに直面した時どう振る舞うべきだと思います?

Hさん
経営者にこちらのほうからプッシュすべきだと? たとえばファーストリテーリングについて柳井さんに何かいうべきだと?

MC
あるいは状況によると思いますが、たとえば、発言しなかったことによって業績へのインパクトなり将来への影響について考えさせるとか。

Hさん
発言してもしなくても、なんらかのインパクトがあると思いますけど。柳井さんのケースはそこに一線を張って喋らないようとしているのは経営者としての見識なんじゃないでしょうか。ファーストリテーリング一社で出来ることの限界も踏まえる必要があると思います。自分たちの中では差別的なことはしないとかできると思いますが、国の体制について何かできるかというとそうではないと思いますけど。

MC
確かにいろいろと難しい地域もあるかもしれませんが・・・。

Hさん
中国内では我々が持っているイメージと全く異なるイメージで捉えているかもしれない。ファーストリテーリングなどは事業をしているので我々がニュースで得ている情報処理もより現地の情報を持っているかもしれないし、それも踏まえて何が正しい情報で今世間の反応がどうなっているのかを判断した上で喋事を判断しなければならない。

MC
・・・でも本当に事業のことだけを考えた場合、中国内外の顧客のことを考えながら発言しなければいけない時もあるのでは。実際批判されたわけですしね。ではKさん

Kさん
投資家側の視点からいくと、ぼくはどちらでもいいかなと思います。投資家はポートフォリオを組んでいて、環境のことばかりやっている会社もあってもいいし、社会のことに取り組んでいる会社があってもいい、そういう会社が倒産していくとか悪い影響を与えることだけを避けてくれればいいかなと。全体的にはある程度リターンが得られ、そういったことにも考慮したポートフォリオが組めればいいかなと思っています。すべての会社が素晴らしい会社である必要はないのかもしれない。あとダノンの件なんかでも、会社がそうすることによってこういうメリットがありますよと、また社会にもメリットがありますよと道筋をしっかり示せなかったからいけないんじゃないかなと思っています。

MC
はい、ありがとうございます。もちろん地域によって消費者の反応はものすごく違うと思うのですが、前回からみなさんがおっしゃってきたように、将来にわたって消費者がどう思っているかを投資家が読み取り、それが株価に反映していくとなると、発言するかどうかはともかくとして、CEOに影響をきちんとウオッチして欲しいと、という投資家から求めるということはないのですか?

Kさん
投資家から求めるというより、投資をする以上開示して欲しいと思います。そして納得すれば投資家は投資するし・・・、ということだと思います。

Tさん
あの、ご質問は2つあって、ソーシャルインパクトのプロフィットをどう考えるんだというのもあると思うのですね。やっぱりESGテーマなるものを考慮しながら投資を行なっていくっていうのは、まさに今課題提起してもらったようなことを考えていくと、自分が投資を通じてこのインパクトを強化するお手伝いをしたい、それによってリターンを底上げするというロジックを持つべきだと思いますので、今の例に照らし合わせると、ウイルグルの事件に直面している企業があたえるソーシャルインパクトってなんだと考えた時、そこに注目して投資していたら、柳井さんの判断はインパクトを強めるのか、弱めるのかという軸で判断するべきですよね・・・

MC
そうです。何か起こった時少なくとも投資家として、経営者がこの問題を自社の事業に対しどう思っているかは聞くべきかと。そして対応をきちんとすれば企業価値もさらに上がるかもしれないし。

Tさん
そうですね・・そうなのです。ウイグルは難しいのですけど・・・。この市場から撤退しましょう、他に何か探しましょうとか理解し、一緒に考えていくのが仕事なのだろうなと思います。

ゲスト
なかなか、悩ましい問題なのでスパッとは割り切れないとおもうのですよ。ウイグルという市場から撤退しましょうといえば、そこで雇用機会を与えている点についてはどう考えるのかとかね。ウイグルの工場の中ではちゃんと人権を守っているという言い分もあるでしょう。だけど外に対して傍観者でいいのかとか。Hさんが言っていたみたいに、個人として発言したのか法人として発言したのかという問題なのだけど、個人として言ったってインパクトはないからそれはさておき、法人として発言する時、取締役会決議をとるのかとか。具体的なプロセスを考えると難しい。ジョージア州のデルタやコカコーラは発言前に取締役会決議をしています。だから人権問題はユニバーサルバリューだと考えて発言した方がいいという考え方もあるけれど、たとえばウォルマートが銃を自社の店では売らないと決断したのだけどそうすると銃賛成者はウォルマートでの買い物を控えるようになり、逆に民主党はたくさん買うとか意見が割れるものと割れないものというテーマがあります。状況によって変わるので原則を言いづらいかもしれないけど、少なくとも問題意識と何かあった時のプロセスを企業側も、投資家側も持っているべきかと。そして最後はフィデューシャル・デューティをどう考えるかという問題になってくると思います。社会的問題とリターンをどのようにバランスさせるかをあらかじめ言わないといけないでしょうし。まあ個別具体的に考えていくしかないと思っていますが。

MC
はい、ありがとうございます。やっぱり私としては、興味深いのは前回までみなさんがお話しされていたことと、整合しているかなんですね。ですので、仮にCEO“個人で”といって発言しても、報道では会社と切り離せませんから株価に影響したりするでしょう。そうするとみなさんも顧客との説明責任があるでしょうから、何らかのことをする必要があると思うのですね。また人権についてですが、上場企業は自社のポリシーを発表するように促されています。こういう事態の時のためだと思うのですが、企業側も日常的に言っていたことと何か起きた時に違うことをしていないか、違うことをしていれば、短期的な問題は気にしないとはいえ、なんらかのネガティブなインパクトがあるでしょう・・・

Kさん
我々がいうインパクトって、もうちょっと具体的なもので、今日のってソーシャルインパクトみたいなものが多いのですが、その部分って思想とか考え方みたいな影響すると思うので、ぼくらは考え方みたいなものには投資してないのですよ。

MC
いや、顧客の反応だと思うのですよね。その企業のフィロソフィーとかじゃなくて、あくまでも顧客の反応、収益の問題が問われているインパクトだと思うのですよね。

Kさん
そうなのですけど。そこのところについてウイグルのことが良い悪いとか、そういうことについては投資してないです。

MC
もちろんそうでしょう。

ゲスト
他にも社会に対するインパクトとしては、従業員のやる気とか、働きがい、プライドに繋がるケースもあります。

MC
それも同じで、思想をいいと思うか悪いとおもうかではなく、事業に影響があるかどうかなんですよね。インパクト投資、基本的に同じだと思います。思想ではなく。残念ながら時間です。一週間考えて来週もまたここからスタートしましょう!

続く

上場株インパクト投資の研究 2章(3)

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次回、5月5日は時間を変えて夜8時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第二回上

2021年4月21日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
今日はゲストがいます。人呼んで、“プライベート・エクイティからの刺客”です。
前回、まあそうはいっても確実に短期では株価は揺れて、企業が情報発信がうまくできなくて株価が割安だったりして、その間にオーナーの投資機関がくるかもしれない。つまり答えはないよねというような話をしていました。Hさん前回最後にコメントをされている間に時間が来たと思いますが、続きのコメントとかありますか?

Hさん
はい、その前に前回最後にそういう話をした背景として、上場株と、プライベートエクイティの違いをしていたのでそこを加えて話したいと思います。
上場株の取引は、プロ野球の選手のトレードみたいなものだと思うのです。良い“買い物”だったかどうかはその後数年間の選手の活躍で決まるわけで、既に年俸とか前の球団のものがわかっているので、べらぼうな数字はつきません。非上場の投資はドラフトのようなもので、まだプロ野球で活躍していないわけですから、活躍できるかどうかが価値判断となり、活躍できればいいけれどできなかったら投資価値がゼロになってしまうということだと思います。これをインパクト投資に置き換えると、その企業が既に上場していて社会的に認められている場合であれば、インパクトを起こすと考える投資の判断が正しければ必ずプラスになると思います。逆に既に活動しているので、そこで起きるインパクトが投資家の期待を上回る必要があるということかなと思います。そして前回最後に話題になった長期にはポジティブだけど短期にはぶれてネガティブになるかもということについては、プロ野球選手で例えればひじを壊しているピッチャーみたいなもので、治療で休めば一年間棒に振るかもしれないけれど、そのまま投げていれば年々成績は落ちていくかもしれない。そういう場合今年15勝していて、手術をして、リハビリとしたらまた同じように投げられるだろう、手術をするかどうか、どちらが価値が高いですかということだと思うのです。正しいインパクトがあるとわかっているとき、それをしないのは手術をしないで投げさせていることと同じです。
野球選手の場合は選手寿命がありますが、企業価値の場合はゴーイングコンサーンベースで考えれば、永続的に存在するということで考えると、通常は将来につながる判断がマイナスに寄与することはない、とぼくは思っています。

MC
ありがとうございます。つまりまあ、前回最後のほうで話していましたけれど、将来の企業価値をみて株価が適正なところで動いていれば、アセットオーナーの投資期間が短かったとしても、そこでイグジットして出ていくわけですから、問題はないでしょうということなのかなと思っています。では今日のトピックに行きましょう。

ゲスト
こんにちは。私はキャリアが証券アナリストからはじまり、投資銀行、バイアウトファンド、そのあとベンチャーキャピタルをやって現在にいたります。インパクト投資を考えると奥深いなあと思います。

MC
ありがとうございます。では今日、この3名のアクティブマネージャーのみなさんに質問をしてもらいます。インパクト投資で投資している最中に・・・あなたならどうする?

ゲスト
今日の話をもらってから色々考えていたんですけど、最近雑誌をみて思いつきました。
ポジティブインパクトを社会と企業価値に与えるということでぼやっと理解しているのですが、それでもそれでもなかなか悩ましいことが起きています。ひとつはウイグル問題。ファーストリテイリング、良品計画、H&Mの問題があります。もうひとつ先月ジョージア州で投票制限法というのが可決しました。身元が不明確な人は投票できないというものです。ジョージア州は保守党が強いのですが、マーチンルーサーキング牧師の公民権運動の州です。一方でコカ・コーラとかデルタとかが入っており、それらのCEOがこういう法律はよくないという発言をしています。会社のCEOがそういうことを発言していいのかと。柳井さんは逆にウイグルで関与しない、中立を保つのだといって批判されました。あとマルチステークホルダーを貫くのだといったダノンのCEOがアクティビストに解任されたり。というようなことが起きていると思うのですが2つあって、社会に対しいいことを求めて居るとき政治的スタンスを企業が採るのはどう考えるのか、もうひとつはソーシャルインパクトがポジティブインパクトだということとプロフィットって状況によってトレードオフの関係になる、そういう時投資家はどういうスタンスをとるべきなのか?どういう風にスタンスを、どういう風に原則論を打ち耐えて対話していくのか・・・これが質問です

MC
では今の質問、1つ目の企業はどう対応すべきか、2つめ投資家はどう考えるべきか? インパクト投資を考えるものとして、現在のウイグルのようなことに対しCEOが発言をすれば、あるいはウイグルでの生産をやめようというと短期的にはインパクトがあるでしょう。これらをどう考えるかについて意見をお聞きしていきたいと思います。ではTさん

Tさん
うーん。難しいですね。うーん。とても難しいんですけど、投資をやる立場の人間として投資先の企業のCEOに何を言ってもらいたいかというという観点で答えるべきなんだと思いますね・・・・たとえばダノンの社長が個人としてどういう哲学を持っていらっしゃるかは別として、企業の経営者としての発言は企業のサービス・プロダクト、社員に関するものであるべきだと思うんです・・・例えば反対して、不買者がふえてしまうか、賛同して買ってくれる人がふえてくれる・・・とか。そこを総合して判断して欲しい・・答えになってないですね。もう少し考えさせてください

つづく

上場株インパクト投資の研究 2章(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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次回、4月28日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第一回下

2021年4月14日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
同じインパクトを目指している企業の中で、どの企業がきちんとそれを達成できるか見抜かないといけない、企業の側は、しっかり発信できなければならないという話をしてきましたが、Kさんはどう思われますか?

Hさん 
 …難しい話だと思いますが、私はインパクトの方向が投資家と企業で一致している場合には、それに対応する事で短期的な収益が落ち込んでも決して株価はネガティブに反映しないと思っています。株価に関しては、利益が仮に半減しても、将来的に必要な方向に向かうための投資であれば、それによって株価が下がると言うものではないと思います。たとえば再生可能エネルギーに投資を行い石炭火力を止めていきますよという会社は、当然短期的に利益はおちます。しかし元々の株価を考えた時に、石炭火力や原子力なんかがあって、それをどのように投資家がバリュエーションに入れ込んでいるかということで、将来的に損失が出ると考えるのであれば短期的に利益を上げていても評価されないわけです。つまり、短期のPLが全てではないと思います。どれくらいの時期にそれをクローズし、どれくらいのコストがカカっているか、通常企業価値を計算する時それらもろもろを入れて計算しているはずです。したがって、もし再生可能エネルギーに投資しなければ、20年後、30年後にどんな風な姿になっているかの過程をもっているはずです。それをもって企業と対話して、その時これをやることが企業価値の向上につながる、ということが投資家に確認されるとその投資をやる意味があると言うことだと思うのです

MC
すごくオーソドックスな言い方ですが、イギリスのIRの人なんかが言っていたのですが、自社の今後の成長などを予想して、そこから本日の理論株価を出し、その理論株価から本日の株価が当然低くても悪いのですが、高くても悪いのだと。投資家の期待を実態以上にあげたらいけない、だから自分たちの理論株価からずれていたら、その分何か情報が足りないんだということで情報発信をしているという言い方をしていた人があって、たしかに長期の収益モデルから考えた今日の理論株価が投資家と企業の間でずれないようにやっていくのが、正しいような気がしますよね。

Tさん
それ、つねに投資先の経営者の方に同じことを言っています。

MC
で、そのうえでさっきKさんがいっていたことですが、割安だから買うとして、長期投資かとして、その次は“ちゃんと情報発信しなさい”とエンゲージメントをする、とそういうことではないのでしょうか。

Kさん
情報発信に関しては、やはり日本企業は得意ではないと思っているので、最近だと統合レポートの書き方、みたいなものがたくさん出てきているけれど、とにかく発信すると言うことが大事

MC
そう言う企業にあったことありますか?発信が下手くそで、株価が割安な会社に出会ってとか、

Tさん
そうですね、それはたくさんありますね。うーん、ある意味ぼくたち上場株の投資家としては、市場のインテリジェンスというか、価格調整機能を長期的には信じていいんじゃないかなと思います。それは我々が本当に正しい判断をしていると思って、それを企業にも勧め、それが正しければ株価にも反映されると言うことかと思います。で、IR下手な企業もいつかはできるようになるんでしょうけれど、その時間軸を変えてあげたり、あるいは効果を高めるのは投資家のエンゲージメントを通じてできるだろうし。またあるいは企業がすでに良いインパクトを持っている場合については、その良いインパクトを強化できるというところに貢献できるのかなと思います。

MC
Hさんとかどうですか?Hさんが投資先として選ぶ企業は最初から情報発信うまいとか?

Hさん
そんなことないですよ。うまいところも下手なところもあって、下手なところもいっぱいあります、そういうところに投資した場合にはIRの資料をみながら何がわかりづらいか一つ一つ話していくこともあります。アクティブのマネージャーとしては割安のままでいられたら困るので、出来るだけ正しく情報発信し適切な株価になって欲しいわけです。

MC
なるほど。これまで話しているように目指しているインパクトもそれぞれみなさん違うので、それにもよるとは思うのですが、通常の情報発信ですら下手くそな日本企業がいて、長期にインパクトを起こすみたいなことになった時、今日話している“企業価値を説明する”というのはさらに困難なケースもあるのでは?

Hさん
もともとこの手の情報発信ができないところは、通常の発信もできていないですよね。やっているつもりでも。日本企業のIRの特徴は、短期の業績をとても細かく説明している場合が多く、それが長期の企業価値にどのように結びつくかを説明できている会社は、本当に少ないです。逆に超長期の説明をうまくできるようになると、業績の説明もうまくなります。

Tさん
大賛成です。統合報告書をみても、あれも玉石混合ですが、いい統合報告書ってさっきHさんがおっしゃったようなことを軸にしっかり持っているかどうかだと思うのです。でも半面、財務面での不振に対する言い訳めいたものになっている会社も多いと思うのです」

MC
はい、ありがとうございます。元に戻って、今のような話は質問者の最初の疑問に答えているだろうかというのをもう一回ちょっと確認したいんですけど。とは言っても先ほどの疑問を挙げてくださったのは、日頃“これから再生エネルギー頑張ります”とかいって業績や株価が下がっている会社をみかけてるということなのかなと思ったのですが。でも“この会社は言っているだけで、どうせできないだろうってみんなが思って株価が下がっているとか。

質問者さん
まあ外部環境が予想できないとか、マネジメントに対して信用できないとか、いろいろなパターンがあると思います。だけれどやっぱり私とかは10年とか20年とか将来ってやっぱり相当予想できないと思います。事後的にはおっしゃる通りの収束があり得ると思うけれど。事前には予想できない以上、どちらかというと投資家の信念みたいになっていかざるを得なくて、そうするとその信念に同期している資金の出し方が一致している場合しか、本当の超長期のインパクト投資ってできないのかなと思うのですけれど。

司会
う〜ん、信念っていうのは、そう言う風な捉え方をしていいのかなって躊躇するところはあるのですが、資金の出してもそういう社会の変化が必要だと思っていると、で思っているだけじゃなくてそれが実現すれば関与した産業は収益がでるだろうと思っている、そういった期待値(?)ですよね。それと市場に対する予測が一致するかどうか、と言うことだと思うのですが、今おっしゃったような疑問を持っている方いっぱいいらっしゃると思います。再生エネルギーとかインパクトに関することは、社会的な情報や政策だとかそういったものがたくさん絡むので、外的な情報もたくさん解放されないと、アセットオーナーからアセットマネージャーまですべて納得することが難しいということなのじゃないでしょうか。

Hさん
超長期の投資をするときは、企業はその前提をしっかり説明しているところになると思うんですね。何も説明しないけれどここは伸びるはずだから巨額な投資をします。でも、どんなリターンかわかりません」っていうことは普通はあまりない。なのでその内容をお互いが納得できるかだと思うんです。もちろん超長期の話になるとリスクがいっぱいあって、前提条件が変わる可能性について企業がどういう風に考えているか、というところも見ていくことになると思うんです」

Kさん
「長期というところで日本企業が問題だと思うのが、ひとつは中計は3年でいいのか。昨日たまたま行った会社で、上場するとき3年の中計を作れといわれて作ったけど、うちの会社には合わないと言っていました。たしかに3年はゴールとしては短いのかなと。
特にこれから社会に対するインパクトのある事業をしたいと考えている企業にとっては。もうひとつの問題は社長の任期がだいたい2期4年というのが多くて、そうすると長期の投資って彼らにとってなんなのと。自分の花道として業績良くして、去りたいと思ったらそれに取り組むのは難しいだろうなと。

MC
インパクトどころか長期の取り組みを企業がやりにくい?

Kさん
そうですね

Tさん
僕も同感です。今僕たちは超長期、長期、中期とかいろいろなことを言っているけれど、インパクト投資については資金の出し手、ぼくらからみたらアセットオーナーが「私達のお金をこいういう目的で“投資”してください」という願いに対する一貫性が必要だと思うのです。そうすると超長期30年とかいうと、結果が出るまでオーナーでいられる人ってどれぐらいいるんだろ。
目指す時間軸と投資としての時間軸って本来一緒であるべきなのでしょうけれど、もう少しそこを考えていなければいけないような。答えはないのですけれど。

MC
企業の問題というより、投資のあり方の問題?

質問者さん
だからインパクトとしては(途中は)KPIで測っていくのだと思いますが、疑問に思っているのはインパクトのKPIの進捗と業績との山谷が同期しない、それに上場株でやっている場合はプライスの上下があって、それをポートフォリオ管理でやっていくにはけっこうどうやっていけばいいのかわからないなと・・・

Hさん
たぶん上場株の投資っていうのは普通のものと違っていて、変化率がどれだけ大きかったかの管理だと思うのです。だから単にそれが進捗していればいいというものではないと、そもそも思うのです。あっ?!時間ですね。

MC
(気付いてくれて)ありがとうございます。ちょうどいいところで終わるのが面白いと思うので、次回はここからスタートしましょう。上場株のインパクト投資、第2シリーズはこうして上場株のインパクトについて深掘りしていきたいと思います。
次回は上場株投資はなぜインパクト投資にいいのか?ここから再開です。ありがとうございました。

続く

上場株インパクト投資の研究 2章(1)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

次回、4月28日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 2章 第一回上

2021年4月14日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
それでは第2シリーズに突入したいと思います。シリーズ1では、インパクト投資をどう思うか、インパクトの実現と企業価値、アセットオーナーとの対話、企業との対話など全体をざっくりと話してきました。最後の最後に “企業が良くなる時間軸とインパクトが起きる時間のズレ”についてご質問いただき、ここで時間切れになりました。ですので、今シリーズはここから始めたいと思います。そして今回のシリーズでは、具体的な事例をもとに、企業のインパクトの実現と収益の関係について深掘りしていきたいと思います。ではもう一度、あの質問をお聞かせいただけますか?

質問者 
 私が疑問に思っていたのは、上場株でインパクト投資に取り組むと、上場株は毎日値段がついているものなので、非上場株式であれば、毎日の株価がないので、かなり時間軸って長期にとれる。インパクトと企業価値ってすごく長い時間軸だったら同じ方向を向くと思うんですが、上場株式である場合、場合によってはインパクトと中長期的な企業価値が逆方向を向くような場合ってあるはずで、そう言ったケースでも大丈夫なのか、それは出資者の資金の時間軸とも関係するのかもしれないですが、そこが上場株でやる場合難しいんじゃないかなと思いました

MC
企業価値、というか株価だったり、業績でもそうかもしれませんが、アセットオーナーの時間軸が影響すると思うのですね。この時間軸のずれで困ったことありますか?

Tさん
うーん、パッシブとしていろいろな銘柄を組み入れていらっしゃる方、我々のようなアクティブで限られた数だけ投資をしている投資家という違いも影響すると思うのですが、私自身は後者型の投資家でかつそこに働きかけて変化を与えるというやり方をしているわけです。よって、超長期で企業価値が改善するということに確信があれば、私は株式市場は賢いものだと思っているので、それは現在の価格にもおりこまれるのじゃないかと思うのです

MC
つまり、株価は下がらないといっている?企業がきちんと説明していれば短期的な収益がでなくても。それはあるかもしれませんね?収益のほうは費用がでたら落ちるけど、そのかけたお金が企業価値に結び付くと確信できるなら株価のほうは将来の企業価値をみているわけで、論理的には。

Tさん
はい、ただある意味それもフィデュ―シャルデューティの範囲で、本当にそこに確信があるのか、それを市場が受け入れられるものなのかシビアに判断する必要があって、逆にもしそうじゃなければ、私だったらその企業に投資はしないのだろうなと思います。

Hさん
そうですね。私も似ている意見で、基本的にそういう企業の取り組みがマイナスになることはあまりないと思います。特に上場株は値段がついているので、それが値段にすぐに織り込まれると思います。逆に非上場株の場合は資金の出し手は企業価値をみるより、収益や返済できるかを見るわけですが、株式投資家は企業価値ベースでみていくので短期の利益が落ちるのは決して企業価値のマイナスになるわけではないです。つまり長期の価値が短期的にもおりこまれるので逆の方向を向くようなこと自体はないんじゃないかと思いました。ただ超長期でやっていることが、市場でコンセンサスがとれていて、みんなも正しいと思っているところでインパクトを与えているのが大事で、独りよがりだったらダメなわけです

MC
つまり逆に上場株だからこそ、インパクト投資ができるということ?

Hさん
そうです。市場とのコミュニケーションが取れている場合には企業は長期を見据えた投資は非常にやりやすいはずです。

MC
Kさんはいかがですか?

Kさん
私はちょっと違って、大きく再生エネルギーに投資しますよ、今そういう流れなのだからしょうがないでしょ言ったとき、それで収益が減ったら離れていく人もいると思うのです。そういう人には離れてもらったほうが言いと思うし、長期を見据えて、その会社が好きだから投資しますよという人に代わっていくのが一番いいことなので、会社にとってはマイナスではないと。短期的に業績が悪くなっていくということで、長期を見ていない人にとっては売り材料になるということは、我々(長期投資家)が安く買える機会になるわけですし。そうして株主が“会社の方針が好きだから投資しますよ、”という人に代わっていくのがいいことだと思うし。

MC
なるほど。売ってくれる人がいるから安く買えるわけですね?質問者さん、いかがでしょう?今の答えで納得されましたか?

質問者
理念的にはそうだし、インパクトがすごく長期に見通せるものであれば、超長期のインパクトと企業価値は一致すると考えていいと思うのですが、超長期の業績、企業価値への影響がそう簡単に見通せない、あるいはかなりの期間にわたって株式市場が誤解することもありうると思っていて、そうすると銘柄選択時にかなり絞られてしまうっていうか、ベクトルの揃うものしか選択されないということなのでしょうか。

Tさん
ここ重要ですね、前回のシリーズでKさんが“それでもやるべきだって”、おっしゃっていたのは真なのだろうなと。その一方でインパクトであるからリターンが少なくとも良いということは決してないと、欧州の投資家が厳しいとおっしゃっていて、そうするとインパクトカテゴリーの中で同じものをみていても、マネージャーの中にもうまいやつ、下手な奴は出てくると思う。そうすると、同じインパクトを標榜していても“うまいやつ”つまりリターンが出せる投資家にならないと自分のビジネスとしてのサステナビリティにならないし・・・

MC
“うまいやつ”にならないといけないというのは、その通りだと思いますよ。
同じインパクトを目指している企業の中で、きちんとそれを達成できるところを見抜いて投資しないといけないわけですから。

Kさん
何が大事かって言うと、知らせる、知ってもらうということが重要なのかなと思います。たとえばこの投資をすることによってこういう効果がありますよ、説明すれば、同じように思うすごく優秀な人がその会社に入りたいと思うかもしれない、そうすればその会社は前に進みやすくなるはずです。やっぱり会社は人なので、人を引き付けられる会社であるべきです。しかし日本の会社ってあまりいいことを言おうとしないので、そこが問題かなと思います。自分の会社がどういう会社であり、それがどんな価値に結び付いていくのかを宣言して、知らしめていくことによって人もお金もついてくるものだと思います。

続く

上場株インパクト投資の研究(8)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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上場株式でインパクト投資 第四回下

2021年4月7日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
最後にエンゲージメントの成功事例について話してみましょう。本当は最初全然聞いてくれなかった企業が、なんかこう、だんだん変わっていったと言うご経験は?

Hさん
それはあっても、ものすごく時間がかかるんですよね。だからアクティブファンドで本当にこれをやっていていいのかなって思うことがあるんです。実際の会社では一部の人は変わろうと思っていて、でも大多数の人は思っていないことがある。そこに色々な説明をしたり、提言をして徐々に変わろうと思っている人が増えていく、という会社がある。でもそれって10年がかりなのです。10年もかかるとその間に景気のサイクルがあって、結果的に良くなっても何が要因だったか解りにくかったりします

MC
そうすると、悪くなる時は頑張って発言し食い止めることはでるかもしれないけれど、良くするのはとても難しい?

Hさん
そうですね・・・Tさんがおっしゃったように、もともと良い会社を選び成果を加速するためのエンゲージメントをする、という方法はアクティブファンドとしてピッタリくると思うんです。低迷していて、言うことを聞いてくれそうにないところで一生懸命やるっていうのは、大事だと思いますし、パッシブの人たちは時価総額に対するインパクトも考えてやるべきだと思うけれど、アクティブファンドでは時間軸を考えずにそういう企業を買っていいのか…そこは難しいと思います。

Tさん
それって社会インパクト的には悪くて、長期的に儲かる企業って本当にあるのかというアジェンダにもつながる気がします。つまりアクティブとして、それでも長期的に儲かるんだったら、我々のフィデュ―シャリーデューティとして入れるべきじゃないかという議論も出てくるのかもしれない。個人的にはそういう企業は無いとは思うのですが。

Kさん
たとえば今、東芝の株価は上がっていますね。もし今年のはじめから持っていたら儲かっていたし、持っていないことで損をしたのかもしれません。

それから思うのですが、短期的に変わりやすいのは例えば統合レポートの記載が良くなったという企業はありますね。もちろん中身を伴わせるのは大変かもしれませんが

MC
では今度はちょっと別の視点で、悪くなる企業をエンゲージメントで食い止めたご経験はありますか?小さな事例でも、悪いインパクトに経営者が突入しそうになったのを対話で止めたみたいな

Tさん
ドラマティックな話はないんですが、もともと事業自体社会とかESGとかへの親和性がとても高い会社があって、でもその中で経営としては、EVA創出などを通じた企業価値創出に取り組まれてきた経営者が居られます。この方に、昨今ESG的世界観自体が社会とかユーザーから求められるものになってきているという考え方をお話ししたりしたところ、結果的にロジスティクスの効率化で、仕入れ先を絞り込んたり、配送回数を減らすことで、現場の働き方改革を達成したり、Co2を減らしたりしてくれた企業がありました。我々だけが言ったわけじゃないでしょうけど、ESG等を考えることを利益に結び付けるという思考回路を確立するお手伝いができたと思ったことがあります。実はこの経営者の頭の中にあったのは、ESGへの取り組みを通じて、配送コストを抑えてPLの改善を達成する。さらに、その価値観を通じて交渉すれば(契約をやめる)サプライヤーにも説明しやすい、というような合理性もあったようです。

Kさん
何かをやろうとすると、何かがマイナスになる、どうしてもマイナスの変化も同時に起こると思います。それはある程度はやむをえないことなのだと思いますが、変化は起こらないといけないと思っています。

Hさん
ちょっと違うかもしれませんが、会計不正とか起こした会社が投資家に説明するとき、ちょっと説明がしっかりしていないなという会社があって、なぜその説明が必要か話をしました。その説明をしないことでどんなマイナスがあるか社長たちに説明し、資料を作成するにあたってのポイントを解説したことがあります。
日本の企業には、上場するとき手間を増やさないことばかり考えることがあります。
小型株にはどうして投資家への説明が必要なのか、わかっていない会社もあります。そのような会社に対してどうやって社会的責任を果たさないといけないか、それはなぜなのか、投資家は説明するべきだと思っています。上場する前に投資家に対して間違った認識を持っているケースもある、上場して“こんなに忙しかったのか”とびっくりしている会社もありすごくギャップがあります。企業の中でもIRと他の部署ですごく認識が違ったりします。

MC
社会的インパクトを起こすかもしれない企業の、インパクトの部分は、どこの会社も技術とかサービスにおいてもものすごく専門的で、IRの人たちとは情報ギャップがあるのじゃないかなと思うんですね。それを投資家が助けることによって発信力があがったり。

Hさん
企業が自分で出す資料でSDGsについて書くと“ここに当てはまっています”ってめいっぱいシールみたいに貼っているのを見かけるのですが、それら1つ1つが事業として小さければ意味がないと思うんです。企業のビッグピクチャーがあって、何を目指していて、それがSDGsの何にあたるのかが重要で、一個一個の小さいものを表していったら、どの会社だって何かしらもっているに決まっていると思います。そういうことじゃないというのを、最初にすり合わさないといけない

MC
あとインパクトとか言われる分野に担当者の想いとか事業全体と不一致を起こしやすいものがあると思うんですね。そこを投資家は気を付けていかなければならないと思います。
事業と一致していないだけでなく、自分の思い込みの社会的インパクトを目指していたり。それを投資家と話していかないと。

Tさん
企業が自分たちでこれぞ社会的インパクトがあると思い込んでいる時に、一方では投資家がタクソノミなんかをみて、「その業種であればインパクトと言えるのはこれだけです」って言おうとしているという状況もあり得るわけですね。

MC
常に第三者の意見が必要な気がします。では最後に会場から質問です

質問者
インパクト投資なので、これまでのアクティブのエンゲージメントとで違うところがあるとしたら、アウトカムが最終的に重要な点なのかなと思っています。業績とアウトカムが順方向になっていたら、これまでのエンゲージメントで同じように語れると思うのですが、アウトカムと利益が順方向でない場合は、超長期には30年後なら同じ方向になるかもしれないが、中期的には逆方向になってしまうとしたら我々が預かっているようなお金だとそこには投資できないという理解でいいのでしょうか。

MC
そうですね。タイムホライズンはあわせないといけないでしょうね。

質問者
3年から5年で利益を出さなけいればいけない時は、電力会社に石炭火力を全力でやめてもらって、自然エネルギーで全部かえてもらうとかはちょっと難しいように思います。そうするとインパクト投資が投資できる会社って限られてしまうように思うのですが

MC
なかなか惜しいところではありますが、時間になってしまったので、このシリーズは一旦終えたいと思います。上場株でインパクト投資、収益だけでなく、社会も良くするということは可能か、これについて続けて話していく次のシリーズも考えています。
次のシリーズは企業との対話について、毎回具体的に掘り下げていくようなものを考えていますので、ぜひ引き続きお立ち寄りください。

おわり

上場株インパクト投資の研究(7)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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上場株式でインパクト投資 第四回上

2021年4月7日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
ではいよいよ、企業との対話について話していきたいと思います。ではまずTさん、企業との対話でインパクトを引き出すために何か気を付けていることはありますか?

Tさん
投資先企業に働きかけることで、良質な社会に向けたインパクトを起こしていると思っています。現状は投資先企業毎にいろいろな“こうあって欲しい未来”があって、投資先をSDGsで整理すると、投資先の7割ぐらいの企業の本業はSDGsゴールにあっているなと思っています。そこでぼくらの役割は、良いインパクトが利益として回っていかないと長く続かないので、利益率を改善してみようとか、キャッシュの使い道を指南し、更にインパクトに強くなるよう支えるということだと思っています。つまり、そもそも良いインパクトがあるところを探して、そのインパクトが加速することを目指している・・・。株主の提案って嫌われる事も多いと思いますが、事業を伸ばす提案については、(ぼくは)喜ばれることが多いので、株主と企業の相乗効果で良くなることができているのじゃないか、と思っています。

MC
つまり最初からいい企業を選んでいるとうことですね。あのKさんはその逆ではないですか?“ダメな子”を選んで良くするという・・・

Kさん
そうなんですけど、それでも“これをこう変えれば良くなるんじゃないか”と思える会社に投資をするんですよね。ところで今日(4月7日)朝からずっと考えているのは東芝のことで・・・。例えば電力会社で、誰も投資をせずつぶれてしまったら、困るのは私たちですよね。そういったことも考えないといけないのかなと・・・、或いは変な人に買われておかしくなったら社会はどうなるか、とか。そういうことも考えていかなくちゃいけないと思っています。

MC
つまり、やっぱり社会的にインパクトを与える可能性がある会社をみているってことですね。電力とか、今ダメかもしれませんが、影響は大きいですものね。

Kさん
そうなのですよね。良い会社だけ投資しましょうといっていると、そういう会社はどうすればいいのか、ということをもっと考えないと。

Tさん
それはつまり事業自体は本来良いインパクトをもっているのに、経営が悪くて発揮できていないとか・・・そういうことですか?

Kさん
本業が“いい”インパクトかって言われると、日本の電力会社の場合は石炭火力も多く原発の問題もあり、今の状態が“いい”インパクトかどうかは難しい。でもそういう会社に投資しなくていいのか、資本をあたえなくていいのか、金融業界として、我々は何ができるのか、を考えています。

MC
本業か“いいか”どうかではなく、事業の中身が、社会へ大きいインパクトを与えてしまう企業を見ていかないと、ということですね。

Kさん
うーん、大きさだけだと大きい会社ばかりになっちゃうから、“大きい”っていうのもなんだけど・・・。

Tさん
この仕事を長くしていて、そもそも経営に善意があって事業をしている優れた企業に対してはエンゲージメントもうまくいくっていう経験則があったのです。これとは逆の見方ですが、投資家の社会的責任からいうとダメな企業だからほっといていい・・・とはいえない企業もあって。とは言えそういう企業を変えていくのは成功率も低いと思っていました。ところが最近インパクトとかESGという言葉が広がり、善なる経営、優れた経営である必然性が認知され始めているような気もします。そういう企業も変わっていくかなと思っています。

Hさん
これって運用しているお金の性質によっても大事違う気がします。パッシブ運用では時価総額大きいところに投資していると思いますが、アクティブで集中投資になっていると、限りあるリソースをどこに使ってファンドにもインパクトをあたえるかを考えなければならない・・・。そうすると、その企業に対するインパクトの比率になってくる。何を目的にするかによって違ってくると思います。

Tさん
面白い、X軸に社会に対するインパクト、Y軸に企業の影響に対する変化率があって、いくつかの象限に分けて投資のタイプなどが定義できるのかもしれないですね・・・。

MC
ではちょっと違う角度からお聞きしていいですか? たとえば社会に対しインパクトを与えるかもしれない事業に投資をしていて、経営者が全く自分の言うことを聞いてくれなかった時、みなさんどうしますか?

Hさん
私の場合ロングオンリー、集中投資のファンドだったらそういう企業には投資しないです。絶対聞いてくれそうにない人にわざわざ買って・・・ということはないのです。聞かないことによってその会社が明らかに企業価値を毀損していく状況に確信が持てれば、ロングショートのファンドならショートすればいいということです

MC
「たとえば投資したあとで、経営者が交代して聞いてくれなくなったという経験もあります?」

Hさん
そういうことはよくあります。それで問題は、素晴らしい経営者がいて、その人が交代してしまった後でも、ESGの開示とか非常に素晴らしい資料がどんどんでてくるのだけど、経営者が変わった後どうも言っていることは整っているけど、実態は伴っていないな、って言う会社はけっこうあります。大企業でも良く見かけます

MC
そう言う時は、詰めに行くのですか?

Hさん
それがなかなかうまく詰められないんですよ。出てきている資料は引き続きすばらしくて。表彰されちゃったりして。でも実際の成績はずっと悪くなっている・・・みなさん例が思い浮かんだかもしれませんが。ESGの資料が良いからだめっていうことじゃないんですけどね。良くてもダメな会社ってありますよね・・・

Kさん
ぼくは悪い会社に対しても、投資家は発言しなきゃいけないと思っていて。説明会なんかで、たとえ周りから白い目で見られても。それでも社長が何も理解しない会社だったら、Hさんがおっしゃるように空売りした方がいいと思います。それでも1年、2年たって変わっていく会社だったら、言い続ける価値があるかもしれない。

Tさん
Kさんはそう言う意味では、「ちょっとこれまずいんじゃないの?」とおもう経営者、事業でも、リターンが得られるなら、アクティブファンドに入れることはあるので、そこに対しては変化を訴えるという事ですか? それともポートフォリオ企業である無しに関係なく発言するということですか?

Kさん
ポートフォリオと関係なく言うべきことを言っています。それで反応をみています。やっぱりそこで真摯に受け止められる会社と全然無視されるのかを。

MC
やっぱり社会的なインパクトを考える投資には、いろいろあって、企業へのエンゲージメントもそれぞれですね・・・後半はエンゲージメントの成功体験を聞いていきたいと思います。

つづく

上場株インパクト投資の研究(6)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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本日、4月14日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第三回下

2021年3月31日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
さて、“アセットオーナーにどうやって説明していくのか”の後半です。ここのところ言われているインパクト投資では、アセットオーナーがEUタクソノミとかSDGsなど社会良くするインパクトのゴールを決めて、アセットマネージャーにもそこに向かって運用するよう求めるものが見られ、EUのアセットマネージャーの中には“このほうがやりやすい”という人もいます・・・というところまで前回話しましたね。こういうメカニズムをどう思いますか? やっぱり解ってもらいやすく、やり易そうだなと感じます?

Kさん
一ついいですか? あまりアセットオーナーが、そういうことを考えない方がいいと思うのですよね。たとえば公的年金などでは、投資のご経験がない厚労省の方とか・・・。だからむしろぼくらがこう思うのだ、ということをわかって欲しい。そういう役割分担でないといけないのじゃないかと思っているし、たぶんTさんもHさんもそう思ってやってらっしゃるのじゃないかと思うのですけど。

Tさん
わはははは

Kさん
アセットオーナーとアセットマネージャーとで、キャリアとして行き来が盛んにあるような状況ならいいと思うのですけど。

Tさん
・・・たぶんこれまでって、自分たちの信じる投資をしていて、それに価値を感じるお客さんが来てくれる・・ていう構造だけだったと思うのです。でも今はアセットオーナーも自分のインパクトやゴールを持つとなると。インパクトとリターンが逆に働いてしまうケースもあるかもしれず、それを拾いに行くのか行かないのかという議論もあるでしょうし、今まで以上に自分たちが何をやりたいのか、アセットオーナーとコミュニケーションをしっかりしなければいけないのかもしれません。逆にアセットオーナーが何を狙っているのか、すり合わせをちゃんとせずに始めると危険なことになりそうですよね。
それからもっと言っちゃうと、リターンを出してくださいって言われて、褒められたり怒られたりしながら20年近くやってきているのですけど、これ変な話、マイナスにしなければいいから、自分たちの資金を使って社会インパクトを与えてくれっていうアセットオーナーさんがいらっしゃったら会ってみたい・・・(笑)

MC
リターンなのですが・・・あるオーストラリアのアセットマネージャーと話していた時、オーストラリアもEUに続いてこういった取り組みが盛んなんですけど、結果について私が株価を前提とした言い方をしたら“きょとん”とされたことがあったのですね。彼が言いたかった“結果”とは“業績があがること”で。“ああ、なるほど。アセットオーナーの意識が変わってきている地域もあるのかな”なんて思ったのですけど。Hさん、海外のアセットオーナーの方とお話しされる機会多いと思いますけどどうでしょう?

Hさん
海外のアセットオーナーも、人によってやはり差はあるなと思うんですけど、彼らがいろんな人たちに委託する理由を考えると、彼らもアセットマネージャーに独自性を出してほしいと思っていると思うんですよね・・・。自分たちの運用哲学で運用していて、それをアセットオーナーの基準でみるとこうですよ、っていう説明はするんですけど。アセットオーナーがこう思っているからこっちのやり方を変えます、というのでは、オーナーごとにあわせて運用を変えことになるので、現実的じゃないですよね。

MC
今おっしゃった点について、ロンドンのアセットマネージャーが言っていたのですが、以前はアセットオーナー毎に、 “これがグリーンだ”というのがあって、それに合わせるのが大変だったそうです。今はタクソノミができて、アセットオーナー毎に違うことをいう煩雑さからは解放されるかな~と言っていたケースがありましたけど

Hさん
北欧のなんとかはこうで、英国はみたいにみんな違って、それらをあわせて最大公約数みたいのをつくって運用をするっていうのはすごく大変なんです。タクソノミみたいな“基準”があるとそれが一本になるので、すごく楽だと思うのですよね。

MC
そうですよね。北欧のアセットオーナーがセメントXXグラムにCo2XXグラムはグリーンじゃないとか言って、英国のアセットオーナーが違うことをいったらやってられないですよね。


Hさん
ほんと、それは大変なのですよ・・・そういう基準は向こうがリストを作って送ってくることもあります。もちろんそこに入るよう運用するのは最低限で、それにプラス自分たちがどんな付加価値を付けられるかが求められているのです。

MC
そうですね、だからEUの取り組みって、ある意味運用しやすくしようとしてやってることなのかもしれませんね。タクソノミがグリーンかグリーンじゃないかについての物差しになれば、EU内のアセットオーナーが、アセットマネージャーたちにそれぞれ違う“グリーン”を求めることはなくなるでしょうし・・・、

Hさん
そうですね、、、。まあその基準に入っているのは当たり前のことだとも言えます。そこからパフォーマンスが上がらなくていいとは言ってくれないと思います。

Tさん
(笑)つまり、インパクトに対する要求が大きく、比較的リターンに対する目線は低かったとしても、それぞれのカテゴリーの中でリターンをベースとしたマネージャーの淘汰がおきるんでしょうね。

MC
それと、リターンを求めるとしても、“本日の株価”なのか“今年の業績”なのかっていうことなんだと思いますけど。

Hさん
“本日の株価”って、日本独特ですよね。日本では四半期で報告を求められるんですけど、それで悪い成績が続くとイメージが悪くなって、なんとか四半期がんばろうみたいな気になっちゃうんですが、海外のアセットオーナーの中には、四半期でいちいち説明に来るなっていうところもあるんですよ。一年に一度でいいから、その代わりパフォーマンスだけじゃなくて投資銘柄一社一社がどうなっているか詳細に話して欲しいって・・・

MC
それはHさんが成績いいからじゃないの?


Hさん
成績が良いとか悪いとかいう事ではありません。成績が悪い時でも彼らは特に文句を言う事もなく、何を考え何をしたのかという事を聞いてくるのです。

Tさん
かもしれない。きっとそうですよ。(笑)
でも確かに社会インパクトだと、四半期なのかな。四半期の業績確認で、ESGの進捗確認を細かくやるというのは・・・意味あるのかなとか。

MC
逆かなと思いますけど。ESG系の進捗って、インパクト投資系だと、CO2の削減とか、KPI通りすすんでいるかとかもっと頻度多く報告しているケースをよく聞きますけど。。。つまり1年って長いじゃないですか。今の2050ネットゼロとか、1年って長いからもたもたしていたら全然到達しないし。

Tさん
たしかに、たしかに。

会場から質問
欧州のアセットオーナーが変わってきている・・っていうのは背後にある年金の加入者の意識が高いとかの差があるのでしょうか?アセットオーナーの差がこれだけ生まれる原因ってなんなんでしょうか?

MC
消費者の意識も大きいと思いますが、一番大きいのレギュレーションだと思います。アセットオーナーと呼ばれている人は年金でも保険でも銀行でも規制産業です。複数のルールで事実上ESG投資の割合を増やさなければならない状況にあり、自分の報告でサステナブル或いはグリーンな資産を持っていることを示さなければならないため、アセットマネージャーにもそれを求めることになる・・・と思います。

Tさん
その違いが、分水嶺になったのってありますか?

MC
ブレクジットというのは現地の人も結構言っていますね。イギリスに抜けられてもヨーロッパがグリーンの市場としてやっていこうという意識が強かったと。ただオランダなんかはその前から消費者の意識が高かったので、先行していたようです。個人的にはフランスっていつからグリーンの国だったっけなとか思いますけど・・・。
さて、それではアセットオーナー編はこのへんで。次回はいよいよ、“企業にインパクトを起こさせるためにどんな対話をしているか”に進みたいと思います。

続く

上場株インパクト投資の研究(5)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

4月14日もお昼12時より Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第三回上

2021年3月31日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC
前回は、最近議論されているインパクト投資というのは、アセットオーナーが社会的インパクトを目指し、そのゴールを選んでいるケースが見られるということを話しました。今回は、みなさんが投資のインパクトをアセットオーナーにどう説明しているかについて話していきたいと思います。ではTさんから過去に自分の投資のインパクトをどうアセットオーナーに説明してきましたか?

Tさん
私は小型株を対象とした、戦略まで踏み込むエンゲージメントファンドを運用しているわけですが、そのエンゲージメントで企業の成長戦略、長期にわたる成長ではSDGsなどをどう実現するか、といった議論しています。ではお客さんとは、どういうコミュニケ―ションをしてきたかというと、株価があがっても、それが我々のエンゲージメントの成果なのかどうかというのがとても難しく・・・。株価は需給でも決まりますし、私の場合は集中投資で15社ほど投資しているうち、トップ数社についてこういうエンゲージメントをやっています、企業が聞いてくれればこういう風に財務的なインパクトが得られるはずですといった説明をします。ただこれは暗に言っているのですが、財務的なインパクトがあれば必ず社会的な事象としてのインパクトがあるはずです。だから一生懸命説明してきたのは、株価ではなく企業価値をあげるためにエンゲージメントをしており、企業価値が上がれば彼らのビジネス、地方のインフラを支える何かであったりしますが、それも達成しますというようなことを伝えています。

MC
つまりTさんは社会的インパクトの部分はアセットオーナーにはメインでは話さない?話しても訊いてもらえない? アセットオーナーに企業価値向上の話はするけれど、相手が関心をもつのは・・・実は株価ということですか?

Tさん
その先にあるものはインパクトのアウトカムなんだろうけど、その途中で財務的結果が出ているはずで、そこについては今もきちんとお客さんとコミュニケーションしています。

MC
・・・でもTさんが思う社会の部分はあんまり訊いてくれない・・・?ではKさんはどうですか?

Kさん
難しい問題ですね。今期の株価をあんまり追わないように、インパクト投資をしっかりやってくださいねっていうオーナーはヨーロッパにはいます。でも日本で他よりもパフォーマンスが悪くてもいいですよって言ってくれる人はほとんどいないです。ヨーロッパではインデックス並みのパフォーマンスでもいいからしっかりやれよっていう人もいますが・・・・。いい意味でも悪い意味でも、日本では“ESG投資とかインパクト投資、全く関心ありません”という方もいらっしゃいます。それはそれでいいと思うんですけど。自分としては、投資家として物事を微力ながらいい方向に向かわせたいなという気持ちがあるので、そういう投資をしていきたいし。一年後に良くなるかどうかわからないし、1年後にリターンとして帰ってくるかどうかわからないけれど、5年後、10年後には帰ってくるでしょう、という期待のもとでやっているので、僕らはこう考えていますと伝えていくしかないと思います。

Tさん
Kさん、パフォーマンス悪くてもいい、っていうのは、でもインデックス並みは出してくれないと困るというわけですか?たとえばパフォーマンスが悪くて社会インパクトが出せているっていう時は、どういう行動をとられるのですか? “いい結果出せたねえ”っておっしゃる? それはそれでオーナーは長い目でみてくれようとするのですか?

Kさん
でもそうはいかないと思います。オーナーも一社だけに預けているわけじゃなくて、何社かのアセットマネージャーに預けていて、みんなが良くしようとしてやっていて、その中にパフォーマンスが良くてしかも社会貢献もできているところがあればそっちへ・・・と思うでしょう。だから悪かったら切られるということだと思います。

Hさん
たぶんですね、アセットオーナー側から見た時、社会的インパクトは起こせたけどパフォーマンスが出せない・・・っていうのはないと思うんです。インパクトを起こした企業については、パフォーマンスは当然上がると思うのです。しかし、ポートフォリオなので、一社に投資しているわけじゃない。だから実現している時期が違うので、まだほかにしっかりしたインパクトを起こせていない会社がいくつかあって、全体でいくとパフォーマンスが良くなかった・・・という時はあると思うのです。もしインパクトはおきたのだけど、その会社のパフォーマンスが全然だめということは、インパクトの計測が間違っていると思うんです。

MC
Hさんのご指摘、正しいと思います。今はやりのインパクト投資では、ヨーロッパだとアセットオーナーがアセットマネージャーに、企業が本当にそのインパクトに向かって成長しているのかチェックさせるというのが多いと思うんですね。だから最初にインパクト(サステナブルなゴールに対する)を選ぶとき、そのマーケット規模だとか、関連する数字だとかをベースに、この市場は大きくなるとか、特定のテクノロジーが求められているとか、そういうところで選ぶという手法をとってらっしゃるケースが多く、そのインパクトに貢献すると選んだ企業が、言っているだけでちゃんとした製品を作れないとか、そういうことがないかをみていく、だからインパクトを出せたら、通常はなんらかのパフォーマンスは出ると思うのです。

Tさん
うーん、そうなんですけど・・・。インパクトに対する期待もしだいに市場におりこまれていくと、想定通りのインパクトを起こしたにもかかわらず、株価が違う変化を起こすことがある気がするんですよね・・・だから難しいなと。

Hさん
それについてですが、エンゲージメントをしてるとか、インパクトを起こしているという時、たくさんの投資家が似たようなことをやっていることってあるじゃないですか。その会社に対し、みんなが同じようなことを言っている。その時ってみんなが買っているから、その分株価に織り込まれているわけですよね。だから自分ではこれだけ変化したから、これだけインパクトを与えた・・・と思っているけど、投資家の数で割り算したら、自分の与えた分は小さいかもしれない。自分だけがその会社にインパクトをあたえたのであれば、それだけの価値が還ってくるんでしょうけれど。

Kさん
うーん、やっぱり私は、インパクトを与えたら株価があがるってもんでもないと思うのです。環境問題なんかだとむしろ下がることもあるのでは。また、必ずしもインパクトが経済的リターンにつながる場合ばかりではない、と考えなければならないと思います。例えば、その会社が20年後に“あの時、あれ辞めておいてよかった”といえるような課題をみつけて、エンゲージメントするということもあります。

MC
そうですね、あとありがちなのはIT系の企業でみんな期待して株価が上がって、その後成果はだしているけど、株価はずーっと下がっている・・・みたいなこともありますよね。今流行っているインパクト投資、EUタクソノミとかSDGsとか出てきた後に、議論されているインパクト投資は、UKやEUのアセットマネージャーが“楽になった”というのは、アセットオーナーが最初にそのゴールを目指すと言っている場合、アセットオーナーに理解してもらうのが容易になった・・・という声を聞きます。このEUタクソノミやSDGsがアセットオーナーとのコミュニケーションを助けているか、次回はここの点について深堀してみましょう。

(つづく)