ACAコラム

上場株インパクト投資の研究(4)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

リンク:「上場株でのインパクト投資」常設クラブ(Clubhouse内)

4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第二回(下)

2021年3月24日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
前回に続き、上場株への投資で財務的、社会的インパクトを得るのはどういうことかについて続けて話していきたいと思います。

Tさん(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
私、今取り組む企業エンゲージメントを通じてもインパクトは起こせるけれど、それを数値で測定しろといわれたらできないと思うんですが・・・結果として生じているそれを自分たちの力だけで引き起こしたという因果を説明しきることは難しいですよね。とは言え内部では、私たちが関与していない前提の企業の成長と自分たちがオントップで追加したい成長といった目標を持っていますので、それが成果といえば言えない事もない。

Kさん( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
私もそう思います。測れないとなかなか難しいと思います。

Hさん(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
たぶん自分たちが投資する時って、必ずなんらかの仮説をもって投資していると思うんですよ。だからたとえばSDGsの何かを目指しているからいいですよじゃなくて、現在その投資先企業が行っている取り組みがどれだけ意味があって、どれだけ対価をえることができるかっていうのが重要だと思うんです。だから企業自身がその財務的な計算をしてなければいけない。それをしていれば、意味のあるインパクトと言えると思います。我々としてはその部分と、自分たちの持っている仮説がどういうふうに正しいか、どう違っているかを常にチェックするというのが、私が行っているやり方です。しかしもし企業がSDGsの目的に向かって取り組んでいますというだけであれば、我々も評価できないし、それをもってインパクト投資とは言えないんじゃないかと思います。

MC
そうですね。最近の上場株のインパクト投資で見かけるモデルは、まず産業で分類されて、必要な基礎データがあって、投資先企業もそれらのマーケットにどれくらい売上があるかとか、どれくらいその売り上げを伸ばそうとしているかといったKPIを設定し、ちゃんと実現できるのかウオッチしてる・・・といったものをよくみかけますけどね。その意味では皆さんがやっていることもインパクト投資との重複は少なからずあるのではないでしょうか?

Tさん
衆生すなわち仏なり、という仏教の言葉がありますが、よく選ばれしアクティブマネージャーは、インパクトであるといっても間違いではないというクオリティがあると、いっていただいているという理解でいいですか?

MC
いやあ・・・そうですかねえ・・・・。逆で、私としては本来独自性を出すべきアクティブマネージャーたちが、なんだかこうレールに乗せられているような気がして、なんかこう忸怩たる思いのある人もいるんじゃないかと。そういうふうにしてアセットオーナーとコミュニケーションしていく必要があるんじゃないかと思うんですね。

Hさん
でも“インパクト投資”を求めているアセットオーナーも全員にそれを求めているわけじゃないですよね。自分たちで仮説をもっていて、ありとあらゆるインパクト投資をてがけながらも、それとは別に普通のアクティブ運用もやっていて、その時は自分たちの仮説を押し付けるようなことはなくて、姿勢があっているかどうかは見ているんですけど。仮説についていろいろなところで発信はされていますけど。また彼らも自分たちの仮説をいろいろなところで検証したいと思っていると思います。

MC
それは正しいと思います。ただ一つの入り口ですよね。

Tさん
うーん、ちょっと別の点ですが、レインボーウオッシュ、と最近言うようですが、それを避けないといけないということで、最近 “こうあらねばインパクト投資と呼ばせない”みたいなのもあるような気がして。たとえばよくその評価に使われているMSCIとかFTSEとかに数百社のカバレッジがあって、でも時価総額1000億以上ですよね、拾えないインパクトもあるような。そういうデータで証明できる範囲だけがいいのか・・・もっとボトムアップの網の目の細かいアプローチもあってもいいのでは。暴論でしょうか。

MC
いや、実際そうなんでしょうね。伝統的な普通のアクティブ運用はもちろん重要だし・・・。

Kさん
大きな会社の方がインパクトがあるっていうのはその通りだと思うんですが、今小さな会社でも大きくなっていくので、その時そういう会社がおかしなことをしていたら社会にとってはマイナスになっちゃう。だから育っていくような会社がしっかりした投資家に持たれていないと。

Hさん
私もそう思います。大きいか小さいかではなく、その会社がインパクトを出しているかどうか。投資の時に一番忘れちゃいけないのは投資リターンをだす、ということでそれは外してはいけないので、いいことをやっていてもパフォーマンスが上がらないといけないですし。

MC
原則的にはそうだと思いますし、それがなくなるわけじゃないと思います。ただ今上場企業でインパクト投資が言われるようになった背景はこういったSDGsとか、社会的なゴールに共通の考え方が生まれたことなどがあるので、そこにTさんが反発されて、“これじゃないとインパクト投資じゃない”って心配するんだと思いますが。
これに合わせなくてもいいけれど、このSDGsなどにあわせようとすると、ちょっとメリットがあるんじゃないかということです。この次の会で話す予定ですが、アセットオーナーとのコミュニケーションです。
もちろんいろんなアセットオーナーがいます。アセットマネージャーに任せたり、アセットマネージャーの仮説を聞きたいというのもあるでしょう。ただあるEUのアセットオーナーが言っていたのですが、最近急激に市場が変わっているので、アセットオーナーも考え方を変えなければならない、と思っているそうです。彼から見るとアセットマネージャーの中にはコンサバティブな人もいて、なので新しいシナリオにどのように対処してくるか知るためにもこう言ったモデルは有効だという話をしていた人もいました。
だからもともとは“パフォーマンスだけにフォーカスしているとあぶないな”という意識かラスタートしていると思います。

Tさん
なるほど。

MC
Tさんは社会派だからいいじゃないですか

Hさん
ぼくがいう財務的っていうのはそんな短めのことじゃないですよ

MC
わかってますよ!!では次回は、そんなアセットオーナーとの関係について話していきたいと思います。

続く

上場株インパクト投資の研究(3)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第二回(上)

2021年3月24日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
前回まではそれぞれの“インパクト投資”というものへの思いを話してきましたが、今インパクト投資は結構話題になってきて、その定義もあちこちで言われているので、今日は客観的に、上場株への投資で財務的、社会的インパクトを得るのはどういうことかを考えて見たいと思います。

Tさん(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
その前に、もう一回インパクト投資とESG投資はどこが違うのか聞きたいです。

MC
ESG投資って、広いと思うんですね。もともとESGの観点はリスクを減らすために議論していた、でもそれがいつの間にかESGに注目することはプロフィットだ、というようになってきたわけですが・・・。これに対しインパクト投資って、社会的な、あるいは産業として大きな革新的な何かや、達成したいゴールが外にあって、それを実現する投資をしていくようなものですね。だからもともとは上場企業への投資より、特定の事業など使徒を限定して渡せるお金、プライベートエクイティなどのほうが多かったと思います。逆にインパクト投資の方が、あらゆるファイナンス方法を巻き込みたいということで、上場企業についても議論されるようになったという面があると思います。

Tさん
つまり結果を意識して、明確に投資をするというのがインパクトなのかなと理解しているのですが、そこで象徴的に言われるのが“アウトカム”、つまり結果はなんなんだ、ということが求められるというふうに理解しています。

MC
そうですね。そして私のイメージでは“コラボレート・アクティブ運用”みたいな。みんな同じ方向に向かって欲しい、成果を目指して・・・という面が強いと思います。

Tさん
うーん、ぼくはやっぱり、少しでも大きな影響を社会に与えたいなと思っていまして。でもインパクト投資では、ターゲットは見えているのですが、初期的なインパクトはすごくちっちゃいことが多いように感じています。自分は中小型を対象とした投資をしているので、既にいいインパクトを持っている企業を、さらに高めるということをやっていけばいいのかなと。つまり上場株でインパクトを起こすというのは、そのインパクトの大きさというのが僕の理解です。

MC
そうですね、個別の規模に寄るかもしれませんが・・・多くのインパクト投資では“その後”が重要ですよね。ちゃんとゴールに向かっているか、何をKPI(財務数値以外で)として選び、毎年それが目標に向かって前進しているか、モニターしていくという方法が多いと思います。

Hさん(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
その時何をもって“インパクト”と呼ぶかが大事だと思うのですが、今のインパクト投資は “社会的インパクト”の大きさを重視していると思うんです。しかし企業にとってシグニフィカントなインパクトが財務的なものである場合、同時におこる社会的インパクトが小さいというケースもあると思います。そういう時どっちを重視するかで意味合いも変わってくると思うし、上場株への投資であれば、社会的インパクトの大きい分野でかつ自分たちの企業へのインパクトも大きいものでないといけないのかなとも思います。そこのバランスというか、そこを曖昧にしてはいけないなと。社会的インパクトがまったくない企業はないと思うので・・・。

Tさん
そうですよね、社会的善となる部分がなにがしか利益と結びついている企業をきちんと選ぶというのが初期的な作業なのだと思うんですね。社会的インパクトというのは社会が求めていることでしょうから、求めがあるところにはビジネスがあり、機会もあると思うんですけど。

Hさん
その通りで、そうではないケースはあまりない気がします。社会にとって悪な企業が上場しているケース・・・て、私はあんまりないと思うんです。どの企業も何か良いことをしているか、認められている。でもその部分が時間と共に変化していて、マッチしなくなったり。そこをどうアドジャストしていけるかが難しいところだと思います。

Tさん
私もHさんのおっしゃる通りだと思います。しかし一つの自分の問題意識として、インパクト投資かくあるべし、というような枠組みができてしまっていて、その枠組みがまだVCとか、スモールステージにしか合わないので、上場企業のインパクト投資というのを評価できる枠組みが、まだあまりないんじゃないかというストレスがあります。

MC
そういった評価モデルは今徐々にできてきていると思います。“社会的ゴールと収益のジレンマ”については、アセットオーナーに寄るとは思うものの、教会とか、チャリティーとかで絶対この株には投資できない、と収益より大事なことがあるケースもあると思いますが、基本的には“良い収益”が前提だと思います。そこでよく欧州でみるのは、まず社会的ゴールをアセットオーナーの側が自分のストーリとして持ちます。例えば“低炭素社会の実現”とか。これを選んだアセットオーナーは、この実現に備えていた企業、貢献した企業に先に投資をして、そのシナリオが達せられれば、必ずそれらの企業も収益が得られると考えているわけです。そうすると元に戻ってそのゴールに何がなんでも達して欲しい。そのようにアセットマネージャーにエンゲージメントして欲しいし、成果がでているかウオッチして欲しいわけです。もしかしたら一人一人をみたら特定投資先の企業への収益が低くなることもあるかもしれないけど、全体として自分が思う社会の実現が行われ、その実現に向けたKPIで見ている企業の集団があれば、一定の収益がでるでしょうと考えているわけですね。だから田中さんと同じゴールを持つアセットオーナーがいれば良いんだと思うんです。

Tさん
うーんなるほど。欧州ではそういうリテラシーの高いアセットオーナーが多いんでしょうか

MC
リテラシーというより、そこは規制が大いに手伝ってると言えます。まずアセットオーナーたちは、みな規制で開示が厳しくなっているので、自分がどんな運用方針をもっていて、どんなふうにESGを投資に取り込んでいるかを説明しなければなりません。ですからその条件の下で収益性が高く、かつサステナブルなゴールへちゃんと全てのアセットマネージャーの投資の方向があっていますよ、といったことが求められるわけです。

続く

ESG投資・インパクト投資の拡がりと課題

こちらのコラムで、連載的に書かせて頂いていますが、仲間たちと上場株におけるインパクト投資をテーマに色々な議論を始めています。
インパクト投資がどのな状況にあるのか、課題が何か、可能性はどこにあるのか、現在の我々の活動との接点をどう広げていけるのか?といった事が対象で、いわば投資助言会社としての一種のR&D活動のようなものだと考えています。


ここ数回の議論の中で様々な課題が確認でき、大変面白いです。一つの塊として出てきたのは、コミュニケーションの問題。特にアセットマネージャーとアセットオーナーの間でのインパクトに関する視点の共有でした。
犬も歩けばの例えでもないのですが、面白いもので、このような活動をしていると本件に関わる様々な悩みや課題についての御相談も頂くようにもなります。先週、ご面談の機会を頂いたある企業様は、国産材を積極的に使い、低廉で高品質な住宅を建設する事で炭素固定や地域林業支援などに貢献したいと真摯に努力しておられるお会社で、まさに環境や地域社会に対するサポートを健全な利益につなげようと日々努力しておられる会社でした。一方で、社長の悩みは、それらの取組が所謂ESGレーティングと連動しないという、資本市場とのコミュニケーションの課題でした。また、伝統的な金融機関で働く仲間からも、ファンドの人材育成、ひいては、金融界の若手育成の視点からも環境・社会にインパクトを与える金融のあり方を模索し始めているので一緒にこの問題を考えたいというありがたいメッセージを頂きました。
この春に政府の動き、CGC改定の動きなども変化が見られ始めています。我々自身も、環境・社会と金融界とのあり方について、更に研究を深めていきたいと考えています。

四回シリーズで始まったクラブハウスミーティングの第四回は水曜(7日)12時から開催予定です。是非気軽にご参加ください。

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上場株インパクト投資の研究(2)

資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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4月7日もお昼12時より 第四回Clubhouse Meeting を行う予定です。

上場株式でインパクト投資 第一回(下)

2021年3月17日 12:00~12:30

(このブログは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
みなさんの投資についての考え方をお聞きしまして、“インパクト投資”って伝統的な金融の役割そのものじゃん・・・というのは全くその通りだと思います。それでは、みなさん今一番“インパクトを起こしたい”と思っている分野ってなんでしょう?

Tさんの場合(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
インパクトって本当はすごくイシュードリブンで、小さなところでしっかりインパクトを出していくというのが結構あると思うんですね。ただ自分は上場企業に投資しているので上場企業のスケーラビリティを勘案して、それよりは少し大きなインパクトを起こしていけることを考えていきたいです。では何を課題として選ぶかですが、今の日本の課題として、日本だけじゃないかもしれないのですが、どんどん住みづらい国になっている気がします。機会が平等でなかったり・・・でもそれって同時にビジネスチャンスにもなりうる訳で、こういう課題を解決するような投資をしていきたいと考えています。そして投資家がパートナーとして助言しインパクトを強化できるような事が出来れば・・・。

Kさんの場合( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
今私のお客さんなんかは、ヨーロッパの年金基金などですが、自分が(アセットマネージャーを通して)投資している企業全てのエミッション合計とか出すためにそれをアセットマージャーに開示しろといってきますし、かなりセンシティブになっていると思います。
そのような中で、積極的に投資したいというのと、積極的に投資したくない分野というのもあると思います。私が投資を始めた頃、サラ金にすごく苦労している人が周りにいて、
でも当時サラ金て非常に割安で。興味深かったんですが、いろいろ考えて、投資を止めました。やはり世の中に負の影響を与えているのであれば、そこに投資をしないというのも重要かなと思っています。

MC
その頃って、もう“タバコ・ダイベストメント”て、始まっていました?

Kさん
うーん、やはり欧州のお客さんなんかでは、タバコに投資するなというところ、ありましたね。私自身は嗜好品なので全部いけないとは思っていなかったのですが、このままだと将来の売り上げとか考えれば、やはり投資すべきじゃないなあと思いました。

Hさんの場合(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
私はあんまり、こういうテーマで投資しようって設定しないのですね。でも長期投資という観点で、社会がこれからどういう風に変化するかということを考えて、その中で企業がどんな役割を果たしていけるかを常に考えることになるので、その中で社会でポジティブな方向にいっているかとか確認をします。大きなテーマ、水の問題とか、気候とかありますが、実際企業と話していると細かいテーマがありまして、その中に共通の課題がみえてくる・・・たとえば働き方をどういうふうに変えるかとか、やっぱりボトムアップの対話の中から出てくるテーマってあるんですよね。そういうのを細かくみていくのが私のやり方です

Tさん
日本のいくつかの社会課題って解決方法も一つじゃないですよね。共通してお互いに影響しあっていて、そういう課題を一つ解決する企業って、いろいろなことが解決できる気がする。

Hさん
似たような課題を持っている会社がいくつかあって、それぞれを同時にみていくと、いろいろ気がつくことがあるんです。こうやっていくと乗り越えていけるんだ、ということがわかってきて。

MC
そうすると、Tさんは大きなテーマ、Kさんはやるべきではない投資とは何かを考えてきた、Hさんはテーマを決めるよりボトムアップで、ひとつひとつの課題を解決していく・・・そんなふうにインパクトをみているんですね。そうすると

Tさん
大きいっていうか・・・例えば今感じているのは、日本において機会がすべての人に平等に与えられなくなってきているとかいうことなんかで。もう少し身近な例だとデジタルデバイドみたいなもので、ドコモに八千円払っている人がハッピーなのか、本当は格安携帯で十分なのによく知らないだけとか、それはIT教育やITサービスの開発なんかで解決していけるんじゃないか?とか自分も個別に考えているところもあるのですが・・・でもやっぱり最初は大きなテーマでみているのかな・・・

MC
そうですね。Tさんがデジタルデバイドをみるとき、それが世の中をどうやって変えていくかをみている・・・ということですね。これに対しHさんは決めずに掘り下げると・・・たまたまデジタル対応が問題だったりする・・・?

Hさん
そうです。例えば今の話だと、中小企業の中にはデジタル化に対応できないためにビジネスを逃しているところがいっぱいあって、で、そうすると今度は、そういう中小企業を助けるビジネスができてくる。彼らがどんな点を助けているか、何が中小企業から求められているかを考え、具体的に解決している企業を探すみたいな・・・、自分はそういうかたちで取り組んでいます。だから、どこで課題を見つけるかの見つけかたの違いかなと思います。本質的には同じになるような気がします。

MC
結局どういうふうに課題を見つけるかは異なれど、最終的に企業の価値を見つけるという投資家の役割は同じところにたどり着くと思うのですが、最初に戻って、このインパクト投資が欧州で流行って議論が高まっていった背景としては、アセットオーナーとアセットマネージャーの間で自分が何の社会的課題を解決したいと考えているかをわかりやすくするコミュニケーションの部分かなと思っています。このシリーズでは続けて“自分の投資をどうやってアセットオーナーに分かってもらうか”とか、“企業にもどうやって分かってもらうか”などを話していきたいと思いますが、まずは次回は、“上場企業への投資でインパクトってどうやって起こせるのか?”について話して見たいと思います。

続く

上場株インパクト投資の研究(1)

あっという間に過ぎた2020年を超えて2021年も4月に入ろうとしています。コロナ禍の拡大傾向はなかなか収まりませんが、良い意味での逆境への慣れか、様々な新しい投資アイデアについてのディスカッションの依頼を頂くケースが増えてきたように思います。当社でも資産運用業界の仲間たちと一緒に、「インパクト投資を上場株に適用する」をテーマとして研究を始めました。スマートフォンアプリのClubhouse上で毎週様々なディスカッションを行っています。皆さまも是非ご参加ください。また本ブログではこの議論の内容をコンパクトにまとめて皆様にお送りします。

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3月31日もお昼12時より 第三回Clubhouse Meeting を行う予定です。

Clubhouse Meeting 「上場株でのインパクト投資」第一回

2021年3月17日 12:00~12:30

(これは毎週水曜日の12時からクラブハウスでオンエアしている“上場株でのインパクト投資”を綴ったものです)

MC (野村総研/Chie Mitsuiさん)
欧州でここ4,5年インパクト投資の議論がとても盛り上がっています。特にEUでは“全ての資金はグリーンへ”みたいな勢いで、気候変動に対応するイノベーションとか、事業に関わっている上場企業への投資も投資という勢いの中で「上場企業でインパクト投資」が話題に上るようになりました。それで「これ絶対日本でもっと導入されないかな」と思って周りのアクティブマネージャーをけしかけてきました。この何人かで集まって、週に一度、クラブハウスで投資について考えてみたいと思います。
ただインパクト投資というのは、昔から概念はあって実際取り組まれていたものの、ここ数年急速に取り組みが拡大し、そこで定義や評価方法が整備されてきていますが、今も解釈は様々だと思います。ですので、ここでは世の中の定義にはあまり縛られず、「どんな投資がありえるのか」について議論していきたいと思います。
さて、インパクト投資って突然でてきたものじゃなくて、こんなの前からやっていたと言う人もいると思うのです。インパクト投資ってなんだと思いますか?

Tさんの場合(Asuka Corporate Advisory / Yoshihiro Tanaka)
金融の世界に30年関わっています。今は上場企業の中小型に投資をしていて、ただ投資をするのではなくエンゲージメントを通して企業価値をあげることを目指しています。
インパクト投資って難しいですよね。ものの本とか読んでいて今思っているのは、“ありたい社会”というのを想定して、それに対して積極的に働きかけて実現させていく、そんなもんじゃないかと思っているです。それを専門用語で言えば、“アウトカム”を創るとか、そう言うことなんだろうなと思っています。ただ自分自身がおもっているのは金融自身が胡散臭くなっちゃったのはここ30年ぐらいで、もともと信用創造を通じて社会に貢献していくっていうのは、本当は昔銀行にはあったと思うのです。だからこれは金融の本来の目的というか・・・ただその頃は、やはり長期に社会がどうなるかっていうことを予想して投資をしていく、ということはったのですが、“ありたい社会をどう作っていくか、それにどう積極的にかかわっていくか”というのはそんなにはなかったかも・・・。

Kさんの場合( 元外資系アクティブファンドマネージャー Hiromitsu Kamata さん)
私も30年以上株をやっています。私もTさんのいうとおりだと思います。それでも80年代はまだ、新しいもの、芸術などにもお金がまわっていましたよね。なんでその後おかしくなったかというと、その後金融機関が生き残るのが大変になってちょっと変わってきちゃったのかなと思います。でも今ある程度生き残って、また社会貢献とか考えれるところに戻ってきたんじゃないかなと思うんですけど。私が思っていたのは、「そのビジネスは世界を幸せにしているか?」で私の投資先が、少しでも世の中をよくしているかを常に心の中に持ちながら投資していく必要があるかなと思っています。

MC
そうですね、ヨーロッパのアセットオーナーを回っていると、私の世代から見ると、ちょっと驚くほどまじめに“世界を良くしたい”という思いを語られますよね。そのオーナーが、自分が委託しているすべてのアセットマネージャーにも同じ方向を向いて投資して欲しい、たとえばヨーロッパだとグリーンの投資をして欲しい、というアセットオーナーが、インパクト投資として上場株も同じ分野で力をいれて欲しい・・・というケースをみかけ、「こういう思いをもっている日本のアセットマネージャーもけっこういる!もっと日本人アセットマネージャーはインパクト投資に興味を持つべき」と思ったのです。

Hさんの場合(現独立系投資顧問会社ファンドマネージャー Hiromitsu Kawakitaさん)
私もお二人ほどじゃないけど長く日本株投資をしています。ESGやインパクト投資で有名なお客さんがいてその人たちといろいろ話してきました。そこで感じてきたのは、日本では長期の視点で分析していても、実際はなかなか長期にならないことが多く、日本でももっと根付かせたいなと思っています。
自分はインパクト投資は社会にプラスの変化をもたらす企業への投資だと思っています。短期的にみればうまくやっているなという事業はあっても最終的には多くの人から喜ばれる、社会にプラスの変化をもたらすものでなければ成長し続けることはないと思っています。

MC
そうですね欧州でアセットオーナーが旗をふって“インパクト投資”と言っているケースではご自身がゴールを設定していて、このゴールにあわせて、インパクト投資してくれるアセットマネージャーは手をあげてください、みたいなコミュニケーションをみかけます。数年前、オランダのPGGMとAPGは、共同でインパクトゴールのタクソノミを発表しました。もとはSDGsの中のいくつかのカテゴリで、たとえば貧困をなくすだったら、自分たちが注目しているのは、マイクロファイナンスです、とかタクソノミの小項目に書き込まれています。飢餓をなくすのところには、たとえばフレッシュな食べ物のローカルアクセスの事業とか。そういう風に自分たちが注目しているインパクトを示して、同時にアセットマネージャーだけでなく、企業にも伝えたいそうなんですね。それにアセットマネージャーが参加していくと、全体で大きな力になり、社会的な動きを促進するパワーになります。これは面白い仕掛けだなと思いました。SDGs17あればだいたいどっかに入るかなと思いますが、社会的にいいことしたいというのはなんとか拾ってもらえると思うので、アセットオーナーの考えと一致するところが見つかるといいのかもしれません。

では次回は、どんなところにインパクトを起こしたいと思っているかについて話して見たいと思います。

続く

上場株でのインパクト投資とは

いわゆる社会貢献を目標に取り込んだ投資の歴史は古く、1920年代の欧米で始まったSRI投資に始まり昨今では公募投信においてもESG投資が注目を集めつつあります。この中で比較的新しいインパクト投資はどう位置付けらえるのかという事に関心を持ち始められるアセットオーナー様も増えておられるように思います。

インパクト投資については、現在もその定義や手法を巡って議論が続いており、唯一無二の答えは見えていないというのが現状では無いかと理解しています、しかしその中でも、「インパクト投資」という言葉の生みの親であるロックフェラー財団を中心に創設されたGIIN(Global Impact Investing Network)は同投資における中心的存在と言えるでしょう。

同GIINによれば、インパクト投資とは”Impact investments are investments made with the intention to generate positive, measurable social and environmental impact alongside a financial return. Impact investments can be made in both emerging and developed markets, and target a range of returns from below market to market rate, depending on investors’ strategic goals.” 

すなわち「インパクト投資とはポジティブで計測可能な社会・環境インパクトを財務リターンと共に生み出すことを意図して行われる投資である。同投資は新興市場でも先進国市場でも取り組む事が出来るし、戦略によっては市場並み或いは市場以下のリターン等の一定のレンジを目標に取り組むことが出来る」と定義されています。

いささか乱暴なまとめ方かもしれませんが「あらかじめ社会インパクトを意識して、その中でリターンを生み出すことを前提として取り組まれる投資」という事で大きくは間違っていないでしょう。ESG投資を巡って、プロ投資家の受託者責任、すなわちESG投資はリターンを生み出すのか?という問いに対する答えが欧州と米国において異なるなど、やや宗教論的な様相を呈しているのに対して、明確にリターンの必要性を定めている点においてはよりストレートな投資手法であると言えるようにも思います。

さて、GIINが定めるインパクト投資の基本的な定義は上記のようにストレートなものではありますが、そのインパクト投資たる要件についてはさらに細かく定義されています。いわゆるインパクトウォッシュを避けるためであったり、その実効性を担保するためであったりと興味深く。機会があるようでしたらこのブログにおいて徐々にその内容についても触れていきたいとは思いますが、上出の投資家様とのディスカッションの中で感じ、また今回読者の方にご理解頂きたいのは、現在のインパクト投資におけるメインストリームが未公開株・債券(デット)であるという事。またそれに対して上場株のインパクト投資についてはほとんど手つかずの状態であるという事です。

元々が教会のチャリティー(慈善活動)のような形で始まり、比較的限定された地域や課題の解決と社会リターンの追求を目的に始まった投資であることから、そもそも投資を通じてどのような社会を実現させたいのか?(Theory of Change) 、特定された社会課題に対して資金の出し手がどのように関与(Intervention)し、どのような影響を与え、どのような成果(Outcome)を生じせしめるのか?またそれは合理的に説明可能なのか?(Logic Model) と言った哲学と活動に対するコミットメントが必要であり、一般的には市場から株式を買付け、一定期間の後にはそれを売却するという上場株投資の世界になじまないからではないか?というのが筆者の考えです。

それでは上場株を対象としたプロ投資家、個人投資家は株式投資を通じてこの流れに貢献することができないのでしょうか? 決してそんなことは無いというのが私の見解です。未公開株やデットを通じたインパクト投資が0から1を生んでいく投資であるならば、上場企業を対象にしたそれは、1を10や100に育てていく投資ではないかと考えています。特に世界でもまれにみる多くの企業が上場している日本の株式市場には、既に様々な分野で重要な社会インパクトを生み出している企業が存在しています。このインパクトを強化していく事こそが私達上場株投資に関わる投資家の今後の重要な責務の一つではないかと思います。

上場企業におけるインパクト投資を謳う投資の少なからざる部分は「社会的インパクトを生み出す企業にベットする」投資であって「投資を通じて社会的インパクトを強化する」投資足りえていない部分も多分に存在しています。しかし上場株投資において社会インパクトの強化を実現させる事は不可能ではありません。現に私達は過去において、多くの中小型株企業様と対話させて頂く中で、投資家発の提案を受け入れて頂くことで、成長が加速され、当該企業様が持つ優れた社会インパクトが強化される姿を見てきたからです。

投資先企業のインパクトという船に「乗る」投資から「共に船を漕ぐ」投資に視点を切り替えることで、上場株投資に取り組む機関投資家も十分にその社会インパクトを強化するお手伝いが出来るのではないでしょうか?

謹賀新年

2021年 今年も宜しくお願いいたします

あすかコーポレイトアドバイザリー 一同

2021年 年賀状

家庭菜園を始めました

緊急事態宣言こそ解除されたものの、COVID-19の影響の不透明感もまだまだ残る中、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

自粛の影響によりホームセンターでは園芸用品の売上が急速に伸びていると言いますが、例にもれず私も家庭菜園を始めてみました。

現在は紫蘇、サラダ菜、茗荷、ゴーヤ、キュウリ、ネギ、ピーマン、ズッキーニ、さまざまな種類の唐辛子など多くの野菜を育てています。特に、唐辛子は、中国の四川料理や東北料理をよく作るので4種類、7株くらい育てています。

家庭菜園を始めて約3か月経ちますが、当初小さな種だったことが信じられぬほど大きく成長した野菜たちで庭が大混雑している今日この頃です。

中でもゴーヤとキュウリは1日見なかっただけであっという間に背が高くなっており、植物の成長の早さに驚かされるばかりです。茎や葉の成長はもちろん、実の成長もあっという間で、先日はまだまだ小さいと思っていたキュウリが1日見ないうちに巨大に成長し、収穫タイミングを逃してしまいました。

翻って、外の世界に目を向けてみますと東京はCOVID-19の警戒感が後退し、通勤電車の混雑もCOVID-19以前の状況に戻りつつあり落ち着きを取り戻してきたように思います。

また、仕事で企業の方々と面談させていただくことも多いのですが、対話の中で、先行きに対するポジティブなコメントをお聞かせいただけることが、徐々に増えてきたように感じています。

COVID-19以前に戻ったこともある一方で元通りとはいかないものも多く、人々は皆マスクを着けるようになり、飲食店、小売店の入り口には必ず消毒液が置いてあるなど大きな社会の変化が起こっています。
自粛していた3か月というのは短いようで意外と長く、植物が種の状態から収穫できるほどにまで成長するには十分な期間であるのと同様、生活スタイルが変わり人々がそれに慣れるためにも十分な期間なのだと改めて感じる今日この頃です。

COVID-19の影響で新たな生活様式ができつつある中で日々の社会の変化も大きくなっています。また、新たな生活様式の中で成長の芽が出始めた企業や大きく成長した企業も出てきています。
我が家の家庭菜園と同様に社会で大きな変化が起こる中、今後も市場・企業の成長、変化のタイミングを逃さないよう、調査・研究を進めていきたいと思っています。

最近は梅雨のため雨が水やりを代わってくれることも多く、非常に楽です。梅雨は、植物の成長にとって大切な季節なのだと感じます。梅雨明けには大きな実りがあると期待しています。

あすか新春セミナーを開催しました

1月9日(木)あすか新春セミナーを無事に終える事が出来ました。ご来場いただいた皆様、ご協力頂いた皆様。本当にありがとうございました。

三部構成のセミナーは、第一部においてSMBC日興証券のチーフ株式ストラテジストである圷正嗣様に2020年の市場環境と投資戦略についてお話頂きました。2020年にグローバルで見た日本市場の魅力度の高さやガバナンス改善により強化される日本企業の優位性についてお話頂くなど大変勇気づけられる内容でした。

第三部は元オリンピック日本代表の為末大様により「自分を知る」とのテーマでのご講演を頂きました。長い競技人生を通じて悩み、考え、ご自身で道を切り開いてこられたお言葉は強くそして優しく、投資との共通点も大変多かったです。

そして第二部は「多様化する対話型投資の現状と今後の展望について」とのアジェンダの下、株式会社ストラテジックキャピタルの丸木剛様、りそなアセットマネジメント株式会社の松原稔様、そして私によるパネルディスカッションを圷様にファシリテート頂きました。私自身も自分達が取り組むバリューアップ型のエンゲージメント投資についてお話をさせて頂きました。

第二部についてはセミナー後の参加者の方々とのお話しの中で「所謂投資先企業と対話を行うタイプの投資家ではあるものの、三者(社)三様のアプローチが大変対比的で面白かった」とのご感想を頂きました。主催者冥利に尽きるお言葉です。また同時に私自身は「投資に取り組む中で何をもって成果とするのか?」との圷様の問いに対して、三人のパネリストがそれぞれ迷うことなく「それは当然投資リターンです」と答えられていた事に勇気づけられました。

世の中で対話型の投資についての認知が高まりつつ反面、外部に対する説明責任も強化されつつあり、近春改定が予定されているスチュワードシップコードにおいてもサステイナビリティーとESGを軸としたエンゲージメントとその効果検証などが導入されることが見込まれています。

日本における運用の質を高めていくためにもこれらに真摯に対応していく事を心掛ける事は大切ですが、その結果として何を実現するのか?を見失わず、それぞれが信じる投資哲学の実行を通じてアセットオーナーが求めるリターンを追求しなければならない事をあらためて確認できました。

元旦の「ジオヒルズ」ワイナリー訪問

本年の年越しは、いかがお過ごしでしたでしょうか。私は長野県小諸市にある実家に帰省しておりました。長野県小諸市は、年間平均降水量も少なく、晴れが多い地域です。イメージ通り、今年の元旦は清々しい晴天に恵まれした。

朝、家族そろっての朝食を終えると、お出かけ好きの両親から「御牧ケ原の台地の上に綺麗なワイナリーができたので行ってみよう」と声をかけられ、元旦午前中から車に乗り込み外へ出ました。御牧ケ原の台地は、360°の展望が開け浅間山、富士山、北アルプスまで見通すことができる素晴らしい場所であるものの、人がほとんどいない穴場スポットという印象を持っていました。しかしながら、行ってみると台地の上に小さいながらも御洒落な「ジオヒルズ」というワイナリーが建てられ、駐車場には元旦午前中にも関わらず数台の車やマイクロバスが停まっています。中に入って見ると、小さなカフェが併設されており、ほぼ満席。元旦午前中から、多くの人が集まり賑わっており、我々家族も淹れたてのコーヒーをオーダーし、温かい暖炉の前で家族水入らずの時間を過ごしました。
(車で来ていたこともあり、ワインはまた次回という事になりました)

仕事柄、経営者がどのような人か気になり、家に帰って過去の新聞記事を調べてみると、小諸で120年以上続く老舗温泉宿の5代目荘主とのこと。「小諸の土や、昼夜の寒暖差があり降水量も少ない小諸の気候風土を活かした農産物で、お客様をもてなしたい」と思い、2002年からぶどう栽培に着手。その後、2007年に目標としていた宿の名前を冠した「中棚ワイン」を委託醸造で立ち上げました。2018年に温泉宿の荘主を次代に引き渡した上で、ついに自らの手でワイナリーを立ち上げたとのことでした。これらストーリーが、新聞に「挑戦者たち」という題で掲載されていました。この5代目荘主の思いや実行力、またそれが新たに地域に与えるであろう活力に思いをはせ、元旦から一人胸を熱くしておりました。

改めて、正月気分を抜けて自身の本業に立ち返ってみると、本年はスチュワードシップコードの改定の動き等を受け、ESGがこれまで以上に広く一般的に注目されてくる年になると想定しております。一方で、その一般的な認知拡大の様相に対して、ESGを実際の経営に落とし込むということになると、その施策や手法は各企業の状況や経営戦略と調和した特殊解である事への認識は未だ弱いのではないかとも感じています。今回のワイナリーの事例のように、ESG的視点を経営として結実させるには、当該地域の特性等、夫々個別具体的な環境認識に基づく、経営者や従業員の思い・ストーリーが前提となるはずです。我々は、投資哲学の一つとして「パートナーシップ型投資」を掲げて、日々業務に取り組んでおります。社会的な潮流としてのESG・SGDsの動きには注目しながらも、その前提として我々の原点である、投資先企業様個別の経営課題に集中し、その熱を感じ、成長を応援し、そこから生まれる果実を当該企業様やスポンサーの皆様と共有していきたいと思います。

本年も精一杯精進致します。