ACAコラム

「あすか資産運用勉強会(大阪)」を終えて

12月23日「企業との対話がどう株式投資の効果に結びつくか」と銘打った勉強会を大阪・北浜の大阪証券取引所 北浜フォーラムで開催させて頂きました。内容としましては同月2日に東京で開催させて頂いた内容とほぼ同じものではありましたが、私達にとっては初の大阪での勉強会ということもあり緊張感をもって臨ませて頂きました。

第一部はスチュワードシップコード・コーポレートガバナンスコードからESG投資につながる一連の流れを整理し、第二部はエンゲージメント効果の計測手法、第三部・四部であすかのエンゲージメント手法のケーススタディーについてお話させていただくという構成でした。

当日は在大阪・京都・神戸のアセットオーナー各位にご参加頂き、いくつかの鋭いご質問を頂けました。「概念的には理解が進むものの、アセットオーナー各位にとっての真の投資意義については未だ明確には見えないESGを軸とした投資に、我々インベストメントマネージャーサイドがどのような解を提示できるのか?」 「私たち自身は肌感覚をもって体感しているエンゲージメントを通じた企業変革の実態をどのようアセットオーナーにコミュニケーションしていくべきなのか?」といった重要な視点でした。今後とも現場に携わる立場として、実体験に基づく知見を皆様にお返しできればと考えております。

この場を借りてお礼を申し上げると共に今後の弊社の取り組みにもご注目頂ければ幸いです。計5名で東京から伺いましたが、帰りは三々五々の散会となりました。メンバーの一人は新大阪でかねてよりの念願であった蓬莱の豚饅とシュウマイセットを購入し帰路に就いたようです。また伺います。

「あすか資産運用勉強会」を終えて

12月2日「企業との対話がどう株式投資の効果に結びつくか」と銘打った勉強会を日比谷図書館セミナールームで開催させて頂きました。敢えて小規模の会とさせて頂き、参加者の皆様と密にお話が出来ればと狭めの会場を押さえたのですが、結果として20名近い皆様に参加頂きました。折からの豪雨にも関わらず足をお運び頂いた皆様に心よりお礼を申し上げます。

限られた時間ではありましたが、スチュワードシップコード・ESG投資の現況、エンゲージメントの効果計測、企業様との対話手法とケーススタディーといったトピックスについて、それぞれの分野で実務に従事するメンバーが順番にお話をさせて頂く事が出来ました。

昨今注目が集まるエンゲージメント型投資ですが、外形的な情報に比して、実務面での情報は未だ少なく、実際のところ何をやっているのか?というお問い合わせも頂く事が増えて参りました。このような場を少しでも増やして投資家の皆様のお役に立てればと考えています。

この場を借りてお礼を申し上げると共に今後の弊社の取り組みにもご注目頂ければ幸いです。

鴉(カラス)

一般にカラスは、「不気味」「怖い」というイメージを持たれていて、近寄りたい人は少ないと思います。

しかし、私は違います。昔からカラスの漆黒の美しさに魅せられて来ました。黒の美というものを皆さんご理解いただけるでしょうか。特に、くちばしの形など近くで見るカラスは美しく、格好良いのです。だから私は、子供の頃から「鳥類図鑑」などを熟読し、カラスに対する知識を得ていました。

さて、先月のことです。働いているオフィスの外に面しているスペースで休憩している時でした。コーヒーを片手に、メールを確認していると、2メートルくらい上の柱にカラスがやって来て“カァーカァー”と大きな声で鳴き始めました。そのまま氣にせずにいると、今度はさっきよりも近い柱に飛び移り“ガァーガァー”と声のトーンが変わりました。そして、羽を大きく開いて頭の真上の柱に飛び移って来ました。手を伸ばせば触れるくらいの位置で私の事をじっと見ています。私は、すぐに立ち去りました。普通の人だったら、怖くなって走って逃げるところです。

しかし、私は違います。これは、知らずにカラスの巣のそばに長い時間いたためだと思われます。カラスは、こういう時に、威嚇の行動に出るのです。そういう知識があれば、無駄に怖がる必要は無いのです。

その数日後、家の近所を散歩しておりました。公園の中の電柱にカラスが留っていたので、餌をやってみようと思いつきました。それぐらい私はカラスが好きなのです。たまたまポケットにきのこの山があったので、一つ取り出して、あげました。すぐに食べてしまったので、もう一つ上げるとそれもすぐに食べてしましました。ポケットにはまだきのこの山はあったのですが、もうないよというフリをして、その場を立ち去りました。

ところが、歩いている後ろで、バサッと音がしたので、振り返ると、先程のカラスが2メートルくらい後ろの柱にとまり、こちらをじっと見ています。そのまま歩いて、振りかえると羽を大きく開いて目の高さよりも低い位置でどんどん近づいてきます。足早に歩いてもどんどん近づいてくるので、ポケットに入っていたきのこの山をその場に置いて立ち去りました。普通の人は、怖がるところでしょう。

しかし、私は違います。これはむしろカラスが親切な私に親愛の情を持ったためとった行動だと思われます。カラスは人になつきやすい生き物だという事を私は知っているので、怖くはありませんでした。

カラスは、賢い鳥であり人になつきやすい性格を持っているのですが、怖くて害鳥扱いもされたりします。知性が優れていても、悪い印象が定着するとその評価を覆すのは容易ではありません。しかし、私は違います。私は正確な知識を持っているためにそうしたレッテル貼りや恐怖から自由でいられるのです。

カラス

慶応ビジネススクールでの講義を終えて

先日、慶応義塾大学大学院経営管理研究科の齋藤卓爾准教授のご協力を得て、MBAプログラム内の授業で『企業価値創造における投資家の役割』と題して、3時間の講義をさせていただきました。前半を昨今の株主エンゲージメントの流れやあすかが考える企業価値創造の原理の説明(内容は以前の価値 is KingROICから企業価値への投稿をご覧下さい)、後半を実際の投資先企業との対話の中で使った資料を用いながらのケーススタディという構成で行いました。学生の皆さんからは、ESGや株主エンゲージメントの変遷等等、様々な観点から積極的な質問をいただき、昨今のコーポレートガバナンスやエンゲージメント強化に向けた改革の浸透を、改めて実感することができました。

今回、私自身は、サポートメンバーとして教室後方から講義の様子を見ていたのですが、特に感じた事は、自社の戦略や取り組み意義を言葉にして伝えることの重要性です。学生の皆さんからすると、講義の開始時点では、当社のバリューアップ戦略と、伝統的なアクティブファンドやプライベートエクイティ、または、一般的に想起されるアクティビストファンドとの差異が、「わかりそうでわからない」状態だったのではないかと思います。そこで、講義の中では、投資先企業との関係構築や、対外情報に基づく対話手法、コストに見合うリターン獲得の可否等について質疑応答も含めながら説明することにより、バリューアップ戦略の特徴について徐々に理解を深めていただきました。理解が進むにつれて、質問の数も増え、学生の皆さんの興味も大きく増したように感じます。結果として、多くの質問をいただきながら、深い議論を行うことが出来ました。

通常我々が、投資先企業の皆様とお会いする際に、IRのポイントとして自社のユニークネスを考え抜き言語化する重要性について対話をさせていただくことがありますが、今回の講義のケースと正に同じであるように思います。かつて、心理学者のマズローはコミュニケーションの基盤として自己理解と自己開示の重要性を説きました。企業のIRにおいても『自社の哲学や実現したいことを確り理解できているか、それを伝えられているか?』という問いに自信を持って答えられることが重要になると考えています。その上で初めて、ステークホルダーとの信頼関係が醸成され、相互理解に基づいた深い対話が可能になるのではないでしょうか。この点について、今回の講義を踏まえて改めて考えさせられました。

齋藤准教授及びMBAプログラムの学生の皆様、心より御礼申し上げます。

京都大学様との共同セミナーを終えて

10月7日(月曜日)第六回となる、京都大学経営管理大学院様とあすかアセットマネジメント、弊社の共同セミナー『政策主導で規制が強化される企業ガバナンス』~企業と投資家はどう対応するべきか?~を無事終えることが出来ました。講師・パネリスト各位及びご参加頂いた皆様に心より感謝申し上げます。

今年は有価証券報告書の開示基準が強化される等コーポレートガバナンスを巡る環境整備にさらに一段の進化が見られたように感じています。ガバナンスを支えるための「器(うつわ)」が着々と準備される中で、それをより実効性あるものにするために当事者は何を考えるべきなのか?という点について、当日は現役の独立社外取締役、大手機関投資家のエンゲージメント担当者、そして弊社のメンバーという事なった立場の方々に、様々な議論をして頂く事が出来ました。参加者各位も勇気づけられたのではないでしょうか?

さて、その中で私が一つ強い印象を受けたのは、上出のエンゲージメントを担当されるパネリストの方が言及しておられた「議決権行使において株主が投じる票は企業の将来に対する影響を有している事を忘れてはならない」とのメッセージでした。例えば昨今増えつつある、海外のいわゆるアクティビスト型株主による提出議案についても。勿論株主提案であることを前提とした可否の判断はしないが、定款変更等については特に最新の注意を払っておられるとの事。何故ならば定款変更は企業としてのビジネスそのものに変化を与え、ひいては企業の将来に変化を与える可能性があるにも関わらずその議案に賛同した自分たちを含む株主が将来時点において株主である保証がないためだから。との事でした。

会社は誰のものか?とは永遠の問いであり、今回のコラムのみで語るにはいささか大きすぎるテーマですが、上出の「将来への責任」は、現在進みつつあるSDGs等のテーマとも相通じるものがあります。本件を巡っては所謂海外アクティビストによる株主提案に対する賛成票の低さを、日本市場の後進性の証左として語る論調も見られます。それぞれの立場や主張は異なって当然ですが、同パネリストの方のメッセージと同様に、私達は「その提案は合理的に考えて企業の将来キャッシュフロー≒現在の企業価値を強化するものか否か?」という視点で個別に判断するよう心がけています。逆に言うならば、企業の現時点における価値を取り合うのではなく、他の株主も喜んで同意したいと思えるような全体最適解を提案できる能力が株主にも求められるのではないかと感じています。精進致します。

書を捨てよ

「書を捨てよ、町へ出よう」という寺山修司さんの評論集があり、私はこの言葉が好きで、旅に出ることは投資においてとても重要な活動であると考えています。

投資において非常に大切な事の一つは「本来の企業価値と市場がつけた価値とのギャップを見つける事」です。
ちなみに我々はこのギャップを「価値創造ドライバー」と称しているのですが、所謂合理的市場仮説なるものが主張するようにこのような「価値創造ドライバー」を見つけることは容易な事ではないのです。そして、このギャップを見つけるヒントとなるのが「常識を疑う」事であり、「旅に出ること」はこのための重要な活動の1つであると考えています。

つい先日も、あるBtoCサービス企業様への提案を行うために北米へのリサーチトリップに出かけました。
リサーチの主眼となるのは当該企業様のサービスが展開可能な都市・商業地域についての仮説を作る事で今回は10日間掛けて米国・カナダの都市を周り、数多くのモールやダウンダウンを訪ね、取材を行いました。総計でレンタカー800マイル(約1,500キロ)、歩いた距離100キロ程度と中々ハードな視察になりましたが、不思議と疲れはなく学びが多い楽しい旅でした。

従前に入念なデスクトップリサーチなど事前調査や仮説を創っており、いくつかの都市や商業施設についてのリサーチ結果は事前の調査と合致するもので喜んでいたのですが、ある街については事前の予想を覆す結果を得る事となりました。
それはカナダのトロントでした。
トロントは極めてコンパクトな街で事前のデスクトップリサーチでは商圏人口の集積度において大きな魅力を感じられなかったのですが、お住まいの方や訪問された方なら当然ご存知のように、同市は中心部に世界一とも言われる巨大な地下街を有する街だったのです。
新宿から渋谷にかけての地域に匹敵する広大な地下街とそこに蓄積される商業インフラの存在を訪問により初めて認識しました。ちなみにこの訪問には、当該企業の在米国・海外御担当の方も同行されたのですが彼も全く認知していなかったとの事でした。

もちろんこういったアドホックな情報が経営に大きな影響を与えるとは思いません。
しかし、この偶然が無ければ同社は将来の潜在的な展開余地を有する北米の一都市を見落としていたかもしれないのです。文献やインターネットなどでの基礎リサーチは大前提として、その常識をうのみにしてしまってはいけないという良い事例でした。

このように、自ら仮説を立て、足を使ってそれを検証する事は、非効率的にみえるかもしれませんが、情報窓が広がり事前に想定していない貴重な情報や経験が生まれ、そのパーツの掛け算で結果的に魅力的な「価値創造ドライバー」を生み出せるのではないかと感じています。

企業開示とTSR(Total Share…

政府がリーダーシップを取って進めるコーポレートガバナンス改革が着々と進行しています。直近では今年1月に公布・施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」を通じて有価証券報告書における開示をより立体的に経営戦略と結び付けて行く方針が決まっています。これらの詳細については、多くの分析やまとめがある事から皆さんも目にしておられると思いますが。ここでは同内閣府令の中で開示が求められている「株主総利回り」、所謂TSR(Total Shareholder Return)について、私達が取組むエンゲージメント・バリューアップの現場からの見方をまとめてみたいと思います。

TSRとは、簡略化して述べれば、一定期間における株価の変動に同期間の配当を加えた、株主としての総合的なリターンを意味します。一般的には株式市場全体の動きにも左右されてしまう株価のみを軸とした評価に対して、企業側の自律的な行動である配当を加味する事で、企業側にとっても株主にとってもよりフェアな評価であると考えられているようです。開示のルールが変わる中、私達の普段の対話においても、関心を持たれる経営者の方が増えておられるように感じます。ガバナンス改革が進みつつある事の証左であり、日本の株式市場にとっても光明であると言えるのではないでしょうか? このような中、私達は経営者の皆様に「TSRを見る上では二つの事に気を付けて頂きたい」とお話ししています。

まず一つ、「過去を見る上では、結果としてのTSRだけでなく、その構成要素をよく吟味し、投資家と対話をして頂きたい」という事です。

平素私達は関与させて頂く企業様に、企業価値を高める努力をしてくださいとお願いし、そのための施策について議論をさせて頂いています。企業価値は理論的に算出できますが、これは市場で取引されている株価と一致するとは限りません。しかし長期的に見れば、株価は企業価値に収斂するはずです。よって株価はやはり企業にとっての通信簿であり体温計であると考えてよいのではないでしょうか。但し、この通信簿である株価と配当(TSR)を市場インデクスとの比較、同業他社との比較だけで語ってしまうと、総合点で優劣をつけるだけの共通テストと同様の弊害を生み出すリスクがあります。TSRは①キャピタルゲイン=利益成長(売上の変化×マージンの変化)×市場マルチプルの変化 と ②インカムゲイン=配当額+自社株買い(これは実は利益成長に入れるべきなのですが今は概念として②に入れています)に分解されます。私達は企業様との対話の中で、絶対的/相対的なTSRの違いが、どこから生まれてきているのかをお話しするように心がけています。TSRを要素分解する事で、企業経営上やり切れた事、やりきれなかった事、その代わりに努力した事、等が見えてきます。売り上げも利益もきちんと伸びているのにマルチプルが伸びていなければひょっとすると市場とのコミュニケーションが足りないのかもしれません。また、同業他社との比較で、マージンだけが劣後しているのならば、同社のオペレーションに何か問題があるのかもしれません。このように、TSRを要素分解する事で株価を軸に経営について事業家と投資家が意見を交わすことが可能になります。逆にTSRその物の比較、乃至は①・②の数字その物の比較であれば「株価が上がらないんだからせめて配当を出してほしい」という交わらない議論で終わってしまう可能性もあります。

二つ目は、「未来を語るにあたっては、上記の構成要素をさらに掘り下げて、経営戦略と併せて語って頂きたい」ということです。

TSRを軸にした議論にリスクがあるとすれば、「株主へのリターンを上げる事ができればどのような策をとってもいい」という議論に陥る要素を含んでいる事であると思います。例えば①の利益成長は、無理なコストカットによって達成する事も可能ですし、市場マルチプルは根拠の無い強気な利益予想で達成できるかもしれません。また、インカムゲインについても本来行うべき投資を犠牲にすれば従来以上の結果を残せる事になります。もちろんこれらの非合理的な経営戦略は長期には企業価値を棄損し、株価にも反映されるでしょうが比較的短期のTSRで見た場合は効果を生む戦術となり得ます。私達がお願いしたいのは、投資~回収~再投資という株式会社のサイクルの中で、EVAを生み続けられる質の高い経営をやって頂きたいという事です。バランスシートも含めた経営計画の結果として①・②それぞれのパラメーターの改善が語られるならばそれは非常に説得力がありますし長期に亘って投資を行いたいと思える対象となり得るのではないでしょうか?換言すれば短期のTSRにとらわれることなく、長期的な株主価値創出の観点からTSRを使って頂きたいという事です。

進みつつある開示の改善に対して、投資家として大いに期待すると共に、企業様にとっては労力の増加が見込まれる変化である事も良く理解できます。せっかくの試みを双方の取組みにより有効に使えるようにしたいものです。私達も、普段のエンゲージメント活動を通じて、そのお手伝いが出来ればと考えています。

企業開示と経営戦略

平素から大変お世話になっている株式会社野村総合研究所 上級研究員の三井様からご縁を頂き、ある会計専門誌様の対談形式の取材に参加させて頂きました。内容は企業開示に関する旬な話題であり、事業法人様、投資家の両方にとって興味深いものであると思います。発行が決まりましたら詳細改めてお知らせいたします。

その取材に際して、検討材料として頂いた様々な海外企業の開示例が非常に面白かったことから、こちらでご紹介をさせて頂ければと思います。特に感銘深かったのは、英国マークスアンドスペンサー(M&S)社の開示資料でした。ご存知かとは思いますが、英国が誇る小売業者で世界に8万人を超える従業員を擁するグローバル企業です。

職業柄、日本の企業様が発行される有価証券報告書は良く読ませて頂くのですが、貴重なデータ集として読み進む事はあっても、正直面白いと思って没頭してしまう事はありません。また逆に、近時皆さん力を入れておられる統合報告書は、読み物としてはとても面白いのですが、投資に携わるものとしては非財務情報が中心の同報告書は、何か物足りないように感じてしまう事も事実です。

これに対して、M&S社の場合、英国の法定開示ルールの違いもあるのでしょうが、現状の経営環境分析やこれを元にしたStrategic Reportなる経営戦略が明確に示され、これを実現するための全社でのKPIがしっかり示されている事。また取締役会の経営課題に対する対応とその一年間の振り返りや達成状況、次年度への課題等が提示されており、読み物としてとても読み応えのあるものになっています。

またさらに、重要なのは監査委員会のレポートや独立監査人のレポートもこのStrategic Reportとの一貫性が常に意識されており、独立・中立性を大前提としながらも企業側の等身大の姿を読み手に積極的に伝えようとする意志が感じられる事です。

私達は、財務分析や企業価値向上仮説立案の過程においては、入手可能なありとあらゆる情報を分析しようと心がけています。そのためには、法定開示資料である有価証券報告書を始め、統合報告書や企業様が自主的に準備される様々な開示資料を読み込み、その上で企業様にお願いし、ご面談可能な様々な方々とも面談を行わせて頂きます。その作業は大変ですが、とても意義があるものだと理解しています。

しかし、翻ってこのM&S社のような開示資料が一つあるとすれば、上記のプロセスの少なからぬ部分を、すべての投資家が享受できるようになるのではないかと思います。法定資料として敢えて色をつけない正確な資料として利用されてきた有価証券報告書ですが、いよいよ2021年3月期より「監査上の主要な検討事項(KAM)」の適用も始まるようです。取組まれる企業様、監査法人様にとっては大変なことでしょうが、これがM&S社のようにより良いコミュニケーションツールとしての法定開示資料が作られるための一歩となられることを期待しております。

海外企業の開示の好例としてのM&S社のアニュアルレポート、是非ご一読をお奨めします。

御参考:M&S社開示資料 
https://corporate.marksandspencer.com/ 
(こちらから”Annual Report”で検索してみて下さい)

ESGセミナーを終えて

10月9日(火曜日)第五回となる、京都大学経営管理大学院様とあすかアセットマネジメント、弊社の共同セミナーを無事終えることが出来ました。

『ESG 投資と企業経営』~表面的な活動で終わらせないために今何が必要なのか?~
とのタイトルの下ご参加頂いた講師・パネリスト各位、及びご参加頂いた皆様に心より感謝申し上げます。

私達は、あすかバリューアップ戦略と言う独自の企業価値向上を目的としたエンゲージメントに取組んでおり、ESG的視点との少なからぬ重複は感じていますが、あくまでも異なる取り組みを行っていると理解しています。

翻って、企業様のESGに対する取組みに関しても、今や合言葉のように経営への取り組が急がれている現況が、果たして本当に正しいのだろうか?との思いも持っていました。

今回のご講演やパネルディスカッションで感じられたのは、企業規模や業種によってESGへの取り組みは異なる事が当然であり、それはむしろ企業として実現したい自社の将来と明確なリンクを持っている事が必要であるとのメッセージでした。特に平素私たちがご一緒させて頂いている中堅企業様・成長企業様であれば、自社の成長戦略との明確なリンクがあってしかるべきではないかとのコメントは非常に印象深かったです。

サブタイトルである「表面的な活動で終わらせないために今何が必要なのか?」ですが、やはり短期的に見たESGに経営が引きずられるのでなく、経営として目指す「長期的に見てありたい自社の将来」が、まった無しの社会的要請であるESGとどう共生していけるのか?を考えることが必要なのではないか?また、私達は長期視点を有する投資家として、その見極めを行える目と、外部からのアドバイスができるような知見を蓄えなければと感じました。